フィラリア症って何?原因は?
◆寄生虫感染による「フィラリア症」
犬を飼うにあたって、フィラリア症という名前の病気を聞いたことがあるでしょうか。
犬のフィラリア症は、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫による疾患のことです。フィラリアが犬の肺動脈に寄生することで、犬のフィラリア症は起こります。
フィラリアは糸状虫と呼ばれる様に、糸状の細いそうめんのような細長い虫です。
◆蚊による媒介が原因となる
犬のフィラリア症の原因は蚊です。日本では、アカイエカ、トウゴウヤブカ、ヒトスジシマカなど15種類以上の蚊が原因だと言われています。
フィラリア症に感染した動物を吸血した蚊の体内で、フィラリアは卵膜に包まれた幼虫の状態から感染幼虫に成長します。
感染幼虫となったフィラリアは、蚊が犬を吸血する際に体内に送られることで犬が感染するのです。
犬フィラリア症の症状は?
では、フィラリア症に感染するとどのような症状が出るのでしょうか。確認してみましょう。
◆咳が増える
多くの場合で、咳が増えるという症状で飼い主がフィラリア症に気付いているようです。
咳は日常を通して慢性的に増えます。人間のゴホッゴホッという咳と違い、犬は乾いた音でケェーッとえずくように繰り返す咳をします。
◆身体が疲れやすくなる
犬が感染すると、身体が疲れやすくなるという症状が出ます。そのため、元気が無くなる(元気消失)、寝てばかりになる、散歩に行きたがらなくなる、などの行動が見られます。
◆腹水
犬のお腹に水が溜まる(腹水)が起こります。お腹だけ垂れ下がるように膨れていることがあるため、動物病院などで指摘され、気付く方も多いです。
犬は腹水に圧迫されるため空腹に気付きにくくなり、痩せ衰える犬も増えます。
犬の腹水は注射器をお腹に刺し、溜まった水を抜きとりますが、腹水は繰り返すため定期的な通院が必要となります。また、犬の腹水が認められ、他にもフィラリア症を疑われる初見がある犬の場合には、特定検査を用いて感染の有無を確認します。
◆血液循環が悪くなる
フィラリア症はフィラリア虫が犬の心臓や肺動脈に寄生するため、血液の循環が阻害されます。そのため、血液循環が悪くなり、貧血を起こしたり、血管の塞栓、呼吸困難などを起こすことがあります。
犬が呼吸困難を起こすことや、血液循環が悪くなることで失神や意識混濁を起こすことも増えてきます。犬が血液循環障害を起こすと、死に至ることも少なくありません。
◆心不全
死に至る場合に多いのが心不全です。肺動脈の炎症などにより血圧が上り、右心が大きくなる右心肥大の状態になります。右心肥大が酷くなると右心不全の状態になってしまいます。
この心不全は一度陥ると元に戻すことはできないと言われており、一度症状が発現したら薬などを使用して上手に付き合っていくしかありません。
フィラリアの治療法は?
では、犬が感染してしまった場合の治療法にはどんなものがあるのでしょうか。治療法別にご紹介します。
◆外科処置による治療法
手術により、犬の体内からフィラリア成虫を取り出す治療法があります。頸静脈から細長い30cmほどの金属製のアリゲーター鉗子を使って、直接成虫を摘み取る方法です。
全身麻酔を使用し、手術のリスクもあることから、緊急性の高い場合に使用される治療法です。
◆内科療法による治療法
緊急性が高くない、高齢、体力の不安があるなどのパターンの場合の治療の多くで用いられる方法が内科療法です。フィラリア虫寄生により生じた症状の緩和をするための対症療法治療をすることが多いです。
治療に使われる薬剤は、血管拡張剤や血圧降下剤、利尿剤など症状により異なります。
◆ヒ素を使用した治療薬
治療薬に使われるイミトサイドはヒ素を使用した薬剤です。
イミトサイドは成虫を駆虫する薬剤ですが、実は2014年に販売終了になっています。そのため、現在では在庫を持つ動物病院でのみ使用可能です。
ですが、イミトサイドには犬の失神や呼吸困難、死亡などの重篤な死亡例が報告されているためリスクも高い薬です。
フィラリアの予防法は?
