犬が特に敏感に反応する音の種類
聴覚が優れている犬は、様々な音を聞き分けることができます。人間にも不快に感じる音があるように、犬にも嫌いだったり苦手な音があるのです。
それでは犬はどんな音に反応を示すのでしょうか。大きく3つに分けて紹介していきます。
◆犬笛や高周波音
人間に聞こえない程の高い音(高周波)を出すホイッスルの一種に犬笛があります。
高い音を聞き分けられる動物用の笛で、それを合図に行動できるよう訓練をするなど、様々な用途に使用されているのです。
犬と人間を比較すると高周波数への感受性は犬の方がはるかに高いため、周囲の人間に気づかれることなく、犬笛で愛犬に的確な指示をだすことが可能となります。
こういった犬笛があることからも分かるように、犬は人間では聞き取れないレベルの高周波にまで反応することがあるのです。
◆雷や花火の音
音は空気の振動として鼓膜に届きますが、聞き取れない超低周波は、脳・耳骨・顎の骨に振動として伝わります。
この低周波は、体の大きい動物や物が発生させる音であるため、犬が不安を感じると考えられているのです。
さらに犬には、低周波が近づくことで大きな危機が迫っていると察知する習性があります。
雷・花火・和太鼓・エンジン音などの低い音に対して、怖がったり警戒したり、パニックを起こすワンちゃんが多いのはこのためです。
◆サイレンや警報音
サイレンや警報などの注意喚起音は、普段の生活では中々聞かないレベルの大音量であることが多いですよね。
人間からしても突然のセキュリティ関係の音源は、ドキッとしたり不安を掻き立てられる対象だといえます。
犬にとっても同様で、突然鳴り出す大音量のこの音は危険な状況を連想させ、不安や緊張感を抱かせるといわれています。
◆ドアベルやインターホンの音
宅配便や来客の際に、インターホンの音に激しく反応してしまうワンちゃんも少なくありません。
これは音単体の問題ではなく、音がした後の経験によって反応するようになったパターンがほとんどです。
インターホンが鳴ると「知らない人が家に来る」と認識してしまっているのでしょう。
家・家族を守ろうという責任感の強い性格の子や、他人を苦手とする人見知りタイプの子、などに多く見られる反応です。中には、初めてインターホンに反応して来客を教えた際に飼い主さんが喜んだ、という経験から行動を起こしている子もいます。
「侵入者が来る」という経験とインターホンの音が犬の中で結びついているために、過剰な反応を見せてしまうのです。
犬が音に敏感な理由
音には周波数と音圧レベルという2つの側面があり、周波数が表すのは音の高低となります。
周波数は1秒あたりのサイクル数やヘルツ(Hz)で測定され、数字が大きければ高い音、反対に小さければ低い音として聞こえるのです。
一方、音圧レベル(dB)は音の大きさを示しています。
犬は人間よりも高周波が聞き取れると前述しましたが、実は低周波に関しては人間の方が聞こえます。犬の聴覚の仕組みに併せて、人間と犬との聞こえ方の違いについて解説していきましょう。
◆犬の聴覚の仕組み
音は犬の耳介で音波の形になって集められて耳道を通ります。耳道に入った音波は鼓膜で振動に変わり、その振動は中耳の耳小骨によって内耳の前庭に伝達されるのです。そして振動は内耳で神経を興奮させます。最終的にこの刺激が脳に届くことで音が脳に伝わるのです。
簡単に言うとこれが犬の聴覚の仕組みとなるのですが、聞こえ方には以下のように人間との違いがあります。
この様に、犬は人間よりも周波数の高い音、音圧の小さい音を聞き取ることができます。
しかし、人間が全方位からの音を耳を向けずに聞き取れることに対して、犬は音の方位に耳を合わせなければ聞き取れないと言われています。また犬は、音が含む2つ以上の周波数は聞き分けられない、という特性をもっているとも考えられており、音の識別に関しては人間の方が得意であるともいえるのです。
このことから、犬の聴力が人間の何倍になるかという疑問に関しては、一概に答えを言うことはできないでしょう。
しかし人間が聞こえない高周波音を聞き取れることは事実です。犬が音に対して敏感に反応するケースが多いことも頷けますよね。
ちなみに、犬の可聴周波数は犬種によったり、多少の個体差があるようです。
