1.犬にクルミを与えてはいけない理由
2.犬がクルミを食べてしまった場合の対処法
3.クルミ以外に犬が避けるべきナッツ類
4.犬に安全なナッツとその健康効果
5.クルミが含まれる加工食品に注意
犬にクルミを与えてはいけない理由
クルミには犬にとっても必要な栄養素である、必須脂肪酸が含まれています。不足すると欠乏症を起こして、体調・皮膚などに不調が出てしまう重要な栄養素の一つがこれにあたります。
クルミに含まれる必須脂肪酸のオメガ3脂肪酸・オメガ6脂肪酸は、犬の皮膚、被毛のツヤ・ハリを維持し、赤ワインをも上回る含有量のポリフェノールによって抗酸化作用が期待でき、アンチエイジング効果もあると言われています。
このようにクルミは、犬にとっても魅力的な栄養素をもつ食材であることは確かであり、少量であれば食べても基本的には問題はないのですが、様々なリスクをもたらす可能性のある存在だともいえるのです。
まずは、犬にとってどのようなリスクがあるのかみていきましょう。
◆クルミが犬に与えるリスク
クルミには100g中7.5gもの食物繊維が含まれており、そのほとんどが不溶性食物繊維です。さらに脂質も多いため消化に良い食べ物とはいえません。
犬にクルミを与えすぎてしまうと、消化不良を起こして、下痢・軟便・嘔吐などの症状が起こる可能性が高まるのです。
また、食物繊維は水分を吸収して大きく膨らんでしまうため、腸内に残ると便が硬くなり、便秘の原因にもなり得るでしょう。
さらに犬には食べ物を丸飲みする習性もあるため、喉に詰まらせてしまう危険性も大いに考えられます。
特にクルミは他のナッツ類よりもサイズが大きいため、喉・消化管に詰まらせるリスクが高いのです。子犬や老犬はもちろん、成犬であってもチワワなどの超小型犬には十分な注意が必要です。
◆中毒症状のリスク
近年、古いクルミの実から「アフラトキシン」というカビの毒が検出されたことが報告されています。
これは非常に発がん性の高いカビ毒であり、微量でも肝臓がんを発症する恐れがある大変危険な成分だそうです。
大袋でクルミを大量に購入した場合などは、保管場所への配慮や消費期限にも充分に注意しなくてはいけません。誤って愛犬が誤食したり、いたずらして口に入れることのないように管理を徹底しましょう。
こういった食中毒はクルミに限って起こることではありませんが、アレルギーもまた他の食材同様にクルミにも注意が必要です。犬がクルミによる食物アレルギーを起こす可能性もあるのです。
食物アレルギーによってみられる主な症状は、嘔吐・下痢・痒み・皮膚炎などの発症です。気になる様子が愛犬にみられた場合は、一度獣医師に相談するようにしましょう。
◆高脂肪による健康リスク
クルミのカロリーは100g中674kcalと、かなり高いです。クルミに含まれる脂質は不飽和脂肪酸という太りにくい油ではあるのですが、大量に摂取しすぎるとカロリー過多となってしまいます。
結果的に肥満につながる可能性が高いため、主食のように食べさせるのはNG行為です。
犬がクルミを食べてしまった場合の対処法
前述したように、少量であればクルミを食べても基本的には問題はありません。しかし、個体によっては喉に詰まらせたり、アレルギー症状を引き起こす可能性も考えられます。
万が一に備えて、以下のポイントを頭に入れておきましょう。
◆食べてしまった場合の緊急対応
クルミに限らず、食べてはいけないものを愛犬が食べてしまった場合、飼い主さんが無理に吐かせようとすると命の危険が高まるケースもあります。まずは動物病院へ連絡し、獣医師の指示を仰ぎましょう。
診察を受ける時は獣医師が的確な判断をすることが重要となるので、何を・いつ・どれだけ食べたか、について正しく説明して下さい。病院へは食べたもののパッケージや残りを持っていきましょう。嘔吐物・排泄物も可能な限り持参してくださいね。大きな判断材料の一つとなります。
尚、有害物質・成分の致死量は、体重・年齢・犬種によっても変わります。少しでも危険性の高いものを食べた場合は、念のため動物病院に電話することが推奨されるのです。
