1.警察犬とは
1-1.警察犬
1-2.警備犬
2.警察犬の仕事内容
2-1.跡追及犬
2-2.麻薬探知犬
2-3.臭気選別犬
2-4.威警犬
3.警察犬の種類
3-1.ジャーマンシェパード
3-2.ラブラドールレトリバー
3-3.ゴールデンレトリバー
3-4.ドーベルマン
3-5.エアデールテリア
3-6.ボクサー
3-7.コリー
5.警察犬になるためには
5-1.嗅覚が優れているか
5-2.忠誠心があるか
6.どんな訓練をするの?
6-1.訓練所に入所
6-2.基本的なしつけ
6-3.服従訓練(約6カ月)
6-4.追跡訓練・臭気選別訓練(約6カ月)
6-5.試験
警察犬とは
一般的に、犯罪捜査などの警察活動に適するように飼育、訓練をした犬を総称していいます。
捜査現場で犯人の追跡をしている様子や、災害時に被災者の捜索をしている様子など、テレビやニュースなどで一度は見たことがある方もいるのではないでしょうか。
実は、要請された現場に向かう中でも「警察犬」と「警備犬」の2つの役割に分けられています。
◆警察犬
警察犬は、警視庁の刑事部鑑識課に所属しています。
主に捜査現場へ向かい、嗅覚を活かして犯人の痕跡を辿り、追跡や鑑別をします。
他にも、空港の税関では麻薬の匂いを嗅ぎ分ける麻薬探知犬など、現場ごとに専門的な訓練を受けた警察犬が存在します。
◆警備犬
警備犬とは、警視庁の警備部に所属しています。
警察犬とは異なり、主に爆発物の捜索や災害救助など、現場の警備を目的とした任務を任されています。
警察犬の仕事内容
刑事部鑑識課に所属している警察犬は、「跡追及犬」「麻薬探知犬」「臭気選別犬
」「威警犬」の主に4つの役割を担っています。
1頭の警察犬が4つの役割を全て担うのではなく、それぞれの警察犬が現場で自分の力を最大限に発揮できる能力を、1つに集中して訓練を行います。
警察犬が担う4つの役割についてご紹介します。
◆跡追及犬
現場に残された犯人の遺留品の匂いから、痕跡を辿り、犯人の居場所や行方不明者を捜索する仕事です。現場によっては山や雪の中で遭難した人を探し出す救助犬としての仕事を任せられている場合もあります。
◆麻薬探知犬
麻薬探知犬は空港の関税などに常駐していて、多くの人が行きかう中、麻薬のごくわずかな匂いを嗅ぎ分け、麻薬を国内に持ち込ませないように見つけ出す訓練をしてきた犬のことです。キャリーケースや荷物の中から麻薬の匂いを嗅ぎつけたら、すぐに税関職員に報告するように徹底して訓練がされています。
◆臭気選別犬
現場に残された遺留品などの匂いを手がかりに、犯人や捜査対象者の匂いが一致するかどうかを調べる仕事です。この結果が重要な証拠となることもあり、実際に裁判でも臭気選別が認められています。
◆威警犬
犯人への威嚇や犯罪抑制を目的に、警察官と共にパトロールをする仕事です。
怪しい人物や不審者に対して、万が一の時は逮捕のための行動を起こすことも可能なので、警察官にとって心強いパートナーとして同行してくれます。
警察犬の種類
警察犬といえば、ジャーマンシェパードのイメージを持つ方が多いですが、「日本警察犬協会」から認定されている犬種は、ジャーマンシェパード、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、ドーベルマン、エアデールテリア、ボクサー、コリーの7種類が認められています。
日本警察犬協会で認められている7種類の犬種の特徴をご紹介します。
◆ジャーマンシェパード
「ドイツの牧羊犬」という意味を持つジャーマンシェパードですが、「世界最高の使役犬」として世界中で活躍しています。筋肉質な体つきをしていて、たくましいイメージですが、実は大型犬の中では小柄なのです。
性格は、聡明で知能が高く、好奇心旺盛で勇敢な上に従順なため、警察犬として活躍するにはぴったりな性格の持ち主です。
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◆ラブラドールレトリバー
ラブラドールレトリバーは、カナダにあるラブラドール地方がルーツといわれ、極寒の厳しい風や雪に耐える強健な作業犬として活躍していました。
性格は、集中力と理解力に優れていて、従順かつ学習能力がとても高いです。また、感受性が豊かであり、穏やかで落ち着いた性格をしています。
現在では、警察犬の他に、猟犬、盲導犬、介助犬、家庭犬として、どんな環境でも活躍できることから高く評価されています。
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◆ゴールデンレトリバー
イギリス原産のゴールデンレトリバーは家庭犬に適していることから、初めてペットを迎い入れる際にゴールデンレトリバーを選ぶ方が多いですよね。
