【獣医師監修】犬の風邪「ケンネルコフ」の症状・治療法は?人用の薬は与えても大丈夫?

2021.03.19

【獣医師監修】犬の風邪「ケンネルコフ」の症状・治療法は?人用の薬は与えても大丈夫?

季節の変わり目など、私たち人間は気温の変化に身体がついて行けずに風邪を引きやすいですよね。では、あなたの飼っている愛犬はどうでしょう。咳をしていたので病院に連れて行ったら、ケンネルコフと診断された!という方もいるのではないでしょうか。 犬って風邪を引くの?もし大切な愛犬がケンネルコフと診断されたら…?そもそもケンネルコフって何…?薬は必要なの…?今回は、そんな疑問に応えて、意外と知らない犬の風邪についてご説明していきたいとおもいます。

【掲載:2018.10.15  更新:2020.3.17 /2021.03.19】

犬も風邪を引くの?

ケンネルコフ

そもそも、犬は風邪を引くと思いますか?人間のようにゴホゴホと咳込んだり、鼻水が出たりなどの症状が出ている愛犬を目にしたことがある方も多くいらっしゃるかもしれません。

簡潔に答えを言いましょう。答えはYESです。犬にも犬特有の犬風邪があります。

犬の風邪の症状としては、

  • 咳が出ている<
  • 目やにが出ている
  • 発熱している
  • 下痢をしている
  • 嘔吐をしている
  • 膿のような鼻水が出ている

など、人間と同じような症状がでます。

主に咳の症状が出やすく、何かを吐き出すような仕草をしながら乾いた咳をすることがあります。

心配になり動物病院に連れて行くと、何やら聞き慣れない病名を診断されたことがある方も多いと思います。実は獣医師さんは犬の風邪のことを「風邪」とは言わないのです。

犬の風邪には「風邪」ではない名前が付いており、獣医師さんは風邪とは言わず、「犬伝染性咽頭気管炎」や「伝染性咽頭気管・気管支炎(ケンネルコフ)」と診断します。その場合、犬の風邪だと思って良いでしょう。


ケンネルコフって何?

先程「伝染性咽頭気管・気管炎(以下、ケンネルコフとします。)」と言いましたが、ケンネルコフとは一体何なのでしょうか。なかなか聞き慣れない言葉ですが、実際に愛犬がケンネルコフと診断された事がある方も多いと思います。

◆伝染性の呼吸器疾患の総称「ケンネルコフ」

ケンネル(犬舎)コフ(咳)という意味のケンネルコフは、伝染性の呼吸器疾患の総称です。

犬パラインフルエンザ、犬アデノウイルスⅡ型などのウイルス性のもの、気管支敗血症菌などの細菌性のものに、1種類から複数種類感染することで引きおこります。実はどんな犬にもかかってしまうリスクがある病気なのです。

◆ケンネルコフの感染経路

主な感染経路は「接触感染」「飛沫感染」になります。ケンネルコフにかかっている犬のクシャミや咳、鼻水によって飛ばされてきたウイルス・細菌を触ったり、吸い込んだりしてしまうことにより感染します。

特に冬場や空気の乾燥している場所などは、ケンネルコフにかかりやすくなります。同じ空間にいるだけで感染してしまうリスクがあるので、多頭飼育している飼い主さんやペットショップ、ブリーダーなどの環境では特に感染が拡大しやすく、注意が必要ですね。

◆ケンネルコフの症状

では、ケンネルコフの主な症状はどのようなものなのでしょうか。

  • 何かを吐き出すような咳
  • 発熱

咳や発熱などは突然現れることが多く、「急に咳をし出したと思ったら何かを吐くようにガハっとした」という症状がみられます。特に、運動後や気温や湿度の急激な変化があった時に、この吐き戻すような咳の症状が現れやすいようです。

ケンネルコフはウイルスの単独感染では比較的に軽い症状の犬が多く、1週間~10日前後で回復する犬がほとんどです。
しかし、仔犬や老犬などの免疫力、体力、抗体力の少ない犬は、稀にウイルスや細菌に混合感染し、重症化してしまう場合があります。

重症化してしまった場合、以下のような症状がでます。

  • 高熱
  • 食欲不振
  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 膿のような鼻水が出ている
  • 稀に肺炎を起こし死亡してしまうことも…

このような症状がみられた場合は、すぐに病院に連れていき、獣医師さんに診察してもらいましょう。

また、もともと呼吸器に疾患を持っている犬も体調が急変する可能性があるため、そのような子がケンネルコフにかかってしまった場合は注意深く見守ってあげましょう。

◆ケンネルコフの治療法

先ほどもご説明しましたが、ケンネルコフは通常ですと1週間~10日程で回復するため、ほとんどは自然治癒で大丈夫です。咳や熱などの症状が悪化してしまわないように安静にしてあげ、充分な栄養をとることが大切です。

しかし、咳が酷く気になる場合や合併症などで重症化してしまった場合などには、病院に連れて行き診察してもらいましょう。

その際、抗生剤や鎮咳剤などの薬が出される場合がありますので、獣医師さんの指示に従いきちんと飲ませてあげてくださいね。


犬に人用の風邪薬を与えてもいいの?

