1.日本スピッツはどんな犬なの?
1-1.日本スピッツの歴史
1-2.日本スピッツの性格・特徴
1-3.日本スピッツの寿命・病気
日本スピッツはどんな犬なの?
はじめに、日本スピッツとはどんな犬なのか、歴史や性格・特徴などから紐解いていきましょう。
◆日本スピッツの歴史
日本スピッツは、洋犬にルーツを持ち、日本で改良されたかなり新しい犬種です。しかし、その歴史については、はっきりとは分からない点が多くあります。
1920年代~1930年代(大正末期~昭和初期)に、海外から白いスピッツが日本に入り始めました。
1921年、東京都で開かれた展覧会に初めて白いスピッツが出陳されたとされ、このスピッツはジャーマン・スピッツであったと言われています。
その後、カナダから東京へ2組4頭、1928年にカナダから愛知へ3頭が入ってきたことなどが記録として残っているほか、アメリカやオーストラリアからの輸入もあったとされており、実際にどのくらいの白いスピッツが日本に入ってきたのかは分かっていません。
これらの白いスピッツは、ジャーマン・スピッツやボルピーノ(イタリアン・スピッツ)、アメリカン・エスキモー・ドッグ、ロシアン・スピッツだったのではないかと考えられています。これらの犬、またはこの一部の犬が、日本スピッツのルーツであるというのが有力な説です。
戦後、社会が落ち着いてくると、白いスピッツが注目を集めるようになります。
1948年には、ジャパンケネルクラブ(JKC)により統一されたスタンダードが確立され、日本スピッツという犬種として公認されました。
昭和30年代には、国内の犬の登録数の約4割を占めたほど日本スピッツの人気は高まりましたが、その陰で乱繁殖が行われたため、犬質が低下していきます。
ついには、「甲高い声で吠えてうるさい犬」というレッテルを貼られる犬種となってしまったのです。
マルチーズ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリアが人気を博す時代になると、入れ違いのように日本スピッツは姿を消していきます。
そして、1980年代には、「幻の犬」とさえ言われるようになってしまいました。
しかし、真の愛好家たちは、日本スピッツを守り続け、その過程で改良が進み、現在では温和で非常に飼いやすい犬として親しまれるようになりました。
1970年代初頭には、3頭の日本スピッツがスウェーデンに渡り、これをきっかけとしてヨーロッパ諸国でも知られる犬種となり、海外にも多くのファンがいます。
◆日本スピッツの性格・特徴
日本スピッツは、快活で元気いっぱいの性格をしています。また、利口で物覚えがよく、しつけのしやすい犬種です。遊び好きで好奇心旺盛なので、ヨーロッパでは、スポーツドッグとして評価されています。
飼い主さんには、べたべたの甘えん坊ですが、やや人見知りが激しいところがあり、誰にでもフレンドリーに接することは少ないかもしれません。警戒心が強く、番犬向きの犬種でもあります。
また、他の動物や子どもと仲良くすることもでき、多頭飼育やお子さんのいる家庭でも飼いやすいでしょう。
甘えん坊の分、お留守番は苦手です。
日本スピッツは、体高30~38cm、体重5~11kgのやや小さめの中型犬で、体格の幅が広いです。四肢は長く、頭とボディのバランスも良いです。
日本スピッツの特徴は、真っ白でふわふわの被毛と、尖ったマズル、三角形の立ち耳です。
被毛はダブルコートで、オーバーコート(上毛)は長毛ですが、アンダーコート(下毛)は短くて柔らかいです。
特に、首から前胸にかけての飾り毛が非常に美しいと言われています。
尻尾もふわふわの飾り毛で覆われていて、背負うように高い位置にあるのが理想的とされています。
瞳は、つぶらなアーモンド形で、尖ったマズルとともに日本犬に通ずる魅力もあります。アイラインが入ったように眼の縁は黒く、愛らしい表情を際立たせています。
スピッツ(Spitz)は、ドイツ語で「とがった」という意味で、尖ったマズルを持つ犬種全般を指します。また、一説にはロシア語で「火」という意味の「スピッチ」に由来するとも言われ、火がついたように吠える、かつての性質を表していたとも言われています。
JKCでは、5G(原始的な犬・スピッツ)に分類されています。
◆日本スピッツの寿命・病気
日本スピッツの平均寿命は、11~14歳程度です。中型犬の寿命は13歳前後と言われているので、平均的と言えるでしょう。
気をつけたい病気は、以下の通りです。
●気管虚脱
●流涙症(涙やけ)
●皮膚疾患(アレルギー性皮膚炎、膿皮症)
●僧帽弁閉鎖不全症
●甲状腺機能低下症
日本スピッツの毛色
日本スピッツの毛色は、ホワイトのみが認められています。
日本スピッツの入手方法・値段
日本スピッツの価格は20万~45万円ほどで、チャンピオンの血統となると、高価になる傾向にあります。
入手方法は、主にペットショップとブリーダーです。
ペットショップでは、見かけることが少なく、気に入った子犬が見つかるかどうかは分かりません。子犬が入った時に連絡してもらえるようにしておくと良いでしょう。
ブリーダーであれば、適切な時期まで親や兄弟と過ごし、社会性を身につけているので飼いやすいと言われています。
優良なブリーダーを見分けるには、見学をさせてもらうと良いでしょう。見学することで、飼育環境や親犬を実際に見ることができます。見学を断るブリーダーには断る理由を尋ね、明確に答えられないようであれば、避けた方が賢明です。
また、保護された子の里親になる方法もあります。ネット上の里親募集サイトでは、何件かの募集が掲載されています。里親を希望する場合には、保護された理由や健康状態、どのようなしつけをしてきたかなどの情報を事前に聞いておくことをおすすめします。
