【獣医師監修】実は怖い猫の頻尿!何度もトイレに行く理由は?原因となる病気と予防

2021.10.24

【獣医師監修】実は怖い猫の頻尿!何度もトイレに行く理由は?原因となる病気と予防

愛猫が、頻繁にトイレに行っていませんか?その場合、排せつの様子をよくチェックする必要があります。もし、猫が頻繁にトイレに行くのに排せつをしなかったり、排せつの際に鳴き声をあげたりする場合には、何らかの病気が隠れているかもしれません。特に、おしっこをしない場合や尿量が少ない場合は、要注意です。今回は、猫の頻尿について、原因となる病気や予防法などをご紹介します。

猫が何度もトイレに行っている

トイレ中の猫

まず、愛猫が何度もトイレに行っている場合に考えられる理由をご紹介します。

◆トイレが汚れている

猫は、きれい好きな動物です。特に、汚れたトイレを使うことを嫌います。
そのため、トイレが汚れていると、何度もチェックに行っては、排せつせずに離れてしまうことも少なくありません。砂をかいたり臭いをかいだりしただけで離れるようなら、トイレが汚れているのかもしれません。
トイレの汚れをチェックして、砂を交換したりトイレを洗浄したりして、清潔に保ちましょう。トイレの数は、猫の頭数+1個が理想です。

◆トイレの環境が落ち着かない

猫にとって、排せつの時は非常に無防備な状態です。そのため、安心でき、落ち着いて排せつできるトイレ環境でなければ、排せつを我慢してしまいます。

◆思うように排泄ができない

トイレに入るのに排せつをしていない場合は、要注意です。息んでいるのに排泄できない、排せつするときに鳴くなどの場合には、排せつをしたいのに、思うようにできていない可能性があります。

◆尿の量が多い

尿の量が多いと、場合によってトイレの回数が多くなります。


猫の頻尿とは

排尿の回数が多いことを、「頻尿」と言います。ここでは、頻尿の定義や症状についてご紹介します。

◆1日何回以上なら頻尿?

排尿の回数が多く、かつ1回の尿量が少ない場合、頻尿であると判断した方がよいでしょう。
猫の排尿は、1日1回~4回程度です。子猫の場合、膀胱が小さく、尿を溜めておける量が少ないため、回数はもう少し多くなることがあります。
1日の排尿回数には個体差があるため、1日何回以上排尿があると頻尿という明確な基準はありません。正常な成猫の場合、排尿回数は多くても1日4回ほどなので、5回以上を目安とすることはできます。
ただし、普段1日に1回~2回しか排尿しない子であれば、3回~4回の場合でも頻尿である可能性があります。そのため、愛猫の日頃の排尿の回数や様子をチェックしておくことが大切です。

◆頻尿と多尿の違い

「多尿」とは、1日の排尿量が多いことを指します。排尿の回数が多い頻尿とは、異なる症状です。
尿量が多いため、場合によってはトイレの回数が多くなり、頻尿と間違えやすいです。頻尿の症状としては「1回の排尿量が少なく、排尿回数が多い」という場合が多いので、尿量についてもよくチェックしてみましょう。また、多尿になっている場合、多飲にもなっているので飲水量も併せて確認してみてください。
ちなみに、多尿の原因となる病気は、腎臓病糖尿病です。放置しておくことができない病気なので、気づいたら速やかに動物病院を受診しましょう。

◆頻尿の症状

頻尿の症状としては、排尿の回数が多くなるほか、下記のような様子や症状が見られることがあります。

□さっきもトイレに入っていたのに、また砂をかいている
□トイレの中で何度も方向を変える
□排尿の姿勢を取るのになかなか出ない
□しゃがんだまま息んでいるのに何も出てない
□数滴しか尿が出ないのに何度もトイレに行く
□排尿時に鳴き声を上げる
□血尿になる
□トイレ以外で粗相をする
□尿の色や臭いがいつもと違う
□生殖器や腹部を頻繁に舐める

