1.牧羊犬とはどんな犬
2.牧羊犬の特徴
2-1.牧羊犬の性格
3..牧羊犬のお仕事
3-1.牧羊犬のお仕事①仕事内容
2-2.牧羊犬のお仕事②育成・訓練
6.牧羊犬の代表的な犬種
6-1.牧羊犬の代表的な犬種①ボーダーコリー
6-2.牧羊犬の代表的な犬種①シェットランドシープドッグ
6-3.牧羊犬の代表的な犬種③ジャーマン・シェパード・ドッグ
【掲載:2021.11.24 更新:2022.09.05】
牧羊犬とはどんな犬
牧羊犬とは、羊などの家畜を管理・誘導することを役割として働く作業犬のことをいいます。英語表記では「Sheep Dog」と書かれます。
牧羊犬には古い歴史があり、それは紀元前4,300年頃の時代に遡るそうです。
牧羊飼育を始めとする家畜の飼育が盛んになり、ヨーロッパ各地で交配が行われ、様々な牧羊犬が生まれました。
元は主に人間の手で、羊たちの移動管理、外敵(オオカミなどの捕食動物)からの防衛をしていましたが、家畜数の増加に伴って管理が課題となっていきます。
その結果、冷静な判断力・高い統率力を持つ上に、人間の指示に忠実な犬を活用しようという試みから、牧羊犬が誕生したというわけです。
犬の突出した嗅覚・聴覚によって、これまで人間がしていた作業が短縮でき、家畜管理が容易になりました。
現在でも、牧羊犬は世界中で働いており、人間の良きパートナーとして活躍しています。
牧羊犬の特徴
◆牧羊犬の性格
牧羊犬の基本的な性格・特徴として、精神力・体力・知力が優れていることが挙げられます。賢くて人間の指示を理解する能力に長けており、健気で働き者のイメージをもっている方も多いでしょう。
もちろん高い運動能力によって、活発で機敏な動きができること、強靭な肉体を持っていることもポイントとなる特徴の一つですね。
長年、羊飼いや牧場で飼い主に仕えてきた牧羊犬ですが、現代ではペットとして飼われている犬種も中には多く、その場合は牧羊犬特有の性格を事前に理解しておくことが重要です。
ペットとして飼う場合は特に以下の項目に注意して、しつけなどを行った方がよいでしょう。
◆ペットとして牧羊犬を飼う場合に注意すべきこと
①警戒心の強さ
牧羊犬には外敵から家畜を守る役割があるため、警戒心が強めです。もちろん個体差はありますが、番犬として飼う品種としては最適であるといえるでしょう。ただしその警戒心の強さから、フレンドリーさに欠ける部分を感じるかもしれません。警戒心からくる問題行動が起きないよう注意しましょう。
②神経質な個体が多い
常に家畜の番や誘導をする牧羊犬には、神経質な面もあります。冷静さを求められるがゆえに神経質となり、パニック的な行動を起こす可能性があるでしょう。
神経質な性格が、時に攻撃的な性質として現れる場合もあります。愛犬の性格を正確に理解して、問題が起きないよう配慮してあげましょう。
③噛み癖に注意
牧羊犬は家畜を誘導するために、噛むことがあります。ある種、噛むことが正しいことであるとの認識が成されている場合もあるため、この点に関しては徹底的にしつけをしなくてはいけません。
噛んで抵抗したり、ストレスから噛み癖が出る場合もあるので、きちんと良いことと悪いことを理解させましょう。
しつけの方法に関しては、様々なネット記事でも紹介されています。目次などをチェックして、最適な方法を学んでおくことをおすすめします。
④吠えやすい
家畜の見張りとしても活躍する牧羊犬は、吠えることも仕事の一つ。これ故にペットとして飼った場合、無駄吠えをすることもあるでしょう。近所迷惑・騒音被害とならないよう、対策が必要となるかもしれません。
この無駄吠えについても、飼い主さんが事前に対策方法に関する知識を得ておきましょう。
⑤高い運動欲求
仕事熱心で活動的な性質をもつ牧羊犬。運動欲求はかなり高めの犬種が多いといえるでしょう。
