【獣医師監修】愛犬もノロウイルスには注意が必要?犬の嘔吐や下痢の原因とは?

2017.12.07

【獣医師監修】愛犬もノロウイルスには注意が必要?犬の嘔吐や下痢の原因とは?

秋以降、特に猛威を振るうノロウイルス。小さな子供やお年寄りにとっては、特に注意が必要なノロウイルスですが、犬にも感染するのでしょうか?今回は、犬のノロウイルス感染について、そして、犬にとって身近な病気・症状である嘔吐や下痢の原因はなんなのか、またどう処置すればよいのかを紹介していきます。

犬はノロウイルスに感染する?

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激しい下痢や嘔吐の症状が出ることで知名度の高いノロウイルス。人間社会では、流行時期に特に注意しなければいけない病気の一つです。

◆ノロウイルスとは?

感染すると激しい下痢や嘔吐の症状がでるウイルスです。ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は一年中発生しますが、特に冬季に流行します。
ノロウイルスは手指や食品などに付着し、経口感染します。

ノロウイルスに感染し重症化するケースは稀ですが、体力がなく抵抗力の弱い幼児やお年寄りにとっては、甘く見てはいけない感染症です。
ワクチン・薬などがないので、発症した場合の治療法は、対症療法(脱水症状を抑えるなど)しかありません。手洗いやうがい、消毒を徹底するなどして、感染予防に努めることが重要となります。

このように、人間にとっては厄介な感染症であるノロウイルスですが、もしも飼い主さんが発症してしまったら…。愛犬にも感染してしまうのか!?とても気になるところですよね。

◆ノロウイルスが犬に感染する可能性は低い

結果からいうとノロウイルスは、犬への感染や、犬から人に感染させる、人から犬に感染させるという可能性がとても低いといえます。

人間社会で流行するノロウイルスは「人ノロウイルス」といい、人の小腸で増殖して急性胃腸炎を引き起こすウイルスです。この人ノロウイルスは他の動物への感染が確認されておらず、犬への感染の可能性も低いと考えられているようです。

ただし、2015年には、犬の血液サンプルからノロウイルスの抗体が確認されたとする研究(参考:Evidence for Human Norovirus Infection of Dogs in the United Kingdom)もあり、犬がノロウイルスを保有していた可能性を示唆しています。
また、中には人の嘔吐物を食べた犬が体調を崩し、動物病院に来院する例も確認されています。

ノロウイルスが犬に感染する可能性は低いとはいえ、ウイルスや菌を保有する嘔吐物には十分に注意し、愛犬との接触は避けるべきでしょう。

◆愛犬のいる家庭では「犬がノロウイルス感染を拡大させてしまう」注意が必要

犬への感染確率は非常に低いノロウイルスですが、愛犬のいる家庭では頭に入れておくべき注意点があります。

それは、愛犬がノロウイルスを撒き散らしてしまう可能性があるということです。
例えば家族がノロウイルスに感染した場合、家族が嘔吐して周りが慌てれば、愛犬がそれにつられて近付いてきたり、嘔吐物の処理前や処理中に興味を示して寄ってくるという行動が予測されます。そうして嘔吐物などが被毛に付着すると、愛犬の行動範囲にノロウイルスが付着してしまうのです。

ノロウイルスの人間への感染経路は、経口感染・飛沫感染です。汚染されたものを食べたり、嘔吐物やウイルス付着部分への接触、乾燥により空気中に舞ったウイルスを吸ってしまうことなどが、感染するパターンだといわれています。

◆家族にノロウイルス感染者が出たら?

家族にノロウイルス感染者が出た場合は、やはり愛犬との接触をさけることが賢明でしょう。ノロウイルスの感染力は非常に強く、愛犬にウイルスが付着してしまった場合、家族全員に感染する恐れがあります。

少しでもその可能性がある場合、愛犬のベッドやアイテムなどの使用を続けるのはやめた方がよいでしょう。ハイター(次亜塩素酸ナトリウム液)などを薄めた液体に浸すという方法もありますが、捨てられるものであれば処分してしまうことが安全といえます。市販のアルコール除菌などでは、ノロウイルスは死なないといわれています。


犬の嘔吐・下痢の原因は?

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愛犬に嘔吐や下痢の症状がみられた場合、考えられる原因が何点かあります。

<嘔吐の場合>

  • 食べ過ぎ
  • 食べるスピードが早い
  • 誤飲
  • 有毒なものを食べた
  • ストレス
  • 乗り物酔い
  • 感染症や病気

<下痢の場合>

  • ストレス
  • 食べ物が合っていない
  • 冷えによるもの<
  • 誤飲
  • 食べ過ぎ
  • 水分の摂りすぎ
  • 感染症や病気

犬は大体嘔吐する前に、えづく、ペロペロと舌の出し入れを繰り返す、胃の部分が収縮する、などの兆候をみせます。これらの状態がみられた場合は、嘔吐する前触れだと考えましょう。

下痢は、一過性のものであれば少し様子をみておいても問題ないですが、2日以上続くようであれば感染症や病気、体内で異変が起きている可能性があります。長く続く下痢は、命に関わる症状ともなりえますので、その場合は早めに動物病院を受診してください。嘔吐と一緒に下痢の症状もみられるようであれば、注意が必要です。

嘔吐や下痢の症状がみられる主な病気を、何点か紹介していきます。

◆パルボウイルス感染症

感染すると、腸・骨髄・リンパなどでどんどん増殖する恐ろしい感染症です。
主に感染動物との接触で感染しますが、人間の靴裏などにウイルスが付着したことで室内でも感染する場合があります。潜伏期間は7~14日程といわれています。

