【獣医師監修】胆嚢炎(たんのうえん)ってどんな病気?治療法、予防法と胆嚢の病気

2021.01.20

【獣医師監修】胆嚢炎(たんのうえん)ってどんな病気?治療法、予防法と胆嚢の病気

胆嚢炎という病気をご存知でしょうか?胆嚢という臓器の壁に炎症が起こる病気で、主に細菌感染が原因です。胆嚢は、肝臓の近くにある小さな臓器で、肝臓から分泌される胆汁を濃縮して貯めておく役割を果たしています。胆嚢炎の初期は症状が見られず、気づいた時には重症化して他の病気に進行していることがあります。ここでは、犬の胆嚢炎について、治療法や予防法などを、関係する胆嚢の病気と併せてご紹介します。

犬の胆嚢炎とはどんな病気なのか

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◆胆嚢とは

胆嚢(たんのう)は、肝臓の近くにある小さな臓器で、肝管という管で肝臓とつながっています。
胆嚢の役割は、肝臓から分泌される胆汁を濃縮して貯蔵しておくことです。
胆汁には胆汁酸、胆汁色素(ビリルビン)、コレステロールなどが含まれ、脂肪を乳化させて、腸が栄養を吸収しやすくする働きがあります。
食事の刺激で分泌される因子が胆嚢を収縮させると、胆汁は総胆管を通り、十二指腸内に分泌されます。

◆胆嚢炎とは

胆嚢炎は、胆嚢の壁が炎症を起こす病気です。
胆嚢炎により胆汁が変質して結晶化したり泥状になったりすると、胆嚢内に蓄積して胆石症や胆泥症といった病気になります。


胆嚢炎の原因

胆嚢炎の原因として多いのは、細菌感染です。
体力や免疫機能が低下すると、腸内細菌が胆嚢へ逆流することがあり、細菌感染に繋がります。
また、肝炎や腸炎、胆管炎、急性膵炎からの細菌感染が原因となることも多いです。
胆石が胆嚢の壁を傷つけて、炎症を起こすこともあります。
胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)で、胆嚢内にゼリー状の粘液(ムチン)が限界量まで溜まった結果として起こることもあります。
胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢内にムチンが過剰に溜まって、胆嚢がパンパンに拡張した状態になり、胆汁の分泌障害や破裂を起こす病気です。
甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症といった内分泌疾患、脂質代謝異常などの基礎疾患も発症要因となります。


胆嚢炎の症状

◆症状

胆嚢炎を含む胆嚢の病気は、初期症状がほとんどなく、進行した場合に、元気がない、食欲の低下、嘔吐、腹痛などの症状が見られることがあります。
さらに悪化すると、黄疸が現れます。
膵臓が炎症を起こす膵炎と似ている傾向があります。
胆嚢の炎症がひどくなって壊死を起こすと、胆嚢が破裂することもあり(胆嚢破裂)、胆汁が他の部位に広がってしまうことがあります。
胆嚢破裂は重篤化すると、腹膜炎を起こす恐れがあり、命にかかわることもあります。

◆検査方法

問診や触診で胆嚢炎が疑われる場合、超音波検査と血液検査を行います。
関連する血液項目は、T-Bil、T-cho、GPT、GGT、ALP、TGです。

    ・T-Bii:総ビリルビンのことで、ビリルビンは赤血球中のヘモグロビンが壊れると発生し、肝疾患や黄疸がある時に高くなる。
    ・T-cho:総コレステロールのことで、肝臓でのコレステロール合成や栄養状態を反映し、高脂血症で数値が高くなる。
    ・GPT(ALT):アラニンアミノトランスフェラーゼという肝臓に含まれる酵素で、肝臓に障害があると数値が上がる。
    ・GGT(γ-GT):胆管上皮細胞などに存在する酵素で、肝臓に障害がある時に上昇する。
    ・ALP:肝臓や胆道、骨などに含まれるアルカリ性ホスファターゼのことで、これらの臓器が障害を受けると数値が高くなる。
    ・TG:中性脂肪のことで、食後に増加し、エネルギー源として蓄えられる。
    ・TG:高脂血症で数値が高くなる。

これらと、体のどこかに炎症が起きると数値が高くなるCRPなどの数値の上昇具合とを併せて、総合的に診断します。


胆嚢炎の治療法

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◆治療法

初期は、内科的治療を行います。
抗生剤や消炎剤で炎症を止めて、細菌感染を抑えていきます。
胆汁の排出を促す利胆剤(ウルソ:ウルソデオキシコール酸)なども使います。
軽度の場合、高タンパク・低脂肪で消化の良い食事を与える食事療法を行うこともあります。
原因となる病気(原疾患)がある場合や肝障害を伴っている場合には、それらの治療も必要です。
胆泥が溜まって胆嚢が大きくなっていたり、胆嚢壁が脆く破裂しやすい状態になったりしている場合や総胆管閉塞の危険性が高い場合には、総胆管の洗浄や胆嚢摘出手術などの開腹手術を行うこともあります。

◆費用

胆嚢摘出手術が必要になった場合、費用は30,000~75,000円かかります。

◆死亡率

獣医領域では現在でも診断基準、標準治療もなく、胆嚢炎の死亡率のデータはありません。
ただし、胆嚢破裂から胆汁性腹膜炎になると、周術期死亡率は40%を越えるという報告があります。
周術期死亡とは、手術後1ヶ月以内の死亡のことです。

