1.短頭種の特徴
1-1.【特徴①】鼻の長さが短い
1-2.【特徴②】歯並びが悪い傾向
1-3.【特徴③】口周りにしわが寄る
2.短頭種に含まれる犬種
2-1.ブルドッグ
2-2.パグ
2-3.フレンチブルドッグ
2-4.ボストンテリア
2-5.シーズー
2-6.その他
3.短頭種が気を付けたい病気
3-1.短頭種気道症候群
3-2.気管虚脱
3-3.色素性角膜炎
3-4.眼球突出
3-5.熱中症
短頭種とは
短頭種とは、いわゆる”鼻ぺちゃ””ブサカワ”と表現されるマズルの短いワンちゃんを指す名称です。
少し専門的な説明をすると、ただ鼻が短いということではなく、頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短い犬種のことを総じて「短頭種」と呼びます。
短頭種にはどのような特徴があるのか、まずは解説していきましょう。
◆【特徴①】鼻の長さが短い
たくさんいる犬種たちを、頭とマズルの長さの関係性により、短頭種・中頭種・長頭種の3種に分類することが出来ます。
前述の通り、頭蓋骨の長さの幅に比べて、鼻の長さ(マズル)が短い犬種を短頭種と呼びます。
他には、頭蓋骨の長さと鼻の長さが同じの中頭種(レトリバー種・スパニエル種など)、鼻の長さの方が頭蓋骨の長さよりも長い長頭種(コリー種・ハスキーなど)、というように頭の形によって分けられています。
中でも短頭種は健康トラブルを起こしやすいといわれる種類なのですが、現代の体つきに形成された理由には歴史的背景が関わっており、作出された目的としてPLOS Oneに掲載された研究結果によると、2つの説が存在しています。
まず一つ目は、特定の犬種(イングリッシュ・ブルドッグなど)に対して、闘犬として闘いやすい形質を選んで繁殖を行ってきという説です。鼻が短ければその分、顎が強くなります。それによって闘いや狩猟が有利になると信じられていたわけですね。
もう一つの説は、昔の犬の所有者達が、短頭種のような頭の形が人間の赤ちゃんと似ていて可愛いと思っており、より可愛らしく見えるように鼻が小さく短い犬を選んで繁殖を繰り返した、というものです。
◆【特徴②】歯並びが悪い傾向
短頭種は、歯並びの悪い個体が多い傾向にあります。
鼻の部分が短いせいで上顎の骨が下顎に比べて小さくなるため、上下の歯が嚙み合わなくなったり、歯並びが悪くなってしまうためです。
歯並びの悪さが原因で歯垢が付きやすいため、歯石から歯周病へと進行してしまうケースが多々あります。子犬の頃から歯磨きに慣れさせて習慣化させ、定期的な口内ケアを行いましょう。常に口の中の衛生を保つことが大切です。
◆【特徴③】口周りにしわが寄る
口の周り・眼の周り・鼻の周りなどに、皮膚のたるみが多くみられるのも、短頭種の特徴的な部分ですよね。
このたるみに汚れが溜まったり、皮膚がこすれたりするため、皮膚疾患を発症するケースが多いのです。日頃から皮膚の清潔を保つために、こまめなケアや健康管理に注意するようにしましょう。
短頭種に含まれる犬種
一般的に短頭種として分類される犬種を一部紹介していきましょう。メジャーな人気犬種も多いので、是非チェックしてみてください。
◆ブルドッグ
短頭種として最も代表的な犬種のブルドッグ。顔にある独特のヒダと、大きな体格が特徴的ですね。元々、牛と戦うために作出された犬種のため、牛の足元に噛み付きやすいように下顎が発達しています。噛み付いた状態でも呼吸をしやすくするために、鼻を短く上に向けるように繁殖を繰り返した結果、現在の顔つきとなったそうです。
◆パグ
中国が原産のパグですが、祖先にはペキニーズが関係しているといわれており、名前はラテン語の「にぎりこぶし」を意味するPugnas(パグナス)が由来だそうです。
大きくて丸い頭・深いシワが特徴的で、少し突出した大きく丸い目に、鼻が短く下顎が上顎よりも少し出ている状態の、愛らしい顔つきをしています。
体温調節が苦手で熱中症などに注意が必要であり、さらに眼が突出していることから角膜損傷などの目の病気にかかるリスクも高いです。常に室温の管理をしたり、周辺には鋭利なものを置かないなど、生活環境には十分配慮しましょう。
◆フレンチブルドッグ
担当種の中でもペットとして人気の高いフレンチ・ブルドッグ。鼻が短く、頭から肩の方までシワ・皮膚のたるみをもつ構造が特徴的です。全身短く柔らかい被毛で覆われているので触り心地が魅力的ですが、よだれを垂らしてゼーゼーと呼吸音を立てることも多いでしょう。ちなみに、ブルドッグとパグ、テリアの交配で誕生した犬種です。
皮膚が弱く、慢性皮膚炎・アトピー性皮膚炎・湿性皮膚炎などといった皮膚疾患を起こしやすいので、害虫に注意し皮膚を清潔に保つことを徹底しましょう。また、鼻が短いことから鼻腔狭窄にもかかりやすく、息がしづらい酸欠状態になることもあるので気を付けてください。
◆ボストンテリア
ボストン・テリアは他の短頭種と比べてシワが少なく、細い足とつやのある短い被毛(スムースコート)を持っている犬種です。
膝蓋骨脱臼になりやすく手術が必要なケースも起こり得ますし、体温調節が苦手なことから極端な気温の変化によって呼吸器に異常を引き起こす可能性もあります。飼育環境には、十分気を付けましょう。
◆シーズー
チベットのラサ・アプソ、中国のペキニーズとの交配で作出されたと考えられているシー・ズー。乾燥した地方が原産のため、湿度の高い日本では皮膚炎・外耳炎などにかかりやすい傾向にあります。
