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犬は肉食に近い雑食なので、人よりも多くのたんぱく質を摂る必要があります。 また、毛や皮膚を健やかに保つ亜鉛が不足しないよう注意が必要ですし、ワンちゃんのライフステージによっても必要となる栄養量が異なります。 ペット栄養管理士の筆者は実体験から、ワンちゃんが簡単に必要かつ十分な栄養素を摂ることができる「ドッグフード(総合栄養食)」をお勧めします。 今回は、ワンちゃんが必要とする栄養素やエネルギー量、ドッグフードをお勧めする理由についてご紹介します。
ペット栄養管理士が解説するワンちゃんの栄養学。2回目は、ドッグフードの種類や機能、選び方などについてご紹介いたします。
2つの事件がペットフード安全法制定のきっかけとなりました
以前は、ペットフードの原料などの安全性を直接規制する法律はありませんでした。きっかけとなったのは、2000年以降に起きたふたつの事件です。
まずひとつが、1986年にイギリスで特定され、2001年に日本で、2003年にアメリカで確認された「BSE(牛海綿状脳症)」です。BESは牛の病気の一つで、BSEプリオンと呼ばれる病原体に牛が感染した場合、牛の脳の組織がスポンジ状になり、異常行動、運動失調などを示し、死亡するとされています。BSEは、人間の変異性クロイツフェルト・ヤコブ病という病気との関連性が指摘されました。これは、認知症などを起こす脳の中枢神経の変性疾患で、BSEにかかった牛を食べた人が変異性クロイツフェルト・ヤコブ病にかかっているのではないか、と指摘する内容でした。
BSEは、BSEにかかった牛の「肉骨粉」を食べた牛に感染していると指摘されました。肉骨粉は脳、脊髄、骨、内臓、血液等を加熱処理の上、油脂を除いて乾燥、細かく砕いて粉末としたもので、これが異常プリオンというタンパク質に汚染されているために、牛から牛へと「水平感染」したという発表もなされました。
肉骨粉はペットフードの原材料としても使われていたことから、ペットフード業界にも大きな影響がありました。事件後、肉骨粉の輸入や使用は禁止となり、現在でも牛由来の肉骨粉の使用は禁止されています。
さらに、2007年、アメリカやカナダなどでペットフードヘの「メラミン混入事件」が発生し、多くのペットフードがリコールされました。この事件では、犬・猫合わせて約4000頭が死亡したと推定されています。アメリカ以外では、南アフリカなどでワンちゃんや猫ちゃんが犠牲となりました。米国食品医薬品局(FDA)や米国農務省(USDA)が原因を追究し、中国の会社が製造・輸出したペットフードの原材料として使われていた小麦グルテンやライスグルテンに有機化合物のメラミンが混入していたことが判明したのです。
このメラミン混入事件と、その際にリコールの対象となったフードが日本にも輸入・販売されていたことを受け、農林水産省と環境省はペットフードの安全確保に関する研究会を立ち上げ、2008年に「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」を制定し、翌6月に施行されました。
ペットフード安全法が国内に流通するペットフードの安全性を保証します
ペットフード安全法は、国がペットフードの基準と規格を定め、安全性を保証する法律です。ペットの健康に被害を与えるおそれのあるペットフードがあった場合、国はそのペットフードの廃棄や回収を命じることができると明記されています。
ペットフード安全法の対象となっているのは犬と猫に与える「愛がん動物用飼料」で、「栄養に供することを目的として使用される物」と定義されています。
ペットフード安全法で規制される「ペットフード」とは?
医薬品は「薬事法」で規制されますし、おもちゃは口には入れますが飲み込みません。また、香り付けや遊具として私用されるまたたびや、毛繕いで飲み込んだ毛と一緒に吐き出されてしまう猫草も法律の対象にはなりません。また、ドッグカフェなどで提供されるフードも対象外ですが、あらかじめ持ち帰り用に包装されたペットフードは対象となります。
ペットフードの成分規格について
ペットフードの成分規格は、添加物や農薬の量、胃汚染物質などの使用量につき、環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室のサイトに詳しい説明があります。
汚染物質のアフラトキシンB1は、トウモロコシの穀類に繁殖するかびが産生する物質で、発がん性があります。
農薬のうちメタミドホスは、日本での使用は認められていませんが、海外では使用されることもあり、輸入食品などから検出されることもあります。
添加物のエトキシキン、BHT、BHAは、ペットフードが空気に触れて酸化劣化することを防ぐために使用されています。
ペットフードの袋の裏などのラベルを見てみましょう
ペットフードのラベルには、名称、賞味期限、原材料名、原産国名、事業者名および住所が書いてあります。このうち、チェックしたいのは原材料名です。
原材料名のところは、原則として、添加物を含め使用した原材料がすべて記載されています。添加物以外の原材料は、「小麦」「ビーフ」「トウモロコシ」のような個別名、または「穀類、肉類」のような分類名により表示します。
添加物は、ペットフードの製造時に使用したものを全て表示します。
現在、日本では、ワンちゃん、猫ちゃんの健康被害が生じるようなペットフードは販売されていません。法律で厳しく規制されています。それでも気になる方は、ラベルを仔細にチェックすることで、不安感が解消されるでしょう。
ワンちゃん、猫ちゃんの食いつきがよくて毛づやなどもよくなるフードが「良いフード」
私はペット栄養管理士の資格をもっているため、「おすすめのペットフードを教えてください」とよく聞かれます。しかし、そのペットフードがいいか、悪いかは、犬種・猫種や性格、被毛、年齢、持病などによって大きく異なります。
私は、
「ワンちゃん、猫ちゃんにそのフードを少しずつ与えてみて、よく食べてくれるうえにウンチのまとまりがよく、オシッコから異臭がせず、毛づやなど被毛の状態が良くなるフードがオススメです」
とお答えするようにしています。いくら良いフードであっても、ワンちゃん、猫ちゃんが食べてくれなければ意味がありません。また、良いフードでも体質に合わず、ウンチがゆるくなってしまうこともあります。さらに、毛づやが悪くなったり、フケが出たりするようでは、「体質にあった」フードとは言えません。
食事は、ペットオーナー様とワンちゃん、猫ちゃんのコミュニケーションです。食いつきや、食べた後の様子をよく観察して、「良いフード」を見極めるのが大切なことだと考えます。
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