【獣医師監修】猫の耳から臭いニオイがする!考えられる病気や対処法はあるの?

2023.09.17

【獣医師監修】猫の耳から臭いニオイがする!考えられる病気や対処法はあるの?

猫のチャームポイントでもあるかわいらしい耳ですが、愛猫の顔に自分の顔を近づけたとき、耳周辺から臭いニオイがしたことはありませんか? デリケートな部位となるため、なかなか奥の方まで掃除することが難しく感じますが、臭いニオイを発している原因が、病気の場合だったらとても心配になってしまいますよね。 猫の耳が臭いと感じた場合には病気を疑い、すぐにでも動物病院を受診するべきなのでしょうか。

猫の耳が臭いのはなぜ?

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猫好きの方で「猫吸い(猫の被毛に顔をうずめて思いっきりニオイを嗅ぐ行為)」を日常的にしている方は多いと思いますが、その際に顔付近のニオイを嗅ぐ方も多いはずです。

そのときにふと耳から臭いニオイがすれば、愛猫の身体に何かしらの異変が生じていることに気付けるため、健康を維持するためにも大切なスキンシップであるとも言えますよね。

しかし、一般的に猫の耳垢は、耳の中にあるアポクリン汗腺から分泌されるタンパク質や、皮脂腺から出る脂肪が混ざり合い、その後古い皮脂と合わさったものとなります。

健康的な猫ちゃんの耳垢は、少し湿り気があってやや薄い茶色となり、臭いと感じようなニオイは特にありません。

もちろん季節や個体によっては耳垢のニオイ、量は異なるため、愛猫の「正常な耳垢」「正常なニオイ」を飼い主さんが把握しておく必要がありますよね。

基本的には猫がグルーミングをする際に、耳垢は自然と排出されていきますし、ニオイもなく目立つほど耳垢が大量に出ていなければ、そこまで頻繁に耳掃除を行わなくてもかまいません。

何かしらの理由により耳の中や耳周辺から臭いニオイがしているようであれば、トラブルが起きている可能性が高いため、早急に適切な対処をする必要があると言えるでしょう。


猫の耳の仕組み

猫の正常な状態のニオイや耳垢について把握した後は、耳の仕組みについても理解を深めたいものですよね。

耳道が真っ直ぐな人間の耳と比べて、猫の耳はどのような構造をしているのでしょうか。

◆耳介

耳たぶに該当する猫の「耳介(じかい)」は、顔のパーツとしての主張も強く、猫の愛らしさを表現している部位とも言えますよね。

三角形に立ち前方に開いた構造は音をよく拾い、平衡感覚を保つ働きをするため、猫が生きる上でも重要な役割を果たす部位であることが分かります。

皮膚と軟骨でできている耳介ですが、軟骨の周辺にはたくさんの血管が通っており、デリケートな部分であることから、むやみやたらに触れられることを嫌がる猫ちゃんが多いようです。

◆外耳道

耳穴(耳の入り口)から鼓膜までを繋ぐ道を、「外耳道(がいじどう)」と呼びます。

猫の外耳道は人間とは異なり、L字型をしているために外から鼓膜を直接見ることはできません。

この特殊な仕組みから、鼓膜を安易に傷付けないといったメリットとともに、耳穴付近の異物(耳垢やゴミなど)が、耳の奥まで入りやすいといったデメリットが存在します。


猫の耳が臭い時の考えられる病気

耳のニオイが臭いときは、何かしらの異常を疑わなければいけませんが、病気が原因の場合にはどのような疾患が考えられるのでしょうか。

◆真菌感染(皮膚糸状菌症)

真菌(カビ)に感染し真菌が増えていくことによって、さまざまな症状を引き起こす病気が「真菌感染症」となります。

猫の場合主に2種類の真菌によって引き起こされることが多く、その一つが「糸状菌」と呼ばれる糸状の菌が原因となる感染症です。

この真菌に感染した状態を「皮膚糸状菌症」と呼ぶことがあり、免疫力が低下して皮膚のバリア機能が落ちるタイミングで、皮膚へと侵入してどんどん拡がっていきます。

皮膚の柔らかい箇所となる耳や口元、目の周辺といった顔周りの発症が多く見られ、真菌を持っているほかの動物から感染する可能性もあり、厄介な病気と言えるでしょう。

◆細菌感染

細菌に感染して炎症を起こす「細菌感染症」を、「外耳炎(がいじえん)」と呼びます。

外耳道に炎症を起こす病気となり、人間でいうと細菌の付着した手で目をこすってしまい、ものもらいを引き起こすような状態と似ているため、健康体であるかどうかはあまり関係ありません。

