警察犬が初めて採用されたのはいつ?
◆海外の軍用犬から始まった警察犬
警察犬は、軍事目的として訓練をされた「軍用犬」が発展したものです。現在でも警察犬の仕事のひとつとなっている捜索や警戒は、軍用犬のころから訓練されていた項目でした。
海外では19世紀にドイツのヒルデスハイム市警察で初めて警察犬が誕生し、次第にイギリスなど各国にも警察犬が採用されていきます。
◆2度の廃止をのりこえた日本の警察犬
私たちの住む日本ではどうだったかというと、初めて警察犬が採用されたのは1912年12月のことです。イギリスからやってきたスコッチコリーとラブラドールレトリバー、バフレーとリリー、この2頭の犬が最初の警察犬になります。
しかし1920年に予算縮小に伴い警察犬制度は廃止され、1937年に再度警察犬制度が復活。復活はしたものの1945年東京大空襲により再度中止となりました。1947年に愛犬家たちが地域防犯を目的として「日本警察犬協会」を設立しました。日本警察犬協会の犬は、普段は一般家庭で飼育され要請があったときに出動するスタイルで、これがのちに「嘱託警察犬」と呼ばれるようになります。
その後1956年になると、刑事部鑑識課で「直轄警察犬制度」がスタートとなり、1972年あさま山荘事件で直轄警察犬が雪山に隠された爆弾など犯人を追いつめる多くの証拠をみつけ、その能力の高さと雄姿を人々に見せつけることになったのです。
警察犬になるには?
警察犬には、各都道府県警察が飼育管理している「直轄警察犬」と、一般の人が飼育管理をしている「嘱託警察犬」の2種類があります。
実は警察犬は嘱託警察犬の割合が多いのですが、すぐになれる、というわけではありません。毎年行われる審査会で指定されなければ、嘱託警察犬になることはできないのです。
ここでは、警察犬になるにはどうすればいいのか、そして警察犬の仕事の内容を詳しく紹介していきます。
①直轄警察犬
警察が飼育、訓練を行い警察の仕事についている犬のことをいいます。残念ですが、一般の犬が直轄警察犬となることはできません。
なかなか目にすることのできない直轄警察犬。中には写真を掲載している県警のホームページもあるので、精悍な顔立ちの犬たちをぜひご覧ください。
②嘱託警察犬
飼い主が住んでいる県で、犬鑑札登録を済ませ、伝染病の予防接種を受けた犬が嘱託警察犬の審査を受けることができます。
しかし、この審査を受けるための基準は県によって若干の違いがありますので、嘱託警察犬になるには、まずはお住まいの地域の県警に問い合わせをした方がよさそうです。
嘱託警察犬審査会ってなに?
嘱託警察犬になるには審査基準を満たし、さらに嘱託警察犬審査会という厳しい審査を受けることになります。毎年審査水準が同じか、というと、どうやら違うようで、審査員メンバーが総入れ替えになっていたり、審査会場が通年と変わっていたりということもあるそうです。
県によって審査会で行う内容に多少の違いはあるようですが、ここでは嘱託警察犬になるにはどうしたらいいか困っている皆さんへ、嘱託警察犬審査会で行われる内容の一部を紹介していきます。
①足跡追求、臭気選別、捜索
足あとの匂いや空気中の匂いを追い、犯人に繋がる落し物や行方不明者を探します。
嘱託警察犬として審査を受ける会場が足元の整備された好条件な場所とは限らず、全面草むらの場合もあります。草むらの中に落し物を隠されていることもあるそうで、嘱託警察犬候補の自分の順番が遅ければ遅いほど、他の嘱託警察犬候補の匂いにジャマをされて、本来の力が発揮しにくい、というアクシデントもあるそうです。
②服従・警戒
指導主の命令に従って嘱託警察犬が前進をする、逃走を試みる犯人を威嚇するなど、指導主に対しての服従の度合いなども審査されます。
嘱託警察犬審査会は、一度もあったことのない嘱託警察犬候補や、そのパートナーが複数参加します。知らない場所で他の犬と接触することは、厳しい訓練に耐えてきた犬であっても落ち着きをなくすなど思わぬ行動をとることもあるようです。
嘱託警察犬になるには、お互いの信頼関係や指導主のスムーズなリカバリーが大切です。
警察犬の仕事は?
知っているようで知らない警察犬の仕事。警察犬になるには、まず仕事内容をわかっていないと目標が定まりません。ここでは、警察犬の仕事の内容をわかりやすく紹介していきます。
①捜索活動
警察犬は、行方不明になった人、または遺体を鋭い嗅覚を駆使して探したり、覚せい剤のような違法薬物を発見したりする仕事をします。ただし山登りに慣れた人や犬でなければ対応が難しい山間などの場合は警察犬ではなく山岳救助隊、山岳救助犬が出動します。
②臭気選別
現場に残された物の匂いから、対象となる人とその現場に残された手がかりを結びつけます。
警察犬が匂いで対象者かどうかを見極める臭気選別。この結果が裁判で重要な証拠となった事例があるほど、警察犬の臭気選別という仕事は重要なものなのです。
③足跡追及
手掛かりとなる物の匂いから、対象となる人物の移動した経路を警察犬が追う仕事です。
犬の嗅覚は人の汗に含まれる揮発性脂肪酸という成分のにおいを感知することに長けているので、警察犬は遺留品などの手がかりの匂いから対象者を追跡します。
④監視、護送
存在そのものが威圧感のある警察犬。警察犬の仕事の中にはパトロールや監視、護送というものがあります。不審者がいれば吠えたり、時には噛みついたりと頼もしい限りですが、こうした強そうな外見が犯罪を未然に防ぐ効果があるともいわれています。
警察犬に向いている犬種は?
