1.聴導犬とは?
1-1.具体的にどんなことをするの?
1-2.聴導犬の歴史は?
2.聴導犬になるにはどんな訓練をするの?
2-1.日本聴導犬協会の聴導犬育成ステップ
3.試験はどのくらいの割合で合格できる?
3-1.聴導犬の候補犬選抜方法とは?
聴導犬とは?
聴導犬(ちょうどうけん)
聴覚障害者の生活を安全で安心
できるものにするために、生活で
必要な音をタッチして教え、音源
に導く身体障害者補助犬のこと。 pic.twitter.com/Ue6t1dVMa0— カイン ✝️ (@CHRScoabbaocs) August 18, 2020
聴導犬とは、聴覚に障害がある人に「音」を知らせ、必要に応じて音源まで誘導をしたり、生活のサポートなどをする補助犬です。
ちなみに補助犬とは、身体に障害をもつ方をサポートする犬のことで、盲導犬、介助犬、と合わせて、今回紹介する聴導犬の3種類があります。
人の耳となり働く聴導犬。それでは具体的な役割・仕事内容をみていきましょう。
◆具体的にどんなことをするの?
聴覚障害をもつ人のために、生活に必要な音を知らせてサポートする聴導犬。身体にタッチするなど、色々な動作を使って、ユーザーの耳のかわりとしての役割をこなします。
例えば、携帯等のメール着信音・FAXの着信音・キッチンタイマーの音・ノックの音・玄関チャイムの音・目覚まし時計の音、警報音などを、ユーザーに知らせて音源まで誘導してくれるのです。
屋外であれば、窓口での順番待ちの時に鈴を鳴らしてもらって、名前が呼ばれたことを知らせる、という仕事もこなしています。
音が聞こえないことで感じる不安を軽減して、耳の不自由なユーザーの安全で快適な生活を支えることが、聴導犬の役割なのです。
◆聴導犬の歴史は?
聴導犬は、アメリカが発祥の地とされています。
聴覚障害をもったある少女の飼い犬が、何も教えずとも音を知らせることができた、という事実が基になっているという話があります。
さらに、別の聴覚障害を持った女性の飼い犬も音を知らせることができ、他の犬でもトレーニングをすれば音を知らせられるようになるのか?と臨んだことが聴導犬の基になっているともいわれています。
いずれにしても、1970年半ばには、聴導犬育成の試みがスタートしているのです。
ちなみに日本においての聴導犬の歴史は1980年代に入ってから始まり、身体障害者補助犬法が施行されたのは2002年です。
聴導犬になるにはどんな訓練をするの?
聴導犬の訓練は、1~2歳までの1年間で行われます。このように、基礎訓練・社会化訓練・聴導動作訓練・合同訓練が実施されるのです。訓練士による訓練の他、ユーザーと一緒に行う合同の訓練をも必要とします。
基礎訓練
座れ・伏せ・待て、などのコマンド訓練。
社会化訓練
商業施設・乗り物などに慣らす訓練。
聴導動作訓練
ユーザーが必要とする音を知らせる訓練。
合同訓練
ユーザーと候補犬との合同訓練で、犬の飼育方法・基本訓練・聴導動作を訓練する。
なお国内において、聴導犬を育成できる「第二種社会福祉事業届出団体」は21団体あり、認定できる団体(厚生労働省の指定法人)は6団体あります。
その団体の中から、日本聴導犬協会の育成ステップを紹介していきましょう。
◆日本聴導犬協会の聴導犬育成ステップ
①生後2~36カ月の候補犬選び。(主に保護犬などから)
②ソーシャライザー宅において、第1次社会化(2~10ヶ月間)。
③日本聴導犬協会にて、適性の中間チェック。
④ソーシャライザー宅において、第2次社会化(2~4ヶ月間)。毎月気質テスト実施。
⑤候補犬訓練前のテスト。
⑥候補犬と希望者とのお見合い。(⑥~⑧の順番は逆になる場合も有り)
⑦訓練(最低でも4ヶ月間)。
⑧日本聴導犬協会内、松木市で、候補犬訓練修得テスト。
⑨希望者との滞在(共同)訓練。(協会内で14日間)
⑩認定試験が受けられる段階との判断が出るまで、希望者宅での自己訓練。(数カ月)
⑪希望者と候補犬との、身体障害者補助犬認定試験の受験。(厚生労働大臣指定法人にて)
こうしたステップを踏み、15回以上ものテストを受けて合格すると、ユーザーとの生活が始まります。
最初の1年間は様々な経験を重ねながら、互いの信頼関係を築いていくとても大切な期間となるのです。
聴導犬としては、大体2~10歳までの8年間活動して引退となります。
10歳を過ぎると、ボランティア宅・一般家庭・元パピー(ファミリー)宅・引き続きユーザー宅、のいずれかで飼い主さんとなった人と余生を過ごすこととなるようです。
ちなみに、ユーザー宅でペットとして余生を送る子が90%だそうですよ。
試験はどのくらいの割合で合格できる?