では、フィラリア症に感染しないためにはどうしたら良いのでしょうか。確認してみましょう。
◆フィラリア予防薬を使用する
日本で一番の予防法と言われているのが、予防薬を犬に定期的に使用する方法です。
予防薬には様々な種類があり、内服薬(錠剤、粉末、チュアブルタイプなど)、滴下タイプ、注射などが代表的です。多くの場合が月に一度犬に内服させる薬を使用しています。
期間は蚊の飛び始めから、いなくなった1ヶ月後までなので、地域により様々ですが、3~6月から11~12月まで内服を指示している動物病院が多いです。
内服薬にはフィラリアのみに効果がある薬や、ノミ・ダニ、鉤虫や鞭虫などの腸内寄生虫にも効果のあるタイプなど様々で、人間の薬同様に先発品と後発品(ジェネリック薬)があります。
愛犬がいま内服している薬が何なのかわからない、という飼い主の方は実は結構多いです。処方の際には必ず獣医師に確認するようにしましょう。
予防薬は、犬の身体にバリアを張り「蚊に刺されないようにする」薬だと思っている方が多いです。でも、実は全く違います。
予防薬は、蚊に刺されて犬の体内に入ってきた幼虫を駆虫するための薬です。そのため、実際には予防薬ではなく駆虫薬と言った方が正しいでしょう。
犬の体内に入った幼虫が成虫になるまでに1ヶ月ほどかかるため、予防薬は蚊の飛び始めからいなくなった1ヶ月後まで内服する必要があります。
◆蚊除けグッズを使用する
市販の犬用蚊除けグッズを使用することも、予防対策の一つとなります。犬用蚊取り線香や、アロマオイル、アロマスプレー、蚊除けバンダナや服などが販売されています。
人間用の蚊除けグッズは、香料が犬にはきつかったり、犬の身体に合わない場合も多いので犬用を使う様にしましょう。
しかしながら、100%の蚊除けというものは存在しません。そのため、必ず予防薬と併用して使用する予防法だと思ってください。
◆フィラリア予防薬に副作用はない?
薬である以上、気になるのは副作用です。
フィラリア予防薬は、きちんと検査を用い、投与しても適正であると認められた犬の場合に重篤な副作用はありません。軽微な副作用は下痢や軟便などです。
しかし、すでにフィラリアに感染している犬に対しては重篤な副作用を生じることがあります。その際の副作用には元気の消失、嘔吐、下痢、呼吸困難、血管障害などです。
そのため、毎年予防薬を服用させる前には検査が必須であり、昨年の分を飲み忘れていたからあげてしまおうなどという気軽な投薬は絶対に避けた方が良いのです。
フィラリア予防薬の前にする検査って何のため?
犬に予防薬を処方してもらうには、必ず血液検査が必要です。この検査は何のために行っているのでしょうか。
フィラリアの血液検査には幾つかの方法があります。
◆フィラリア幼虫の感染を判定する検査方法
簡単に確認できる方法もありますが、成虫に感染していても陽性にならないケースもあるため、この方法だけでは確定診断は難しいとされています。
・直接法:血液を直接顕微鏡で確認する方法
・ヘマトクリット法:採血した血液を遠心分離して検査する方法
・フィルター集中法:検査キットを使用し、フィルターで血液を漉して検査する方法
・アセトン集中法:アセトンを使用した薬液を使用し遠心分離させて検査する方法
◆フィラリア成虫の感染を判定する方法
検査キットを使用し、心臓に成虫が寄生しているかを検査する方法です。
成虫寄生していても幼虫がいない場合(感染成虫が同性のみ、不妊など)、幼虫を検査する方法では陰性になってしまいますが、成虫感染の検査だと陽性に判定されます。
多くの動物病院で使用されている方法で、検査は5分程度で終わり、採血と検査代(主に検査キット代)がかかります。
また、超音波エコーを用いた検査で成虫の数を確認する方法を併用する場合も多いです。
犬のフィラリア症は予防薬でしっかり予防しましょう!
この記事では犬のフィラリア症についてご紹介しました。
犬のフィラリア症は、蚊が媒介するフィラリア(犬糸状虫)という寄生虫による疾患のことです。フィラリア症に感染すると、元気の消失や貧血、血管障害など重篤な症状が出るほか、命を落とすこともあり、とても怖い病気です。
犬のフィラリア症は、予防薬という名目の駆虫薬を使い感染予防することができます。
今回ご紹介した記事をしっかりと読んで、犬のフィラリア症について知り、予防をするようにしましょう。
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