【獣医師監修】猫の口元から聞こえるくちゃくちゃ音は病気が原因って本当なの?

2023.07.16

【獣医師監修】猫の口元から聞こえるくちゃくちゃ音は病気が原因って本当なの?

ご飯を食べてもいないのに、愛猫の口からくちゃくちゃといった音が鳴っていたら、何か誤って食べてしまったのかと、心配になってしまいますよね。 食べ物を食べていないときに、ねこがくちゃくちゃと音を鳴らしていた場合は、病気のサインかもしれません。 猫が口からくちゃくちゃといった音を出す原因や、音が鳴ってしまう病気について解説していきたいと思います。

猫がくちゃくちゃしてるのはどんな時?

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普段、くちゃくちゃと音を立てない愛猫の口から、くちゃくちゃといった音が鳴るようなことがあれば、ほとんどの飼い主さんは何が原因なのか追究し、不安が拭えない場合は動物病院を受診して、獣医師さんに診てもらうといった判断をするのではないでしょうか。

健康な猫ちゃんの口から食事の直後に、くちゃくちゃとした音が鳴っているようでしたら、口の中にフードが残っていたり、歯にフードが詰まったりしているため、違和感を拭うためにくちゃくちゃとすることがよくあります。

また、キレイ好きな猫はグルーミングに時間を費やすことも多いため、被毛やゴミなどが口の中に残った際にも、異物感を覚えて口をくちゃくちゃとすることがあるようです。

その場限りの行動であれば自然な生理現象となるため心配要りませんが、時間を置いてもくちゃくちゃし続けている場合には、口の中に何かしらの異変を感じている証拠となります。

食後やグルーミング直後以外に、頻繁に口をくちゃくちゃさせているようであれば、口腔内の異常を知らせるサインとなりますので、飼い主さんは愛猫からのSOSを見逃さないようにしましょう。


猫がくちゃくちゃしてる原因

猫が口をくちゃくちゃさせている場合には、歯にものが挟まる以外に以下のような原因が考えられます。

◆痛みがある

猫は犬よりも口内トラブルを抱えやすいと言われており、その理由として猫はストレスの影響を受けやすいこと、歯みがきのケアが難しいことなどが挙げられます。

3歳以上の成猫の8割は歯周病予備軍とも言われていて、口の小さな猫の場合は飼い主さんも気付かぬうちに、病状が進行していることが多いようです。

歯に物が挟まってくちゃくちゃさせている場合でも、自然に挟まった物が取れれば良いですが、そのままの状態が長く続けば歯のプラーク(歯垢)として残り、そこから炎症を起こして痛みを伴うことも否めません。

猫は「痛い」や「痒い」などの症状が出ていたとしても、飼い主さんにその辛さを伝えることができないため、
じっとして回復を試みる、食欲不振、よだれを垂らす、前足を口元に持っていく仕草をするなど、ほかの行動によって異常のサインを出すことがほとんどです。

言葉が通じないからこそ飼い主さんは、そのようなサインを見逃さないようにし、早急に対処をしてあげることを心掛けましょう。

◆中毒症状

猫が口をくちゃくちゃさせながら、大量のよだれを垂らしていたり、泡をふいたりしている場合には、中毒症状を引き起こしている可能性があります。

ネギ類やユリ科の植物の毒性は有名ですが、ほかにもアロマ(精油)、殺虫剤、殺鼠剤、ノミ取り首輪などに含まれている化学物質など、日常生活の中で注意しておくべき有毒物がたくさんありますよね。

何かしらのきっかけにより、それらの成分を体内に取り込んでしまえば、急性中毒を引き起こして大量のよだれが出ますので、必然的に口元をくちゃくちゃさせるはずです。

ほかにも、動物病院で処方された薬を飲んだときなどにも、口をくちゃくちゃさせて泡をふくことがよくあります。

◆病気の可能性

食事のあとやグルーミングの直後ではなく、時間に関係なく口をくちゃくちゃさせている場合には、病気の可能性も疑わなくてはいけません。

病気が原因でくちゃくちゃしている場合だと、症状もかなり進行している可能性が高く、治療にたくさんの時間がかかってしまえば、その分猫ちゃんへの負担も増えてしまいますよね。

愛猫の口腔内を飼い主さん自身がくまなくチェックし、異常が見られない場合には、別の病気を発症している可能性が高いため、早急に動物病院を受診するようにしましょう。


猫がくちゃくちゃしてる時の主な病気

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猫が口元をくちゃくちゃしているときの主な病気は、以下の通りとなります。

◆口内炎

猫の口内トラブルでもっとも多い病気と言われているのが、口内炎です。

口腔内を清潔に保てていない猫ちゃんの場合、歯の周囲にプラークが溜まり、プラークが石化して歯石となります。

歯石が溜まることによって炎症を起こしやすくなり、その部分が口内炎となって腫れてしまえば、痛みをともなって唾液が多く分泌され、くちゃくちゃと音を立ててしまうことでしょう。