初期症状で吐き気が日に5~6回程みられ、進行すると共に吐く回数が更に増加します。その後下痢を併発し、発症から5日目あたりに血便となり、ほとんどの場合7日以内に死亡してしまいます。

パルボウイルス感染症は血便となった時点で、助かる確率はほとんどないといわれるとても恐ろしい病気です。
しかしワクチンがありますので、接種していれば感染することはないでしょう。

◆ジステンパーウイルス感染症

接触に限らず空気感染が成立する、致死率の高い感染症です。抵抗力の弱い個体であれば、特に重症化します。

症状は、咳・食欲減退・吐き気・下痢・目やに増加・皮膚炎などで、特徴的な症状がないといえるでしょう。
ガムを噛んでいるような痙攣発作(チック)が起こる場合は、結果的に死に至る可能性が高いそうです。また、老犬であれば神経症状・運動機能障害が主な症状となり、感染時期が若い頃でも無症状のままで、歳をとってから発症する場合もあるようです。

ワクチン接種をしていても感染する可能性のある病気なので、疑わしい症状がみられる場合は早めに病院を受診しましょう。

◆慢性腎不全・急性腎不全

腎臓の機能低下により、下痢・嘔吐・食欲不振などの症状がでます。
慢性と急性がありますが、急性腎不全の場合は、急激に症状が悪化するため命を落とす可能性があります。中毒物質(ブドウ・レーズン・不凍液・薬など)の接種が、急性腎不全の原因となるケースもあるので注意が必要です。

しかし、早期治療に至ることができれは完治できる病気です。定期的な血液検査をしたり、バランスの良い食事をとるなどして日頃から注意すると共に、異変を感じたらすぐに獣医さんに相談しましょう。

◆大腸炎

消化吸収機能の低下により、大腸の粘膜が傷付くことで炎症が起きます。ゼリー状の粘液が便に混ざっていたり、便がその粘液に覆われて出てくるケースがあります。
食べ物・ストレス・腫瘍・ウイルスや寄生虫・アレルギーなど、考えられる原因は様々です。

動物病院で、健康診断や飼い主さんへの問診、検便などを行い、原因に対して適切な治療を行います。
整腸剤や粘膜の保護剤の投与などで大腸の回復を目指したり、細菌感染の場合は抗菌剤を使用します。脱水症状が出ていれば点滴投与を行う場合もあります。

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犬の嘔吐・下痢の応急処置

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犬は人間と比べて嘔吐や下痢の症状が出やすい動物で、その原因も様々です。症状が軽かったり、重大な病気でない場合は原因を特定できないこともあるでしょう。

しかし、飼い主さんはまず原因として思い当たることがないかを考え、その原因を取り除くよう努めなくてはなりません。
嘔吐や下痢に加え、震え・食欲不振・元気がない・発熱などの症状がみられる場合は、早急に獣医さんに相談しましょう。重大な病気の可能性も潜んでいます。前述した通り、混合ワクチンで予防できる病気もあるので、愛犬のワクチン接種は忘れないようにしてください。

嘔吐や下痢がみられる場合の応急処置として、まずは慌てずに愛犬の全体的な様子を観察することが大切です。以下の項目をチェックしてみてください。

①表情や様子

普段より元気がなかったり、目に活力がないように感じる場合は、犬が体に何らかの異常を感じているかもしれません。
様子に注意して観察をしましょう。

②下痢の状態

便の固さや色、血便の有無を確認しておき、動物病院を受診した際に獣医さんに正確に伝えましょう。原因特定やその後の治療にとって大切な情報となります。

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③嘔吐物の内容

犬は空腹時に胃液の過剰な分を嘔吐しますので、胃液のみを吐いているようであれば、そこまで心配する必要はないでしょう。

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④食欲の有無

食欲があればそこまで心配はいりませんが、食欲がないようであればすぐに獣医さんに相談してください。
尚、下痢の場合は、治癒の為に絶食が必要となるケースもあります。

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⑤嘔吐物や便に直接触れない(触れさせない)

多頭飼いの家庭で重要な項目です。感染症の病気の場合を考えて、念のため他のペットを嘔吐物や便に近付かせないよう注意しましょう。もしも感染症であれば、二次感染を防ぐために隔離と消毒が必要となります。

まずはこれらの項目を確認し、適切な対応をとったり、緊急の状態であるかを判断しましょう。

いずれにせよ、愛犬の様子が気になるようであれば早めに獣医さんに相談してください。

夜中などで病院へ行けない時の応急処置としては、下痢であれば脱水症状に注意して水分補給を心掛けること、嘔吐であれば一時的に断食をさせ様子をみることが一般的とされています。
下痢の場合は、食物繊維の多い餌を控えるのが賢明です。そして断食は水分不足を招くことも頭に入れておいてください。また、下痢と嘔吐が重なった場合は、口に水分を含ませる程度与えて様子をみましょう。

体力の少ない老犬などであれば、体力が奪われてしまいます。翌朝すぐに病院へ連れて行くか、朝まで待てない場合は緊急病院へ向かうことも考えておきましょう。

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まとめ

愛犬に嘔吐や下痢の症状がみられる場合は、ノロウイルスではなく、別の病気である可能性が高いです。もしも家族がノロウイルス感染症を発症していれば、愛犬にも感染した!?と慌ててしまうかもしれません。

嘔吐や下痢は比較的犬にとっては珍しくない症状ですが、確かにノロウイルスに似た症状でもあります。そんな時は慌てずに、原因を探りましょう。嘔吐や下痢がもたらす病気を知っておけば、適切な対応をとることができます。

日頃から、愛犬の様子を注意深く観察しておくことが、体の異常にいち早く気付くために重要となります。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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