【獣医師監修】犬のヘルニアはどんな症状?手術の方法は?

2018.07.14

【獣医師監修】犬のヘルニアはどんな症状?手術の方法は?

犬が発症する代表的な病気の一つに、椎間板ヘルニアがあります。比較的知名度も高く、人間にとっても聞き馴染みのある病気ですよね。遺伝的・体系的な問題によって発症する場合もありますが、どんな犬にも発症の可能性がある病気といえます。 今回は、ヘルニアの症状や原因、症状がみられた場合の対処法や、治療法、手術内容を紹介していきます。発症しやすい犬種や予防法にも触れますので、参考にしてみてください。

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犬のヘルニアとは?症状は?

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◆痛みや麻痺が現れる犬のヘルニア

犬も人間と同じように、背骨と背骨の間にクッション材のような役割を持つ「椎間板」という組織があります。椎間板ヘルニアとは、この椎間板が潰れるなどして変形した状態のことをいいます。

変形して椎間板が飛び出てしまうことで、神経の束である脊椎が圧迫され、これにより痛みや麻痺などの症状が現れます。

◆犬のヘルニアの症状は?

ヘルニアは、発症部位や進行状態によってその症状は様々です。椎間板ヘルニアによる主な症状は、以下の通りです。

【発症部位が「頸部」の場合】
発症部位が「頸部」であれば、じんじんとした痛みや鋭い痛みを感じる他、神経麻痺により歩行困難を招く症状がみられます。

重症となると、自力での立ち上がりが不可となり、四肢の完全麻痺から半身不随、更に排便・排尿が困難となる症状がみられる場合もあります。

【発症部位が「胸・腰部」の場合】
「胸・腰部」が発症部位であれば、腰から背にかけて痛みが現れ、その痛みによって背中を触られるのを嫌がるようになります。また、後ろ足の麻痺などが起こると、排便・排尿困難などを招く場合もあります。

◆犬のヘルニアの進行状態によるグレード

このように発症部位による症状の違いに併せて、以下の通り、症状の進行状態で5つのグレードに分かれています。

◎グレード1
脊椎に強い痛みを感じるため、動くことや触れることを嫌がる。段差の上り下りができなくなり、抱っこされると痛みを訴える場合がある。この時点では、麻痺はなし。

◎グレード2
歩行自体は可能だが、麻痺・運動失調を起こして後ろ足の力が弱くなる。そのため、足元や歩き方にふらつきがみられたり、足を引きずるような歩き方をする場合もある。

◎グレード3
後ろ足を自力で動かせなくなる。中には、前足のみで歩くようになるケースもみられる。

◎グレード4
自力での排尿ができなくなり、尿を垂れ流す状態となる。

◎グレード5
深部痛覚(痛覚の中で一番深い所にある感覚)までを失ってしまう。後ろ足を強く触っても、痛みを感じなくなってしまう。

以上の様に症状の進行状態によって段階分けされているのですが、特にグレード4と5では、治療後の改善率が大きく異なります。治療中であっても、症状の進行状態に十分な注意が必要となります。

このように椎間板ヘルニアは、発症すると段階によっては麻痺まで起こして、手術を必要とする可能性のある恐ろしい病気です。


ヘルニアを発症しやすい犬種は?

犬 ヘルニア

犬のヘルニアは、胴の長い犬種によくみられる、という印象を持っている方も多いと思います。
しかし実は、ヘルニアはハンセン1型・2型という2つの種類に分類されており、幅広い犬種において発症の可能性が高いといえる病気なのです。

特に注意が必要といわれる犬種もいますので、覚えておきましょう。

◆ハンセン1型

若齢期(2~7歳頃)に発症しやすいタイプで、「軟骨異栄養性犬種」と呼ばれる犬種に多くみられます。

これは先天的なもので、若い内に髄核(椎間板の中心にあるゼリー状の組織)が急激に変性を起こしてしまうため、椎間板の衝撃吸収能力が脆くなってしまうことが原因です。

発症しやすい犬種としては、ダックスフンド、コッカースパニエル、ウェルシュコーギー、シーズー、ビーグル、フレンチブルドッグなどが挙げられます。

◆ハンセン2型

1型とは逆で、成犬から老犬に多くみられるタイプです。加齢によって繊維輪が変性し、徐々に弾力性が失われることで脊椎を圧迫していきます。慢性的な痛みや、ふらつきが悪化するなど、緩やかに経過を辿る傾向にあります。

発症しやすい犬種としては、柴犬、トイプードル、ミニチュアピンシャー、パピヨン、マルチーズ、レトリバー種などが挙げられます。

このように椎間板ヘルニアは、先天的な理由から発症しやすい場合もあれば、加齢によって症状が起こる場合もあります。

発症しやすいとされる犬種においては特に注意が必要となりますが、他にも肥満などの生活環境によって発症率が高まる病気でもあるので、やはりどの犬種においても十分気を付けなければなりません。


犬のヘルニアの原因は?

