1.犬のしっぽの役割は?
2.断尾した犬の尾は、役割をこなせるの?
3.犬のしっぽの種類は?
4.柴犬のしっぽにはバリエーションがある?
5.しっぽを追いかけている理由は?
6.しっぽの病気にはどんなものがあるの?
7.まとめ
【掲載:2018.09.25 更新:2025.02.12】
犬のしっぽの役割は?

犬のしっぽは、感情を表すバロメーターにもなっているため、尾を振りながら近寄ってくると嬉しくなってしまうものです。しかし、しっぽには感情表現以外にもさまざまな役割があることが知られています。
犬のしっぽの役割についてご紹介します。
◆しっぽの役割①感情表現
犬のしっぽは、さまざまな感情を表現し、飼い主や群れの動物に伝える役割があります。犬は言葉を喋ることができませんから、しっぽの振り方で感情を見分けることは、犬を飼う上で大切なテクニックともいえます。
代表的なしっぽでの感情表現は、喜び、警戒、威嚇、恐怖です。
お座りの姿勢や腰を低くした姿勢で、尾を左右に大きく振るしぐさは、喜びと愛情や敬意を示しています。
嬉しくてたまらない時や、好きな飼い主や人などに会った時によく見られます。
警戒している時の尾は、ピンと伸びています。怖くて警戒しているということはなく、「何だろう?」という分からないものに対しての反応です。
新しいおもちゃや家電、初めて会う人に対して行うことが多いです。
相手を威嚇する時の尾は、高く上げた状態で曲げ尾にしています。これは自分の姿を大きく見せて、相手を威嚇している状態を指します。
恐怖を感じている時には、尾は両後肢の間にくるっと巻き込まれている状態になります。これは相手に対しての降伏でもあります。
◆しっぽの役割②バランス維持
犬には、カーブを曲がる時に尾でバランスを取りながら曲がる習性があります。このように、しっぽはカラダの平衡感覚を保つバランス維持のための役割をもちます。
陸上だけではなく、水中で泳ぐ時やジャンプする時にもバランスを保つために使われます。
◆しっぽの役割③体温の維持(保温)
犬が眠る時に、カラダ全体を丸くして尾を顔にかかる形になることが多いです。これは尾で鼻をカバーし、保温しているからといわれています。
寒い地域が原産の犬は、特にしっぽがフサフサと密生していて、より保温に特化した進化をしています。
◆しっぽの役割④虫を追い払う
ブンブンと尾を振ることで、カラダに近寄ってきている虫や寄生虫を追い払う役割もあります。牛の尾にもこの役割があります。
断尾した犬の尾は、役割をこなせるの?