運動不足はストレスに直結してしまうので、毎日の散歩の他にドッグランなど思い切り走れる時間を作ってあげることで、可能な限りストレスを感じさせない日々を過ごさせてあげてください。
牧羊犬のお仕事
◆牧羊犬のお仕事①仕事内容
牧羊犬と聞くと羊を追いかけるイメージが先行する方は多いと思いますが、紹介してきた通り、それだけが仕事内容ではありません。
実は牧羊犬には2つのカテゴリがあり、それぞれのタイプが重要な仕事をこなしているのです。
まず一つ目が「ガーディングドッグ」です。
ガーディングドッグは、オオカミなどの外敵や盗難目的の人間から、放牧されている家畜を守る役割を果たしています。羊たちのボディーガードというわけですね。これを全うするためには、高い身体能力・強靭な肉体・危機察知能力が必要となるのです。
このため、身体が大きくて体格の良い大型犬種が、ガーディングドッグとして主に活躍しています。
そしてもう一つが「ハーディングドッグ」です。
ハーディングドッグには、羊の群れを統括して目的地へ誘導する役割があります。羊がはぐれないように監視したり、はぐれた羊を群れに戻すために、細かい変化に気付ける広い視野が必要となるのです。
群れの統括と共に、群れをコンパクトにまとめ上げる行動力を要するため、機敏な動きができる小型犬~中型犬が、ハーディングドッグとして主に活躍しています。
このように牧羊犬は、羊たちのボディーカードまたは統括者として、世界中で家畜の管理を任せているのです。
◆牧羊犬のお仕事②育成・訓練
一人前の牧羊犬は、一頭で約600頭もの羊を誘導できるそうです。これは600頭の羊の周囲を走るということになるので、少なくとも牧羊犬が走る距離は羊の2倍以上となります。相当な体力が求められることが分かるでしょう。
さらに、基本的に臆病な動物の羊ですが、中には牧羊犬に向かってくるもの、無視するものもいるため、このような羊に立ち向かう気の強さも必要となります。
加えて、行き先を見失って不安状態に陥っている羊を誘導する場合は、驚かせないようにゆっくりとした動作で近づかなくてはなりません。つまり、落ち着きも必要というわけです。
以上の全てにおいてが難題のように聞こえますよね。しかしこれが、牧羊犬にとっての絶対条件なのです。
この条件を満たした犬が一人前の牧羊犬になるためには、早くて半年から遅くて一年くらい掛かるといわれています。
まず初歩の訓練では、マテ・オイデ・スワレ・ヨシなどを徹底的に教えられます。これを完璧にマスターしてから、初めて羊を追う訓練に入るのです。訓練の進行に伴い、徐々に個々の性格が行動に現れてくるそうですよ。
ちなみに犬の実践練習の前には、羊たちへの訓練も必要なのです。牧羊犬に慣れていない羊は誘導に従わなかったり、追われてパニックを起こします。無視されることは犬にとって自信喪失に繋がりますし、向上心をも減少させます。これを防ぐために、羊たちも訓練されるのです。
後半の訓練は実践となり、人間の判断力がポイントとなります。牧羊犬は人間の指示で動き、誘導します。まず人間が羊の性質や群れの動き方などを理解し、的確な判断をして指示を出すことが何よりも大切なのです。
最終的に重要なのは犬と人間のコンビネーション力であり、イギリスでは定められたコース通りに数頭の羊を誘導するという、牧羊犬の能力を競う大会があります。実際の誘導作業とは異なりますが、牧羊犬と人間とのチームワークで勝利を得なくてはなりません。
つまり、一流の牧羊犬であっても的確な指示を人間が出せなければ、良い仕事はできないのです。反対に、一流でなくとも初歩的訓練が十分であれば、適材適所で羊を誘導することも容易となるというわけですね。
ここまでくれば一人前の牧羊犬と呼べますが、訓練に終わりはありません。日々、羊を追うことが訓練として続くのです。
日本に牧羊犬はいる?
