犬の尻尾の役割は?
犬の尻尾は、感情を表すバロメーターにもなっているため、尾を振りながら近寄ってくると嬉しくなってしまうものです。しかし、尻尾には感情表現以外にも様々な役割があることが知られています。
犬の尻尾の役割について、ご紹介します。
◆尻尾の役割①感情表現
犬の尻尾は、様々な感情を表現し、飼い主や群れの動物に伝える役割があります。犬は言葉を喋ることが出来ませんから、尻尾の振り方で感情を見分けることは、犬を飼う上で大切なテクニックとも言えます。
代表的な尻尾での感情表現は、喜び、警戒、威嚇、恐怖です。
お座りの姿勢や腰を低くした姿勢で、尾を左右に大きく振る仕草は、喜びと愛情や敬意を示しています。
嬉しくてたまらない時や、好きな飼い主や人などに会った時によく見られます。
警戒している時の尾は、ピンと伸びています。怖くて警戒している、ということは無く、「何だろう?」という解らない物に対しての反応です。
新しいオモチャや家電、初めて会う人に対して行う事が多いです。
相手を威嚇する時の尾は、高く上げた状態で曲げ尾にしています。これは自分の姿を大きく見せて、相手を威嚇している状態を指します。
恐怖を感じている時には、尾は両後肢の間にくるっと巻き込まれている状態になります。これは相手に対しての降伏でもあります。
◆尻尾の役割②バランス維持
犬には、カーブを曲がる時に尾でバランスを取りながら曲がる習性があります。このように、尻尾は体の平衡感覚を保つバランス維持のための役割を持ちます。
陸上だけではなく、水中で泳ぐ時やジャンプする時にもバランスを保つために使われます。
◆尻尾の役割③体温の維持(保温)
犬が眠る時に、身体全体を丸くして尾を顔にかかる形になることが多いです。これは尾で鼻をカバーし、保温しているからと言われています。
寒い地域が原産の犬は、特に尻尾がフサフサと密生していて、より保温に特化した進化をしています。
◆尻尾の役割④虫を追い払う
ブンブンと尾を振る事で、身体に近寄ってきている虫や寄生虫を追い払う役割もあります。牛の尾にもこの役割があります。
断尾した犬の尾は、役割をこなせるの?
狩猟に使役した犬にとって邪魔だったり、美容目的で断尾する犬種もいます。
代表的な断尾される愛玩犬には、ヨークシャーテリアやドーベルマン、ミニチュアピンシャーなどがいます。
断尾は生後2~5日以内などに行われ、動物病院でメスやハサミなどを使用し、無麻酔で処置されることが多いです。
断尾した犬は、元の尾がもつ身体のバランスを保つという点で劣っている個体が多いです。これは1996年にロバート・ワンズボローさんが研究の末に発表しました。
以上の内容から、断尾は尾の役割を下げる行為であることがわかります。
●犬の尻尾の種類は?
犬は種類によって様々な形の尻尾を持ちます。ジャパンケネルクラブ(JKC)公認犬種の場合は、尻尾の形もスタンダードで定められています。
犬の尻尾の種類について、ご紹介します。
◆尻尾の種類①巻尾
背中に乗る形でクルッと上に巻いた尻尾のことを巻尾と言います。
代表的な巻尾の犬は、秋田犬や柴犬です。
◆尻尾の種類②垂れ尾
下にダランと垂れている尻尾のことを垂れ尾と言います。
代表的な垂れ尾の犬は、セント・バーナードやシベリアン・ハスキーです。
◆尻尾の種類③立ち尾
お尻から垂直に天に向かう形で立つ尻尾のことを、立ち尾と言います。
代表的な立ち尾の犬は、ビーグルやジャーマン・シェパードです。
◆尻尾の種類④差し尾
低く背中側にカーブするように伸びている尻尾を、差し尾と言います。
代表的な犬は、甲斐犬や四国犬です。
◆尻尾の種類⑤スクリューテイル
先天的に短い尾で、クルクルと巻いている尻尾のことをスクリューテイルと言います。後天的に断尾された犬種は対象ではありません。
代表的なスクリューテイルの犬は、パグやブルドッグです。
◆尻尾の種類⑥ボブテイル
後天的に断尾された犬や、先天的に尻尾が無い犬の尻尾のことをボブテイルと言います。
代表的なボブテイルの犬は、W.コーギー・ペンブロークや、オールド・イングリッシュ・シープドッグです。
◆尻尾の種類⑦オッターテイル
その名の通り、オッター(Otter/カワウソ)のように太くて、先に行くほど細くなる尻尾のことをオッターテイルと言います。
代表的なオッターテイルの犬は、ラブラドールレトリバーです。
◆尻尾の種類⑧ブルームテイル
羽根のような飾り毛が垂れ下がった尾のことを、ブルームテイルと言います。
代表的なブルームテイルの犬には、イングリッシュ・セッターや、ロングヘアード・ミニチュア・ダックスなどがいます。
柴犬の巻尾にはバリエーションがある?
