猫の宿命?腎臓病になりやすい理由とは?検査・治療と適したフード

2022.02.14

猫の宿命?腎臓病になりやすい理由とは?検査・治療と適したフード

腎臓病(慢性腎不全)は、猫の死因として癌と並んで多く挙げられる病気です。10歳以上の高齢猫の30%以上で、腎臓病が見られるという報告もあります。腎臓病は発症すると、じわじわと進行していき、発見が遅れがちです。そして、一度失われた腎機能は回復しないため、完治は困難です。今回は、猫の飼い主さんが気をつけておきたい腎臓病について、なりやすい理由から適したフードまで網羅的にご紹介します。

気を付けたい猫の腎臓病

寝ている猫

はじめに、猫の腎臓病について詳細に解説します。

◆腎臓病とは

猫が腎臓病になりやすいことは、飼い主さんの多くが知っていることでしょう。癌と並び、猫の死因のトップとされ、ある調査結果によると、飼い猫全体の2割以上が腎臓病で命を落としているそうです。特に、10歳以上のシニア猫の有病率は30%以上と言われています。
腎臓病には、慢性腎不全と急性腎不全があり、猫で問題になるのは主に慢性腎不全です。
慢性腎不全とは、腎臓の機能が徐々に衰えて機能しなくなる病気で、年齢が高くなるにつれ罹りやすくなります。

◆腎臓の働き

腎臓は、背中側に左右2つあります。
その働きは、体内の水分量などの調整、ホルモンの分泌や調整など様々です。中でも重要なのは、尿を作って老廃物を体外に排出する働きです。
腎臓は、血液中の身体に必要なものと不要なもの(老廃物)を分別して、必要な栄養素を体に戻し、老廃物を尿として体外に排出しています。この働きによって、血液は常にきれいな状態に保たれているのです。
腎臓が機能しなくなるということは、老廃物をろ過する機能が失われるということです。このため、毒素が身体に回り、内臓にダメージを与えてしまいます(尿毒症)。

◆慢性腎不全と急性腎不全

腎不全とは、腎臓が壊れて機能しなくなった状態を指します。
上述の通り、慢性腎不全は腎臓の機能が長い期間をかけて徐々に低下していく病気です。初期に兆候があることはまれであり、症状が現れた時には機能の70%以上が失われていることもあります。また、不可逆性であるため、一度失われた機能は元に戻すことができません。
猫は、体の不調や痛みを隠してしまう動物なので、血液検査などで異常が出たり症状が見られたりする頃には、病気がかなり進行している場合が多くあります。
慢性腎不全の原因は、加齢に伴う炎症や、感染、酸化などで腎臓がダメージを受けることとされています。
一方、急性腎不全は原因がはっきりと特定できる場合が多く、また症状が現れてからの経過時間が短いものを指します。腎毒性のある食品や薬品を摂取したことや、尿結石などで尿が出せなくなったことが主な原因となります。
慢性腎不全は完治が難しいですが、急性腎不全は早期の適切な治療で回復が可能です。ただし、早期に完治できなかった場合に慢性腎不全に進行するケースが多く見られます。

◆なぜ猫は腎臓病になりやすい?

では、何故、猫は腎臓病になりやすいのでしょうか?
腎臓の皮質部分には、基本的な機能単位である「ネフロン」があります。ネフロンは、腎小体とそれに続く1本の尿細管のことです。
猫の祖先は水の少ない砂漠に生息していて、尿を濃縮する特性を持っています。猫にもこれが受け継がれており、腎臓に負担がかかりやすいです。また、ネフロンの構造や尿管の細さもあり、他の動物に比べて腎臓病を起こしやすいとされています。ただ、実際のところはよく分かっていません。

◆腎不全になりやすい猫

一般的に、8歳以上の猫は腎臓の機能が衰え始める傾向にあり、腎不全になりやすいと言われています。
また、下記のような猫も、腎不全になりやすい傾向があるとされます。

□尿石症にかかったことのある猫
□遺伝的に腎臓の発達が悪い猫
□高血圧の猫
□ウイルス感染症に罹っている猫
□自己免疫疾患を患っている猫
□急性腎不全に罹ったことがある猫