①ジャーマン・シェパード
軍用犬として活躍したこともある犬種で、古くから人間と一緒に活動してきた歴史があります。
また、人間に従順で、聡明な性格である点も警察犬に向いています。
②ラブラドール・レトリバー
盲導犬としても活躍するラブラドール・レトリバーは、温厚で活動的な性格に加え、訓練性能に優れた犬種だと言われています。
元々は打った鳥を水陸問わず回収する能力のある狩猟犬で、高い洞察力や作業力を誇ります。
③ゴールデン・レトリバー
猟犬の能力もさることながら、飼い主に従順で社交的な性格のゴールデン・レトリバー。
ラブラドール・レトリバー同様に訓練性能に優れ、非常に賢い犬種として知られています。
④ドーベルマン
警察犬だけでなく、軍用犬・麻薬探知犬・番犬などとしても有名なド―ベルマン。
飼い主に対しては強い忠誠心を持ち、甘えん坊一面もありますが、他の人間や犬に対しては警戒心が極めて強く、警察犬に向いた性格です。
⑤エアデール・テリア
イギリスで最初に警察犬として採用されたという犬種。
気難しく頑固な一面もありますが、猟犬としてよく働き、知的で好奇心旺盛な性格を持つ賢い犬種です。
⑥ボクサー
クマ狩りを得意とする犬の血統を受け継ぎ、軍用犬としても活躍をする犬種。
ドイツではシェパード犬に次いで人気があり、忍耐強く忠実な性格が警察犬に向いています。
⑦コリー
古くから牧羊犬として飼育された歴史のあるコリーは、理解力が高く、優れた作業能力を持ちます。
また、知らない相手に対して警戒心が高い一面があります。
改めてみると、指定されている犬種は大型犬が多いようですね。
一部の地域では嘱託警察犬として小型犬も活躍をしています。体の大きな警察犬では入れない場所も、体の小さな警察犬なら突入することができるメリットがあり、たとえば災害時にはいち早く救助活動ができるようになるのです。
嘱託警察犬として活躍する小型犬
では、どのような種類の小型犬が嘱託警察犬として活躍しているか、その一部をご紹介していきます。
①トイ・プードル
日本で最初の小型犬の警察犬としても有名な犬種。
元々プードルは水猟犬として活躍していた使役犬で、好奇心が高く運動能力も高いと言われています。
②チワワ
知らない人には警戒心が強く、訓練に対して柔軟に対応できる性格の犬種。
大胆で好奇心が強い一面もあり、散歩などでも周りをよく調査するようなしぐさがみられます。
③柴犬
猟犬として活躍をしてきた、賢く勇敢な性格の犬種です。
日本犬の特徴である、主人に対して非常に忠実、よそ者に対しては馴れ馴れしくしない一面を持ちます。
④ミニチュア・シュナウザー
農場のネズミを捕まえることを目的に作出された犬種で、テリアに近い性質を持ちます。
自分よりも大きな相手に立ち向かうほど勇敢で愛情深い性格を持つ人気の小型犬です。
⑤ミニチュア・ダックスフンド
粘り強い性格で獲物を狩るハウンドドッグのミニチュア・ダックスフンドは、様々な猟の場面で活躍してきた犬種です。
好奇心が高く活発的な上、賢く順応性も高いため訓練なども受け入れやすいといわれています。
他にも小型犬の嘱託警察犬は活躍をしていますが、どの犬種も家庭犬としてメジャーなものばかり。見た目はとても可愛らしく、その日常も甘えん坊なシーンがいくつもあるのではないでしょうか。
小柄で愛らしい容姿からは考えられない厳しい警察犬の仕事をする勇敢な姿に、驚きを隠すことができません。
さいごに
警察犬になるにはどうしたらいいか、警察犬はどういう仕事をしているのか、疑問を解決してきましたが、いかがだったでしょうか?
2017年には、あの飾り毛が愛らしいパピヨンも嘱託警察犬になったそうです。
性格が穏やかだとわかっていても、体が大きな犬を前にすると小さな子どもだけではなく、おとなも身構えてしまいがちです。それに比べて小型犬は狭いスペースを自由に移動できるだけでなく、その愛らしさから人の警戒心を無条件で解いてしまう不思議な能力があります。
うちの愛犬は体が小さいから、と警察犬への道をあきらめている飼い主さんは、もう一度家族会議を開いて目標を見定めてみるのもいいかもしれません。
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