◆動物病院へ連れて行くべきタイミング
ごく少量を誤食・誤飲した後に、普段と変わらない様子であればほとんどの場合は大丈夫ですが、少しでも異常や何らかの症状がみられた場合は、緊急性を感じなくともやはり一度獣医師による診察を受けたほうが賢明です。
ちなみにアレルギーの場合は、症状が出るタイミングは体質によっても異なります。
初めてその対象のものを食べてすぐに発症することもあれば、2回目以降に突然発症するケースもあるのです。初めての食べ物に関しては少量を与えて様子見をし、問題がなければ徐々に量を増やすことを徹底しましょう。
どんな食べ物にしろ、食べた後に異変がないかを観察することが重要となります。
クルミ以外に犬が避けるべきナッツ類
クルミに限らずナッツ類の多くは、魅力的な栄養素を持ちつつも与えることでデメリットを負う性質をもつ種類が多いです。
その中でも犬にとって危険度の高いナッツ類を紹介しますので、しっかりチェックしておきましょう。
◆マカダミアナッツ
マカダミアナッツには、犬にとっての中毒性があるといわれています。
原因となる中毒成分が何か解明されていないのですが、元気消失や嘔吐などの症状を引き起こすことがあるため、与えるのは避けるようにしましょう。
尚、マカダミアナッツオイルにもマカダミアナッツの抽出成分が含まれますので、十分注意して下さい。
◆アーモンド
アーモンドは犬が食べても基本的には問題のないナッツだといわれていますが、クルミ同様、高脂肪で消化吸収の悪い食べ物です。
食後に嘔吐・下痢・軟便などを引き起こしたり、丸呑みして消化管に詰まらせる危険性もあるため、リスクを覚悟してまで積極的に与える必要は全くありません。
◆ピスタチオ
ピスタチオには、脂質・リン・カリウムなどが多く含まれています。
少量を食べてもすぐに重篤な症状が起こるわけではありませんが、大量に摂取することで中毒・深刻な病気などを発症する可能性があるのです。
またピスタチオはウルシ科の植物であり、ウルシオールというアレルギー成分をもっています。口や顔周りにウルシオールによるアレルギーを発症する危険性もあるので覚えておきましょう。
犬に安全なナッツとその健康効果
犬にとって比較的安全だといわれるナッツ類もいくつかあります。その中でも代表的なものを紹介していきましょう。
◆犬に与えても問題ないナッツ
◎ピーナッツ
ナッツ類の中でも、犬にとって最も安全性が高いと考えられているのがピーナッツです。
含まれる脂質は脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収を助けて皮膚・被毛の健康を促進する他、犬の成長・発達・体組織の修復・酵素・免疫系の全てにかかわるタンパク質も豊富です。また、ビタミンEが細胞を若々しく健康的に維持するのに役立ってくれるのです。
しかし、やはり消化は良くないため与えるのは少量にしましょう。大量に与えると下痢・嘔吐の原因となり、膵炎などを引き起こす場合もあります。
また、ピーナッツの皮は消化できません。与える際は必ず皮を向くこと、塩分の過剰摂取となるため塩味の付いたピーナッツは与えないことを徹底して下さい。
◎カシューナッツ
カシューナッツも比較的安全だと考えられているナッツの一つですが、与える場合は必ずローストされたもの、炒ったものを与えるようにして下さい。これは、生のカシューナッツに犬にとって毒性のある成分が含まれているためです。
また、カリウムが豊富なので、腎臓病・ホルモン疾患を抱える犬には注意が必要です。必ず獣医師に相談するようにしてください。
ちなみにカシューナッツには、不飽和脂肪酸であるオメガ3脂肪酸や、代謝・神経機能・造血に欠かせないビタミンB、血液凝固と骨代謝に重要なビタミンK、細胞のダメージを修復して老化を遅らせる抗酸化物質などが含まれています。
◎ヘーゼルナッツ
