1.犬が舌を出す理由は?
1-1.体温を調節するため
1-2.精神的な要因
1-3.興奮している
1-4.リラックスしている
1-5.相手に落ち着いてほしいというカーミングシグナル
1-6.短頭種だから
2.犬が舌を出す時は病気の場合も…
2-1.熱中症
2-2.僧帽筋閉鎖不全症
2-3.てんかん(癲癇)
2-4.気官虚脱
2-5.口腔内トラブル
3.舌を出しっぱなしの犬は噛み合わせに問題がある?
3-1.「不正咬合」による歯の隙間
3-2.犬の噛み合わせの矯正は難しい
4.高齢犬の舌が出たままなのはどうして?
5.【おまけ】「猫舌」に対して「犬舌」はある?
5-1.熱いものが得意な「犬舌」!?
5-2.犬も熱いものは苦手な動物
6.犬の舌は健康のバロメーター!舌が出てる時は健康チェックをしましょう
犬が舌を出す理由は?
犬の真似をするときに、ハッハッという息遣いと共に舌を出す仕草をする人が多いのではないでしょうか。
犬の舌が出てる姿というものは、そのくらい自然な行為です。舌が出てる犬や、出たままになってしまっている犬などを見かけることも少なくありません。
では、何故犬は舌を出すのでしょうか。その理由について確認してみましょう。
◆体温を調節するため
犬の体温調節は、主に舌で行います。舌から水分を蒸発させ、気化熱で身体を冷やそうとするのです。
この舌を出してハァハァと呼吸をして身体を冷やそうとする行動は「パンティング」と呼ばれ、大切な健康管理のひとつだといえます。
犬には汗を出すための汗腺(かんせん)があまりありません。犬の体温を調整するためのエクリン汗腺は、肉球や鼻などの限られた部分にしかないため、汗をかくということが出来ないのです。
人間の様に、汗をかいて体温を下げることができないため、舌を出したままにして体温調節をしています。
◆精神的な要因
不安なことがあったり、ストレスを溜めていたりすると、犬は呼吸数が多くなります。するとハァハァと息遣いが荒くなり、舌を出します。
これは人間の子どもの爪噛みの様に、呼吸をすることで精神を落ち着かせようとする心の表れでもあります。
◆興奮している
呼吸数が荒くなる原因には、興奮も関係しています。犬は精神的に興奮した時、運動や散歩などで息が上り興奮している時などに舌が出てることがあります。
運動後の身体的興奮によって舌が出てる場合は、体温調整のためでもあります。
◆リラックスしている
犬は呼吸が落ち着いている状態でも、舌がだらりと出てる時もよくあります。それは寝ている時や、リラックスしている状態の時です。特に寝たままの時には、舌が出てるままになっている犬も多いです。
これは口の周りの筋肉の緊張が解けているためで、全身でリラックスをしている状態だといえます。
◆相手に落ち着いてほしいというカーミングシグナル
Calming Signal(カーミングシグナル:落ち着かせる信号)とは、ノルウェーの動物学者であるテゥーリッド・ルーガスさんが発表した犬の非音声言語のことです。行動が何かしらの合図(シグナル)を示しているため、言葉はなくとも犬の心理を理解できる方法の一つです。
カーミングシグナルの中で、舌を出すという行為は「相手に落ち着いてほしい」と思って居る時の合図です。
この時の出し方は、ペロッペロッという感じで唇を舐める様に出てる状態です。
犬に対して怒っている時や、飼い主や対象のもの・人が興奮している時に行うことが一般的です。自分に対して、舌を出すというカーミングシグナルが出た時には、一旦落ち着いて犬と向き合うことが大切です。
◆短頭種だから
短頭種と呼ばれる鼻が潰れた顔をした犬種は、鼻先から鼻の付け根(マズル)の距離が極端に短い特徴があります。そのため、口腔内が通常のマズルの長さの個体に比べて狭いです。
口を閉じた状態で熱を逃がすことが苦手な短頭種は、ハァハァとパンティングをすることが多いです。
短頭種の代表犬種は、パグ、シーズー、フレンチブルドッグ、狆、ペキニーズ、ボストンテリアなどです。
犬が舌を出す時は病気の場合も…
舌が出たままになっていたり、呼吸が荒くハッハッという呼吸と共に出てる場合には病気の可能性があります。考えられる病気は、体温調節に関わる病気、心臓病、呼吸器病です。
各々の代表的な例をご紹介します。
◆熱中症
熱中症とは、脱水による体温の上昇から、臓器の血流低下や多臓器不全などを引き起こす病気です。
犬は汗腺が無いため、熱が身体にこもりやすい生き物です。また、人間よりも地面に近い位置で生活しているため、アスファルトの照り返しなどの熱から熱中症になることも多いです。
熱中症の犬は、体温調節が追いつかず舌が出てる状態よりも出たままになっていることが多いため、暑い季節などは注意して観察するようにしましょう。
犬の熱中症は5月から10月がピークですので、気を付けて生活することをおすすめします。
