【獣医師執筆】身近な所にリスクは潜んでいるかも… ワンちゃん・ネコちゃんのアレルギー症状

2023.04.12

【獣医師執筆】身近な所にリスクは潜んでいるかも… ワンちゃん・ネコちゃんのアレルギー症状

犬・猫の病気や健康についてコジマの獣医師が教えてくれる「教えて獣医さん!」今回はワンちゃん・ネコちゃんの身近に潜む「アレルギー症状」についてです。アレルギーと一口に言っても様々な症状や原因があるんです。おうちのワンちゃん・ネコちゃんにアレルギーのような症状が起きた時に適切に対処できるよう、知っておきましょう。

アレルギーは人も動物も身近な症状です

人と同じように、ワンちゃん・ネコちゃんもアレルギー症状を引き起こします。
人や動物には、体内に侵入する異物(アレルゲン)から身を守る免疫システムがあり、この免疫システムに異常が起きるとアレルゲンに対してカラダが過敏に反応し、痒みや皮膚炎を引き起こします。
アレルギーの主な原因は、花粉・ハウスダスト・食べ物・細菌・真菌(カビ)・ノミやダニなどの寄生虫です。3歳以下での発症が多く見られますが、高齢になってから発症するケースもあります。
※ネコちゃんの場合、アレルギーのしくみが研究途上のため、総称して「過敏性皮膚炎」と表記されることもあります。

アレルギーは病気の一種です

アレルギーは痒みが強く出るものが多く、痒みを我慢できずに搔いてしまい、皮膚炎になり同じ症状を繰り返してしまうことが多い病気です。

アレルゲンを知るための検査

診断は視診、皮膚検査、血液検査などを行います。アレルギーの種類によって発症する部分がある程度決まっているので、まずは状態をよく観察します。皮膚検査では、症状のある皮膚にどのような細胞や外部寄生虫がいるかを確認します。血液検査ではどのようなアレルゲンに強く反応しているかを検査します。

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アレルギーの原因はさまざま

♦【犬・猫】ノミアレルギ―性皮膚炎(ノミ誘発性過敏性皮膚炎)

ノミに吸血された際にカラダに入ったノミの唾液が原因です。

<症状>
暖かい時期に強い痒みが見られ、背中から腰の辺りに赤いブツブツやかさぶたができたりします。

♦【犬・猫】アトピー性皮膚炎(環境性アレルギー・非ノミ非食物誘発性の過敏性皮膚炎)

花粉やハウスダスト(チリダニ)などの物質が原因です。花粉が原因の場合は、症状に季節性が見られることがあります。完治が難しいので、症状を上手くコントロールしながら付き合う必要があります。

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<症状>
若齢で発症することが多いです。顔面、四肢、腹部などに強い痒みが長く続き、湿疹や外耳炎、脱毛を引き起こすこともあります。

♦【犬・猫】食物アレルギー(食物誘発性の過敏性皮膚炎)

食べ物に含まれるタンパク質成分が原因です。主なアレルゲンは、肉類、乳製品、穀類(小麦、穀物、大豆)、卵です。1歳以下の若齢で発症しますが、7歳以上の高齢期に突然発症することもあります。アトピー性皮膚炎を持っている子は食物アレルギーを併発することも多いので注意が必要です。

<症状>
痒みが顔面、足先、内股に出ることが多く、外耳炎も引き起こします。また、下痢や嘔吐などの消化器症状が見られることもあります。

♦【犬】マラセチア性皮膚炎

マラセチアは健康な皮膚にも生息している常在菌です。通常であればマラセチアが悪さをすることはありませんが、アトピー性皮膚炎や免疫力の落ちる病気、加齢などで皮膚の防御機能が低下してしまうと、マラセチアが異常に増えて皮膚炎を引き起こすことがあります。

<症状>
【症状】
皮膚同士が擦れる脇や内股、指の間で増えやすく、痒みや赤み、ベタベタしたフケが見られ、外耳炎の併発も多いです。
その他ダニや昆虫が原因となりアレルギー皮膚炎を起こすこともあります。

治療で症状を緩和することができます

治療は症状により異なります。最近では再生医療などがあります。

♦【犬・猫】薬剤投与

薬剤によるアレルギーの改善には、抗ヒスタミン薬、ステロイド、免疫抑制剤、感染があれば抗生剤を使用します。ワンちゃんの場合、長期間痒みを緩和する注射があります。

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♦【犬・猫】環境改善

ノミアレルギーの場合は、駆虫薬を使用して定期的に予防しましょう。花粉やハウスダストに対しては、ワンちゃん・ネコちゃんが使用しているベッドやクッション、服を定期的に洗濯する、こまめに部屋の掃除をする、空気清浄機を活用することでアレルゲンを減らすことにつながります。

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♦【犬・猫】スキンケア

適切なシャンプーやブラッシングを定期的に行うことで、皮膚の表面に付着したアレルゲンを洗い流し、皮膚を健康に保ち、皮膚の防御機能を維持して症状を緩和します。シャンプー後の保湿も大事なスキンケアのポイントです。

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♦【犬・猫】食事療法

症状が出た時に食べていたタンパク質が含まれていない食事を約2ヶ月続け、症状が落ち着くか確認します。アレルゲンとなっている食材が特定できたら、食物アレルギー向けの食事など、対象の食材を含まない食事を与えていきます。

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正しいケアでアレルギーを乗り越えよう

アレルギーにはさまざまな原因があり、診断や治療に時間がかかり、完治が難しい病気です。ただし、適切な治療を継続することで症状を上手くコントロールして、負担やストレスを減らしてあげることはできます。少しでも快適な生活を送れるよう対策をしてあげましょう。
痒みの症状が出ていても皮膚糸状菌症や外部寄生虫感染、ストレスなどアレルギーとは異なる場合があるので、症状があれば早めに動物病院にご相談ください。



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コジマ動物病院 Dr.小椋

コジマ動物病院 Dr.小椋

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。 https://pets-kojima.com/hospital/

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