1.犬にも鍼灸治療が効果的なのか
1-1.犬に鍼灸治療を受けさせるメリット
2.鍼灸とはどんな治療?
2-1.鍼灸治療を始める前に行うこと
2-2.鍼治療
2-3.灸治療
3.鍼灸治療を行うことのできる病気
3-1.脳や脊髄の病気
3-2.関節の病気
3-3.循環器系の病気
3-4.呼吸器系の病気
3-5.消化器系の病気
3-6.泌尿器系の病気
3-7.皮膚の病気
4.鍼灸治療を受けさせる際に注意すること
4-1.日頃から犬の状態を観察しておく
4-2.治療に時間がかかる
4-3.西洋医学の動物病院で治療をしているとき
4-4.早期に治療を受ける
犬にも鍼灸治療が効果的なのか
犬にも鍼灸治療は効果的です。期待できる効果は、痛みの緩和、運動機能の回復、自律神経の調整などです。
人間と同じように、犬にも全身にツボがあります。人間のツボは361個あり、犬も同じだけあると言われています。人間が肩こりや腰痛、体調不良で鍼灸治療を受けるように、犬も鍼灸でツボを刺激して体調を整えることができるのです。鍼灸でツボに刺激を与えることにより、生命活動を行うのに必要なエネルギーの流れを整えます。犬もエネルギーの流れを整えることで、運動機能の回復、自然治癒力や免疫力の向上、痛みの緩和の効果が出てきます。
特に高齢犬は生命エネルギーが足りていないことが多いので、鍼灸治療により、エネルギーの流れを整えて、体の不調の改善ができます。鍼灸治療は高齢犬の健康管理にも適しています。
また、明確な病名がなくても、どことなく体調が思わしくないという場合でも症状の改善が可能です。鍼灸治療は犬のツボを刺激し、代謝を良くして体調を整えます。
犬の鍼灸治療は未病の予防にもなるのです。
◆犬に鍼灸治療を受けさせるメリット
犬に鍼灸治療を受けさせる最大のメリットは、体への負担が少ないことです。
鍼灸治療は無麻酔で行います。手術のように犬の体に負担がかかるような処置はしません。薬や手術で病状の改善のなかった犬や麻酔がかけられない病状の犬、体力が衰えた高齢犬も体への負担が少ない治療を受けることができます。
鍼灸とはどんな治療?
まず、鍼灸というのは東洋医学の治療の1種です。
東洋医学は、病気やケガの原因が何なのか、生活環境や食事、体質など、体全体のバランスを診て突き止めます。全身の状態を把握して、体の不調を内側から根本的に治す治療法を用います。
東洋医学が考える健康というのは、「気・血・水」が過不足なく体中を巡っている状態をいいます。東洋医学では、特に「気」が重要になってきます。「気」は、生命活動を行うエネルギーのことです。
気は体内にある経絡というものを通って臓腑や筋肉などに働きかけています。経絡には、気の出入り口があり、それがツボになります。そのツボを鍼灸で刺激することにより、気の流れを整えることで、体調が改善するのです。
犬も鍼灸でツボを刺激し、生命エネルギーの流れを整えて、病気の改善、自然治癒力、免疫
力を高めていきます。
鍼灸の鍼とは細い針をツボに刺すことで、灸はヨモギの葉からできたモグサというものをツボの上に置いて、皮膚に熱刺激を与えることです。どちらもツボを刺激して神経の巡り、血流を改善し、体の内側から体調を整える目的で行います。
一般的には、余分なものを排出するのが鍼、熱でエネルギーを足すのが灸になります。
◆鍼灸治療を始める前に行うこと
犬に鍼灸治療を行う前に、脈診をします。
脈診とは、犬の脈に触れて、拍動の強さや速さ、硬さ、太さ、浮き具合などを把握して、病気の状態を確認することです。東洋医学では、生命エネルギーの状態が脈に現れるとされています。脈診で、臓腑の状態もわかります。また、食事や生活環境を見極めて治療をしていきます。
脈診で体全体の状態を把握し、どこから体の不調が起きているのか確認します。そして、鍼灸するツボを決めていくのです。同じ病気でも犬によって刺激するツボは変わってきます。
◆鍼治療
犬の鍼治療で使う鍼は、注射針とは別ものです。
鍼治療の鍼は先端が丸くなっており、皮膚に刺した後も筋繊維や血管をかき分けるようにして入っていきます。そのため、痛みを感じることもほとんどなく、出血することもありません。
太さは0.12㎜~0.24㎜と髪の毛程度の太さです。
長さは1㎝~9㎝と幅があり、一般的なものはステンレス製で、金属製の鍼もあります。使用する鍼は犬の病気の状態や刺すツボによって変わります。鍼は使い捨てです。
一般的な鍼治療の方法は、鍼をツボに刺してすぐに抜く方法や鍼をしばらく刺したままにしておいて、徐々にツボに刺激を与えていく方法です。また、低周波をかけて、血流を良くする電気鍼もあります。火鍼といって、火をつけた鍼をツボにさす方法や水鍼という薬液をツボに注入する方法もあります。