背中にクルッと丸まった尾が乗った柴犬の巻尾は、柴犬の特徴ともいえるポイントの一つです。柴犬の巻尾は、実は様々なバリエーションがあることで知られています。
柴犬の巻尾の代表的なものをご紹介します。
右回りに尾が巻いている場合は右巻き、左回りに尾が巻いている場合は左巻きになります。
最後まで巻尾が巻かれておらず、先端が身体から離れたものを半巻きといいます。
尾全体と、尾の先端で二回クルクルっと巻かれている尾を二重巻きと言います。
背骨に沿って左右対称に尾が乗っている状態で巻かれている尾を車巻きと言います。
薙刀を横に向けた形で緩い傾斜の尾を薙刀尾と呼びます。
長さが短く、無い様に見える尾を無尾と言います。
尻尾をおいかけている理由は?
自分の尻尾をウーと唸りながら追いかけてクルクル回る、という行動はとても多いです。これには様々な原因があります。詳しくご紹介します。
◆ストレスの解消
ストレス解消のために、尾を追いかける行動をする犬も多いです。この場合は、比較的短時間で尾追い行動が終わるため、特に問題になることはありません。
◆ストレスから来る常同障害
何かしらの原因からストレスを感じたい犬が、常に同じ行動をしてしまうことを「常同障害」と言います。
常同障害の場合は、自分の尾に噛みつき、出血しても尾追いをやめないなど、ストレス解消とは違い、尾追いへの執着が存在します。ストレスからの常同障害は、豚の尾かじり(自身や、他豚の尾をかじる)も同様です。
◆てんかん
てんかんにより、尾が攻撃対象に思えてしまい、追いかけて噛みつくなどを繰り返す場合もあります。
てんかんは、脳波の検査などで検査することが出来ます。また、抗てんかん薬などで治療することも可能です。
◆痒み、痛み
痒みや痛みなど、犬が気になる症状がある場合に、尾に執着し、追いかけることがあります。寄生虫の寄生による陰部や肛門部の痒みなども多い症状です。
◆遊び
特に子犬に多い理由が、この「遊び」です。まだ自分の尾に気付いていなかった状態の子犬が、「何だろう」と尾の存在に気付き、確かめようと追いかけ走り回る遊びをすることが多いです。
子犬は身体のサイズも小さいですから、クルクルっと高速で回転している状態はとても可愛らしく愛らしい姿です。
尻尾の病気にはどんなものがあるの?
犬の尻尾の病気にはどんなものがあるのでしょうか?詳しくご紹介します。
◆尻尾の病気①痛みがある
犬の尻尾が下がっていたり、同時に震えるなどの症状がある場合には、身体のどこかに痛みがある場合があります。
特に尾を気にしている場合には、尻尾又はお尻の痛みであることが多いです。例として、外傷や、肛門嚢炎や肛門嚢の破裂などがあります。
◆尻尾の病気②骨折
どんなに細い尻尾でも、尾には骨があります。この尾の骨の脱臼(尾椎間脱臼)や骨折(尾椎骨折)は、尾を踏まれた、ドアに挟んだなど、生活の中でおきやすい怪我です。
◆尻尾の病気③馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)
脊髄の端部分(第五腰椎)から尻尾にかけての神経の束のことを、馬尾(ばび)と呼びます。この馬尾に何かしらの障害が起こる事を馬尾症候群と言います。
馬尾症候群は、痛みを伴うことも多く、神経症状が多く報告されています。尾を持ちあげることが出来ず、馬の尾のように、だらりと垂れさげてしまう状態もよくある症状の一つです。
◆尻尾の病気④ラットテイル
ラット(rat/大型のネズミ類)の尾のような、先端の脱毛が見られる尻尾の病気をラットテイルと言います。
ラットテイルは甲状腺機能低下症などの内分泌疾患が原因であることが多いです。
犬の尻尾は飼い主とのコミュニケーションツールでもある!詳しく知って犬の気持ちを理解しましょう
犬の尻尾は、感情表現を表すバロメーターや、身体のバランス維持、体温の維持(保温)、虫を追い払うなど、様々な役割を持ちます。
中でも、喜びや怒り、不安感や警戒心を表す尾の動きは、飼い主との貴重なコミュニケーションツールにもなると言えます。
尾の形には様々な種類があり、犬種や個体によって異なる尾の形を持ちます。
尻尾の病気には骨折や脱臼などの外傷のほかにも、馬尾症候群やラットテイルなど内分泌疾患や神経症状を伴うものもあります。
犬の尻尾は、沢山の役割を持つ大切な部位の一つです。犬の尾の働きをよく理解して、犬の気持ちを理解するように心がけましょう。
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