【獣医師監修】猫のおしりから液体が出てきた!これは病気?原因と対処法、肛門腺絞り

2021.12.19

【獣医師監修】猫のおしりから液体が出てきた!これは病気?原因と対処法、肛門腺絞り

愛猫のおしりから液体が出てきたら、驚いてしまいますね。出てきた液体の色や臭いによって原因は異なり、あまり心配しなくてよいものから深刻な病気までさまざまです。考えられる主な原因としては、肛門腺の分泌物や軟便、膀胱炎や子宮蓄膿症などがあります。今回は、猫のおしりから液体が出てくる場合の原因と対処法についてまとめました。併せて、猫の肛門腺絞りについて解説しますので、参考にしてみてくださいね。

猫のおしりから液体が出てきた!

猫のおしり

愛猫のおしりから液体が出てくると、驚いてしまいますし、病気ではないかと心配になりますね。
まず、猫のおしりから液体が出てくる原因を見ていきましょう。
飼い主さんが「おしり」という場合、しっぽの下側の肛門や陰部の周辺を指していることが多いですが、この“お尻”のどの場所から液体が出ているかで、原因は異なります。

◆原因①肛門腺

「肛門腺」とは、猫の肛門の左右にある袋状の一対の腺です。正式には「肛門嚢」と言い、開口部は肛門の外側縁にあります。
肛門嚢の中には、「肛門腺液」というニオイの強い分泌液が溜まっています。スカンクがお尻から出すのも同じく肛門腺液で、猫に限らず、犬をはじめとする多くの動物が持っているものです。
肛門腺液は、通常、排便時に肛門腺が圧迫されることで自然に排出されます。猫や犬は、肛門腺液のニオイで相手を識別したり、縄張りに匂い付けをしたりしています。
分泌物は、液状であったり粘土状であったりとさまざまで、色も薄黄色から黒茶色、灰色とさまざまです。
ニオイの強い液体が出ている場合、肛門腺液の可能性が高いです。
肛門腺の出口が詰まって出せなくなった場合や、肛門嚢が炎症を起こした場合などには、肛門嚢はパンパンになり、やがて破裂して皮膚に穴が開きます。この状態になると、化膿して、開いた穴から膿のような分泌物が出てきます。

◆原因②軟便

正常なうんちに含まれる水分は、約70%です。これに対し、水分を80%以上含む場合を「下痢」と呼びます。このうち、水分が80~90%のうんちを「軟便」と言い、90%以上になると水のようなうんち(水様便)になります。
これらの水分が多いうんちは、液体のように流れ出てきます。
また、軟便や下痢の時には、腸の粘液やゼリー状の液が出ることもあります。この粘液や粘膜が出る原因は、

□良性ポリープ
□腫瘍
□細菌による感染症
□寄生虫による感染症
□ウイルスによる感染症
□異物の誤飲
□食物アレルギー

などさまざまなものがあります。

◆原因③病気

肛門や肛門腺からの液体ではなく、陰部やその周辺から液体が出ている場合には、他の病気の可能性があります。
避妊手術(子宮摘出)を行っていないメス猫に多く見られるのが、子宮蓄膿症です。子宮の中に膿が溜まり、これが陰部(膣)から流れ出してきます。白っぽいクリーム状のような膿の場合もあれば、赤っぽい血膿のような場合もあります。
避妊手術済みのメス猫やオス猫でも、陰部周辺に膿のようなものが見られる場合があります。この場合は、膀胱炎の可能性があります。

◆原因④消化管内寄生虫

消化管内に寄生虫がいる場合に、肛門から粘液が出ることがあります。


猫のおしりから液体が出てきたらどうすればいい?

ここでは、猫のおしりから液体が出てきた場合の対策についてご紹介します。

◆肛門腺の場合

肛門腺から出ているのが肛門腺液である場合には、自然に排出できているということなので、特に対処は必要ありません。
ただ、肛門腺液が溜まりやすい猫の場合、「肛門腺絞り」を定期的にしてあげる必要があります。肛門腺絞りについては、後述します。
肛門腺液が溜まりやすい猫や肛門腺破裂を起こす可能性がある場合の目安として、

□肛門腺液が泥状
□お尻を床にこすりつける、過剰に舐めている
□排便時に痛がる、排便しぶりがある
□肛門腺破裂を起こしたことがある

などの症状があります。お尻を床にこすりつけながら歩く、いわゆる「尻歩き」をする猫もいます。
これらの症状が見られた場合には、肛門腺絞りが必要です。
肛門腺から膿のような液体が出ている場合には、肛門腺が炎症を起こしている、または破裂して皮膚に穴が開いていると考えられます。治療が必要なので、獣医師さんの診察を受けてください。

◆ウンチの場合

まず、動物病院で軟便や下痢の根本的な治療を受けましょう。
ウンチをした後は、肛門部分をやさしく洗って、軽く消毒します。
粘液などが肛門についていると、猫は気にして、肛門部分をグルーミングしたりこすったりします。グルーミングのし過ぎでただれているときには、軟膏やオリーブオイルを塗ってあげてもよいでしょう。