    


胆嚢炎の予防法

◆食事

低たんぱく、高炭水化物の食事が胆嚢炎の原因になることが実証されています。
胆嚢炎の予防には、栄養バランスの取れた食事を適量与えることが、大切です。
良質なたんぱく質を十分に含み、低脂肪で、消化の良いフードを与えましょう。
特に、高カロリー、高脂肪の食べ物には注意が必要です。
ジャーキーなどのおやつのあげすぎに注意し、人間の食べ物をあげることはやめましょう。

◆運動

適度な運動を行うことも、胆嚢炎の予防に必要です。
毎日のお散歩を欠かさないようにしましょう。

◆定期的な健康診断

胆嚢は、肝臓と同じく、症状が出にくい臓器で「沈黙の臓器」とも言われます。
胆嚢炎を含む胆嚢の病気は、初期は無症状で進行していくことが多く、早期発見がカギとなります。
現在は、超音波検査と生化学検査が進歩し、胆嚢の病気を早期に発見することが可能です。
定期的な健康診断を受けることも、予防法の一つと言えます。
特に中高齢の犬は、年1~2回、定期的に検査することをおすすめします。

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胆嚢炎を起こしやすい犬種

胆嚢炎を含む胆嚢の病気を起こしやすい犬種は、遺伝的に高脂血症の好発犬種であるシェットランドシープドッグ、ミニチュアシュナウザーです。
他に、コッカースパニエル、ビーグル、シーズー、トイプードルも注意が必要な犬種です。
また、胆泥症は高齢犬の半数以上で見られ、ミニチュアダックスフントやチワワ、ポメラニアン、トイプードル、ヨークシャテリアなどが好発犬種とされます。
胆嚢粘液嚢腫も中高齢犬に多く、ポメラニアン、チワワ、柴犬、ミニチュアシュナウザー、シェットランドシープドッグ、ミニチュアダックスフントなどが好発犬種です。


その他に気を付けるべき内臓疾患

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胆嚢の病気の他に、気づきにくく気をつけたい内蔵の病気をご紹介します。

◆肺の腫瘍

肺に腫瘍ができる原発性肺腫瘍と、肺以外にできた腫瘍が転移してできる転移性肺腫瘍があります。
肺は、容積の70%ほどをガンが占めるまで目立った症状が現れないと言われています。
悪化すると咳が出るようになりますが、症状が出てきたときには、かなり進行してしまっています。

◆心臓病

心臓病には、生まれつき心臓に何らかの奇形のある場合(心奇形)や、加齢による心不全、遺伝とストレスによる心筋症、感染による心内膜炎、不整脈など様々な病気があります。
中期以降の心不全では、疲れやすい、咳が出るなどの症状が見られ、症状が現れた時には病気が進行していると考えられます。

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◆肝臓の病気

様々な原因で炎症が起きる肝炎、慢性的な肝炎から起きる肝硬変など、様々な病気があります。
また、肝臓は腫瘍もできやすい臓器です。
肝臓も「沈黙の臓器」と言われ、異常が起こっても分かりにくいです。
症状は、状態によって異なりますが、食欲不振や嘔吐などが見られて調べることで発見されることが多いです。

◆膀胱炎

膀胱炎には、急性と慢性があります。
慢性膀胱炎は、排尿時の痛みなどに犬が慣れてしまって、飼い主さんが見逃してしまいがちな病気です。
血尿など、オシッコが明らかに普段と異なる場合は気づきやすいですが、見た目は普通のオシッコなのに、調べると細菌や結石が見つかるということもあります。

◆たんぱく漏出性腸症

腸管からタンパク質が漏れ出してしまい、体内のタンパク質が異常に失われる病気です。
免疫介在性の場合や、腫瘍、慢性腸炎など腸管に何らかの障害がある場合があります。
近年多いと言われていて、注意が必要な病気です。
重度にならないと症状が出ないため、気づいた時には、腹水が溜まって命にかかわる状態のこともあります。

◆大腸ポリープ・大腸がん

大腸ポリープは、何らかの原因で台帳に突起ができる病気で、基本的に良性のものです。
悪性の場合が、大腸がんです。
悪化すると下血が続き、出血がひどい場合には貧血を起こすこともあります。
主な症状は、毎日の血便で、うんちに鮮血が付着します。
外で排泄する子の場合、見落としがちになるので、注意が必要です。

◆血栓症

血管内に血の塊が詰まることで、様々な障害が起きます。
心臓性、悪性腫瘍、副腎皮質機能亢進症、膵炎、甲状腺機能低下症などが原因となります。
血栓のできている場所によって、症状は異なります。
脳にできると脳梗塞になり、肺動脈に詰まった場合には即死します。
腹部大動脈に詰まると、足が壊死を起こし、命にかかわります。


まとめ

胆嚢は「沈黙の臓器」とも言われ、病気があっても症状が出にくい臓器です。
胆嚢炎をはじめとする胆嚢の病気も、初期は無症状のため、気づきにくいです。
治療は、軽度であれば内服薬による内科的治療や食事療法を行いますが、重症化すると胆嚢摘出手術が必要になることもあります。
軽症のうちに早期発見することが重要となるので、日ごろから愛犬の様子を観察し、わずかな変化に気づいてあげられるようにしましょう。
超音波検査や血液検査で発見することができます。
中高齢になると発症しやすいため、定期的な健康診断を受けましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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