【獣医師監修】愛犬がハァハァしている!その原因や注意すべき場合は?

2023.09.16

【獣医師監修】愛犬がハァハァしている!その原因や注意すべき場合は?

愛犬が口を開いて、ハァハァと早くて荒めの呼吸をしているのを見たことがある方は多いでしょう。これは犬によくみられる行動の一つなのですが、一体何が原因なのでしょうか?今回は、犬のハァハァする行動についてその原因を紹介していきましょう。すぐに対処が必要なパターンもあれば、病気のせいであるケースもあります。万が一に備えて、しっかりと覚えておきましょう。


犬がハァハァいう原因4選

犬ハァハァ

ワンちゃんが口を開けて舌を出しながら、ハアハアと荒い呼吸をすることを「パンティング」といいます。
この呼吸をしている時、愛犬は一体どういう状態にあるのでしょうか。まずは、その主な原因をみていきましょう。

◆体温調整のため

人間はほぼ全身にエクリン汗腺が分布されており、そこから汗を分泌します。しかし、犬には肉球にしかエクリン線がありません。このため、汗をかいて体温調節をすることができないのです。
それではどのように体温調節をしているのでしょうか。その方法が、パンティングというわけです。
ハァハァとパンティングをすることで、口の中の水分を蒸発させて身体の熱を下げようとしています。この場合、自然な行動の一つなので、基本的には問題はありません。
気温が高かったり、運動をして体温が上昇すると、パンティングがよくみられますが、体温が下がればパンティングは収まるでしょう。

◆運動後に興奮している

散歩や運動後の興奮や息切れによっても、犬はパンティングをします。この場合、体が酸素を早く取り込もうとしているためにパンティングがみられるのです。
体を動かした後に愛犬にパンティングが見られる場合は、静かな場所で休ませ、呼吸の落ち着きを待ちましょう。

◆ストレスによるもの

犬のパンティングは、ストレスを感じている時にもみられる場合があります。
動物病院や工事現場、雷や花火の音など、愛犬が苦手としている環境でパンティングがみられた場合は、ストレスが原因である可能性が考えられるでしょう。
ストレス下では、あくびやウロウロする、震える、などのサインが併せてみられることもあります。愛犬の様子や普段の行動から原因を判断してください。
そのシチュエーションを避けたり、安心できる場所に移動するなどの対処法を取り、愛犬を落ち着かせてあげるのがポイントの一つです。
ストレスの原因を突き止めてそれを取り除くことができれば、パンティングは落ち着き、正常な呼吸に戻るでしょう。

◆緊張や不安がある

身体的な事情やトラブル以外でも、パンティングがみられるケースがあります。ストレスに通じるものがありますが、犬は過度に緊張したり不安を感じている時に、呼吸を荒くしてパンティングを行うのです。
この時、口を後ろに引きつらせるように開けていたり、目を見開き、焦点が定まっていないような表情になることもあるでしょう。また、尻尾を丸める、ブルブルと身体を震わせるような様子が見られる場合もあります。
過度な緊張状態が続くと、呼吸が整わずによだれを垂らしたり、食欲がなくなる、失禁するなどの行動を起こす可能性がありますので、リラックスできる環境を整えてあげることが大切です。


犬が異常なほどハァハァいって落ち着きがない時

体温調節のために行うパンティングであれば問題はないのですが、異常な呼吸数や落ち着きのなさが見られる場合は、愛犬の身体に何らかの異常が起こっている可能性があります。
正常時と異常時の適切な見分け方ができるように、普段から愛犬の様子をしっかり観察しておきましょう。
注意が必要な呼吸の様子が見られる時、そこには様々な理由が存在します。
病気や、緊急性の高い症状である場合もありますし、痛みを感じている場合もあります。認知症による旋回行動などが原因で息が上がっても本人の意志では止まれずに呼吸が荒くなるケースもあるのです。
異常な呼吸がみられることで疑われる主な病気や症状について解説していきますので、しっかりチェックしておきましょう。

