盲導犬になれなかった犬はどうなる?キャリアチェンジ犬として生きる犬達

2018.07.23

盲導犬になれなかった犬はどうなる?キャリアチェンジ犬として生きる犬達

現代の日本では盲導犬の知名度は高く、国内では沢山の盲導犬が人間の為に活躍をみせていますよね。しかし、盲導犬への道は正に狭き門。盲導犬になれなかった犬がその後どうなるのかを知っている方はまだ少ないかもしれません。 今回はそんな盲導犬になれなかった犬、キャリアチェンジ犬のことを紹介していきます。沢山の猫がいることで有名な猫寺と呼ばれる御誕生寺にも、実はキャリアチェンジ犬がいるんですよ!

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盲導犬とは?

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盲導犬とは、視覚障害を持つ方の目的地までの移動を、安全に行うサポートをする補助犬のことをいいます。

◆日本で活躍する補助犬のひとつ

日本では、補助犬として主に「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」の3種類がおり、盲導犬はその中でも約9割を占めているそうです。

盲導犬は、道路交通法・体障害者補助犬法により、電車・バス・店舗への入店なども認められています。それを成すためには、訓練や性格・適性の見極めが重要となります。厳しい試験に合格した犬のみが、盲導犬としての活躍の場を得るということですね。

視覚障害を持つ方の目となり、安全に歩くことを補助するということが、とても大変な仕事だというのは容易に感じ取れると思います。

◆盲導犬として活躍する犬種は?

現在の日本には、984頭(平成28年4月1日時点)の盲導犬がいます。しかし、盲導犬として活躍している犬種は3種類しかいません。

日本で盲導犬として活躍している犬種は、ラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリーバー、そしてラブラドールレトリーバーとゴールデンレトリーバーのMIX犬であるF1のみです。この3種が盲導犬として向いている犬種と考えられています。

これは、この犬種が本来持つ性格や素質に深く関係しています。

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◆レトリバーの特性

レトリバーの種類は、元来狩猟犬として人間と共に働いてきました。環境適応能力が高い上に、人間と働くことが大好きな性格をしているのです。

更に、体格も人間を安全に誘導するという点では丁度良いサイズといえます。
小型犬では小さすぎで誘導の点では不安を感じますよね。逆に超大型犬となると、人混みなどでスムーズに歩行することが困難となります。

そしてもう1点、レトリバー種が盲導犬に向いている理由には、外見の特徴も関わっています。
垂れ耳でアーモンド型の優しい目つきは、周囲の人間に威圧感を与えません。

これらのことから、視覚障害を持つ方を安全に誘導できる犬種に向いている、と考えられています。

◆世界で活躍する盲導犬の犬種

ちなみに、世界では他の犬種も盲導犬としての活躍をみせています。
スタンダードプードル、ボーダーゴリー、オーストラリアンシェパード、スタフォードシャーテリア、ドーベルマン、ロットワイラー、ジャーマンシェパードなどの犬種です。

日本ではレトリバー種の3種のみですが、世界各地ではレトリバー種以外の犬種が盲導犬として活躍しているそうですよ。


盲導犬になるには?

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訓練や適性判断、厳しい試験を合格しなければ、盲導犬にはなれません。盲導犬になれるのは全体の約3割だといわれています。

◆盲導犬としてのテストや訓練

パピーウォーカーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?近年テレビなどのメディアや映画などで盲導犬が取り上げられることも増えたので、知っている方が多いでしょう。

盲導犬候補の子犬は、生後約2ヵ月から1歳までの間をパピーウォーカー(仔犬飼育ボランティア)と呼ばれるいわゆる一般家庭で過ごします。これは、社会性が養われる大切な期間に家族の一員となり、愛情を注がれることで「人間と一緒にいることが楽しい」と自然に考えられるようにするためです。

そして1歳になると盲導犬協会に戻り、以下の様な盲導犬としてのテストや訓練が始まります。

◎稟性評価テスト…性格や健康面の調査・把握をし、訓練計画を立てる。
◎基本訓練…シット、ダウン、ウェイトなどの基本的な指示に従う訓練。
◎誘導訓練…安全に人を誘導する訓練。基礎的なものから応用的な誘導までを段階を踏んで行う。
◎第1回適正評価テスト…訓練士がアイマスクをつけて実際に街へ出る。
◎第2回適正評価テスト…担当者とは別の訓練士がアイマスクをつけて街へ出る。
◎最終適正評価テスト…訓練士ではない、盲導犬に慣れていない人がアイマスクをつけて街へ出る。
◎共同訓練…パートナーとなる視覚障害者と一緒に訓練を行う。

これらの段階を踏んで合格できた犬だけが盲導犬になれるのですから、勿論盲導犬になれなかった犬達は沢山います。

◆盲導犬になれなかった犬はどうなる?

ここで気になるのは、全体の約7割に及ぶ、盲導犬になれなかった犬がどうなってしまうのか?という点ですよね。
まさか保健所に行くのか…と心配になる方もいると思いますが、そんなことは決してありません。

盲導犬になれなかった犬には、それぞれに新たな道が用意されています。協会によって呼び方に違いはありますが、盲導犬になれなかった犬を「キャリアチェンジ犬」と呼びます。

それでは、盲導犬になれなかった犬はどのような道へ進んでいくのか、キャリアチェンジ犬について紹介していきましょう。


キャリアチェンジ犬とは?