性格は、誰にでも交友的で穏やかな性格を持ちながら、信頼できるパートナーに対しては従順です。その温厚で柔軟な性格と、賢く洞察力もあることから、指示や合図に対して忠実に従うことができるので、盲導犬や麻薬探知犬として最大限に能力を発揮します。
賢いだけではなく、訓練性能も高いため、警察犬だけではなく、盲導犬や介助犬にも向いている犬種なのです。
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◆ドーベルマン
ドーベルマンは19世紀後半に誕生していて、実は比較的新しい犬種です。
強そうな外見や、番犬などの怖いイメージとは裏腹に、性格はとても穏やかで落ち着きがあります。また、忠誠心がとても強く、知的かつ好奇心旺盛です。
警戒心が強く、警護能力にとても優れているので、警察犬の他にも、軍用犬、番犬にも向いています。
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◆エアデールテリア
テリアの中で最も大きな体格をしたエアデールテリア。
長い脚と丈夫な骨格を持ち、聡明さ、力強さ、機敏さに優れています。
性格はとても明るく活発的で、学習能力も高く、トレーニングや訓練を得意としますが、頑固で我が強い一面もあるので、他の犬と遭遇すると争いごとを引き起こすこともあります。
「テリアの王様」と呼ばれるほど、万能犬として親しまれていることから、警察犬の他にも軍用犬として活躍しています。
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◆ボクサー
ボクサーはドイツ原産の犬種で、強面で怖そうなイメージに対して、実は穏やかで落ち着いた性格をしています。
筋肉質な体や強面の表情から、猟犬や闘犬として活躍していた歴史があることから、攻撃性を心配されることが多いですが、実はとても優しい性格で、トレーニングや訓練がしやすいです。信頼できるパートナーには忠実で忍耐強いため、警護や軍用犬、番犬として活躍する場面が多いです。
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◆コリー
スコットランド原産のコリーは、牧羊犬として活躍していて、その優れた作業能力と献身性は、牧場の助手として世間から認められていました。
明るく穏やかな性格をしていて、賢く洞察力があり、自分で判断する力を持っています。
警察犬としてあまり馴染みのない犬種ですが、この温厚で忠実な性格が警察犬に向いているといえます。
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嘱託警察犬制度
実は、日本警察犬協会で認められている7種類の犬種の他にも警察犬として活躍している犬がいるのをご存じでしたか?
各都道府県の警察が飼育管理・訓練をしている犬を
「直轄警察犬」といい、一般の訓練士が飼育管理・訓練をしている犬を「嘱託(しょくたく)警察犬」といいます。
嘱託警察犬制度は、警察が直接的に犬を所有せず、民間で訓練された犬と訓練士に、警察活動の一部を依頼することをいいます。日本警察犬協会が認定している7種類の警察犬以外に、各都道府県が毎年審査会を行い、嘱託する警察犬を選考して指定をしています。
現在では、チワワ、ダックスフント、トイプードルなどの小型犬が嘱託警察犬として、警察犬の認定を受けています。
警察犬になるためには
前述の通り、警察犬になるには、日本警察犬協会で認定されている7種類の犬種の中で警察に訓練される「直轄警察犬」になる場合と、民間の訓練士に訓練される「嘱託警察犬」になる2つのパターンがあります。
上記を満たしているからといって、どんな犬でも警察犬になれるとは限りません。
犬本来が持つ能力や性格を考慮しながら、訓練をする過程で警察犬になれるのです。
訓練をする以外に警察犬に向いている特徴をご紹介します。
◆嗅覚が優れているか
警察犬は現場に残された遺留品などを頼りに、優れた嗅覚で証拠や犯人を探し出します。
犬の嗅覚は人間の数千倍以上といわれていて、人間の体臭を一人ひとり嗅ぎ分けることができるので、嗅覚が優れていることは特に重要です。
◆忠誠心があるか
現場に要請があったとき、警察犬一匹で現場に向かう訳にはいきません。
警察官=人間と共に行動し、働くことができるかというスキルはとても重要です。
主人である警察官の指示に対して従うことができないと、返って危険を及ぼす可能性もあります。犬本来が持っている「忠誠心」や「従順さ」は、警察犬の仕事を担う上で高く評価されています。
どんな訓練をするの?
