1.犬は夜行性ではなく昼行性
2.犬が夜行性だと思われる理由
2-1.犬が夜行性だと思われる理由①祖先のオオカミが夜行性のため
2-2.犬が夜行性だと思われる理由②昼間に良く寝ているため
2-3.犬が夜行性だと思われる理由③暗い中でも行動できるため
3.犬の睡眠時間について
3-1.子犬や老犬の睡眠時間
3-2.成犬の睡眠時間
3-3.犬種によって睡眠時間は異なる?
【掲載:2022.10.8 更新:2023.06.27】
犬は夜行性ではなく昼行性
はじめに、犬が夜行性なのか昼行性なのかについて見ていきましょう。
結論から言えば、犬は夜行性ではなく、昼行性の動物です。
野生の頃の犬は、昼間は寝ていて、夜に狩りをして食料を得ていました。つまり、本来は夜行性だったのです。
しかし、適応力の高い犬たちが人間とともに暮らすことを選んだ結果、その子孫たちは昼行性動物である人間の生活に合わせて、朝起きて夜眠るという生活に移行していったと考えられています。
人間の周りで暮らすことで、食べ物を貰うようになり、自分で狩りをする必要はなくなりました。また、はじめは夜、外敵から犬たち自身や人間を守るために「番犬」の役割をつとめていましたが、次第にその必要性は低くなっていきます。
現代の「家庭犬」となった犬たちは、夜、周囲に警戒をする必要もなくなり、安心して眠る生活を送れるようになったと考えられます。
犬が夜行性だと思われる理由
前項の通り、犬は昼行性の動物ですが、一般的なイメージとして夜行性の動物だと思われがちです。
ここでは、その誤解の理由についてご紹介します。
◆犬が夜行性だと思われる理由①祖先のオオカミが夜行性のため
犬の祖先がオオカミであることは、よく知られています。
また、オオカミが夜行性であることも、一般的に知られていることです。
オオカミは、夜、活発に行動することで、効率よく狩りを行っています。これは、獲物となる生き物も、夜、活発に動くためです。一方、昼間は夜の活動に向けて体力を温存するために眠っています。
このため、子孫である犬も、オオカミと同じく夜行性であると考えられがちなのです。
◆犬が夜行性だと思われる理由②昼間に良く寝ているため
飼い主さんはよくご存知のことですが、犬は昼間もよく寝ています。ふと見ると寝ている、お留守番中はずっと寝ているというのは、「犬あるある」と言ってもいいほどです。
このため、昼間に寝て、夜行動する昼行性の動物だと勘違いされることが多いのでしょう。
◆犬が夜行性だと思われる理由③暗い中でも行動できるため
犬は、夜、電気を消した状態でも水を飲んだり、トイレに行ったりすることに不自由をしているようには見えません。また、暗くなってからのお散歩でも、戸惑うことも迷うこともなく、歩くことができます。
これらのことから、「暗くても活動できるのは夜行性だからでは?」と考えられることもあるでしょう。
犬が暗い中でも活動できるのは、前述の通り、野生時代に夜行性であったため、光の少ない暗闇でもよく目が見えるようになっているからです。
犬や猫などの目には、「タペタム」(tapetum)という反射層があります。タペタムは網膜の裏にあり、わずかな光を反射して視神経に伝える働きをしている細胞層です。このタペタムの働きで、犬は暗闇の中でも物の輪郭を見分けることができるのです。
暗い場所で犬の写真を撮ると目が光って写ることがあるのも、タペタム層にフラッシュの光が反射しているからです。人間の場合、タペタムを持たないため、網膜上の血管が光で照らされることで、いわゆる「赤目」になります。
暗い場所で犬の写真を撮る際には、フラッシュは使わないようにしましょう。タペタム層があるため、犬の目にはまぶしすぎ、大きな負担となります。
犬の睡眠時間について
ここでは、犬の睡眠時間についてご紹介していきます。
犬のライフステージによって必要な睡眠時間は異なるので、子犬、老犬、成犬についてそれぞれご紹介します。
◆子犬や老犬の睡眠時間
子犬は身体や脳の発育のために、長く眠る必要があります。
一方、老犬の場合、体力の衰えから、やはり長く眠るようになります。
子犬の場合
子犬は、日々、たくさんのことを学習し、好奇心旺盛であちこちを動き回るため、多くのエネルギーを消費します。その回復のためには、睡眠時間も多く必要です。
生後3週齢ごろまでの子犬は、母乳を貰うとき以外は、ほぼ1日中眠っています。この頃は、レム睡眠が主です。3週齢ごろからは、レム睡眠とノンレム睡眠の割合は半々となり、活動する時間も増えていきます。
生後2~3ヶ月ごろになると、さらに活発に動き回るようになるものの、通常、1日のほとんどを寝て過ごします。睡眠は、脳や体の発達には欠かせないものなので、しっかりと睡眠時間を取って休ませるようにしましょう。
生後4ヶ月ほどになると、まとめてたくさん寝る子、あまり寝ない子など、睡眠にも個性が出てきます。
目安となる睡眠時間は、18~20時間です。
生後5ヶ月ごろになれば、平均睡眠時間は14~16時間と少し短くなります。
老犬の場合
体力が衰えた老犬は、より多くの休息を必要とします。
子犬に比べると活発に動き回ることもないため、ゴハンとトイレ以外はほとんど寝ているように見えるかもしれません。
目安となる睡眠時間は、18~19時間です。
◆成犬の睡眠時間
ワシントン大学が行った調査の結果、成犬の平均睡眠時間は10.6時間とされていました。
現在は、1~6歳ごろの成犬の一般的な平均睡眠時間は12~15時間とされています。健康で元気な犬でも、1日の半分は眠っていることになります。
基本的には、成犬は夜間に睡眠の60%を取っていると言われています。しかし、日中のお留守番が長い日などは、昼間に十分睡眠を取ってしまって、夜、なかなか寝なかったり、朝早く起きてしまったりすることもあります。
◆犬種によって睡眠時間は異なる?