これらの症状を見た場合、すぐに動物病院に相談してください。
何度も息む姿を見た場合、便秘と勘違いすることもありますが、便秘であったとしても、そのままにはしないようにしましょう。


猫の頻尿の原因

頻尿が生じている場合、膀胱や尿道に何らかの異常が起きていると考えられます。ここでは、頻尿の原因となる病気について解説していきます。

◆尿路結石

尿路とは、腎臓で作られた尿が排せつされるまでの経路のことで、腎臓、尿管、膀胱、尿道を指します。尿路結石は、尿路のどこかの場所に結石ができる病気です。
膀胱に結石ができる膀胱結石になると、結石になる前の細かい粒子(結晶)や結石が膀胱の粘膜を傷つけることで、頻尿や血尿といった症状が出ます。膀胱結石は、尿路結石の中でも最も起こりやすく、菌感染による膀胱炎や尿のpH値の偏りが原因です。
尿道にできる尿道結石は、オスの場合に特に危険な病気です。メスより尿道の細いオスでは、小さな結晶でも詰まりやすく、尿道閉塞から尿毒症になり、急性腎不全を起こして命に関わります。

◆膀胱炎

膀胱炎には、細菌性のものと原因不明の突発性のものがあります。猫の場合、突発性膀胱炎が多いと言われています。
細菌性の場合、膀胱に細菌が侵入することが原因です。結晶や結石によって膀胱の粘膜が傷つくことで、発症することもあります。特に、尿道の短いメスや免疫力の低下したシニア猫で起こりやすい病気です。
突発性の原因はよく分かっていませんが、ストレスやドライフード、肥満などが原因ではないかと推測されています。

◆尿道炎

尿道炎は、尿道で感染が起きて、炎症を起こす病気です。
尿が出るときに痛みを伴ったり、不快感や残尿感から何度もトイレに行ったりします。

◆膀胱腫瘍

猫の場合、膀胱で腫瘍が発生する頻度は低いです。しかし、まれに移行上皮癌と呼ばれる癌が発生することがあります。
腫瘍によって膀胱の容積が小さくなり、少ししか尿を溜めておけなくなるため、頻尿を引き起こすことがあります。また、膀胱を囲む上皮や筋肉が動きづらくなり、膀胱の収縮・拡張がうまくできず、少しずつしか排尿できなくなり、頻尿になることも。
癌ができると、頻尿の他に、元気消失や血尿、体重減少などが起きます。


猫の頻尿の治療

猫の頻尿の治療法は、原因となっている病気によって異なります。

◆尿路結石

結石には多数の種類がありますが、主に見られるのはリン酸アンモニウムマグネシウム(ストラバイト)とシュウ酸カルシウムの2種類です。その他には、尿酸塩、リン酸カルシウム、シスチン、シリカなどもありますが、あまり多くありません。
ストラバイトの場合、基本的にはフードを尿石用の療法食に変えることで溶かすことができます。尿酸塩やシスチンの場合も、同様です。結石が大きくなっている場合、手術による摘出が必要になります。
シュウ酸カルシウムの場合、療法食では溶かすことができず、基本的には手術で摘出します。ご飯を療法食に変えて、水分摂取量を増やすようにすることもありますが、あくまで予防的効果しかありません。
療法食は、獣医師の処方が必要なフードです。必ず、獣医師の指導の下で利用してください。

◆膀胱炎

細菌性か突発性かで、治療が異なります。
細菌性の場合、検査により感染している細菌・真菌を特定して、その菌に対して一番効果のある抗生物質や抗真菌剤を投与します。また、膀胱炎を引き起こす他の病気がある場合、その病気の治療を行います。
突発性の場合は、症状を和らげるための対症療法になり、痛み止めの処方が多いです。自宅で、ストレスの原因となるものを取り除いたり、飲水量を増やす工夫をしたりすることも必要になります。

