【獣医師監修】激しい痛みを伴う怖い病気、犬の膵炎。その原因や治療法とは?

2019.04.26

【獣医師監修】激しい痛みを伴う怖い病気、犬の膵炎。その原因や治療法とは?

膵炎は、人間の病気としてもよく知られています。激しく痛みを伴うというこの膵炎。重症化すれば命にもかかわる、犬にとってもとても恐ろしい病気なのです。愛犬がもしも膵炎にかかってしまったら…想像するだけで怖いですね。 一体膵炎とは、どのような病気なのか、その原因は何かを事前に知っておきましょう。発症した場合の治療法にも触れていきますので、是非チェックしてみてください。

犬の膵炎とは?膵臓はどんな器官?

犬の膵炎とはどんな病気?

膵臓は、消化酵素などが含まれた膵液をつくっています。この膵液が十二指腸で腸液と混ざり合うことで活性化し、たんぱく質・脂肪などを分解する強い消化液となるのです。

膵炎とは、この膵液が何らかの原因によって活性化することで、膵臓本体が強い炎症を起こす病気です。

膵臓自身もたんぱく質でできているため、必要以上に膵液が活性化することによって、酵素の消化を受けて炎症が起きてしまいます。重症となれば膵臓組織が壊死し、命の危険を招きます。

膵臓は小さい臓器ではありますが、食べ物の消化・栄養素の吸収を腸内で円滑に行うための重要な臓器です。
十二指腸にくっつくように腹部の最も深い所に位置しており、中心部には膵液を十二指腸に届ける主膵管が通っています。食後にこの膵管から十二指腸へと膵液が出ていき、腸液と混ざり合う仕組みになっています。

膵臓の役割には、消化酵素などを含む膵液を分泌する働きの他に、血液中にホルモンを分泌するという役割もあります。
分泌される膵液はアルカリ性で、胃液を中和して腸粘膜を保護する働きをもち、膵液内の分解酵素は腸内での食べ物の消化や栄養素の吸収を円滑にしています。

更にインスリンやグルカゴンなどの、血糖値をコントロールする働きを担うホルモンが膵臓から分泌されているのです。

犬に限らず、人間、動物が生きる上で必要不可欠な臓器であることが分かりますね。


犬の膵炎の原因は?

膵臓には、合成されたたんぱく分解酵素が不活性な形で貯蔵されています。これは自身を消化から保護するためです。

活性化されたたんぱく分解酵素も通常、膵臓内で持続的に活性化されているのですが、それを阻止する物質を同時に内蔵することで、自己消化が抑えられています。

膵炎は、このたんぱく分解酵素の活性と、それを阻止する物質のバランスが崩れることで起こるのです。これに関しては、明確な原因が解明されていません。恐ろしい病気と呼ばれる要因の一つといえるでしょう。

ただ、高脂肪のフードを摂取している肥満動物に多く発症するという特徴があります。また、ミニチュアシュナウザーの場合は、遺伝性の脂肪代謝異常によって、膵炎が起こることがあるようです。

他にも膵炎の原因として、以下のような点が挙げられています。

◆免疫介在性疾患によるもの

通常、体内の正常を保つために、身体には生まれながらに免疫システムが備わっています。この免疫反応の調節機能が壊れてしまうと、炎症性疾患が起きる場合があります。このことを「免疫介在性疾患」といいます。

この免疫介在性疾患だと考えられている病気の一つに、「無菌性結節性脂肪織炎」というものがあります。
これは脂肪組織における炎症性疾患なのですが、この病気を持っている犬に対して様々な検査をした結果、この脂肪織炎の原因に膵炎が関与している可能性がある、という結果が出た症例があるのです。

近年、膵炎の原因として免疫問題が絡んでいており、何らかの素因を持った犬がなりやすい、という学説もあるようです。

◆特定の薬や毒物によるもの

病気や怪我の治療に使われる薬の中にも、膵炎の要因となり得るものがあります。

例えば、コルチコステロイド剤・利尿剤・抗がん剤・抗てんかん薬(臭化カリウム、フェノバルビタール)、抗生物質、免疫抑制剤、潰瘍の治療剤などが、要因になる薬として挙げられます。

なんと100種類もの薬物が膵炎の原因に関与していると考えられているのです。愛犬が定期的に投薬している、治療中であるという場合、十分気を付けなければいけません。

更に、殺虫剤などが犬にとって有害であることは有名な話ですが、このような毒物を摂取することも、膵炎の発症を招く危険性があります。家庭で殺虫剤や害虫駆除剤を使用する際はもちろん、散歩中の誤飲にも十分注意しましょう。

◆特定の病気や併発によるもの

薬の使用の他、外傷・手術によって膵臓が損傷した場合にも膵炎を発症する可能性があります。

更に、甲状腺機能低下症などによる内分泌障害、高カルシウム血症、糖尿病、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、上皮小体機能亢進症、胆のう・胆管疾患、ウイルスや寄生虫による感染症なども、膵炎の要因としてなり得ますので、気になる場合は獣医さんに相談してください。

◆食事によるもの

肥満体の犬に発症が多いと前述しましたが、痩せ型の犬であったり、標準的なドッグフードしか食べていない犬が膵炎を発症した例も実際にあります。

免疫介在性・遺伝性・薬物性以外の原因は、明確となっていないのが現状です。
しかし膵炎を発症する犬の多くには、日常的に高脂肪の食事を摂取している、揚げ物などの盗み食いをした、非常に脂っぽいものを食べてしまったことがきっかけで発症した、という背景があるのが事実です。

原因が明確でないにしろ、食べ物に左右される病気だと思っていた方がよいでしょう。

このように、様々な理由が犬の膵炎発症の要因となっています。しかし実際、原因がはっきりしていないというのも、この病気の怖さの一つといえますね。

万が一に備えて、愛犬が発症した場合にどのような症状が出るのかを覚えておきましょう。


犬の膵炎による症状は?

