1.犬の療法食とは?
1-1.健康な犬の主食には「総合栄養食」を与えよう
2.療法食の種類
2-1.腎臓
2-2.消化器
2-3.心臓
2-4.下部尿路
2-5.皮膚・アレルギー
3.療法食を買う際の注意点
3-1.獣医師の指示がないとダメ
3-2.自己判断での購入はNG!
犬の療法食とは?
食事療法に用いられるフードを、療法食といいます。この療法食とは、特定の疾病や健康状態に対応するために、特別に栄養バランスが調整されたドッグフードのことです。
愛犬が病気になってしまった場合、症状に応じて特定の栄養素を増やしたり減らしたりして調整するために、それまでの食事内容を変更する必要が出てくることがあるのです。治療のために、食事管理が欠かせない病気もあるというわけですね。
しかし、愛犬の病気に合わせた食事を毎日手作りするのは、飼い主さんにとっても大きな負担となりますよね。栄養バランスを整えた食事を作るのは、ほぼ不可能だといってもよいでしょう。
そんな時に頼れるフードが、犬用療法食なのです。
飼い主さんの負担を減らすため、栄養バランスを適切にコントロールするために、病気の種類や症状に合わせた様々な療法食が用意されています。
ただ重要なのは、療法食は必ず獣医師の指導の下で与える必要があるということです。飼い主さんの自己判断で与えてよいペットフードではありません。詳しくは後述しますので、そちらもぜひチェックしてみてください。
◆健康な犬の主食には「総合栄養食」を与えよう
ドッグフードには、療法食の他、総合栄養食・間食・その他の目的食などいった種類があります。
健康な犬の主食には基本的に、総合栄養食のドッグフードを与えましょう。
総合栄養食というのは、適量の新鮮な水と一緒に与えることで、必要な栄養素成分を摂取できるよう栄養バランスが整えられたフードのことです。小型犬・大型犬などといったサイズや年齢に合わせて、栄養基準が設けられているのです。
ドライフードやウェットフードなど、ドッグフードは様々なメーカーから商品が販売されています。一見総合栄養食か判断が付きにくい場合もありますが、パッケージを確認すれば記載・表示されているので確認してみましょう。
愛犬の健康状態に特に問題がないのであれば、総合栄養食を与えることを基本としてください。
療法食の種類
療法食といっても、病気・症状によって与えるものは異なります。主な療法食の種類を紹介していきますので、どのようなタイプがあるのか確認していきましょう。
◆腎臓
腎臓疾患の療法食は、血液中に老廃物が増えるのを防ぎ、病気の進行を抑えるために、リン・タンパク質などが制限されています。
高品質なタンパク質を使用していたり、窒素含有成分の吸収を低減するように工夫されているのです。
◆消化器
消化器疾患の療法食は主に、高消化率(低脂肪を含む)・食物アレルギーの配慮・高食物繊維などに、配慮されて作られています。
これらのものを使い分けていくのですが、症状や病気によって与えるタイプが異なるため、与え方には注意が必要となります。
◆心臓
心臓疾患の療法食は、ナトリウムの量を制限しています。ただし、心臓疾患の進行度合い、使用する薬の種類によって、適切なナトリウム量は異なるのです。自己判断せずに、必ず獣医師に相談するようにしましょう。
◆下部尿路
下部尿路とは、膀胱から尿道までのことをいい、尿路結石などと関わりの深い場所です。
ストルバイト結石症、シュウ酸カルシウム結石症などの療法食では、ミネラル(マグネシウム・カルシウム・ナトリウムなど)の含有量が調整されています。また、療法食を与えている間は、他の食べ物を与えないように注意しなくてはいけません。
結石の種類ごとに用いられる、療法食の一例は以下の通りです。
●ストルバイト結石(溶解時)
尿を酸性化する特性をもち、マグネシウムとタンパク質を制限して高品質なタンパク質を使用しているもの。
●ストルバイト結石(再発防止時)
尿を酸性化する特性をもち、マグネシウムを中程度制限しているもの。
●尿酸塩結石
プリン体・タンパク質を制限して、高品質なタンパク質を使用しているもの。
●シュウ酸塩結石
カルシウム・ビタミンDを制限して、尿をアルカリ化する特性を持っているもの。
●シスチン結石
タンパク質の制限と、さらに含硫アミノ酸(メチオニンなど)を中程度に制限し、尿をアルカリ化する特性をもっているもの。
◆皮膚・アレルギー
皮膚疾患に対する療法食は、必須脂肪酸を増強したもので作られています。
そして食物アレルギーの療法食には、身体がアレルゲンと認識できない程に加水分解したタンパク質や、新奇タンパク質、精製したアミノ酸類などが使用されています。もしくは、食物アレルギー(または食物不耐症)の原因となる特定の原材料を使用せずに、製造管理による混入を防止したものの場合もあります。
与える際には、獣医師の許可が下りるまで他の食べ物を一切与えないように対応しましょう。
療法食を買う際の注意点
ドッグフードの種類の中には、「機能性ドッグフード」というものがあります。「~に配慮」「~の健康」などと記載されたものが、これに当たります。
療法食と似ていることから代用できると考える方もいると思いますが、機能性ドッグフードは病気の治療・予防を目的としたものではないので注意しましょう。あくまで、健康を維持していく上で気になるポイントに応じた栄養素などに配慮したものなのです。
与え方を間違えば病気が進行してしまうケースもありますので、機能性ドッグフードは栄養面でのサポートをするものだと認識しておきましょう。
療法食を利用・購入する際には、他にも注意点があります。以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。
◆獣医師の指示がないとダメ
前述したように療法食は、特定の病気や健康状態に対して栄養バランスの比率が整えられた特別なフードです。愛犬の体調が悪いから、肥満が気になってきたから、といった飼い主さんの自己判断で与えてよいものではありません。
また療法食の中には、短期間の治療に用いるために極端な栄養バランスに調整されたものもあります。愛犬の状態も変わっていくため、それに応じた食事療法食が必要であり、その時によって変更する必要が出てくるケースもあります。
継続して利用する場合も、定期的に獣医師の診察を受けなくてはいけないのです。尚、療法食の種類にもよりますが、獣医師の指導なしに3か月以上に渡って同じ療法食を与え続けることにはリスクがあります。長期的に使用可能な種類もあるのですが、いつまで続けるべきかは獣医師と必ず相談してくださいね。
◆自己判断での購入はNG!
