アルファシンドロームとは?
◆病気ではなく問題行動!?アルファシンドローム(権勢症候群)って?
アルファシンドローム(権勢症候群)とは、家族の中で犬が「自分が一番偉い」「家族は下の地位だ」と、勘違いしてしまった状態のことをさします。
アルファシンドローム(権勢症候群)と聞くと病気の一つなの?と思ってしまいそうですが、これは病名ではなく、症状のことをさす言葉である、という旨が日本警察犬協会のホームページにも記載されています。
つまり、アルファシンドロームとは、犬の病気ではなく、犬の問題行動の一つだということです。
アルファシンドロームの状態に陥った犬は、一般的に飼い主さんに対して攻撃的になったり、その他にもあらゆる問題行動を起こすといわれています。
飼い主さんを困らせる行動が続くことで、愛犬を飼い続けるのを困難に感じてしまったり、絶望的な状況を招く可能性もあるアルファシンドローム。軽視できない症状であることは間違いありませんね。
しかし、このような状況に陥るには理由が必ず存在します。愛犬の行動の意味、日常生活で飼い主さんが起こしている過ちなど、アルファシンドロームの原因をみつけて解決していけば、決して治らない症状ではないのです。
◆アルファシンドロームは犬のしつけに根付いた考え方でもある
犬の問題行動、それが起きている状態をアルファシンドロームと呼びますが、古くから根付いた犬のしつけに対する考え方自体をもさしているといえるでしょう。
リーダーシップの強い犬が群れの頂点に立つ、という性質を利用し、厳しくしつけを行うことが犬のためになる。このような考え方自体が、アルファシンドロームだともいえるのです。
飼い主さんが犬よりも権威をもっていなければ、犬はいうことを聞かない。厳しくしつけをしなければ、犬は人間よりも権威を得てリーダーになろうとする。このような考え方が昔から存在しており、未だに知られています。
◆アルファシンドロームを否定する考えも?
しかし近年、このようなしつけの方法が間違いである、という正式な発表が学会でなされています。
これがアルファシンドロームに対する否定論の大きな理由の一つともなりますが、後に詳しく後述していきますね。
アルファシンドロームに基づいたリーダー論は、元々、犬の祖先である狼の生き方が反映されたものです。確かに犬の祖先は狼だという事実は有力ですが、これまでに生きてきた過程は違います。
犬のほとんどは野生時代を経て、人間と共生する道を辿ってきました。その中で、人間のパートナーとして生活できるように進化してきたといっても過言ではないのです。
古くからあったリーダー論は、犬にとって確かに信憑性に疑いがあるとも考えられますよね。
アルファシンドロームの犬の行動は?
一般的に、アルファシンドロームの犬にみられる行動とはどのようなものなのでしょうか。実際にどのような行動をさすのか、まずはチェックしてみましょう。
◆アルファシンドロームの犬にみられるとされている行動例
・散歩で自分の行きたい方向へ行こうとしたり、飼い主さんより先に歩く。
・他の犬をみたり、すれ違うと吠える。
・散歩中にリードを咥える。
・飼い主さんの言うことを聞かない。
・飛びつくことが多い。
・自分の物を唸ったりして守ろうとする。
・飼い主さんに対してマウンティングする。
・オシッコをかける。
・遊んだりじゃれたりしながら、飼い主さんの手を噛む。
・呼んでも来ないで無視する。
・食事中に唸ったり威嚇する。
・散歩の途中で動かなくなる。
・排尿、排便後に地面を引っ掻くような行動をみせる。
・人間の肩の上にのしかかる。
・ソファやベッドでどかそうとすると怒って威嚇する。
◆アルファシンドロームが原因なのか?
問題行動例を上記の通り紹介してきましたが、これらは全てアルファシンドロームが原因となっているのでしょうか。
一つ一つみてみると、これらの問題行動が「愛犬がリーダーになろうとしている」「自分の地位が一番上であると勘違いしている」ということが原因であるとははっきり断言できません。
いずれも、飼い主さんと愛犬との信頼関係が築けていない状態であったり、単に訓練・練習不足である、といった項目も中にはあるのではないでしょうか。
更に、ストレス行動としてよくみられる行動も、いくつか含まれていますよね。
日常生活において飼い主さんがとっている行動が原因で、愛犬がアルファシンドロームと呼ばれる行動に至っているケースも少なくないでしょう。
例えば、呼んでも来ないケースでは、原因として訓練不足や飼い主さんとの信頼関係ができていない、飼い主さんが愛犬に好かれていない、などの理由が挙げられます。
マウンティングや散歩中にリードを咥えるといった行動などは、ストレス行動として珍しいものではありません。
食事中に威嚇される場合は、飼い主さんの日常的に愛犬の物を取り上げるような行動の積み重ねによって、その物に対する執着力が強くなってしまった可能性も考えられます。または、自分の物を守ろうとする本能が関係している場合もあるでしょう。
オシッコを掛けたり、排尿排便後に地面を引っ掻く行動も、犬が本能としてもっている行動の一つです。
アルファシンドロームは否定されている?
