猫の便秘の原因
まずは、猫の便秘の原因から見ていきましょう。
◆水分不足
水分が不足すると、大腸で水分が吸収された後の便が硬くなり、便秘になる可能性が高まります。
猫は、もともとあまり積極的に水を飲まない動物なので、水分不足から便秘になるケースは少なくありません。
◆毛玉
猫は、グルーミングで体をきれいに保っていますが、この時毛を飲み込んでしまいます。これが体内で毛玉になって、便秘に拍車をかける面があります。
◆トイレの環境
猫はきれい好きで、トイレが汚れていると排せつを我慢してしまうことがあります。特に多頭飼育の場合は、頭数+1個のトイレを用意してあげましょう。
また、猫砂やトイレの形状、設置場所によっても、トイレを我慢することがあります。
便秘の兆候が見られたら、トイレの環境を見直してみましょう。
◆ストレス
猫は自由に見えますが、非常に繊細でストレスに弱い面があります。
引っ越しや家族の増減など環境の変化によって強いストレスを受け、便秘の原因となっているかもしれません。部屋の模様替えだけでもストレスを感じる子もいるので、気をつけてあげてくださいね。
◆運動不足
運動不足で腹筋が弱くなっていると、便を排せつする力も弱くなり、便秘になりやすいです。
◆病気
腎臓病や、腫瘍による腸閉塞のほか、命に関わる病気が隠れている場合もあります。
腎臓病などの病気にかかっている場合、症状の一つとして便秘になることがあります。これらの内臓の病気は、全身の脱水症状を引き起こします。そのため、水分の不足から便が硬くなって、排出しにくくなることから便秘になることがあります。
足や腰の骨、骨盤、関節や筋肉、神経などに問題がある場合には、思うように踏ん張ることができず、便秘を引き起こすことがあるといわれています。
腫瘍や、誤飲した異物などで腸が塞がり(腸閉塞)、うんちが通過できなくなっている場合も考えられます。
また、腸管に分布する神経の異常から、便秘になるケースもあります。
便秘になりやすい猫はいる?
しっぽが短いことで有名な「マンクス」という猫種は、しっぽや腰を構成する骨の変形が強い場合に、神経を圧迫して排便をする力が弱くなり、便秘になりやすいといわれています。
また、腰椎の少ない猫、筋力の低下がみられるシニア猫も、便秘になりやすい傾向があります。
人間では、男性より女性に便秘になる人が多いといわれますが、猫では、便秘のなりやすさに性差はありません。
猫の便秘を解消するには
◆飲水量を増やす
水分不足からくる便秘を解消するために、新鮮な水を常に用意しておき、飲水量を増やしましょう。
水を入れる器をかえたり、水を置く場所を増やしたりすることで、水を飲む量が増えることがあります。また、流水やぬるま湯を好む子もいるので、愛猫の好みの水を用意してあげるといいですね。
それでも飲水量が増えない場合には、食事にウェットフードを取り入れたり、スープ状のオヤツをあげたりして、食事からとる水分を増やしてあげるとよいでしょう。
◆運動不足の解消
猫は、平面の運動より、上下運動を好みます。
キャットタワーを設置したり、家具の配置を工夫したりして、猫が立体的に運動できる環境を整えるのも有効です。
冬場は特に運動量が減りがちなので、飼い主さんが遊びに誘ってあげるのもよいでしょう。愛猫とのコミュニケーションも取れるので、おすすめです。
◆食事の改善
食物繊維は、少量であれば便秘の解消に効果が期待できますが、多すぎると便秘の要因にもなります。カボチャやサツマイモなどを茹でてペースト状にしたものを、総合栄養食に少しだけトッピングしてあげるとよいでしょう。
便秘解消に、高繊維質のフードを与えることも効果がある場合があります。市販されている高繊維質の総合栄養食や、食物繊維の多い療法食を検討してもよいでしょう。