日本スピッツの飼い方
ここでは、日本スピッツの飼い方について、適した環境や食事、しつけやお手入れの方法をご紹介します。
◆環境
非常に被毛の長い日本スピッツは、暑さに弱い犬種です。夏場の熱中症対策が必須になります。温度管理のできる環境で飼育しましょう。完全室内飼育がおすすめです。また、常に水が飲めるようにしておくことも大切です。
長い被毛は静電気を発生しやすいため、冬場は湿度や毛布の素材などにも気を付けてあげてください。
改善はされたものの、吠えやすい性質は残っているため、子犬の頃からさまざまな環境を体験させるようにしましょう。特に、チャイムの音や来客に慣れさせておくと良いでしょう。
◆食事
主食には、総合栄養食を与えます。ドライフードは、小型犬用の粒の小さなものがおすすめです。
美しい被毛を保ち、皮膚の健康を守るためには、上質なタンパク質やオメガ3系脂肪酸、オメガ6系脂肪酸、ビタミンE、銅などもバランスよく入っているフードが良いでしょう。
日本スピッツは皮脂腺が少ないので、できるだけ脂肪分の少ないフードを選んでください。脂肪分の摂りすぎは、涙やけや耳垢の原因になります。おやつも、脂質の高いものは避けたり、与える量に気を付けたりする必要があります。
◆しつけ
賢くて物覚えがよいので、しつけは比較的難しくありません。少し集中力に欠けるところがあるので、ご褒美をあげたり、遊びの要素を加えたりしながらトレーニングを行うと良いでしょう。
落ち着かない場所では神経質になることが多いため、成長期からさまざまな場所に連れ出して、経験を多く積ませることをおすすめします。ドッグランなどで他の犬と遊ばせて、社会性を養うことも大切です。
また、聞き分けがよく飼い主さんには忠実ですが、わがままを通させていると、言うことを聞かなくなったり、自我を通すような態度に出たりすることもあります。
ダメなことはダメと、毅然とした態度で接することが必要です。
◆散歩
中型犬としては小柄ですが、活発で遊び好きなため、30分以上の散歩を1日2回行いましょう。また、時々ドッグランで自由に走らせてあげると良いでしょう。
散歩に加えて室内でもたくさん遊んで体を動かすようにすると、ストレス解消にもなり、より吠えにくくなります。宝探しゲームや、どっちかな?ゲーム(片手にフードを隠し、どちらの手にあるか当てさせる)など、嗅覚を使った遊びがおすすめです。市販のノーズワークマットなども活用すると良いでしょう。
◆お手入れ方法
日本スピッツは、純白の豊かな長毛が特徴です。また、ダブルコートのため、特に換毛期には非常に抜け毛が多くなります。
また、皮膚疾患も比較的起こしやすいです。
ブラッシングは、毛玉予防のためにも、少なくとも週2~3回は行いましょう。また、月1~2回の定期的なシャンプーも必要です。生乾きで放置すると被毛がもつれて皮膚病の原因になることもあるので、必ずドライヤーを使ってしっかりと乾かしてください。冷風を織り交ぜながら乾かすと、犬が暑がりにくいです。
黒い毛色をしてるスピッツがいる
スピッツは、犬種名ではなく、マズルが尖った犬の総称です。
日本スピッツでは毛色がホワイトしか認められていませんが、他のスピッツ系の犬種では、ホワイトの他、ブラック、ブラウン、オレンジ、グレーなど、さまざまな毛色が認められていることが多いです。
また、スピッツではなく、牧羊犬・牧畜犬(1G)に分類される「スキッパーキ」という犬種があり、毛色は一様なブラックがスタンダードとされています。
スキッパーキのサイズは、3kg~9kgとされていて、日本スピッツと同じくらいの大きさです。マズルは尖っていませんが、一見、黒いスピッツに見える外見をしています。
日本スピッツに似ている犬種
日本スピッツには、外見上、似ている犬種がいくつかあります。
代表的な犬種は、サモエドやポメラニアンです。どちらも日本スピッツと同じく、北方スピッツ系なので、尖った口先や、やや小さめでピンとたった耳、豊かな被毛が共通しています。
日本スピッツの祖先となった「白いスピッツ」の一つは、ジャーマン・スピッツと考えられています。ジャーマン・スピッツは、サイズによって、ジャイアント、スタンダード、ミニチュア、トイの4タイプがあります。このうち、ジャーマン・トイ・スピッツはポメラニアンと同犬種として扱われる場合もあり、ポメラニアンが日本スピッツに似て見えるのは、不思議ではありません。
しかし、ポメラニアンの毛色はさまざまな色やパターンが認められており、白のみが認められる日本スピッツとは大きく異なります。
サモエドも、日本スピッツの確立の過程で関与したという説もあるため、似ていても不思議ではありませんが、大型犬なので、明らかにサイズが異なります。
原種となったと考えられているジャーマン・スピッツやボルピーノ、アメリカン・エスキモー・ドッグなどの方が、より似ていると言えますが、これらの犬種は日本ではあまり馴染みがなく、見かけることの多いサモエドやポメラニアンとの類似性が目立つのかもしれません。
まとめ
日本スピッツは、洋犬をルーツに持ち、日本で確立されたため、原産国は日本です。
以前は、乱繫殖と外飼いの影響で、無駄吠えの多い飼いにくい犬種と言われていましたが、その後の選択育種の結果、現在は穏やかな飼いやすい犬種となりました。
しかし、一度人気を失ったため、現在ではやや希少な犬種となっており、JKCの犬籍登録数は1,314頭(2021年)となっています。
小型の中型犬なので、日本の住宅事情でも飼いやすく、子どもや他の動物とも仲良くできるので、良き家族となる犬種と言えるでしょう。
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