◆熱中症の危険性

犬にとって暑さは大敵です。気温が上昇する夏の暑い時期は、特に熱中症への注意が必要となります。
熱中症の主な症状の一つに、ハアハアと喘ぐような呼吸があるのです。加えて、体温が高い、よだれが出る、目の充血、ぐったりするなどの様子が見られる場合は、要注意だといえるでしょう。
人間と同様で熱中症は命に関わる危険な問題です。愛犬にこのような症状がみられた場合は、応急処置として体を冷やしながら、すぐに動物病院を受診してください。
ちなみに、外気温25℃以上、湿度60%以上で、熱中症に陥る恐れがあるそうです。
犬が快適に過ごすことができる室内温度は18~22℃とされていますので、エアコンの設定温度にも配慮しなくてはいけません。

◆心臓病によるもの

呼吸が荒くなる原因として挙げられる心臓疾患として、主に下記の病気が挙げられます。

◎フィラリア症
フィラリア症とは、蚊に刺されることでフィラリアという寄生虫がうつり、心臓や肺動脈に寄生することで発症する病気です。初期症状はほとんど見られないのですが、心不全を引き起こし死に至るケースのある恐ろしい病気だといえるでしょう。
初期症状では、咳・食欲減退・散歩を嫌がるなどの様子がみられ、重度の場合は、腹水・血尿・貧血・チアノーゼ・失神などの症状が現れます。
フィラリア症予防薬を定期的に投薬することが予防法となりますので、必ず獣医師に相談して処方してもらいましょう。

◎僧帽弁閉鎖不全症
犬の心臓病で最も発症率が高く、予防・完治が難しいとされる病気です。血液の一部が逆流して、血液の流れが滞ってしまいます。
初期症状はあまり見られませんが逆流量が多くなると、疲れやすくなる・遊ぶ時間が短くなる・チアノーゼ・咳、などの症状がみられるようになるでしょう。悪化すると、以下で紹介する肺水腫なども引き起こされます。
重症度は様々で治療が要らないケースもありますが、何らかの異変を感じた場合は早めに動物病院で診断を受けましょう。
特に、マルチーズやキャバリアなどの犬種で発症することが多いです。

◎肺水腫
肺の中に水が溜まって機能不全に陥る病気で、急激に悪化して突然死することもある危険な病気です。ほとんどの場合、心臓病などの他の病気の症状としてみられるでしょう。
初期段階では分かりにくいのですが、重度になると横の姿勢で苦しそうにしていたり、座った、または立った状態でないといられなくなります。
明確な予防法はありませんが、気温の高い日には散歩を控えるようにしてください。気温が上がると心臓の負担も増えるため、心疾患を抱えている子は特に注意が必要です。

◎心筋症
心臓を構成する筋肉(心筋)に異常が起こり、心臓の働きが弱くなる病気で、拡張型心筋症と肥大型心筋症の二つのタイプに分けられます。いずれも、残念ながら完治することはありません。
犬の場合、拡張型がほとんどで肥大型は稀だといえるでしょう。
拡張型は心筋が薄く伸びて収縮力が弱まり、血液の循環不全が起こります。咳・呼吸困難・失神などが主な症状です。また、大型犬や超大型犬種、メスよりもオスに見られることが多い、という特徴があるようです。
肥大型の場合は心筋が厚くなり、心臓の内腔が狭くなります。これにより心臓が強く拍動できずに、うまく血液を送ることができなくなってしまうのです。
どちらのタイプも、早期発見と適切な治療が重要となるでしょう。

◆呼吸器系に異常がある

呼吸が荒くなる原因として挙げられる呼吸器疾患として、主に下記の病気が挙げられます。

◎気管支炎
ウイルス・細菌感染が原因で気管支に炎症が起きた状態を気管支炎といいます。苦しそうに呼吸をする・何度も咳をする・運動を嫌がる、などの様子が見られた場合、気管支炎の可能性が考えられるでしょう。
特に子犬は免疫力が低いため、発症する可能性が高い傾向にあるので注意が必要です。
稀ですが、消臭スプレー・殺虫剤などの刺激性の強いガス、薬物混入などが原因となる場合もあります。