◆本能的な防衛反応
可聴周波数や可聴音圧レベルの音でも、犬が反応を示す音と反応を示さない音があります。
本能的に覚醒する音や、過去の良い経験・嫌な経験と結び付けられている音に対しては反応を示すことが多いのです。
犬が本能的に反応を示す主な音の種類は以下の通りです。
◎小型げっ歯類の立てる音やそれに近い周波数音
過去の研究により、犬は8,000Hz付近の周波数音を特に敏感に感じ取ると考えられています。獲物となる小型げっ歯類の音が、正にその周波数にあたるのです。
本能的に音源の方位を定めようとしたり、詳しく音を聞こうとして、首を傾げたりする仕草がみられるでしょう。
◎遠吠え
遠吠えは、犬がコミュニケーションに用いる高周波音だと考えられています。
一般的に、遠くの仲間が発する遠吠え・鳴き声や、それによく似た周波数の音が聞こえてきて同調したくなったときに遠吠えをするのですが、これは社会的促進という反応だそうですよ。
散らばった仲間への狩りを開始する合図や、群れ以外の動物が縄張りに侵入するのを防ぐために、犬の先祖は遠吠えを使っていたと考えられており、現代の犬達にもその習性の名残が見られるのでしょう。
◆音とストレスの関係
基本的に人間は、低周波音を大きな音やうるさい音として感じることはほとんどありません。しかし、不快感のような心理的影響を及ぼすともいわれています。低周波音によってイライラしたり、気になって集中できなくなったり、さらに人によっては気分が悪くなったりすることもあるそうです。
犬においてもこれと同様に、心理的変化が起こり得ると考えられています。
例えば、飼い主さんの不機嫌な声などがこれにあたります。
厳密に言うと音量が小さく低い音なのですが、しつけなどの際に低い声で行動・制止を促すことが推奨されるのは、こういった理由からだというわけですね。このトーンで話すことで注意を促し、飼い主さんが犬の行動を不快に感じている、ということが伝わりやすくなります。
この傾向はしつけなどに利用できますが、大音量や高周波などが愛犬にストレスを感じさせる場合も多いです。
先に述べた雷や花火、警報音などの不安を掻き立てるよう音は、取り除いたり軽減してあげるべき原因となります。具体的な対策法は後述しますが、ストレスによって体調をくずしたり、ある音がきっかけでてんかんを起こす子も中にはいますので、犬も音が原因でストレスを感じるという認識をしっかりもっておきましょう。
尚、てんかんの症状がみられる場合は、早めに一度動物病院を受診することをおすすめします。てんかんが起こる原因は様々なので、事前に症状を知っておきたいという方は獣医師監修記事やコラムなどを参考にしてみてください。
犬が音に反応する行動の具体例
音に反応を示した際にみられる、一般的な犬の行動を紹介していきましょう。
◆吠える
犬にとって感情を表す行動の一つでもある、吠えるという行動は、音に対する好ましい反応としてもマイナス感情の反応としてもみられるものです。
好きな音を聞いて嬉しくてテンションがあがったり、興奮することで吠える場合もありますし、逆に不快な感情から警戒して唸ったり吠えたりする場合もあるのです。
どちらの感情から示された反応なのかを見極めて適切に対処しましょう。
◆遠吠え
犬が遠吠えをする理由は前述した通りで、他の犬の遠吠えやそれに近い音に同調しているケースが多いです。
しかし、留守番中に遠吠えをするなど音とは関係なく行っている場合は、留守番で寂しさを感じていたり、運動不足で欲求不満となっている可能性が考えられます。
そういった場合は、留守番中に安全に遊べるおもちゃを与えたり、散歩・室内遊びの時間を増やすなどして対応してあげましょう。
◆逃げる、怯える
不安や恐怖を感じる音を聞いた時に、その場から逃げたり怯えるような様子をみせる場合があります。
凝視する・震える・パンティングするなどの、不安を示すしぐさが合わせてみられているかチェックしましょう。
不安となっている対象を取り除くことが最善策ですが、それが難しい場合は優しく声をかけたり撫でるなどして愛犬を落ち着かせ、少しでもストレスを軽減できるよう対策をとってください。個体によってはおやつなどで気を逸らせるのも有効です。