警察犬の素質が見受けられたら、現場で活躍するための警察犬訓練が欠かせません。
では実際に警察犬として認められ、現場で活躍するまでにどのくらいの期間、どんな訓練をしていくのでしょうか。
◆訓練所に入所
まずは、警察犬の訓練を受けるために警察犬訓練所に必ず入所する必要があります。
その際に、犬の血統や適性を調べ、基本的に7種類の犬種から可能性のある犬を民間から購入する形で採用されます。その他の犬種でも、素質があると判断された犬は例外的に採用される場合もあります。
訓練所に入所する犬は、大体生後12か月くらいで入所し、テスト期間として3ヶ月ほどパートナーと親和性を高め、飼育訓練を通して警察犬としての適性を見ていきます。
◆基本的なしつけ
訓練所に入所してからは、基本的なしつけトレーニングからスタートします。
「待て」「おすわり」「トイレトレーニング」などの基礎や、パートナーの隣を歩く訓練など、コミュニケーションを通して信頼性を築いていきます。
また、集中性訓練という集中性を高める訓練も同時並行してトレーニングしていきます。
◆服従訓練(約6カ月)
警察犬としての訓練を実行できそうと判断され、3ヶ月間の基本的なトレーニングを終えたら、いよいよ警察犬の訓練内容が加わった実践的なトレーニングが開始されます。
基本的なトレーニングに加え、障害物を飛び超えさせる障害飛越トレーニングが加わり、現場で犯人を追跡する時や被災地で捜索活動をする時に備えた、警察犬としての必須スキルになります。この段階で、パートナーの指示通りに行動ができるようにするために服従訓練はとても重要になります。
◆追跡訓練・臭気選別訓練(約6カ月)
追跡訓練とは、犯人や行方不明者を捜索するために欠かせない訓練の一つです。
探し出す対象者の所持品を訓練所内のさまざまな場所に隠し、犬に対象者の匂いを嗅がせ、同じ匂いがしたものを見つけたら、その場所で吠える合図をさせるように覚えさせます。
また、臭気選別訓練は追跡訓練と似ていますが、訓練方法は布を使用します。選別台に布を5枚ほど置き、対象者の匂いがする布を選んでパートナーの元に持ってくる訓練です。
警察犬が臭気選別で事件の強力な証拠を発見した時は、裁判でも使用されることがあるので、重要な証拠品に触れさせないように、伏せをさせる合図を覚えさせます。
実際の現場に残る匂いは、ごくわずかな匂いであるため、しっかりと匂いを嗅ぎ分けることと、パートナーに上手く伝達することができるかどうかが訓練のポイントとなります。
◆試験
約1年半~2年間の訓練を終えたあとは、検定試験を受けて合格を目指します。
試験内容は、今まで訓練してきた「足跡追及試験」「臭気選別試験」になります。
足跡追及試験は、制限時間内に対象者の足跡や対象物を辿り、正確に対象者を追跡できるかどうかが判定される試験です。
臭気選別試験は、訓練の時の同様に5枚の布の中から対象者と同じ匂いがする布を選び、正確に判別できるかの試験です。難易度が高い試験内容となっているため、必ず対象者と同じ匂いがある訳ではなく、同じ匂いが「ない」場合もあり、高度な臭気選別能力が求められます。
まとめ
警察犬に向いている犬の特徴や仕事内容、訓練など、警察犬の魅力についてご紹介してきましたが、いかがでしたか?
強面の大型犬で、強く、たくましくないと警察犬になれないことはなく、現在では認定されている7種類の犬種の他にも、多くの犬種が嘱託警察犬として活躍の場を広げています。
警察犬は、普段見かけることはない遠い存在と感じてしまいがちですが、私たちの身の回りで起きている事件を解決してくれる、身近な存在なのかもしれませんね。
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