ヘーゼルナッツも犬に対する毒性がないといわれるナッツの一つで、ナッツ類の中でもトップクラスのオレイン酸含有量をもっています。
このオレイン酸は、血液中の善玉コレステロールを減らさずに、悪玉コレステロールのみを減らす役割をする栄養素で、腸の動きを活発にし、便秘を解消する効果も期待できます。
さらに抗酸化作用を持つビタミンEも豊富なので、老化予防としてもメリットがあります。
ただしヘーゼルナッツもサイズが大きいために、丸飲みすると食道・腸が詰まる可能性が考えられます。与える際には細かく砕くよう徹底して下さい。
◆適量を守ることの重要性
クルミやナッツ類に限らず、愛犬に与える食品の量はしっかり管理することが大切です。
適量を超えると、健康被害や何らかの体調不良・異常が起こる可能性が高まるのです。事前に、与える食材の適量を知っておくことが重要となるでしょう。
クルミの場合は、以下の量を参考にしてください。
◎小型犬…1日1粒程度
◎中型犬…2~3粒程度
◎大型犬…3~5粒程度
尚、これらの量はあくまでも目安です。個体差もありますし、体の状態はそれぞれ違います。与えた後は必ず、愛犬の様子を観察してくださいね。
また、毎日のドッグフードやご飯(主食)のように与えるのではなく、適量を守った上でおやつの一部やトッピングとして与えるようにしましょう。
クルミが含まれる加工食品に注意
クルミはナッツ類の中でも、パンやお菓子などに使用されることの多い種類の一つです。
もちろんそのまま食べられるように味付けされたクルミも販売されているので、気軽に購入して口にすることができるでしょう。
しかし、人間用に加工されたものは基本的に塩分量が多く、犬の健康にとって良くありません。
味の濃い食べ物に慣れてしまい、味の薄いペットフードを食べなくなる可能性もあります。
愛犬にクルミを与える際は、必ず味のついていないものを選び、細かく砕いたりペースト状にしてから与えるよう徹底しましょう。
◆クルミを使ったお菓子やパン
前述したように、クルミが使用されているパンやお菓子は多種多様に販売されています。くるみパンやクルミ入りのクッキーなども人気食品の一つですよね。
食べてみて薄めの味だったら少しお裾分けしてもいいかな?と思ってしまいがちですが、犬にとっては不要な味付けがされているのもがほとんどです。
無添加の食品ももちろんありますが、愛犬に与えるフードは基本的にペット用とされているものを選ぶのが無難でしょう。
◆クルミオイルやペースト
クルミの原形は留めていなくても、ペースト状になった加工品やクルミオイルなども販売されています。
これらは喉に詰まらせる危険性は低いものの、やはり味付けがされていたり添加物が多く含まれていることが多いです。
愛犬用の手作りご飯やおやつの材料としても使用しやすいですが、リスクのない他の野菜などを使った方が良いでしょう。
犬用フードのレシピはネット上でも様々な記事が見つけられます。犬にとって無害な材料が使用さているので、情報を集めてみるのもおすすめですよ。ペット情報誌やサイト編集部からの情報では更新日などにも注目すると、旬の食材などで愛犬の食事に彩りを加えることもできるでしょう。
まとめ
解説してきたように犬にとっても魅力的な栄養素を豊富にもつクルミですが、与えることがリスクとなる可能性があるのも事実です。
愛犬にクルミがもつ栄養素を与えたいと考える飼い主さんもいると思いますが、デメリットの少ない他の食材やサプリメントを選んだ方が無難だといえるでしょう。
また、クルミは様々な食べ物に含まれているため、飼い主さんが触れる機会は少なくありません。クルミ以外にも、チョコレートやタマネギなど、犬にとって有害となる食材も生活の中に溢れています。愛犬が危険なものを誤食して健康被害を被らないよう、しっかりと管理をしてくださいね。
どうしてもナッツ類を与えたい場合は、注意点をきちんと守りましょう。適量以上の量を与えるのは絶対にダメですよ。
愛犬が毎日を幸せに暮らすためには、飼い主さんのきちんとした食生活の管理が必要不可欠なのです。