ストレスの蓄積は病気の原因ともなり得ますので、早急に対処するようにしましょう。
◆警戒モードになる
音に対して不快な感情が沸き起こった時に、犬が警戒をみせることも多いです。
先に述べたように、警戒心から吠えたり低い声で唸ることもありますし、口をギュっと閉じたり、尻尾をピンっと立てているのも警戒を表すしぐさです。
犬が強い警戒心を抱いている時は、攻撃的になって突進したり噛むなどの危険行為に繋がる場合があります。コマンドを利用して制止したり、すぐに落ち着かせるように努めましょう。
生活の中で犬が反応する音の管理方法
日々を一緒に過ごす中で、できるだけ愛犬にストレスは感じさせたくないものですよね。吠える行為が問題となり、ご近所トラブルに繋がる恐れもあるでしょう。
音の問題を完全にシャットアウトするのは中々難しいですが、可能な範囲でできる対策方法を覚えておきましょう。
◆日常生活で避けられない音への対処
生活音などに愛犬が激しく反応してしまう場合は、音量を調節できるものに対しては音量を下げて様子を見てみましょう。掃除機やドライヤーなどを使用する時は愛犬を別の部屋に移動させるなどして対応します。テレビで突然流れる音に対して吠えてしまう場合は、一旦チャンネルを変えたりテレビを消してみて下さい。
しかし、音量の調節では反応が変わらないこともありますし、音の一時的遮断では根本的な問題解決とはなりません。
一番良いのは、対象の音は怖くないものだ、吠えて反応してはいけないものだと学習させることでしょう。
例えば愛犬がインターホンやドアベルに警戒心から吠えてしまう場合は、飼い主さんが帰宅する際にチャイムを鳴らしてから入るのを繰り返してみてください。次第にインターホンに対する警戒心が薄れる可能性があります。
ちなみに全ての音に対して有効な方法は、子犬時代の社会化期に多くの音を聞かせて怖がらないよう慣れさせることです。生後3ヶ月までの社会化期に外界からの刺激を受けて社会に適応していくので、この頃に様々な音や刺激と触れ合い、怖がらないようにさせるのが最善の予防策となります。
ただし、生後4ヶ月~12ヶ月になると周囲の音に対して恐怖を覚えるようになるため、この時期には苦手な音などに触れさせないよう配慮することが重要です。しっかり覚えておきましょう。
◆騒音や大音量に対する防音対策
雷や花火大会などの音には、家中のカーテン・雨戸を閉めて対策をしましょう。音が紛れるよう、ラジオ・テレビなどを付けておくのも効果的です。
また、中には雷が怖い飼い主さんもいると思いますが飼い主さんが慌てると余計に愛犬が不安を感じてしまいます。できるだけ普段通りに落ち着いて行動するようにしましょう。
そしてもう一つ重要なのが、室内に愛犬にとっての安全で落ち着ける場所を用意しておくことです。
ケージやクレートであれば、いつでも出入りできるように扉を開けておきましょう。
普段からケージなどに慣れさせておくこともとても大切です。安心できる場所、いつでも隠れられる場所があると認識させておくことが大きなポイントとなります。
まとめ
犬にも人間同様、好きな音があれば嫌いな音もあります。聴覚の仕組みや聞こえ方を理解することで、また一つ愛犬に寄り添えるようになるでしょう。
YouTubeやTikTokなどでもペットが反応を示す音などが配信されているので、愛犬の好き嫌いが分からない方はそういったものを試してみるのもよいかもしれませんね。
ネット上には開発者向け・クリエイター向けの音源などもありますので、様々な音を聞かせて反応を見てみてください。尚、利用する際には著作権などに注意し、不明点などに関しては問い合わせをしてみるのが安心です。
犬の音に対する反応についてイメージが湧かない方は、音に対して首をかしげる柴犬などの動画もたくさんありますのでぜひ探してみてください。
音を利用した機能的なペット用カメラなどもあるように、人間同様、犬にとっても音は身近で切ってはきれない存在です。ストレスの原因となるものには対処し、好きな音はたくさん聞かせてあげて、充実した毎日を送れるようにしていきましょう。
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