睡眠時間を決めている要因は、主に成長度合いですが、犬種や体の大きさも関わっていると考えられています。
ニューファンドランドやマスティフ、セントバーナードなどの超大型犬の睡眠時間は比較的長く、小型犬は比較的短い傾向があるようです。
また、シベリアンハスキーやボーダーコリーなどの「作業犬」と言われる犬種は、長時間かけて活動できるように、睡眠時間は短いと言われています。
ただ、これに関しては、個体差もあり、よく解明されてはいないようです。
犬の睡眠リズムについて
ここでは、犬の睡眠リズムについてご紹介します。
◆犬の睡眠リズム①睡眠と覚醒
人間は、夜にまとめて睡眠をとりますが、犬は、16分の睡眠と5分の覚醒からなる21分の周期で1日に何度も睡眠を取っています。
◆犬の睡眠リズムについて②レム睡眠とノンレム睡眠
人間と同様に、犬にも「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。
レム睡眠とは、いわゆる「浅い眠り」のことで、体は休んでいますが脳は覚醒に近い状態にあります。一方、ノンレム睡眠とは、「深い眠り」と言われ、体も脳も活動を休んでいる状態です。
人間の場合、レム睡眠が20%、ノンレム睡眠が80%であるのに対し、犬はレム睡眠が80%、ノンレム睡眠が20%と正反対の比率となっています。
犬は、一日の半分程度を寝て過ごしていますが、その眠りの大半は浅い眠りのレム睡眠です。
このため、眠っている犬のそばで飼い主さんが動いたり、何か物音が聞こえたりすると、すぐに目を覚ましてしまいます。
これは、野生時代の本能の名残という説が有力です。野生の頃の犬は、寝ているときに外敵に襲われる危険があったため、すぐに起きて身を守れるよう、眠りが浅かったと考えられます。
しかし、犬睡眠リズムについては、まだまだ解明されていないことが多くあり、今後の研究が待たれます。
犬が寝すぎや浅い眠りは病気のサインかも
これまでお伝えしてきたとおり、犬はよく眠る動物ではありますが、愛犬が明らかにいつもより長く寝ている、散歩も嫌がる、すぐ横になろうとするなどの様子が見られる場合には、体調不良の可能性があります。
また、引っ越しなど環境の変化からストレスを感じているときも、疲労が溜まって寝てばかりになることもあるようです。
甲状腺の機能が低下して、分泌される甲状腺ホルモンの量が減る「甲状腺機能低下症」になると、過剰な眠気を引き起こします。その他にも、いつものおもちゃで遊ばなくなったり、元気がなくなったりという様子が見られるので、愛犬の様子をよく観察しましょう。
関節が痛むために動けない場合も、寝てばかりいるように見えますが、眠ってはいません。
逆に、睡眠時間が短くなる、眠りが常に浅すぎる、急に起きて意味もなく吠えるなどの様子が見られる場合には、認知症が疑われます。
心臓疾患や呼吸器疾患がある場合には、呼吸の異常を引き起こし、眠りが浅くなることもあります。
眠る時間が長くなった、あるいは短くなったなど、睡眠の様子がいつもと違うようであれば、動物病院に相談することをおすすめします。
まとめ
犬は、昼間にもよく寝ているため、また祖先であるオオカミが夜行性であることからも、夜行性であると思われがちですが、実際には夜は寝て日中に行動する昼行性の動物です。これは、昼行性である人間との暮らしの中で、夜、狩りをしたり警戒をしたりする必要がなくなったためだと考えられています。
しかし、犬の眠りの80%は浅い眠りであるレム睡眠のため、ちょっとした物音でも目を覚ましてしまいます。
睡眠は、体力の回復や、昼間学んだことの定着のために非常に重要です。愛犬が安心してしっかりと眠ることができるよう、静かな環境や快適な寝床を用意してあげましょう。
愛犬の睡眠の様子に変化が見られた場合には、何らかの病気のサインかもしれません。早めにかかりつけの獣医師さんに相談することをおすすめします。
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