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椎間板ヘルニアの発症は、全力疾走・段差の上り下り・跳ぶ・体を捩じるなどの激しい運動や、肥満、事故などによる外傷、加えて前述したハンセン1型のような先天性や加齢によるものが、主な原因となります。

椎間板への負担が強かったり大きくなることで、椎間板内中心部にある髄核が飛び出してしまいます。そして、脊髄や脊髄からでる神経が圧迫され、傷みや麻痺などの症状が現れるのです。

場合によっては予防できないケースもありますが、基本的には脊椎に負担を掛けない生活を意識することが大切です。

以下の通り予防法の例を挙げますので、参考にしてください。

◎激しい運動を、できるだけ控える。
◎フローリングなどの滑りやすい床には、マットやカーペットを敷くなどの滑り防止策をとる。
◎食事の管理を徹底して、肥満を防止する。
◎室内に激しい段差のない環境を作る。段差のある場所には、愛犬が行けないようにする。
◎抱っこをする場合は、腰に負担のかからない正しい抱き方をする。

人間同様、ヘルニアは犬にとっても強い痛みを伴う病気です。飼い主さんとして愛犬のために、できる限りの予防策をとってあげたいですね。


犬のヘルニアが起こった時の対処法は?

犬 ヘルニア 対処法

愛犬がヘルニアを発症してしまった、または発症が疑われるような様子がみられた場合は、可能な限り早めに動物病院で診てもらうことが大切です。

初期症状を見逃さないよう日頃から注意すると共に、万が一に備えて以下の様な対処法も覚えておきましょう。

◆ヘルニアの対処法①痛みの発症箇所を確認する

椎間板ヘルニアを発症した場合、頸部・胸部・腰部などの背骨付近に痛みが生じたり、後ろ足などの四肢に麻痺がおこります。

背中を撫でると、痛がって鳴いたり、背中を気にして振り向くかどうかをまず確認しましょう。この時反応がなければ、少し強く押して刺激し、背骨を軽く指圧して異常がないか改めて確認します。

ただしこの確認は、明らかに前足や後ろ足に麻痺が起きていることが分かる場合には行う必要はありません。この場合、背中を触るなどして刺激することは避けましょう。

◆ヘルニアの対処法②炎症を抑えよう

異常のみられた箇所が分かったら、保冷剤・氷枕などを使ってアイシングしましょう。冷却することで、患部周辺に炎症が広がるのを防ぐことができます。
アイシングすることで血管が収縮し、腫れによる神経圧迫を抑える効果があります。更に、患部を冷却すれば麻痺作用が働き、痛みの軽減も期待できます。

犬の身体は被毛に覆われているため、保冷剤や氷枕にタオルなどは不要だそうです。30分程度、冷却アイテムを直接患部に当ててアイシングしましょう・。

◆ヘルニアの対処法③絶対安静に努める

背骨を動かすことで血流が良くなり、炎症が広がってしまいます。血流を抑制(血行を悪くする)することで、急性の炎症を抑える効果があるのです。

犬が乗っても沈み過ぎない敷布団や毛布をケージなどに敷いて、愛犬を横に寝せることで、背骨が動かないようにしましょう。

◆ヘルニアの対処法④病院で診察してもらう

これらの応急処置を施したら、病院へ向かいましょう。麻痺がみられる場合は、病院での治療が不可欠です。

グレード1程度の症状であれば、動かすこと(移動すること)で背骨に負担を掛けるリスクが大きいので、自宅療養が安全かもしれません。しかしやはり、一度病院で診察を受けた方が、後々症状の進行がみられるよりは良いのではないかと個人的には思います。

ヘルニアを発症しやすい犬種ではないと思っていても、日常生活で十分に注意をしていたとしても、全ての犬種に発症する可能性があるのが椎間板ヘルニアです。万が一の場合に慌てないように、対処法を頭に入れておきましょう。


犬のヘルニアの治療法、手術について

犬のヘルニア 症状

椎間板ヘルニアの治療法は進行度によって異なりますが、治療法には温熱療法・鍼治療・内科療法・外科療法などがあります。

◆ヘルニアの治療法①温熱療法

患部を温めることにより、血の巡りを良くします。これにより、自然治癒力を高める方法です。

◆ヘルニアの治療法②鍼治療

鍼を打つことで筋肉の緊張を解き、血行を促進させます。犬にかかる負担が少ないことから、安全性の高いヘルニアの治療法といわれているようです。

動物病院の中には、鍼治療を積極的に導入している所もあります。

◆ヘルニアの治療法③内科療法

症状が軽い場合には、薬剤で痛みを抑える内科的治療を行った上で、ケージ内で安静にさせて運動を控えます。1~数週間の投薬・安静を必要とする方法です。

こちらは外科療法に比べると回復には時間が掛かり、完治は難しいそうです。
内科療法では、痛みや神経の浮腫の抑制効果が期待できても、直接的な脊髄機能の回復効果はありません。効果をあまり感じられないままで安易に内科療法を続けると、一時的に良くなったとしても再発したり、症状の悪化や更なる脊髄障害を招く危険性があることを覚えておきましょう。

◆ヘルニアの治療法④外科療法

内科療法で症状の改善が図れなかったり、重度の症状が見られる場合には、外科療法として手術が施されます。手術後にはリハビリを行い、神経機能の回復を図ります。

手術の方法には「片側椎弓切除術」と「椎間板摘出術」があります。
片側椎弓切除術は、背骨の圧迫がある側から椎骨の間の関節を切除し、脊椎神経を露出させて圧迫をなくす方法です。減圧術や除圧術ともいわれる手術法です。

椎間板摘出術はその名の通り、飛び出した部分の椎間板を取り除く手術ですが、ハンセン2型であれば摘出不可の場合もあるようです。


まとめ

ヘルニアは犬の動きを奪ってしまう可能性を秘めた恐ろしい病気であり、治療は時間との勝負でもあります。症状の段階に応じて適切な診断・治療・手術ができる、信頼できる病院を探しておきましょう。

そして、生活習慣や室内環境の見直しを図ることで、日頃から予防にも十分努めてくださいね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※


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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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