◆僧帽筋閉鎖不全症
犬の死因ナンバー2は心臓病です。その心臓病の中でも多い病気が、この僧帽筋閉鎖不全症で、特に小型の個体に多い病気です。
僧帽筋閉鎖不全症は、何らかの原因から心臓内の弁に異常が起こる病気です。悪化すると、肺水腫を引き起こしたり、心不全になり死に至る事もあります。
お座りの姿勢をして、ハァハァと舌を出して荒い呼吸をしている時には、この僧帽筋閉鎖不全症の疑いがあります。あれ?と思うことがあったら、直ぐに動物病院を受診して検査する様にしましょう。
◆てんかん(癲癇)
てんかん発作を起こす前に舌が出たままだったり、口唇をペロペロと舐めていたりすることがあります。これはてんかん発作の予兆でもあります。
てんかんかも?と思う行動があった場合には、必ず動物病院を受診して検査や内服薬を処方してもらうようにしましょう。
◆気官虚脱
気管が何らかの原因で押しつぶされて、空気の流れに異常が生じている状態を気管虚脱と言います。酸素不足になることがあるため、舌がでてる状態でガーガーと鳴るような咳をします。
気管虚脱の誘発リスクは、加齢、肥満、運動不足などにより高まります。また、パグやヨークシャーテリア、マルチーズなど、気管虚脱を起こしやすい犬種も多いです。
◆口腔内トラブル
口内炎や口腔内のがんなどの腫瘍や、歯肉の炎症、歯並びの悪さや歯の疾患(ぐらぐらしている、抜けている)なども原因の一つです。
口腔内のトラブルは、舌を口腔内におさめておくことが難しくなるため、出たままになってしまう犬もいます
舌を出しっぱなしの犬は噛み合わせに問題がある?
これらの理由の他に、犬の噛み合わせが舌の出しっぱなしにつながる場合もあります。
◆「不正咬合」による歯の隙間
犬の正常な噛み合わせは、「シザーズバイト」と呼ばれる上の歯の裏側に下の歯が接する鋏状の噛み合わせです。
「不正咬合」と呼ばれる犬の噛み合わせ異常があると、歯に隙間がうまれます。歯の隙間があると、舌が出たままになってしまうことが多いようです。
不正咬合にはいくつかの種類があり、上あごが出すぎている「オーバーバイト」、下あごが出すぎている受け口の「アンダーバイト」、上あごと下あごがぴったりとくっついてしまう「レベルバイト」などです。
また、噛み合わせに問題は無くても、歯並びがガタガタで隙間がうまれる場合にも、舌が出たままになってしまいます。
◆犬の噛み合わせの矯正は難しい
犬の噛み合わせの矯正は、人間の様にワイヤーなどを使う事は出来ません。また、何かしらの処置をする場合、全身麻酔になってしまいます。
そのため大半の犬は、不正咬合や悪い噛み合わせのまま主だった治療はせずに生活します。
乳歯が残っていることによる歯並びの矯正や、歯の生え方が悪く口腔内を傷つける恐れがある、などの特別な理由がある時のみ、全身麻酔のうえで抜歯などの治療を行います。
高齢犬の舌が出たままなのはどうして?
老犬の口の横から、チョロリと出たままになっているのは、歯に問題があるからです。
犬は高齢になるにつれ、歯肉がやせ細り、歯肉炎などを起こしやすくなり、歯が抜けやすくなります。歯が抜けたり、抜けた歯のせいで、歯並びがガタガタになると隙間が出来るため、舌が出たままになりやすくなります。
老犬になってもきれいな歯を保てるよう、普段から歯磨きなどの口内ケアをしてあげることが大切です。
【おまけ】「猫舌」に対して「犬舌」はある?
熱い食べ物が苦手な「猫舌」は有名ですが、それに対し「犬舌」という言葉はあるのでしょうか。
◆熱いものが得意な「犬舌」!?
犬舌という言葉は辞書には載っておらず、正式な言葉として世間に広まっている訳ではありません。ですが、猫舌の反対の意味で「熱い食べ物が得意」ことを「犬舌」と呼ぶ人はいるようです。
◆犬も熱いものは苦手な動物
野生の世界では、極端に高温の食べ物を食べる機会がありません。そのため、犬は熱い食べ物が得意ではなく、むしろ苦手であることが一般的です。
熱い食べ物は、火傷や、口腔内や喉の炎症を引き起こすことがありますので、必ず人肌程度の温度に冷ましてから与えるようにしましょう。
犬の舌は健康のバロメーター!舌が出てる時は健康チェックをしましょう
犬がハァハァと舌を出している姿は、とても自然な姿です。
ただし、犬の舌が出てるときには体内の熱を放出する体温調節のためだったり、興奮、リラックスなどの精神状態の変化や、カーミングシグナルなど、気にかけてあげるべき状態であることが多いです。
また、心臓病や気管の病気、口腔内のトラブルなど動物病院への通院が必要になる原因の場合もあります。
犬の舌が出てる、出たままのときには、何が原因なのか探るためにもしっかりと観察し、健康チェックをするようにしましょう!
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