ただし、便秘のタイプによっては高繊維質のフードが逆効果になる場合もあり、これらのフードを与える前には、獣医師さんに相談するようにしてください。特に、療法食は獣医師の処方で与えるものなので、自己判断で与えることはやめておきましょう。
また、フードを変えたら便秘になったという場合には、元のフードに戻すことで便秘が解消されることがあります。
◆こまめなブラッシング
飲み込んだ毛でできた毛玉で便が詰まりがちな場合には、こまめなブラッシングが効果的です。特に長毛種の猫は毛が詰まりやすいので、ブラッシングが大切です。
◆乳酸菌を与える
乳酸菌やオリゴ糖は、胃腸の働きをよくする効果があります。これらの成分がバランスよく入ったサプリメントを与えると、便秘解消の効果が期待できます。
ただし、上述のように腫瘍などの重大な病気が原因の場合もあるので、一度、動物病院を受診して、獣医師さんの指導を受けるようにしましょう。
乳酸菌を含めたサプリメントは、便秘の解消というより、便秘にならないために健康な時に予防目的で与えるほうがよいかもしれません。
また、人用のものではなく、ペット用のものを、用量を守って与えてくださいね。
◆オリーブオイルを与える
オリーブオイルは、小腸や大腸で吸収されにくく、潤滑油の働きをして排便をスムーズにしてくれる効果が期待できます。
一方で、下痢を起こす子や、肥満につながる場合もあるので、与える前に獣医師さんに相談しましょう。
◆人間の薬は与えない
人間用の便秘薬を与えたり、浣腸を行ったりすることは、猫の命に関わるので絶対にやめましょう。
特に浣腸は、重度の脱水を引き起こす可能性や、腸が破れて死亡することもあるので、たとえ赤ちゃん用の浣腸でも使用してはいけません。
必ず、獣医師さんの指導に従ってください。
◆おなかをマッサージする
人でも、便秘気味の時、お腹をマッサージすることでお通じがよくなることがありますね。猫でも、お腹のマッサージで、腸の動きや血流が改善して、便秘解消の効果を期待できます。
マッサージは愛猫とのスキンシップにもなるので、積極的に取り入れたい解消法と言えるでしょう。
猫の便秘マッサージのやり方
ここでは、猫のための便秘解消マッサージのやり方をご紹介します。本格的なマッサージではなくても、猫ちゃんが気持ちよく感じる場所にやさしく触れるだけで、リラックス効果が得られますので、チャレンジしてみてくださいね。
猫ちゃんによっては、嫌がることもあるので無理はせず、最初は短時間から始めて、徐々に時間を長くしていきましょう。時間は1日、5分~10分程度で十分です。
◆マッサージ前に
まず、猫の様子を観察しましょう。嫌がる猫に、無理にマッサージをするのはNGです。
また、発熱や下痢、ひどい便秘など体調の悪い子の場合も、マッサージは控えてください。持病がある場合には、病気を悪化させることがあるので、事前に獣医師さんに相談しましょう。
猫の皮膚は薄いので、傷つけることがないよう、飼い主さんの爪は短く切っておきます。冷たい手で触ると、猫ちゃんがビックリしてしまうので、手をこすり合わせたり、お湯につけたりして、温めておきましょう。
◆マッサージのやり方
猫も飼い主さんも、リラックスした状態で始めましょう。
最初は、猫がくつろいでいるときに、頭をやさしく撫でます。気持ちよさそうにしていたら、前足、背中、しっぽ、後ろ足の順で、ゆっくりと優しく撫でていきましょう。
手を前後に動かしながら、脇腹をそっと優しく揉んであげます。お腹全体を揉むことで、腸を刺激することができます。
強い力で揉むと猫が嫌がることがあるので、あくまで優しく触れてあげましょう。
猫が十分にリラックスしたら、「の」の字を書くように、時計回りにお腹を優しく撫でます。
この時、抱っこを嫌がらない子であれば仰向けで、嫌がる子の場合は横向きで行うとよいでしょう。
◆便秘解消にはツボ押しも!