狩猟に使役した犬にとって邪魔だったり、美容目的で断尾する犬種もいます。
代表的な断尾される愛玩犬には、ヨークシャー・テリアやドーベルマン、ミニチュア・ピンシャーなどがいます。
断尾は生後2~5日以内に行われることが多く、動物病院でメスやハサミなどを使用し、無麻酔で処置されることもあります。
断尾した犬は、元の尾がもつカラダのバランスを保つという点で劣っている個体が多いです。これは1996年にロバート・ワンズボローさんが研究の末に発表しました。
以上の内容から、断尾は尾の役割を下げる行為であることが分かります。
犬のしっぽの種類は?
犬は種類によってさまざまな形のしっぽを持ちます。ジャパンケネルクラブ(JKC)公認犬種の場合は、しっぽの形もスタンダードで定められています。
犬のしっぽの種類についてご紹介します。
◆しっぽの種類①巻尾
背中に乗る形でくるっと上に巻いたしっぽのことを巻尾といいます。
代表的な巻尾の犬は、秋田犬や柴犬です。
◆しっぽの種類②垂れ尾
下にだらんと垂れているしっぽのことを垂れ尾といいます。
代表的な垂れ尾の犬は、セント・バーナードやシベリアン・ハスキーです。
◆しっぽの種類③立ち尾
お尻から垂直に天に向かう形で立つしっぽのことを、立ち尾といいます。
代表的な立ち尾の犬は、ビーグルやジャーマン・シェパードです。
◆しっぽの種類④差し尾
低く背中側にカーブするように伸びているしっぽを、差し尾といいます。
代表的な犬は、甲斐犬や四国犬です。
◆しっぽの種類⑤スクリューテイル
先天的に短い尾で、くるくると巻いているしっぽのことをスクリューテイルといいます。後天的に断尾された犬種は対象ではありません。
代表的なスクリューテイルの犬は、パグやブルドッグです。
◆しっぽの種類⑥ボブテイル
後天的に断尾された犬や、先天的にしっぽがない犬のしっぽのことをボブテイルといいます。
代表的なボブテイルの犬は、ウェルシュコーギー・ペンブロークや、オールド・イングリッシュ・シープドッグです。
◆しっぽの種類⑦オッターテイル
その名の通り、オッター(Otter/カワウソ)のように太くて、先に行くほど細くなるしっぽのことをオッターテイルといいます。
代表的なオッターテイルの犬は、ラブラドールレトリバーです。
◆しっぽの種類⑧ブルームテイル
羽根のような飾り毛が垂れ下がった尾のことをブルームテイルといいます。
代表的なブルームテイルの犬には、イングリッシュ・セッターや、ロングヘアード・ミニチュア・ダックスフンドなどがいます。
柴犬のしっぽにはバリエーションがある?
背中にくるっと丸まった尾が乗った柴犬の巻尾は、柴犬の特徴ともいえるポイントのひとつです。柴犬の巻尾は、実はさまざまなバリエーションがあることで知られています。
柴犬の巻尾の代表的なものをご紹介します。
右回りに尾が巻いている場合は右巻き、左回りに尾が巻いている場合は左巻きになります。
最後まで巻尾が巻かれておらず、先端がカラダ離れたものを半巻きといいます。
尾全体と、尾の先端で2回くるくるっと巻かれている尾を二重巻きといいます。
背骨に沿って左右対称に尾が乗っている状態で巻かれている尾を車巻きといいます。
薙刀を横に向けた形で緩い傾斜の尾を薙刀尾といいます。
長さが短く、ないように見える尾を無尾といいます。
しっぽを追いかけている理由は?
自分のしっぽをウーと唸りながら追いかけてくるくる回る、という行動はとても多いです。これにはさまざまな原因があります。
◆ストレスの解消
ストレス解消のために、尾を追いかける行動をする犬も多いです。この場合は、比較的短時間で尾追い行動が終わるため、特に問題になることはありません。
◆ストレスから来る常同障害
何かしらの原因からストレスを感じた犬が、常に同じ行動をしてしまうことを「常同障害」といいます。
常同障害の場合は、自分の尾に噛みつき、出血しても尾追いをやめないなど、ストレス解消とは違い、尾追いへの執着が存在します。ストレスからの常同障害は、豚の尾かじり(自身や、他豚の尾をかじる)も同様です。
◆てんかん
てんかんにより、尾が攻撃対象に思えてしまい、追いかけて噛みつくなどを繰り返す場合もあります。
てんかんは、脳波の検査などで検査することができます。また、抗てんかん薬などで治療することも可能です。
◆痒み、痛み
痒みや痛みなど、犬に気になる症状がある場合に、尾に執着し追いかけることがあります。寄生虫の寄生による陰部や肛門部の痒みなども多い症状です。
◆遊び
特に子犬に多い理由がこの「遊び」です。まだ自分の尾に気付いていなかった状態の子犬が、「何だろう」と尾の存在に気付き、確かめようと追いかけ走り回る遊びをすることが多いです。
子犬はカラダのサイズも小さいですから、くるくるっと高速で回転している状態はとても可愛らしく愛らしい姿です。
しっぽの病気にはどんなものがあるの?
犬のしっぽの病気にはどんなものがあるのでしょうか?詳しくご紹介します。
◆しっぽの病気①痛みがある
犬のしっぽが下がっていたり、同時に震えるなどの症状がある場合には、カラダのどこかに痛みがある場合があります。
特に尾を気にしている場合には、しっぽ又はお尻の痛みであることが多いです。例として、外傷や、肛門嚢炎や肛門嚢の破裂などがあります。
◆しっぽの病気②骨折
どんなに細いしっぽでも、尾には骨があります。この尾の骨の脱臼(尾椎間脱臼)や骨折(尾椎骨折)は、尾を踏まれた、ドアに挟んだなど、生活の中で起きやすいケガです。
◆しっぽの病気③馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)
脊髄の端部分(第五腰椎)からしっぽにかけての神経の束のことを、馬尾(ばび)と呼びます。この馬尾に何かしらの障害が起こることを馬尾症候群といいます。
馬尾症候群は、痛みを伴うことも多く、神経症状が多く報告されています。尾を持ち上げることができず、馬の尾のようにだらりと垂れ下げてしまう状態もよくある症状のひとつです。
◆しっぽの病気④ラットテイル
ラット(rat/大型のネズミ類)の尾のような、先端の脱毛が見られるしっぽの病気をラットテイルといいます。
ラットテイルは甲状腺機能低下症などの内分泌疾患が原因であることが多いです。
まとめ

犬のしっぽは、感情表現を表すバロメーターや、カラダのバランス維持、体温の維持(保温)、虫を追い払うなど、さまざまな役割をもちます。
中でも、喜びや怒り、不安感や警戒心を表す尾の動きは、飼い主との貴重なコミュニケーションツールにもなるといえます。
尾の形にはさまざまな種類があり、犬種や個体によって異なる尾の形をちます。
しっぽの病気には骨折や脱臼などの外傷の他にも、馬尾症候群やラットテイルなど内分泌疾患や神経症状を伴うものもあります。
犬のしっぽは、たくさんの役割をもつ大切な部位のひとつです。犬の尾の働きをよく理解して、犬の気持ちを理解するように心掛けましょう。