この他、ペルシャ、アビシニアンなどの猫種では、遺伝する腎疾患の存在が報告されています。しかし、どの猫種でも発症するリスクがあるため、十分な注意が必要です。

◆慢性腎不全の症状

前述の通り、初期(ステージ1)に兆候があるのはまれです。この段階で、腎機能は33%程度に低下しています。
見た目は普段通りで元気・食欲もあり、血液検査も異常はありませんが、尿検査で異常が見られることがあります。
病気が進行してステージ2になると、多飲多尿が見られるようになります。急に普段の1.5倍以上の水を飲んだり、尿の量・回数が普段の2倍以上になったりします。
その他の症状としては、以下のようなものがあります。

□嘔吐
□食欲不振
□体重の減少
□毛艶がなくなる
□尿が薄くなる
□尿のニオイがあまりしなくなる

これらの症状は、腎機能が25%ほどに低下して初めて現れます。
さらに進行して(ステージ3)、腎機能が著しく低下すると、老廃物や有害物質の排出ができなくなり、尿毒症が進みます。血中に尿毒素が入り込み、口や胃の中が荒れ、口内炎や胃炎になりやすくなります。
下記のような症状が見られ、飼い主さんはこの段階で異常に気付くことが多いです。

□口臭がひどくなる
□食欲が全くなくなる
□激しい嘔吐を繰り返す

この段階では、腎機能は10%程度まで低下してしまいます。
ステージ4では、尿毒症が進み、腎機能は5%まで低下してしまい、積極的に治療しなければ命を落とすことがあります。


猫の腎臓病の検査

ここでは、腎機能を調べるために必要な検査についてご紹介します。
定期的な検査を行えば、早期発見できることもあります。早期発見できれば、進行を遅らせるような治療を行うことができます。

◆尿検査

尿の色や尿比重、ウロビリノーゲン、ビリルビンなどの値から腎機能が分かります。
ビリルビンは胆汁の色素成分で、腸で分解されるとウロビリノーゲンに変わります。ウロビリノーゲンのうち、尿に出てきたものが尿ウロビリノーゲンです。

◆血液検査

血液検査では、尿素窒素とクレアチニンの数値を見ます。

☆尿素窒素(BUN)

タンパク質の老廃物の値です。
老廃物は、健康であれば尿とともに排出されますが、腎機能が低下すると排出されず、血中に溜まります。
猫の場合の正常範囲は17.6~32.8mg/dlです。これより高い場合に、腎臓疾患の可能性が考えられます。

☆クレアチニン(Cre)

筋肉を使った時にできる老廃物の値です。
こちらも、腎機能が落ちると、排出されずに血中に溜まります。
猫の場合の正常範囲は、0.80~1.80mg/dlです。これより高い場合に、腎臓疾患の可能性が考えられます。
ステージ1では<1.6mg/dl、ステージ2では1.6~2.8mg/dl、ステージ3では2.9~5.0mg/dl、ステージ4になると>5.0となります。

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◆X線・エコー検査

腎臓の大きさや形、石灰の沈着や結石の有無などを確認することもあります。


猫の腎臓病の治療

では、慢性腎不全と診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか?

◆療法食を使った治療になる

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腎機能を長持ちさせて、病気の進行を遅らせることが治療の中心となります。
基本は食餌療法で、獣医師の指導の下、低タンパク質・低リンの「療法食」を与えます。
中期になると、腎臓の負担を軽減して症状を緩和させるために、食事療法を継続しながら水分補給をします。ウェットフードを食べる子なら、水分補給を兼ねてウェットフードを利用しても良いでしょう。脱水症状が軽い場合には、効率的に体に吸収されやすいペット用補水液を与えることもあります。
口から飲めない場合には、皮下輸液で脱水症状を緩和します。皮下輸液の頻度は、月2回~毎日と猫の状態によって異なり、獣医師さんの指導の下で飼い主さんが自宅で行うこともあります。
猫の年齢や病気の進行具合によっては、慢性腎臓病の治療薬を投与するケースもあります。また、老廃物や毒素を排出させる活性炭や、高血圧や貧血などの症状の軽減を目的とする薬を処方されることもあります。
さらに病状が悪化し、後期に差し掛かると、栄養チューブの検討も必要になります。