放置しておくと慢性化することがあり、困難な治療となる中耳炎や内耳炎に進行する恐れもあるため、早期の治療が望ましいと言えるでしょう。

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◆ダニ

ダニが耳の中に寄生する病気は、「耳ダニ」「耳疥癬(みみかいせん)」などと呼ばれています。

激しい痒みを伴い、真っ黒な大量の耳垢が出るため、ほかの感染症とは異なり病名が判明しやすい疾患となっています。

耳の中の皮膚や耳垢をエサとして繁殖していくため、耳の奥でダニが大量の卵を産んでしまえば治療が長期化しやすく、非常に厄介な感染症と言えますよね。

子猫や外に出る機会の多い猫が発症しやすいため、耳のニオイだけでなく耳垢の色や量もチェックするようにしましょう。

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◆アレルギー

ある日突然発症する可能性のある病気が、「猫アレルギー」となります。

猫の場合はキャットフードやおやつの中に、含有されている特定の成分に反応しやすく、アレルギー反応特有の赤みや痒みは、皮膚の薄い耳にも表れやすいため、フードを変えたタイミングや新しいおやつを与える際には、細心の注意を払ってあげてください。

◆マラセチア

真菌による感染症は皮膚糸状菌だけでなく、「マラセチア」という名の真菌によって引き起こされる「マラセチア性皮膚炎」も、猫では注意しておかなくてはいけません。

マラセチアは皮膚や外耳道などに常在しているカビとなりますが、身体の抵抗力が落ちると過剰に繁殖し、痒みだけでなく発酵したような臭いニオイの元となります。


耳のトラブルになりやすい猫種

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耳の垂れているスコティッシュフォールドは、耳の中の湿度が上がってムレやすく、雑菌が繁殖しやすい環境が整っているため、耳のトラブルが起きやすい猫種と言えます。

特に外耳道の皮膚が炎症を起こすといった、外耳道を患いやすいのですが、あまり頻繁に耳掃除を行ってしまうと、その刺激で炎症を起こしかねないため、愛猫の耳の様子をうかがいながら行うようにしましょう。


病気の場合どんな治療法があるの?

愛猫が耳に臭いニオイを伴う病気を発症していた場合には、原因に合った治療を行います。

真菌や細菌に感染しているようでしたら抗生剤、ダニに感染している場合は抗ダニ剤を用いて、適切な治療を進めていきます。

真菌感染の場合は広範囲に広がっている可能性もあるため、真菌が付着している部分の被毛を剃ってから、外用薬を塗ることもあるようです。

抗真菌作用のあるシャンプーの使用や、洗浄液の使用も効果的ではありますが、猫の場合はトラウマになってしまうほど嫌がる場合や、ホルネル症候群(交感神経に異常をきたす疾患)を引き起こす可能性も否めないため、あまりおすすめできません。

アレルギーの治療法は食事療法が一般的となり、症状が重いときには抗アレルギー薬の投与を行います。


猫の耳が臭い時の対処法

愛猫の耳から臭いニオイがしたときは、何かしらの異常をきたしていることが明確となりますが、飼い主さんはまずどのような行動をとるべきなのでしょうか。

◆病院に連れて行く

耳からニオイがしているということは、症状が進行している証拠となりますので、耳周辺を耳掃除するだけでは症状が改善されないことがほとんどです。

猫自身は痒みや煩わしさを覚えているはずのため、動物病院を受診して、獣医師さんに適切な処置や治療をしていただきましょう。

早期発見、早期治療を心掛けることにより、進行を押さえつつ治療を長期化させないことにも繋がります。

◆耳掃除をする

病気を患っている場合には動物病院への受診が必須となりますが、日常的な予防の意味では耳掃除が有効となります。

健康体の猫の耳には自浄能力が備わっているため、耳の中の老廃物は外側に排除されるようになっていることもあり、基本的には気になった時に掃除をするような心掛けでOKです。

しかし、個体によって体質も異なってくるため、愛猫の耳の状態に合わせて2週間や1ヶ月などの頻度を決め、優しくお手入れすることもおすすめとなります。

耳掃除が慣れている子であれば、以下のような耳洗浄液も利用できますし、常に清潔の状態が保てますよ。

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まとめ

猫の気持ちを読み解くためにも、耳はとても大切な身体の一部となりますが、その可愛らしい耳から臭いニオイがしていた場合、飼い主さんとしては何が原因でそのようなニオイがしているのか、心配になってしまいますよね。

自浄能力が備わり、グルーミングでお手入れをしていたとしても、何かしらのきっかけにより病気を発症してしまえば、辛い思いをするのは猫ちゃん自身となるため、普段からしっかりと対策をし、予防に努めていきたいものです。

完全室内飼いの猫ちゃんであっても、室内を清潔に保ちつつ、感染経路になりそうな不安要素を排除し、新しいフードやおやつを与える際にも、経過観察を怠らないことが一番です。

たかが耳のニオイだと楽観視せずに、臭いニオイは異常だと瞬時に捉えて、必要性を感じた際にはすぐに動物病院を受診して、獣医師さんに適切な治療を行ってもらうようにしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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