◆膀胱腫瘍

腫瘍の進行具合や全身状態によって、腫瘍を取り除く外科手術、抗がん剤などを検討します。


猫の頻尿を予防するには

猫とトイレ

頻尿は、前述のような病気が原因なので、予防が大切です。また、膀胱炎は再発しやすいので、治癒した後の再発予防も心がけましょう。

◆トイレ環境は適切に

トイレが汚れていたり、置き場所がよくなかったりして、排せつを我慢すると膀胱炎などの病気になりやすいです。トイレは、常に清潔に保ち、適切な場所に置きましょう。
トイレの場所として適切なのは、静かで、臭いがこもらないように風通しがよく、餌場からは離れたところです。また、排せつのチェックができるよう、目の行き届く場所がおすすめです。
トイレのタイプや猫砂の種類にも、気をつけてあげましょう。猫それぞれに、砂やトイレの形状に対する好みは異なります。愛猫にトイレを我慢している様子があれば、トイレのタイプや形状、砂の種類をいくつか用意して、好みのものを探してみるのも一つの方法です。

◆排泄物をチェックする

頻尿になると、排尿の回数が増え、尿量が少なくなります。固まる砂を使っている場合、塊の大きさからおよその尿量を知ることができます。日頃から塊の大きさを覚えておき、尿量の増減を把握しましょう。システムトイレの場合、尿量を知ることはできませんが、最近は、尿量を量るトイレやトイレの下に置くボードなどもあるので、導入を検討してみてもよいでしょう。
また、頻尿には血尿や臭いの変化が伴うことが多く、結石が原因の場合には尿がキラキラしています。尿の色や臭いなども、日頃からチェックしておきましょう。
さらに、排せつ時の様子も見ておくことをおすすめします。排尿の姿勢を取ってからスムーズに尿が出ているかなども見てあげてください。
排せつ物は、猫の健康のバロメーターです。こまめにチェックすることで、頻尿に限らず、体調の変化を知ることができ、病気の早期発見・早期治療につながります。

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◆適切な食事を与える

頻尿の原因の一つである結石は、食事内容によって生じることがあります。
総合栄養食を与えていれば、栄養が偏ることはないと言っていいでしょう。しかし、ドライフードばかりをあげていると、水分不足になる場合があります。よく水を飲む猫であれば問題はありませんが、あまり水を飲まない猫の場合には、ウェットフードを取り入れるなど摂取する水分量を増やす工夫をしてあげましょう。
また、おやつを与えすぎないことも大切です。特に、鰹節などミネラルを多く含むものは、あげすぎないようにしましょう。

◆動物病院での健康診断

定期的に尿検査をしておくことで、症状が出る前に頻尿の原因となる病気を発見することができます。
成猫は1年に1回、シニア期に入った猫は1年に2回程度の健康診断を受けることをおすすめします。

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まとめ

頻尿とは、排尿の回数が多くなり、1回の尿量が少量になった状態を言い、原因となる病気には、尿路結石や膀胱炎といった下部尿路疾患や、まれですが腫瘍などがあります。
トイレ環境が適切でないなどの原因で排せつを我慢することで、膀胱炎などの病気を引き起こすこともあるので、何度もトイレに行く様子があれば、トイレ環境などを見直すことをおすすめします。
頻尿になった場合、血尿や尿の色・臭いの変化などが伴うので、日頃から排せつ物をチェックする習慣をつけ、わずかな変化に気づけるようにしておきましょう。
何度もトイレに行くのに排せつをしない場合、尿道閉塞や便秘の可能性があります。尿道閉塞は短時間で命に関わる場合がありますし、便秘であっても様子見は禁物です。速やかに、動物病院を受診してください。
定期的に健康診断を受けることで、早期発見が可能です。1年に1~2回の健康診断を受けて、猫ちゃんの健康を守ってあげましょう。

●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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