羊などの家畜を放牧できる広大な土地が少ないため、諸外国と比べて牧羊が難しい国である日本。
残念ながら、海外の様に自然な形で牧羊犬が羊の管理をしている牧場は多くありません。
しかし国内でも、牧羊犬を見ることができる観光施設が複数あるのです。
例えば栃木県の那須どうぶつ王国では、ニュージーランドからやってきた牧羊犬が、本場のテクニックを披露してくれるイベントを開催していました。牧羊犬の活動を直接目にすることはとても貴重な体験です。その迫力を体感するためにも、次回の開催スケジュールなどを是非チェックしてみてくださいね。
◆牧畜犬との違い
牧羊犬の他に、牧畜犬と呼ばれる犬たちがいます。
犬種でいうと主に、ロットワイラーやウェルシュコーギーペンブロークなどが挙げられるでしょう。
この牧畜犬は、自動車のない時代に牛・馬・羊の群れを追い立て、村から市場まで送っていくという仕事をしていました。
そのため、遠距離移動に耐えられる頑健さ、自分より大きな動物に怯まない勇敢さが必要となります。さらに常に目を光らせていざというときに大声で敵を威嚇し、立ち向かっていける強い意志や体力、負けん気の強さを有しているのです。
牧羊犬の種類は全30種類
現在、JKC(ジャパンケネルクラブ)に登録されている牧羊犬・牧畜犬の種類は計30種類います。
以下の犬種が登録されている犬種です。
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
- クーバース
- クロアチアン・シープドッグ
- コモンドール
- サールロース・ウルフドッグ
- シェットランド・シープドッグ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- スキッパーキ
- スムース・コリー
- チェコスロバキアン・ウルフドッグ
- ビアデッド・コリー
- ピレニアン・シープドッグ
- ブービエ・デ・フランダース
- プーミー
- プーリー
- ブリアード
- ベルジアン・シェパード・ドッグ
- ボースロン
- ボーダー・コリー
- ポリッシュ・ローランド・シープドッグ
- ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ
- マレンマ・シープドッグ
- ムーディー
- ラフ・コリー
- ランカシャー・ヒーラー
牧羊犬の代表的な犬種
前述したように、牧羊犬として登録されている犬は30種類います。今回はその中でも知名度の高い3犬種を紹介していきましょう。
◆牧羊犬の代表的な犬種①ボーダーコリー
イギリスが原産国のボーダー・コリー。名前についている「ボーダー」は国境地域を意味しており、イギリスとスコットランドの国境地域が原産であることが由来となっています。
活発で注意力と判断力に優れている犬種で、現代ではペットとしても人気が高いですね。
◆牧羊犬の代表的な犬種②シェットランドシープドッグ
イギリス最北端に位置するシェットランド諸島を原産とする、シェットランド・シープドッグ。シェルティという愛称でも親しまれていますよね。
飼い主への忠誠心に加え、我慢強い性格をしています。小型ではありますが、筋肉質な体をしているというのが大きな特徴でしょう。
◆牧羊犬の代表的な犬種③ジャーマン・シェパード・ドッグ
ドイツ原産のジャーマン・シェパード・ドッグ。牧羊犬に限らず。警察犬・軍用犬としてなど、幅広く世界中で活躍している犬種です。使役犬の代表格ともいえるでしょう。
運動能力の高さと、冷静に状況把握ができる洞察力が高い魅力です。飼い主への忠誠心や忍耐力をも有しているため、牧羊犬として優れた素質を持っています。
まとめ
家畜の群れの見張り・誘導・統率管理など、高い技術を要する仕事で活躍している牧羊犬。
その働きぶりは圧巻で、正に尊敬に値する内容だといえるでしょう。
国内では中々目にすることは出来ませんが、私自身も一度は直接その迫力を体感したいと強く感じています。
ペットとして飼う方も現代では珍しくありません。ぜひ、この魅力溢れる牧羊犬たちに思いを馳せてみてくださいね。
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