身体的懸念や稟性的(性格)に盲導犬に向いていないと判断された候補犬、いわゆる盲導犬になれなかった犬を、キャリアチェンジ犬(協会によってはリジェクト犬)と呼びます。これは、進路を変更するという意味合いから付けられた名称です。

キャリアチェンジ犬となった犬達は、それぞれの性質にあった環境のもとでその後生活することとなります。

◆キャリアチェンジ犬の主な進路

キャリアチェンジ後の主な進路には、以下のような例があります。

◎一般家庭へ譲渡され天寿を全うする
◎介助犬・聴導犬として活躍する
◎啓発活動の場で活躍する盲導犬PR犬となる
◎セラピードッグとして活躍する

このように、盲導犬になれなかった犬にはキャリアチェンジ犬として新たに活躍できる、幸せになるための進路が用意されています。

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◆キャリアチェンジ犬の魅力

画像③

キャリアチェンジ犬と聞いて、盲導犬になれなかった犬だから頭が悪いの?という考えを巡らせる方もいるかもしれません。しかし、それは大きな間違いです。

確かに、稟性的に問題があると判断された場合や訓練期間が短い状態でキャリアチェンジ犬となった犬には、それぞれに理由があります。活発過ぎる・人や動物を怖がる・警戒吠えをする、などが主な理由に挙げられてはいますが、盲導犬候補の血統であることに変わりはありません。

基本的なしつけが施されていると考えると、家庭犬としてはこの上なく向いているといえるでしょう。


キャリアチェンジ犬の飼育ボランティアになるには?

キャリアチェンジ犬の飼育ボランティアが募集されているので、盲導犬になれなかった犬を引き取りたい!と考えている方は各協会のホームページなどを確認してみましょう。

譲渡条件も様々ですが、一例を挙げますので参考にしてください。

◆キャリアチェンジ犬飼育ボランティア基本条件の例

①室内飼育ができる
盲導犬候補犬は、育成プログラムにより子犬の頃から室内飼育で生活しています。室外飼育となることで、疎外感から問題行動を起こす可能性があるそうです。

このため、室内飼育可能な家庭が条件の一つとなります。

②留守がちでない家庭
キャリアチェンジ犬は人間の側にいることが大好きなので、安心した生活を送るためにも、留守がちでない家庭であることが条件になります。

③節度ある愛情で飼育できる家庭
適切な食事・運動による体重管理や、ワクチン・フィラリア予防などの健康管理、被毛の処理などの日常的なケアに十分留意できることも条件となります。これはキャリアチェンジ犬に限らず、犬を飼う上では必要不可欠なことですね。

◆様々なルールが存在する

このように、キャリアチェンジ犬が余生を幸せに過ごせるように、各協会によってルールが定められてます。
例えば、キャリアチェンジ犬がパピーウォーカーの元へ戻れる場合もあれば、パピーウォーカーの引き取りを禁止している場合もあるのです。

他にも大型犬の飼育が認められている住居である、など複数の条件やルールが存在しますので、興味のある方は各協会の情報を必ず確認してくださいね。


キャリアチェンジ犬を迎えた「猫寺 御誕生寺」

福井県越前市にある、宗洞宗の禅寺「御誕生寺(ごたんじょうじ)」をご存知でしょうか?「猫寺」として全国的に有名で、メディアでもよく取り上げられているお寺です。

◆30匹近くの猫が暮らす猫寺 御誕生寺

この御誕生寺では、約30匹近い猫が自由に過ごしており、猫好きの間で話題になったことで猫寺として知名度が高くなりました。

2002年に御年91歳の板橋興宗住職が、段ボールに入れられた捨て猫4匹を保護したことが、この猫寺の始まりでした。その後、数十匹の猫が集まるようになり、現在30匹近くにまでなったそうです。

この猫で知られる御誕生寺ですが、現在ではなんと猫たちの中にキャリアチェンジ犬が仲間入りしているのです。

◆猫寺で暮らすゴールデンレトリーバー

猫寺に受け入れられたのは、ゴールデンレトリーバーの「アンディー」です。関西盲導犬協会より、盲導犬に向いていないと判断されたキャリアチェンジ犬でした。

盲導犬になれなかった犬とはいえ、アンディーは訓練を受けていたことから、大人しくて滅多に吠えない、そしてとても人懐こいという、とても優秀な子だそうです。

新しい居場所となった御誕生寺は、沢山の猫がいる環境ではありますが、アンディーはそれぞれの猫と適度な距離感を保ち、上手な付き合いをしているようです。猫にもそれぞれ個性があり、アンディーに擦り寄る子もいれば、遠くで見ている子もいるとのこと。

昔犬を飼っていたという副住職もアンディーをとても可愛がり、アンディーも副住職が大好きななようです。御誕生寺は、猫たちに加えてアンディーにとっても安住の地といえるでしょう。

◆第二の人生を歩むアンディー

現在では、参拝客の中に「アンディーに会いに来た!」という方も沢山います。キャリアチェンジ犬としてのアンディーの第二の進路は、ゆったりとした御誕生寺という空間で過ごす幸福な日々へと繋がっていたのです。

この猫寺に託されたアンディーのように、キャリアチェンジ犬は、決してただの盲導犬になれなかった犬ではないのです。


まとめ

各盲導犬協会では、パピーウォーカーやキャリアチェンジ犬飼育ボランティア以外にも、様々なボランティア活動や寄付金などのサポートを募集しています。興味のある方は、是非各協会のホームページなどを確認してみてくださいね。

立派な仕事を務める盲導犬への理解を深めることは勿論、キャリアチェンジ犬という第二の進路へ踏み出す犬達がいることを、もっと沢山の人に知ってもらいたいと強く感じます。



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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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