◎気管支虚脱
何らかの原因で気管支が潰れ呼吸ができなくなる病気で、原因が明確になっておらず自然治癒することがありません。
トイ種(チワワ・ポメラニアン・マルチーズなど)や短頭種(パグ・ブルドッグ・フレンチブルドッグなど)が発症しやすい犬種として挙げられます。
主な症状は、乾いた咳をする・ゼーゼー(ヒューヒュー)とした咳が出る・呼吸を苦しそうにしている、などです。初期症状は軽い咳ですが、末期になると呼吸困難を引き起こし、症状の度合いによっては手術が必要となるでしょう。
首輪やハーネスの圧迫によって咳が出る場合もありますし、肥満傾向にある犬は脂肪が気管を圧迫して気管虚脱を助長する可能性もあります。

◎肺炎
肺に炎症が起こる病気で、ウイルス・細菌感染・アレルギー・異物の誤嚥(誤飲)などが原因とされています。また、犬回虫・フィラリアなどの寄生虫によって発症する場合もあるのです。
発熱・鼻水・酷い咳・ぐったりしているなどが肺炎によくみられる症状で、特に子犬や老犬、病気で免疫力が低下している個体の場合は、症状が重くなるので注意しましょう。
最悪の場合、死に至るケースもある恐ろしい病気です。気になる様子がみられたら早めに動物病院を受診してください。

◆クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)

脳内にある下垂体や副腎の異常により、副腎の中の皮質で作られる副腎皮質ホルモンの分泌が過剰になることで起こる病気です。
多飲多尿・多食・筋肉量低下・神経症状(痴呆など)・脱毛・腹囲膨満などが主な症状で、腹囲膨満によってパンティングが良くみられるようになります。

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犬がハァハァならないための注意点

柴犬 ハアハア

普段のパンティングと違う様子がみられたり、呼吸音などに違和感のある場合は、愛犬の体内に異常が起こっていたり、体調不良の状態に陥っている可能性が考えられます。
愛犬が必要以上にハァハァしない生活を送るために、以下の注意点を押さえておきましょう。

◆呼吸数を把握する

愛犬の呼吸異常にいち早く気付くためには、平常時の呼吸数を測っておくのがおすすめです。
犬の胸が上下する回数を、上下で1セットとして1分間測りましょう。
犬の正常な呼吸は1分間に、小型犬で20回前後、大型犬で15回前後といわれています。尚、短頭種は大型犬と比べて呼吸数が多い傾向にあるようです。
呼吸回数に不安や異常を感じて心配な場合は、一度獣医師に診察してもらうとよいでしょう。

◆季節や気温に合わせた散歩スケジュールを立てる

夏などの暑い季節は、日中の散歩を避けましょう。早朝や夕方以降などの涼しい時間帯を選択してください。
日差しで暖められたアスファルトは60℃以上になることもあり、肉球を火傷する場合もあります。
早朝・日没後に散歩をすることが熱中症対策にもなりますので、気温に合わせて外出の予定をたてることを徹底しましょう。

◆エアコンなどの空調を活用する

犬の熱中症の割合は、家の中で起こる確率が7割もあるといわれています。室内にいるから安心というわけではないのです。
エアコンで室温を調節することがとても重要だといえるでしょう。加えて、湿度に気を付けることも大切ですよ。
愛犬が快適に生活できるように、室温と湿度の管理に注意しましょう。

◆緊張やストレスとなる原因を減らす

パンティングの原因が緊張やストレスにある場合は、その原因を可能な限り減らすことが一番効果的な対策法です。
愛犬が何に対して不安やストレスを感じているのかを、しっかり判断しましょう。
排除できる原因であればすぐに対処するよう努めてくださいね。


まとめ

犬のパンティングは、基本的に体温調節のために行われるものです。しかし、原因がそれ以外の場合は対策が必要となります。
病気の可能性もありますので、気になる様子がみられた場合は早めに動物病院を受診しましょう。
予防できる部分に関しては積極的に対応し、愛犬が元気に過ごせるよう配慮してください。
飼い主さんが毎日しっかりと、健康管理をすることが大切です。特に暑い季節はしっかりと愛犬の様子を観察し、体調が大丈夫かどうか気にかけてあげましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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