1.犬の歯に歯石がつく理由
1-1.歯石ってどんなもの?
1-2.犬には歯石がつきやすい!?
1-3.犬種によっても歯石の差がある
2.犬の歯石の取り方
2-1.自宅で歯石を取る方法
2-2.病院で歯石を取る方法
3.お家でできる歯石対策
3-1.食事の見直しをしよう!
3-2.アイテムを活用して歯石対策に取り組もう!
4.まとめ
犬の歯に歯石がつく理由
◆歯石ってどんなもの?
歯石とは、歯垢が放置されて固まったもののことをいいます。歯垢のことをプラークとも呼びますね。
歯垢といわれると、食べカスのことだと認識してしまう方も多いでしょう。しかし正確にいうと、歯垢とは歯に存在する細菌のことを指すのです。
愛犬の食事後、大体6~8時間程経つと歯の表面にネバネバしたものができます。これが、菌が付着・増殖したもので、歯垢の正体というわけです。
食べカスは、この細菌の餌となります。特に糖分は、細菌の餌になるといわれています。糖分が多めの食事やおやつを摂取している犬は、歯垢ができやすいといえるでしょう。
この歯垢が放置されると、唾液中のミネラルが沈着し、3~5日程で石灰化します。これが「歯石」です。
ちなみにこの歯石、リン酸カルシウム80%、食ベカスや微生物10%、水分10%ほどの割合で構成されているそうです。
犬の歯に歯石がつくと、歯が黄色みを帯びているように見えます。触るとザラザラしたものが付着しているのが分かるでしょう。このまま放置すると、どんどん歯垢が上乗せされていく形になってしまいます。
歯垢の状態であればまだ軟らかいので、歯ブラシなどでのブラッシングで除去することが可能です。しかし、歯石は既に石灰化されているもの。この段階になると、ブラッシングだけでは容易に除去することは難しいでしょう。
◆犬には歯石がつきやすい!?
犬も人間同様に歯垢や歯石はつきますが、その口内環境には大きな違いがあります。人間の口の中のPHが「弱酸性」であるのに対し、犬の場合は「アルカリ性」なのです。
アルカリ性の口内環境では、雑菌の繁殖がしやすい為、歯石の形成が進みやすくなってしまいます。人間と比べると、犬の方が歯石はつきやすいというわけですね。ちなみに、弱酸性では虫歯ができやすいといわれています。
とはいえ全ての犬種、個体において歯石がつきやすいというわけではなく、犬種や習慣によって、そこには差が生じるようです。
例えば、犬用ガムを好む子であったり、日常的に硬いおもちゃなどを噛んで遊ぶのが好きな子は、歯磨き効果を得られますよね。反対にガムが嫌い、おもちゃを噛んで遊ばない、という個体であればその分歯垢が付く速度は早まるというわけです。
◆犬種によっても歯石の差がある
犬種ごとにも歯石の付き方には差があり、小型犬は歯垢や歯石が比較的つきやすい、中~大型犬は小型犬よりもつく速度が遅いといわれています。また、ブルドッグなどの短吻犬も、歯石の付く速度が小型犬よりも遅いようです。これには、歯並びや唾液量が関係しています。
唾液には、雑菌の繁殖を抑える効果をもつ成分が含まれている為、唾液量の多い犬種は口内を清浄する力が強いといえます。このことから、大型犬や短吻犬は歯垢がつきにくいといえるのです。
更に大型犬の場合、大きな歯とゆとりのある歯並びをもっています。これにより、食べカスが詰まりにくく、唾液が歯全体にいきわたりやすいという利点もあるといえるでしょう。
反対に小型犬は、ぎっしりと小さい歯が並んでいるため、雑菌が繁殖しやすい歯間部分が多く、唾液量も少ないので、口内は歯垢のつきやすい環境になっているというわけです。
犬の歯石の取り方
◆自宅で歯石を取る方法
愛犬の歯石を自宅で取るためには、「スケーラー」という道具を準備する必要があります。また、「鉗子」も併せて用意しておくと、歯石のレベルが酷い箇所や、大きな塊となっている歯石を取るのに便利です。
歯石取りの道具を準備したら、以下の順に行いましょう。
①愛犬の頭を動かないように固定します。可能であれば二人体制で行うのが理想です。一人は愛犬を抑える役、もう一人は歯石を取る役で取り組みましょう。
②まず口の端に親指を、口の上部に人差し指を入れます。これにより、歯茎がむき出しになる状態をつくりましょう。歯石取りを一人で行う場合は、残りの指三本で愛犬の頭を固定します。
③人差し指で歯茎を上に持ち上げます。そしてもう片方の手で、歯にスケーラーを当てて歯石を削り取りましょう。この時、歯茎を傷つけないように歯の根元から先端に向けて、スケーラーを動かすようにしてください。歯のくぼみ・歯間などの箇所には、先端の尖った部分を使用しましょう。
④歯石の酷い箇所・大きな塊となっている歯石部分には、鉗子を用います。鉗子を歯石に当て、歯の表面を滑らせるようにして歯石をとりましょう。
自宅での歯石取りに便利な道具として、歯石除去スプレーや、歯石対策ジェルなども市販されています。スプレーによって歯石を浮かせて取りやすくするなど、商品によって特徴があるので、愛犬にあったアイテムを探してみてくださいね。
◆病院で歯石を取る方法
自宅で歯石を取る方法を紹介しましたが、基本的に歯石取りは獣医さんやトリミングサロンなど、プロにお任せするのが一番安心です。