前述したように、アルファシンドロームは正式に学会で否定されています。アメリカ獣医動物行動学会、ドッグトレーナー協会によって、2000年代に正式な発表がされているのです。
アルファシンドロームに基づいた犬のしつけ方法が間違いであった、という結論に至ったわけですね。
そもそもアルファシンドロームは、犬の祖先である狼の生き方を参考として確立されました。
狼の群れはヒエラルキー社会である、強いリーダーの元に形成される。若い個体はトップになるために、順位争いを繰り返している。このような考え方がされていたのです。
そして、狼を祖先にもつ犬にも同じことがいえるだろうとの結論に至り、現代にまで浸透したのがアルファシンドロームに基づく犬のしつけ方法だというわけです。
しかし、狼の研究が進むと、リーダーだとされていた個体は両親であること、他の個体は血縁関係のある子供であったことが判明しました。狼の群れは支配関係でなく、自然な親子の上下関係で形成されていることが明確となったのです。
犬が狼を祖先にもつことは確かでも、人間との生活を続けてきた大半の犬にとっては、群れの中の順位付け、リーダーに対する意識は更に希薄であることは想像がつきますよね。
犬をしつけるためには、飼い主がリーダーであることを示さなければいけない、しっかりとした主従関係を作らなければいけない、というようなしつけに対する考えは、最早、時代錯誤の古いしつけ方法だといわれても仕方がないでしょう。
アルファシンドロームだ!と思う前に、原因を探そう
犬にはそれぞれ個体差があり、犬種ごとに大まかな性格は挙げられますが、それが全ての犬に当てはまるわけではありません。人間がそれぞれ違う性格をもつように、犬にだって個性があります。
まずは、愛犬の性格をよく知ること、信頼関係を培って意思疎通ができるようになることが大切です。
問題行動が続いたら、「アルファシンドロームだ、どうしよう!?」と焦るのではなく、その行動を起こした理由をみつけなくてはなりません。原因が飼い主さんにあるなら、その問題を解決していけばよいのです。
愛犬がストレスを抱えているのなら、それを解消させてあげたり、軽減できるよう努めましょう。
訓練が足りないのであれば、その子の性格に合わせたやり方を模索して、辛抱強く続けることが重要です。
辛く厳しいしつけが全てだとは、私自身も思いません。
犬の習性・本能・性格を、しっかりと理解したうえで、愛犬との生活を見直してみてくださいね。
まとめ
愛犬が問題行動を起こすケースは多々あります。実際に、愛犬のそのような行動に悩んでいる飼い主さんも多いでしょう。
しかし、アルファシンドロームだ!と考えるのではなく、一つ一つの行動にどのような理由があるのか、何が原因であるのかを究明することが大切です。
「愛犬が自身をリーダーだと思っているから言うことを聞かない。」それよりも、飼い主さんの行動に何らかの原因があるから言うことを聞かない、愛犬自身がわがままになっている、といった理由の方が自然だと感じられると思います。
問題行動の修正は、愛犬との生活を送る上でもちろん避けては通れません。愛犬との生活に悩みを抱えている方は、改めて愛犬の行動を観察する、飼い主さん自身の行動を顧みることから始めてみましょう。
信頼関係を築きあげること、意思疎通ができること、ストレスを感じさせない生活を送らせてあげることを、常に頭の隅においてくださいね。
体罰を与えたり、恐怖で支配しようという考えは、確実に間違っています。とはいえ、愛犬のわがままを放置して甘やかしたり、してはいけないことを悪いことだと教えないのはよくありませんよ。
基本的なしつけ、適切な社会性を身に着けさせるのは、飼い主さんの務めです。その場合にも、常に愛情を持って愛犬に接することを忘れないでくださいね。
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