猫の腎臓病用のフードとは

ごはんを食べる猫たち

ここでは、腎臓病になってしまった場合と、予防したい場合のキャットフードについてご紹介します。

◆腎臓病になってしまった子

療法食は、老廃物が血中に増えるのを防いで、腎不全の悪化を遅らせるよう栄養を調整したフードです。自宅で作ることは難しいので、動物病院で購入できる療法食を利用しましょう。
市販のキャットフードの中には、「腎臓ケア」などの記載のある総合栄養食がありますが、これらは健康な猫向けの予防食なので、食事療法では使いません。必ず、獣医師の指導の下、療法食を与えてください。
療法食は、低タンパク質であるだけでなく、腎臓へのケアのため、リン酸塩(PO4)やナトリウム(Na)の制限、ビタミンB群の添加、カロリー密度の上昇、可溶性繊維やω-3脂肪酸・抗酸化物質の添加、また猫ではカリウム(K)が添加されていることも多いです。
フードの切り替えには、1~4週間かけ、徐々に療法食の割合を増やしていきます。

【リン】

リンは、骨や歯、細胞膜を作るために必要な栄養素ですが、体内に溜まると腎不全を悪化させる原因となります。リンを制限した食事を与えた場合、3倍長生きしたというデータがペットフードメーカーから出されています。
リンは、0.3~0.6%の割合に減らします。

【タンパク質】

猫はもともと肉食動物なので、タンパク質の摂取は必要不可欠ですが、タンパク質は分解されると窒素性老廃物と呼ばれる毒素を作り出し、腎機能が低下している場合には注意が必要です。
タンパク質の量は、28~35%まで減らすことが推奨されます。

【脂肪】

一般に食欲が低下するため、少量で多くのエネルギーを得られる脂肪は大切な栄養素です。
また、脂肪を分解してできる脂肪酸であるEPAやDHAは、腎臓の血流を改善する働きがあります。

◆腎臓病を予防したい子

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これといった予防法はなく、規則正しい生活を送っている猫でも腎臓病になることがあります。しかし、良質な総合栄養食と新鮮な水を摂って、おやつは控えめにすることは大切です。
予防のためのフードとしては、やはり腎臓に負担をかけない総合栄養食を選ぶと良いでしょう。
負担をかけないフードの特徴は、下記のとおりです。

□リンの量が控えめ
□ω-3脂肪酸が豊富
□便通を整える効果がある
□低タンパク質
□マグネシウムが控えめ
□ナトリウムを抑えている

また、上述の通り、尿石症になったことがある猫は慢性腎不全になりやすい傾向があるので、尿石症の予防に配慮したキャットフードは慢性腎不全のリスクを減らすことが期待できます。下部尿路疾患に配慮したフードなどが良いかもしれません。特に、去勢後のオス猫は尿石症になりやすいため、対応したフードを与えることをおすすめします。

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まとめ

猫は、祖先が水の少ない砂漠地帯に生息していたため、尿の量が少なく濃縮されていると考えられています。このため、腎臓にかかる負担が大きいとされ、他の動物より腎疾患になりやすいと言われています。
猫で問題になる腎疾患は、主に慢性腎不全です。長い時間をかけて徐々に腎機能が失われますが、初期には兆候が表れないことが多く、腎機能の75%が失われて初めて気づくことも少なくありません。
失われた腎機能は回復しないため、慢性腎不全の治療は進行を遅らせることを目的として、基本的には食餌療法を行います。
早期発見し、早期に治療を開始することで、病気の進行を遅らせることが可能なので、早期発見が重要です。多飲多尿などのサインを見逃さないことや、定期的な血液検査・尿検査を行うことが早期発見につながります。日々の尿チェックとともに、成猫で年1回、高齢猫で2回の健康診断を受けることをおすすめします。



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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。


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