無麻酔での歯石除去を、トレーニングを受けていない人が行うことによって起こる弊害が、近年問題視されていることも事実です。歯石を取る際に歯を傷つけてしまうと、歯石除去はできたとしても、表面の傷によって雑菌の繁殖を促してしまう可能性もあります。
歯石取りは口腔内の施術です。リスクを減らすためには、やはり歯石取りに精通している獣医さんにお願いするのが勧められます。
動物病院での歯石取りでは、麻酔の有無を選択することが可能です。全身麻酔・局所麻酔の2種類があります。
全身麻酔であれば、犬が暴れるなどして口内を傷つけるのを防げます。愛犬にとっても、肉体的苦痛・精神的苦痛を感じずに済むというメリットはあるでしょう。
しかし持病があったり、体の弱い個体にとっては、麻酔による重度の合併症や麻酔死などのリスクがあるのも事実です。
目視で確認できる歯石除去は無麻酔でも可能ですが、歯周ポケットなどの箇所には、無麻酔での歯石除去は困難だといえます。歯周病が進行していたり、歯周ポケットの歯石取りをする場合は、やはり全身麻酔が必要となってくるでしょう。
愛犬の状態をしっかりと把握して、歯石取りの方法については、事前にしっかりと獣医さんと相談して決定しましょう。
ちなみに、動物病院での歯石除去費用は麻酔の有無で大きく差が出ます。
全身麻酔での施術の場合は、大体2万円~5万円程。無麻酔であれば、大体3千円~1万円程が一般的です。もちろん病院や行う検査によっても費用に差が出ますので、事前にきちんと確認しておきましょう。
トリミングサロンで歯石取りを行う場合、トリマーさんは麻酔を扱えないため、麻酔なしの歯石除去となります。
口を触られるのに慣れていない子は、トリミングサロンでの歯石取りが出来ない場合もあります。まずは普段利用しているトリミングサロンで、歯石取りを行っているか確認してみてください。
費用は大体1000円~3000円程度かと思いますが、こちらもサロンによって差はありますので、事前に確認してみてくださいね。
お家でできる歯石対策
◆食事の見直しをしよう!
習慣的な見直しで歯石対策に効果をもたらすことが可能です。例えば普段の食事に注目してみましょう。
愛犬に与えているフードはドライタイプでしょうか?それともウェットタイプでしょうか?実はウェットタイプの方が、ドライタイプのフードよりも歯垢がつきやすいといわれています。
ウェットタイプのフードには水分量が約75%あり、更にゲル状であったり、増粘安定剤が添加されています。このため、どうしても歯につきやすいのです。
対してドライタイプのフードの水分量は約10%です。また、フードを噛む回数が多くなるので、ウェットタイプのフードを食べるよりも唾液が分泌されます。水もよく飲むようになるでしょう。この結果、口内のウォッシング効果が得られるので、ウェットタイプのフードよりも歯垢が付きにくいというわけです。
そしてもう一点、普段食べているフードの食物繊維の量に着目するのも効果的といえます。
食物繊維には、歯の研磨作用・唾液の分泌促進などの作用があるのです。食物繊維の配合率が高いフードを与えることで、歯周病の予防にも有効となります。一般的なフードでは3~4%以下の場合がほとんどでしょう。
ちなみに食物繊維は、栄養成分表示において「粗繊維」と記載されていますので、一度チェックしてみてくださいね。
普段与えているフードの他に、野菜やサプリメントなどで食物繊維を与えるのも良いでしょう。
ただし、与えすぎると下痢などの健康被害をもたらす可能性もあります。手作りご飯は栄養素のバランスを取るのも難しいので、愛犬の様子を見ながら、正しい与え方をするよう気を付けてください。
◆アイテムを活用して歯石対策に取り組もう!
人間同様、デンタルケアの基本は歯磨きです。現代では、犬用歯ブラシも色々なタイプが販売されていますよね。
指に嵌めるタイプや、360度ブラシが付いているものなど、愛犬にあったアイテムを選びましょう。使い捨ての歯磨きシートなどもありますので、外出先での利用や手軽に使用したい場合には重宝しますよ。
犬の歯は人間と比べてエナメル質が薄いので、いずれも柔らかい素材を選ぶのをお勧めします。
他にも、飲み水に入れるタイプの液体歯磨き、デンタルケア効果をもつサプリメントやガムなど、その種類は様々です。
犬用おやつとして販売されている、骨付き肉にも歯ブラシ効果がありますよ。
愛犬の普段の遊び道具として、噛んで遊ぶタイプのおもちゃを用意するのもお勧めです。噛むことで唾液が分泌されるので、口内のウォッシング効果が得られます。
デンタルケアを目的としたおもちゃも多数ありますので、愛犬の好みのタイプを探してみてください。
まとめ
歯石取りは、愛犬と飼い主さんの両者にとっても大変なこと!個体によっては口を触られるのを嫌がったり、自宅では歯石取りがとてもできない!という家庭も少なくないでしょう。
病院で歯石取りを行うにしても、高額な費用がかかりますし、何といっても麻酔の負担は大きいです。
最善策は、日常的に口内・歯のケアを続けて歯石が付かないように気を付けることだといえるでしょう。歯石となる前に、歯垢の除去を徹底するのです。
愛犬にあったアイテムを選び、健康的な口内環境の維持につとめていきましょう!
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