現代では獣医師の処方がなくても、ネット通販で療法食を簡単に手に入れることができます。しかし、療法食はあくまで獣医師の指導の下に用いるドッグフードだということを忘れてはいけません。勝手に総合栄養食から療法食に切り替えてしまった結果、愛犬の健康被害を招く恐れがあるので注意が必要です。
療法食はロイヤルカナンやヒルズなど、いくつかのメーカーから販売されていますが、どの療法食もメーカーによって成分や割合などに違いがあります。必ず獣医師の指示に従いながら、適切な種類を与えるようにしてください。
療法食を食べない時の対処法
愛犬が療法食を中々食べてくれずに、悩んでいる飼い主さんも少なくありません。そんな時の対処方法を紹介していきますので、参考にしてみてください。
◆切り替え方の工夫
愛犬がドッグフードの違いに警戒する、消化不良を起こすなどの問題を回避するために、1週間程度かけて徐々に療法食の量を増やしていきましょう。もちろん、まずは獣医師に相談することが前提です。
特にシニア期の腎臓病・心臓病を抱えている場合は、獣医師の指導の下でゆっくりと時間をかけて切り替えてください。
◆4つの方法を試す
病気や使用する療法食によって差はありますが、移行期間は一般的に少なくとも7日かけた方がよいでしょう。
他の方法として、新旧療法のフードを隣り合わせの食器に入れて与える二皿給餌法もありますが、徐々に切り替えても食べてくれない場合は、獣医師の許可を得てから以下の方法を試してみてください。
◎温めてみる
ドライフードでも電子レンジで温めることができるので、40℃程度に温めてみましょう。温めることで風味が増し、食欲をそそる場合があります。
◎お湯でふやかす
子犬に与える餌の様に、お湯でふやかして柔らかくしてみましょう。フードが柔らかくなることで、食べやすくなります。
◎匂いを変える
だしパック・お茶パックなどの茶葉を除いたティーバックに鰹節などを入れ、それをフードの袋に入れてみましょう。フードの成分を変えずに、匂いだけを変えることが可能です。
◎無理をさせずに少量ずつ
食欲が落ちている場合は、少しずつ回数を分けて与えても問題はありません。ゆっくり少量ずつ、食べさせてあげましょう。
ドッグフードと一緒に与えても良い?
紹介してきたように療法食は、獣医師が食べさせ方や種類変更、終了時期などを判断するものです。自己判断で勝手にドッグフードと一緒に与えて良いものではありません。
他のドッグフードと混ぜることは切り替え時には必要ですが、これも獣医師にまず相談して指示を仰いでから行うべき作業だといえるでしょう。
療法食に対して、自己判断はNG行為です。基本的には獣医師に質問・相談してから、行動するようにしてください。
まとめ
犬の療法食は、獣医師の指示の下で与える特別なドッグフードです。再三述べてきましたが、自己判断で与えることは絶対に避けてください。
そして療法食の使用中は、必ず定期的に通院して獣医師の指導を受けましょう。
療法食を食べてくれずに頭を抱えることもあるかもしれません。紹介してきた方法を試したり、獣医師と相談し合いながら、めげずに根気よく愛犬のケアに尽力してくださいね。
そして、愛犬が療法食を食べてくれた時には沢山褒めてあげましょう。飼い主さんの笑顔や楽しそうな姿を見せることも、意外と効果的で大切なことなのです。
病気と闘う愛犬を見守りサポートすることは、飼い主としての重要な務めです。正しく対応することで、愛犬と一緒に療法食の生活を乗り切りましょう。
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