数々の訓練やテストが必要となる聴導犬。やはり全ての犬が、訓練を乗り越え、合格できるわけではありません。
米国聴導犬協会においては、最終的に聴導犬として認められる犬の割合は、4匹中1匹に留まるといわれているそうです。やはり個々の性格によっても向き・不向きが結果として現れる場合もあるのでしょう。
しかし聴導犬訓練を行うための候補犬にも、選抜方法があります。どのような方法で行われるのか、紹介していきましょう。
◆聴導犬の候補犬選抜方法とは?
候補犬の選抜方法は、主に以下の3つとなります。
① 気質・血統・病気などを考え、聴導犬に向く犬を自家繁殖。生後2ヶ月でパピー・ファミリー宅に預けて、1歳まで過ごす間に人間への信頼感を育み、人との社会生活に必要となる基本的なマナー・しつけを身に付ける。
② 動物愛護センターから引き取った犬を、適正評価して選抜する。
③ユーザー希望者が既に犬を飼っている場合、その愛犬の適正評価をして選抜する。
聴導犬になれる犬種は決まってるのか?
聴導犬になれる犬種は、限定されてはいません。小型犬を含めた、様々な犬種が聴導犬として活躍しています。
盲導犬であれば、視覚に障害のある方を誘導するために大きな体が必要となります。介助犬は、指示された物を咥えて運ぶための大きな口が必要なため大型犬が中心です。
しかし聴導犬の音を知らせるためのパフォーマンスは、ユーザーへのタッチや前脚を上げる仕草のため、体の大きさは関係ないのです。
聴導犬に限ったことではありませんが、社会性が求められる場面において適切な行動ができること、飼育負担感の少ない穏やかな性格であることが重要な条件となります。
◆どのような性格が求められるのか
補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)に求められる共通の性格が以下の内容となっています。
◎人に対して愛着がある
◎人と一緒に何かを楽しむのが好きである
◎人との性格に積極的に関わろうとする
◎順応性が高く環境の変化に左右されずに、常に自分らしくいられる
◎集中力や率先力がある
これに加えて聴導犬には、以下のような性格要素が求められています。
●指示がなくても、自分から仕事を開始できること
●ユーザーが必要な音に対して、率先力があること
自ら仕事を始められるという点は、盲導犬や介助犬とは違う部分ですね。
聴導犬には、仕事を開始するタイミングを自分で判断する必要があるのです。例えば、赤ちゃんがいるユーザー宅では突然、赤ちゃんが泣き始める場面に遭遇するでしょう。そんな場合も即座に反応して泣き声を知らせるために、自己判断で行動開始をしなければいけません。
まだまだ世間に情報が行き渡っていない聴導犬ですが、こんなにも立派な役割をこなしている補助犬なのです。
聴導犬にはどの犬種が多く活躍しているか?
サイズに規定がないため、世界中で様々な犬種が聴導犬として活躍しています。
例えば、ミックス犬やトイ・プードル、パピヨン、シー・ズー、ラブラドール・レトリーバーなど、小型犬から大型犬まで、たくさんの種類の犬達が聴導犬としての役割を担っているのです。
ちなみに国内の聴導犬となったのは、シェットランド・シープドッグです。そして、身体障害者補助犬法の施行後、それに則って初の認定を受けたのは柴犬だそうですよ。
まとめ
聴覚障害をもつ方の耳の役割を担う聴導犬。ユーザーさんの生活を支えて、安心な毎日を送るサポートをするために、日夜活躍してくれている立派な犬達です。
ちなみに聴導犬の外出時には「聴導犬」と記された、オレンジ色のケープ・マントなどを着用しています。
この表示は仕事中というサインなので、聴導犬に対して、見つめる、触るなどの行為は絶対にしないようにしてください。ワンちゃんは役割に対して集中している状態です。ユーザーさんと聴導犬の両者に、迷惑をかけることとなりますので注意しましょう。
聴覚障害は、見た目では分かりにくい障害の一つです。
そのために必要なサポートが受けにくいのですが、聴導犬が聴覚障害の目印ともなり、サポートを受けやすい状態を生み出してくれます。ユーザーさんが自ら音が聞こえないということを、毎回説明する手間も省いてくれるのです。
聴導犬は音を知らせるという仕事に加えて、聴覚障害の目印になるという役割も担っているというわけですね。
聴導犬への理解を深めること、聴導犬の役割や情報を知ることで、私たちができることも増えてきます。
ユーザーさんに補助が必要なシーンを見掛けた場合は、積極的にサポートをしましょう。
また、聴導犬の育成費用には1頭300万円以上がかかるといわれており、その多くを寄付・募金に頼っています。財政基盤が安定せず、聴導犬を含む補助犬・スタッフの数が中々増やせないという現実があるのです。
日常では補助犬との繋がりがない私たちにも、できる支援があります。
是非、聴導犬協会のHPなどを確認してみてくださいね。
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