◆液体が透明な場合

透明な粘液は、剥がれ落ちた粘膜、または大腸から分泌される分泌液です。
粘膜は大腸を守る働き、分泌液は消化を助け、便の排せつをスムーズにする働きがあります。
大腸が傷ついたとき、傷ついた組織を保護するために粘液がたくさん分泌されます。この粘液がうんちに付着して出てくる状態を「粘液便」と言います。
つまり、お尻から透明な液体が出る、下痢便に粘液がついているなどの場合には、大腸に原因があると考えられます。
粘液便が多量に出る場合は大腸のダメージが大きいと考えられ、粘液便が続く場合にはダメージが一過性のものではないことを意味しています。
どちらも、動物病院で診察を受ける必要があります。特に粘液便が続く場合には、すぐに病院に連れて行ってください。

◆液体がピンク色の場合

液体がピンク色の場合、血液や血膿が混じっていると考えられます。原因は、いくつかありますが、いずれも動物病院での診察・治療が必要です。
どの部分から出ているかで、原因となっている病気は異なります。

肛門から出ている場合①

肛門から赤い血のような液体が流れている場合には、大腸から出血している可能性があります。
出血が持続していて、食欲・元気がないなどの症状がみられる場合には、大腸炎や、リンパ腫などの悪性腫瘍といった消化器疾患の可能性があります。
大腸炎は、ウイルスや寄生虫などの感染症が原因の場合もある一方、原因がはっきりしないこともあります。
消化管にできる悪性腫瘍で最も多いのはリンパ腫ですが、他にも腺癌や肥満細胞腫などの場合もあります。
便の形が正常で便に多少の血が混じる程度であれば問題ありませんが、症状が重い場合は早めに動物病院を受診することをおすすめします。

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肛門から出ている場合②

肛門やその周囲が腫れていて、そこから赤い血のようなものがにじみ出ている場合には、腫瘍の可能性があります。
猫の場合、肛門腺の周囲で発生する腫瘍は、肛門嚢腺癌(肛門嚢アポクリン腺癌)やなどです。発生頻度が高いのは、肛門嚢腺癌です。
一番の治療は外科手術です。まずは、早めに動物病院を受診してください。

肛門の脇から出ている場合

肛門嚢炎が悪化して肛門腺破裂を起こして、裂けた部分から血の混じった膿が出ていると考えられます。
上述の通り、獣医師の診察・治療を受けましょう。

陰部から出ている場合

膀胱炎によって血尿が引き起こされ、陰部が赤く汚れている可能性があります。
猫の膀胱炎の原因は、尿路結石、細菌感染、原因不明(突発性膀胱炎)の3つです。
それぞれ治療法が異なりますが、原因を特定し、治療を行うために、早めに動物病院を受診してください。
避妊手術を受けていないメス猫の場合、子宮に細菌が感染して膿が溜まる子宮蓄膿症の可能性もあります。子宮蓄膿症の症状は、陰部から血の混じったおりものが出る、発熱や嘔吐、元気・食欲の低下などです。
放っておくと、子宮から膿が漏れ出し「子宮破裂」という状態になることがあり、細菌性ショックを起こして急変することもあります。
動物病院で診断を受け、できるだけ早く子宮卵巣摘出手術を受ける必要があります。


猫の肛門腺絞りは必要?

◆肛門腺の溜まりやすさは個体差がある

上述の通り、肛門腺液は通常、自然に排出されます。このため、猫の場合、犬のように定期的に肛門腺絞りをする必要はないとされています。
しかし、溜まりやすさには個体差があり、自然に排出できない猫ちゃんもいます。また、運動不足や水分不足の猫やシニア猫は、分泌物が固くなって排出しにくくなります。特に、シニア猫ちゃんは自然排出できない子が多いと言われているので、肛門腺絞りが必要です

◆肛門腺のやり方

肛門腺は、肛門を時計に見立てたとき、しっぽを12時とすると、4時と8時のあたりにあります。
肛門腺絞りをする時には、左手でしっぽのつけ根を軽く持って、右手の親指を左側の肛門腺(8時のあたり)に、人差し指を右側の肛門腺(4時のあたり)に当てます。そのまま、下から上に押し上げるようにすると、肛門にある開口部から分泌液が排出されます。左利きの方は、手を逆にして行ってくださいね。
分泌液のニオイは強く、洗っても残ることもあるので、手とおしりの間にティッシュや脱脂綿などを挟んで行うことをおすすめします。
肛門腺絞りには少々コツがあり、そのコツも個体によって変わります。自宅でするのが難しい場合には、動物病院やトリミングサロンでお願いするとよいでしょう。どちらも500円程度で処置してくれる場合が多いです。ただし、トリミングサロンは犬しか受け付けていない場合もあるので、予め確認をして猫も受け付けているサロンを探しておきましょう。

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まとめ

猫のおしりから液体が出てくれば、飼い主さんは驚いてしまうでしょう。まずは、「お尻」のどの部分からどんな液体が出ているかを確認しましょう。
いわゆる「お尻」には、肛門と陰部が含まれています。肛門やその周囲からの液体の場合、大腸のダメージによる透明な粘液・粘膜、肛門腺からの分泌液の可能性があります。肛門腺からの分泌液の場合、強烈なニオイがするでしょう。陰部からの液体の場合、膀胱炎や子宮蓄膿症による血の混じった粘液が出ることが多いです。
愛猫のおしりから液体が出た場合には、肛門腺液の場合以外は原因を特定する必要があり、早めに動物病院を受診することをおすすめします。



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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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