さて、ここで良く聞かれることが、「犬に人用の薬って飲ませても大丈夫かどうか」です。

◆自己判断で人間用の薬を与えるのは絶対にNG!

簡単に答えをお教えすると、答えは「どちらとも言えないが、自分で勝手に与えるのは危険」です。なぜなら、「動物病院でも人用の薬を処方する場合がある」からです。

というのも、実は犬専用の薬は日本ではまだ少なく、海外製の薬だと高価なため、獣医師さんも人用の薬で代用することがあるからです。

「獣医師さんが人用の薬を処方しているなら、自分で与えても大丈夫じゃないか」と思いましたか?それは間違いです。

実は、人用の薬の成分の中には、犬にとって命の危険を伴うほど重篤な危険を及ぼす可能性のある成分が入っている物もあるのです。

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愛犬に風邪のような症状が見られたり、どこか痛そうにしていたりすると、とにかく何とかしてあげたくて、人間の薬をあげようと考える飼い主さんもいます。風邪薬や痛み止めは市販薬もあり、手軽に飲んでいるので、なおさらです。しかし、根本的に違う動物である犬と人間。実は、人間の薬を安易に犬に与えるのは、非常に危険なことです。なぜ犬に人間の薬を与えてはいけないのか、危険な薬・サプリメントをまとめました。

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犬にとって危険な人間用風邪薬の成分

それでは、犬にとって危険な成分の代表的なものをご紹介していきましょう。

  • イブプロフェン
  • エフェドリン
  • アセトアミノフェン

この3つはなぜ犬にとって特に良くないのでしょう。

◆イブプロフェン

イブプロフェンは、鎮痛剤や解熱剤に主に良く使われている成分です。非ステロイド性抗生炎症剤の成分の一つで、ステロイド剤が使われていません。イブプロフェンという名前は良く耳にしますよね。

人間にとってはなじみ深いこちらの成分も、犬にとっては危険なものなのです。

症状としては、嘔吐、下痢などの胃腸障害です。こちらのイブプロフェンは、エフェドリン、アセトアミノフェンに比べても特に犬にとって危険なため、絶対に与えないようにしましょう。

◆エフェドリン

エフェドリンは、風邪薬などの感冒剤に配合されている成分です。

こちらの薬を与えてしまうと、錯乱状態、瞳孔の開き、頻脈、頭を振る、異常行動などの症状が出る可能性があります。この症状、何かあの症状に似ていますよね。そう、「覚せい剤」です。

それもそのはず、実はこちらのエフェドリンは、覚せい剤の製造にも使われるそうです。人用の薬に含まれるくらいの分量ならば人間が飲んでもなんの問題もありませんが、身体の大きさや構造の違う犬に間違って与えてしまうとこのように危険な症状が出てしまいます。

「以前獣医師で処方された薬の成分のなかに、エフェドリンが入っていたことがある!」という方もいると思いますが、獣医師さんはその犬に見合った薬の成分の量をきちんと計算した上で、危険にならない量を処方していますので、安心してください。

こちらのエフェドリンも自分の安易な考えでは絶対に犬に与えないように気を付けてくださいね。

◆アセトアミノフェン

アセトアミノフェンは、鎮痛剤や解熱剤に使われています。

アセトアミノフェンは人間が飲む分にはほとんど胃に負担がなく、胃にやさしいといわれていますが、犬にとっては1錠で最悪死亡してしまうほど危険な成分なのです。

以上3つの主に危険な成分をご紹介しましたが、いかがでしたか?このように意外と身近なところにあり、私たち人間がいつも使用している薬に含まれていましたよね。

◆愛犬へ与える薬は獣医師から処方されたもののみ

ほとんどの方はご自分の愛犬が辛そうな姿をかわいそうに思い、愛犬への愛情から人用の薬を与えてしまいがちです。

しかし、獣医師さんの診察を受けずに人用の薬を与えてしまったがために最悪の事態になってしまった、というケースにならないためにも、しっかりと動物病院を受診して獣医師さんに処方してもらいましょうね。


犬の風邪「ケンネルコフ」に関するまとめ

犬も命ある生き物ですから、先ほどご紹介したようにケンネルコフなどの風邪にかかる事もあります。その際の飼主さんの正しい処置が愛犬の命を救うカギとなります。

大切な愛犬といつまでもずっと健康に過ごしていくためにも絶対に自己判断をせずに、必ず専門の知識を持つ獣医師さんのいる動物病院に薬を処方してもらってくださいね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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ちょば

ちょば

わんちゃん大好き人間です。動物の専門学校にて様々な資格取得後トリマーやペットショップの店長を経験しました。たくさんの方に楽しいワンワンライフを送っていただくため、持てる知識と経験をフルパワーで提供していきたいと思います。

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