犬の膵炎の症状

◆「急性膵炎」と「慢性膵炎」

膵炎は、「急性膵炎」「慢性膵炎」の2つに大きく分けられます。

急性膵炎の大きな特徴は、突発的な嘔吐や下痢、激しい腹痛がみられて食事を一切とれなくなる、といったものです。
一方、慢性膵炎には、嘔吐・下痢などの症状を長期に渡って繰り返すことが多い、という特徴があります。

いずれも症状による重症度は様々で、軽症であれば他の消化器疾患との見分けがつきにくく、検査による診断が重要です。重症の場合は、激しい腹痛が明らかに表れ、嘔吐を伴って、脱水・ショック症状によりぐったりとした様子となるでしょう。

ちなみに、膵炎は「急性腹症」とも呼ばれます。急性腹症とは、急激に発症して激しい腹痛を伴う病気の総称です。
急性腹症を発症すると、血圧の低下や意識障害などのショック症状を伴う場合があり、呼吸や循環の管理、迅速な検査と緊急の治療が必要となるのです。

◆膵炎の症状

以下の症状が愛犬にみられたら、膵炎を発症している可能性を視野にいれなくてはなりません。

●食欲減退

明らかに食欲が減っていると感じたら注意しましょう。愛犬が、普段は食べるのが大好きで、毎回食事を楽しみにしているタイプであれば分かりやすいですが、シニア犬で食が細くなっていたり、普段から食事にそこまで執着していないタイプの場合は、気付くのに時間がかかるかもしれません。

以下の症状との照らし合わせで判断しましょう。

●ふらつきがみられる

歩行時にふらつき・痙攣・震えなどの、神経異常が起こる場合があります。

膵炎は診断が難しい病気ですが、これらの症状が脳によるものでなければ、膵炎の可能性が疑われます。

●嘔吐が続いている

食欲があるのに、1日に1~2回程吐いてしまう場合は、注意が必要です。愛犬の嘔吐の回数、嘔吐した内容物、胃液の色、血の混ざりの有無をチェックして、一度獣医さんに相談しましょう。

胃液の色が、黄色や緑色の場合は特に注意が必要です。

●拝むような姿勢をとったり、震えている

プレイバウ(犬が遊びに誘うような姿勢)とも類似していますが、これは腹痛がある時に見せる姿勢でもあります。

見分けるためには、愛犬の尻尾の位置や震えの有無に注目しましょう。尻尾を下げて足の間に挟んでいたり、身体に震えがある場合は腹痛が疑えます。この姿勢をとった後に、辛そうにうずくまることもあるようです。

寒くないのに愛犬がガタガタと震えていたら、それは激しい腹痛を我慢している可能性が高いといえるでしょう。

●体を丸くしたり、お腹を舐める

腹痛によって体を丸める、お腹を舐めるといった行動がみられることもあります。腹痛のせいで、お腹を触られるのを嫌がって怒る場合もあるでしょう。

また、お腹をかばうように、背中を丸めたまま黙って立っているケースもあるようです。

愛犬にこれらの症状が複数当てはまったり、普段とは違う様子が見られる場合は、一度動物病院を受診しましょう。


犬の膵炎の治療法は?

膵炎は一度発症すると、二度と治ることがないといわれています。重症度によって対症療法は行われますが、残念ながら現代の医学では完治する治療法は確立されていないのです。

このため、膵炎を発症すると生涯に渡り食餌制限が必要となります。例えばジャーキーなど、高脂肪・高たんぱくの食べ物を摂取することが一切禁止となるのです。

犬の膵炎の診断には、血液検査やレントゲン検査・超音波検査などが用いられます。しかし、胃腸炎など区別がつきにくい病気もあるため、診断するのが難しいともいわれています。

軽症の場合は、消化しやすい食事を少量与えることで、膵液の分泌を抑える方法がとられます。
重症であれば絶食が基本となり、1週間もの間、完全に絶食させるケースもあるそうです。その絶食期間は、入院して輸液療法をとることとなります。

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膵炎の予防法は?

犬の膵炎は原因がはっきりしていないために、飼い主さんが100%予防してあげることはできません。もしも愛犬が膵炎を発症してしまった場合は、獣医さんと相談しながら地道に治療していくこととなります。

愛犬が可哀そうで、飼い主さん自身も辛く歯痒い気持ちを抱えるとは思いますが、しっかりと病気と向き合い、生活していくことが大切です。

また、前述したように犬の膵炎発症には食事が大きく左右している可能性は高いです。
完全に予防できるわけではありませんが、日頃から食生活に気を付けることは愛犬の健康維持にも繋がるので、飼い主さんのできることとして、食事の管理や誤飲の防止に努めることをお勧めします。


まとめ

発症時には激しい痛みを伴い、明確な原因も治療法も確立されていないという恐ろしい犬の膵炎。
しっかりと覚えておき、万が一に備えましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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