どの方法でツボを刺激していくのかは、犬の病状や動物病院によって違います。
◆灸治療
犬の灸治療は、直接灸と間接灸があります。直接灸は一般的に獣医師が行う灸治療で、ツボの上に適切な大きさ、固さのモグサに火をつけて、熱でツボを刺激していきます。
間接灸は飼い主が自宅で行うこともできます。
間接灸を行う際には、棒灸というモグサを棒状に固めたもの、棒灸を差して固定するものを用意します。棒灸をホルダーにセットし、火をつけます。犬の皮膚にガーゼをあて、その上にホルダーを置きます。間接灸はツボが見極めることができなくても、広い範囲でツボを温めることが可能な灸治療になります。
鍼灸治療を行うことのできる病気
鍼灸治療を行える病気は幅広いです。
そのなかでも、椎間板ヘルニアや関節炎などの慢性疾患には高い効果が期待できます。特に鍼灸での椎間板ヘルニアの治療は多く行われています。
西洋医学の動物病院だと、椎間板ヘルニアの治療は鎮痛剤の投与か、外科手術です。鎮痛剤や全身麻酔は犬の体に負担をかけます。また、手術をしても治らないこともあります。鍼灸での椎間板ヘルニアの治療は、犬の負担が少なく、高い効果が期待できるのです。
鍼灸治療を行える病気を以下にまとめました。
◆脳や脊髄の病気
椎間板ヘルニア、てんかん発作、脳炎、麻痺など
◆関節の病気
股関節形成不全、関節炎、リウマチ、脱臼、足腰の痛みなど
◆循環器系の病気
僧帽弁閉鎖不全、心不全など
◆呼吸器系の病気
気管虚脱、咳、呼吸が荒いなど
◆消化器系の病気
アレルギー、咳、腸炎、胃潰瘍、下痢、食欲がないなど
◆泌尿器系の病気
膀胱炎、頻尿、尿漏れ、尿が出にくいなど
◆皮膚の病気
アレルギー性皮膚炎、膿皮症、皮膚が乾燥している、体を痒がる、フケが多いなど
治療を行うことができるかわからない場合には、鍼灸治療をしている動物病院に問い合わせてみましょう。
治療を行える病気が幅広いといっても、骨折や腸閉塞など外科手術が必要な病気や救急のものには向いていないので注意してください。また、腫瘍ができる疾患や犬が妊娠している、ペースメーカーなど電子機器が体内に入っているときも鍼灸治療は避けたほうが良いでしょう。
その他の病気は鍼灸治療を行うことができます。
鍼灸治療を受けさせる際に注意すること
◆日頃から犬の状態を観察しておく
鍼灸治療をする際は、犬の生活環境や食生活、体質などを把握した上で、体のどこに不調が起きているのか原因を突き止め、鍼灸するべきツボを決めます。
飼い主が日頃から犬を観察して、獣医師にどのような状態なのかを適切に伝えられるようにしておきましょう。
◆治療に時間がかかる
治療開始の初期は週に数回通院し、効果を見ます。その後、通院の間隔を開けて、治療をしていく流れになります。
一回の施術時間は、病院によって変わりますが、ほとんどが20分~60分です。
鍼灸治療は犬によって効果に差があります。犬の病状に改善が見られない場合には長期間の通院が必要になることがありますので心得ておきましょう。
◆西洋医学の動物病院で治療をしているとき
西洋医学の動物病院に通院しており、犬に薬を服用している場合には、その薬を止めないといけないことがあります。西洋医学の薬を飲ませると鍼灸治療の効果が半減してしまうからです。鍼灸治療を受ける際は、服用中の薬があることを必ず相談しましょう。
また、手術をして改善が見られないから鍼灸治療を受ける場合も注意してください。
手術後は、犬の体の組織が傷ついているため、経絡(気が通る道)が乱れており、鍼灸治療の効果が出にくい傾向にあります。長期通院が必要になることがあります。
◆早期に治療を受ける
犬に症状が出たら早めに治療を受けさせることが重要です。
症状が軽いうちに鍼灸治療を受けたさせたほうが効果は出やすく、治療期間も短くなります。反対に、重症化してから鍼灸治療を受けると効果が出にくい場合もあります。早期発見、早期治療が大切になります。
まとめ
鍼灸治療は犬にも効果的だということがわかりました。犬の体に負担をかけずに、体調や病気の改善が期待できます。また、鍼灸治療は幅広い病気・症状の改善に適応しています。鍼灸治療は病気の治療の選択肢を増やせるのではなかと考えられます。
これまで麻酔がかけられなくて治療を断念せざるを得なかった犬や西洋医学での治療、投薬で改善がなかった犬、高齢犬の希望になるのではないでしょうか。
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