低い鼻と丸い眼が特徴的ですが、眼が突出していることから、眼のトラブルや涙やけを起こすことが多いです。眼の周辺の被毛やまつ毛で眼が傷つくこともありますので、放置して悪化しないよう注意してください。
◆その他
紹介してきた犬種の他にも、ペキニーズ・狆・ボクサーなどの犬種が短頭種に含まれます。
さらに、一見短頭種としての判断がしにくいかもしれませんが、チワワ、ヨークシャー・テリア、マルチーズ、ポメラニアンなども、短頭種として分類されることがあります。
もちろん個体差もありますので、一般的に短頭種と呼ばれない犬種であっても、呼吸のしにくさや歯並びの悪さなど、短頭種に多いとされる問題をもっている個体も少なくありません。このような体質・顔の構造がみられる子には、同様の配慮が必要でしょう。
短頭種が気を付けたい病気
前述してきたように、短頭種に分類されるタイプの犬種には様々な健康トラブルがつきものです。
注意するべき病気や症状を紹介していきますので、しっかりチェックしていきましょう。万が一に備えて情報を集めておくのも、とても大切なことです。
◆短頭種気道症候群
短頭種に起こりやすい呼吸器疾患の総称を、短頭種気道症候群といいます。特徴的な頭の構造によるもので、以下のような原因が挙げられます。
これらが一つ、また複数起きることで吸気性の呼吸困難が生じてしまいます。
異常な呼吸音、睡眠時のいびきや無呼吸、運動後に動かなくなる・失神する、などが短頭種気道症候群をもつ犬の症状として代表的なのでしっかり覚えておきましょう。
根本的治療としては、鼻を切って鼻腔を広げる手術や、軟口蓋を切除する手術などの外科的治療が必要となるでしょう。さらに並行して、体重管理や気温・湿度管理などの環境整備を要します。
一時的な内科的治療として、抗炎症剤(ステロイド剤)や抗生剤が使用される場合もありますが、外科的治療に代わるものではありません。
◆気管虚脱
短頭種に限らず小型犬でも比較的多いとされる病気で、動物が咳をする原因の一つとして挙げられます。
気管の一部が細くなっているのですが気管の狭窄とは違い、気管虚脱では気管の一部の軟骨が変形しており、気管の上下が扁平化されています。
乾性の咳が出ますが必ずしもそれが気管虚脱とは限らないため、鑑別は中々難しく、通常はレントゲン検査で推定するようです。
気管虚脱があると感染が起きやすい状態に陥るため、一般的には抗生物質や気管支拡張剤で治療を行いますが、最近では症状のレベルによって手術が用いられることも増えてきました。
気になる咳が続く場合は、一度動物病院で診察してもらいましょう。
◆色素性角膜炎
角膜へのメラニン色素沈着を伴う角膜炎のことを、色素性角膜炎といいます。まつ毛の重生や乱生、眼瞼内反・外反など眼瞼の異常、乾性結膜炎(ドライアイ)など、角膜への慢性刺激が原因で発症します。
角膜への血管新生や結膜充血のような症状がみられ、一般的には刺激の原因を取り除いて色素沈着の進行を止めたり、ドライアイであればヒアルロン酸・シクロスポリン点眼を使用する、などの処置が施されるでしょう。
愛犬の充血が気になる場合は、一度獣医師に相談してみてください。
◆眼球突出
眼球が脱出・突出するなどの症状がみられ、放置すると乾性角膜炎や、刺激による炎症が起こる可能性があります。
眼球の脱出は、眼と脳を繋神経や眼を動かすための筋肉に大きなダメージを与えるため、眼を整復しても視力低下・失明などの症状が残るリスクを持つ危険な症状だといえるでしょう。
主な原因は以下の通りです。
眼窩の膿瘍をフレグモーネといい、歯周病などの細菌感染が眼下に波及することで発症します。外傷へ注意はもちろん、歯の健康にも気を付けなくてはいけません。
◆熱中症
熱い時期に特に注意が必要となる熱中症は、蒸し暑い室内・車内での留守番や、厳しい暑さの中での散歩や運動などが原因で発症することが多く、命に危険が及ぶ恐ろしい病気です。
急激な体温の上昇によって、あえぎ呼吸(パンティング)・流延(よだれ)などの症状が現れます。酷い時は、呼吸困難・吐血・血便なども引き起こされ、最悪の場合死に至るケースも珍しくありません。
短頭種には特に体温調節が苦手な子も多いので、初夏から夏にかけては水分補給や散歩の時間帯に注意するなど、熱中症予防対策をしっかり行うよう十分配慮してください。
まとめ
愛らしい外見が魅力的な短頭種ですが、健康面には気を付けるべきポイントが沢山あります。海外では遺伝的疾患が多いことから、繁殖禁止が決定されている犬種も短頭種の中には多いのです。
体の構造が原因で体調不良や病気を引き起こす可能性があるため、日頃から定期的なケアや飼育環境の整備、健康管理には十分注意しましょう。
呼吸器面に問題を抱える場合が多いので、肥満は大敵ですし、興奮させすぎるのもよくありません。常に愛犬の様子を確認しながら、以前は正常だった部分に異常がみられたり、気になる症状が出てきた場合には早めに動物病院を受診しましょう。ペット保険に加入している方は、事前に対象となる病気のチェックもしておくと良いでしょう。
一緒に末永く幸福な人生を歩んでいくためにも、愛犬の健康を守るために尽力してください。
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