人と同じように、猫にもツボがあります。ここでは、便秘解消に効くとされるツボをご紹介します。
ツボ押しといっても、強く押すのではなく、優しく押さえてあげてくださいね。
★百会(ひゃくえ)
百会は、整腸作用や免疫力の向上に効果があるといわれています。
腰の横幅が一番広いところと背骨が交差するところに、指で押すと少しくぼんでいる場所があり、これが百会です。
人差し指で、5回ほど押すのを1セットとして、2~3セット行いましょう。
★神門(しんもん)
神門は、腸の働きをよくする作用のあるツボです。
前足のぽこっと出た部分のそばにあり、少し押すとへこむ部分です。
小さなツボなので、30秒ほど撫でるように優しく力をかけます。
猫の便秘が続く場合は病院へ
◆日ごろから排泄のチェックをする
便秘であるかどうかを判断するためには、日頃から愛猫の排せつのチェックをすることが大切です。
★何日排便がないと便秘?
健康な成猫であれば、平均で1日に1~2回うんちをします。一般には丸3日以上、排便がなければ便秘の可能性があり、5日以上になれば便秘と言われます。しかし、これには個体差もあるため、一概に「何日以上排便がなければ、便秘」とは言えないそうです。
日ごろの愛猫の排便の回数を把握しておけば、便秘の可能性を判断する目安になるでしょう。
★便秘の時のウンチは?
便秘であるかどうかの判断材料の一つが、うんちの状態です。毎日うんちが出ていても、下記のような便の場合には、便秘の可能性があります。
・コロコロした丸く短いウサギのうんちのような便や、細長い便
・水分が少なく、硬い便
・表面が乾燥している便
★健康なうんちを覚えておこう
逆に健康なうんちは、下記のようなうんちです。色は、普段食べているフードによって変わります。
・大人の人差し指ほどの太さがあり、長さも人差し指以上
・水分があるため、表面につやがある
・摘まむとフニュっと潰れる硬さ
★便秘を疑う猫の様子とは?
排せつ時の様子を観察することでも、便秘の可能性を知ることができます。こちらも、日ごろの愛猫の排せつの様子を知っておくことが大切です。
以下のような様子が見られたら、便秘が疑われるので要注意です。
・排便時に鳴く
・いつもより長く踏ん張っている
・うんちが終わっても、まだ出し切れていない様子があり、うんちの切れが悪い
・何回もトイレに行く
・うんちの後に嘔吐する
◆便秘だからと甘く見ない
人の便秘は、あまり重要に捉えられることがありませんが、猫の場合は、深刻な病気が隠れているケースや、「巨大結腸症」になって、最悪、死に至る場合もあるので、甘く見ることはできません。
【巨大結腸症】
巨大結腸症とは、結腸(直腸の手前の腸)に、硬いうんちが大量に溜まることで、結腸が異常に広がる病気です。慢性的な便秘を繰り返していると、巨大結腸症になる可能性が出てきます。
この病気になると、手術が必要になる場合もあり、対応が遅れると敗血症で命に関わることもあります。
◆便秘が続く場合には動物病院を受診する
上述のように、病気の症状として便秘になっている場合や、慢性的な便秘から巨大結腸症になる場合があるので、便秘が疑われる様子がある場合には、まず動物病院を受診しましょう。
◆便秘の治療
病院での治療としては、脱水が原因の場合、まず脱水の治療を行います。
食事の内容がよくない場合には療法食を処方されたり、便を柔らかくする薬を処方されたりする場合もあります。
状態がひどい場合には下剤を使うこともあり、直腸に手を入れて便を取り出す「摘便」を行うこともあります。
巨大結腸症になれば、手術が必要な場合もあるため、治療費が高額になることも。
まとめ
便秘の原因は水分不足や運動不足などの場合もありますが、重大な病気の症状であったり、慢性的になることで巨大結腸症になったりすることもあるので、軽く見ないようにしましょう。
便秘が続くと、食欲不振でぐったりしたり、嘔吐したりすることもあります。食事内容や飲水量の改善で効果がない場合には、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
マッサージやツボ押しで、腸を刺激し、血流を改善することで、便秘を予防したり解消したりする効果が期待できます。日頃のスキンシップを兼ねて、ぜひマッサージを取り入れてみてくださいね。
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