プラークや歯石だけでなく、日常的にストレスを感じている場合や、免疫力が低下している場合にも、猫は口内炎になりやすいと言われています。

人の口内炎は時間の経過とともに自然治癒するといった認識が強いですが、猫の場合は内科的治療で改善されない場合は、歯石を除去するために全身麻酔をかけることもあるため、たかが口内炎と思って見過ごさないことが大切です。

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◆歯周病

前述してある通り、猫に多い病気として歯周病が知られていますが、口内炎と同じく細菌によって引き起こされる炎症性疾患となるため、口腔内の清潔が保たれていなければ、口をくちゃくちゃとさせる以外にもさまざまな症状が出てきます。

歯肉の腫れや歯を支える骨が溶けるだけでなく、細菌を含んだ唾液を取り込むことによって、心臓などの臓器にも負担をかけてしまいます。

歯周病も口内炎の治療と同じく、症状が進行していれば外科的治療を要するため、できれば子猫時代からのデンタルケアを徹底し、清潔を心掛けながらの生活が望ましいでしょう。

成猫になってからでもデンタルケアを始めることは可能となるため、ご自身でのケアが難しい場合にはかかりつけの動物病院などで、デンタルケアの方法を獣医師さんから習得することもおすすめです。

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◆食道炎

食べ物をよく噛まずに丸飲みするといった習性を持つ猫は、食道炎といった病気にも注意しておかなくてはいけません。

食道炎は口から胃までを繋ぐ食道に、何かしらの原因によって炎症を起こしている状態となり、痛みを伴うことから胸の辺りに触れられることを嫌がる、吐くような動作を繰り返す、大きな声で鳴くといった症状などが見られます。

猫の場合は異物を飲み込む、繰り返しの嘔吐やウイルス感染などの原因が多いですが、原因によって治療法も異なってくるため、食道炎を疑う場合には早急に動物病院を受診し、適切な治療を行ってもらうようにしてください。

◆慢性腎不全

猫が口をくちゃくちゃさせる病気の中で、もっとも危険と考えられているのが慢性腎不全です。

猫の病気の中でも死因トップに挙げられる腎不全は、早期発見がとても難しく、口をくちゃくちゃさせている症状が見られる場合には、それなりに病気が進行していると考えられます。

腎機能が低下すると改善が難しく口も渇きやすくなるため、口の中が粘っこくなって口元をくちゃくちゃさせる行為が増えてくるといった仕組みです。

加齢とともに発症のリスクが高まる病気ではありますが、完治は難しいため、食事療法や輸液の投与などの対症療法が用いられ、病気の進行を遅らせるような治療が一般的となります。

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猫がくちゃくちゃしてる時の対処法

飼い主としては愛猫が口元をくちゃくちゃさせている姿を見ると、痛みは感じていないのか、何かしらの病気が隠されているのではないかと、不安な気持ちになってしまうはずです。

しかし、実際にそのような姿を目にしたとしても、素人では病院に連れて行くべきなのか、少し様子を見てもいいのかなどの判断が難しい場合がほとんどですよね。

大切なのは飼い主さん自身が焦らず、落ち着いて行動することとなり、しっかりと愛猫の症状を見極めて冷静な判断をするようにしましょう。

◆病院へ行った方が良い場合

くちゃくちゃする時間が長い場合や、頻度が多い場合には、何かしらの異変が起きている証拠のため、別の症状が出ていないかの確認をしてください。

くちゃくちゃといった音だけでなく、よだれを垂らしている、口臭がきつくなる、唾液に血のようなものが混ざっている、食欲低下、触られるのを嫌がるなどの症状が併発している場合には、素人判断では難しいため早急に動物病院へ行くべきです。

獣医師さんに原因を探ってもらい、適切な治療を受けさせてあげてください。

◆様子見でいい場合

食後やグルーミング後に口元をくちゃくちゃさせている場合は、口内に食べかすやゴミなどが残っているだけのことが多いため、しばらく様子を見るだけで問題ありません。

また、眠っているときや寝起きなどにも、口をくちゃくちゃさせる猫ちゃんは多く、夢を見ていたり寝起きで口の中が渇いていたりといった、生理現象的にそのような仕草をすることもあるため、こちらも様子を見るだけで大丈夫です。

普段から愛猫の様子を観察し、ちょっとした変化も見逃さないような気配りが大切となってきます。


まとめ

猫の口は小さく、無理矢理押さえてデンタルケアをしようとすると、全力で嫌がって抵抗してくる猫ちゃんはとても多いですよね。

そんな猫ちゃんの口からくちゃくちゃといった音が鳴っていた場合、口内に何かしらのトラブルが起きているのではないかと、不安に感じてしまう方も多いはずです。

猫は強制されることをとても嫌がりますし、愛猫に嫌われないためにもデンタルケアはしないといった、選択肢をする方もいらっしゃるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

もしくちゃくちゃ音の原因が病気だった場合は、寿命を縮めてしまう危険性もありますし、治療にも長い時間がかかってしまうことがあります。

心身ともに愛猫へ負担をかけてしまうことに繋がってしまうため、日常的に愛猫のことをよく観察しつつ、口腔内のケアを怠らないようにし、定期的な健康診断を受けて愛猫の健康を守っていくようにしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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