【獣医師監修】愛犬の足腰が弱ってきたら…歩けない犬の歩行補助について

2020.02.09

【獣医師監修】愛犬の足腰が弱ってきたら…歩けない犬の歩行補助について

歳をとると身体が弱ったり、様々な部分で不自由を感じるもの。それは人間同様、犬にとっても同じことです。老化や病気が原因で、愛犬の足腰が弱ってしまうことも珍しくありません。そんな時、飼い主さんにはこれまでのお世話に加えて、愛犬の歩行補助が求められます。犬の歩行補助に関して、前もって知識を得ておくと安心ですよね。今回は犬の歩行補助について、その方法や、生活の支えとなる歩行補助具などを紹介していきます。

犬の身体と気持ちを支えるための歩行補助

ソファに寝転がる犬

残念ながら犬は、人間よりも早く歳をとります。飼い主さんとして、愛犬の未来、介護についてもきちんと考えておく必要がありますよね。

「老い」は人間同様、犬の身体にも様々な不自由をもたらします。その一つが、足腰の弱体化です。

もちろん老化に限らず、病気や怪我が原因で足腰が不自由となるケースも考えられますよね。いずれの場合も、歩行補助の方法を事前に知っておくことが飼い主さんにとって大きなメリットとなるでしょう。

シニア期に入った老犬の、足腰の弱り方やその程度には個体差があります。なんとか自力で歩行できるレベルであったり、支えがなければ歩けない状態であったりと様々です。

それでも、基本的に犬は散歩が好きな動物で、自分の足で立ちたいと思うワンちゃんがほとんどでしょう。この気持ちを尊重するためにも、歩行補助は飼い主さんができる大切な介護の一つとなります。

介護用品・補助具などを活用して歩行補助を行うことが、身体だけでなく、愛犬の気持ちをサポート・ケアするためにも必要なのです。


犬の歩行補助が必要な理由

抱きかかえられる犬

それでは、歩行補助が必要だと考えられる具体的な理由をみていきましょう。

◆怪我の予防

足腰が弱ると、歩行の際にふらつくことが増えていきます。これにより、予想外の怪我をするケースがあるのです。

無理に立ち上がろうとしてよろめき、身体をぶつけてしまう可能性もありますよね。自力で歩ける場合にも、首輪やリードだけではよろけた時に首がしまる危険性も考えられます。

だからといって、散歩を控えることが良いとはいえません。なんといっても散歩は犬にとっての楽しみの一つですし、散歩することでのメリットも沢山あります。

自力で歩けない状態であったり、ふらつくので散歩が心配だという場合にも、歩行補助をすることで散歩や外出は可能なので、散歩の機会をなくさないように努めてあげてください。

◆認知症の予防

シニア期に入ると、様々な病気を抱える心配も増えます。老化によって起こるリスクの高い病気の一つに、認知症があります。

散歩は、犬にとって良い刺激を与える習慣です。これが、認知症の予防に役立つといわれているのです。

積極的に外に出て、太陽の光を浴びる、風や外の空気を感じることが、とても重要になります。

◆弱体化のスピードを軽減する

歩けない、立つのも大変そう…そんな愛犬の姿をみると、散歩に行かない方が良いのでは?と思ってしまいがちです。

しかし、前述したように散歩は犬にとっての楽しみなのです。もちろん、散歩のすきずきには個体差もありますし、獣医師から指示が出ている場合に無理して行く必要はありません。

ただし、運動をしないまま過ごすと、足腰の弱まりは更に加速していきます。老化のスピードを上げることにも繋がるのです。

散歩や外出を楽しそうにしているのなら、やはり積極的に出かけた方が良いでしょう。歩行補助の使用すら難しく、歩けない状態であったとしても、その場合はペットカートやペット用の車椅子などを活用して、外の良い刺激を感じさせてあげてください。


犬の歩行補助に役立つアイテム

◆タオル

歩行補助アイテムの一つに、後ろ足を補助するハーネスがあります。実際の商品を後に紹介しますが、タオルでもその役割を果たすことができるのです。

まず愛犬のサイズにあったタオル(フェイスタオルやバスタオルなど)を用意します。そのタオルを細く折りたたまずに、愛犬の胴体に通しましょう。後ろ足部分を持ち上げるように吊り上げて歩行をサポートします。

タオルを細く折りたたんでしまうと、安定感が低下する上に、圧がかかることで愛犬が痛い思いをする可能性があります。タオルを細く折りたたまないことが上手に介助するコツなので、覚えておいてください。

また、愛犬の歩行ペースに合わせて、無理せず一緒に進んでいくことも大切です。

補助具を使用するよりも、タオルを使った補助法の方が上手く歩ける子もいるようです。また、歩行補助ハーネスを使用する前の練習としても活用できます。

愛犬の状態をみながら、どの方法をとるか、何をしようするかを決めてくださいね。

◆市販の介助グッズ

ペット用の介護グッズ、歩行補助アイテムも様々な種類が販売されています。おすすめの商品を紹介しますので、参考にしてみてください。

・老犬介護用 歩行補助ハーネス 前足用・後ろ足用

老犬介護用 歩行補助ハーネス 前足用・後ろ足用
購入


前足用、後ろ足用のタイプがあり、サイズも豊富な歩行補助ハーネスです。

前足用は、前足の筋力や視力低下の際に、後ろ足用は足腰の筋力低下の際に、効果的な補助具となっています。

サイズ展開がSから3Lまでと豊富に揃っているので、愛犬にとってピッタリのサイズがみつかるでしょう。

Sサイズは4kgまでの超小型犬用、Mサイズは7kgまでの小型犬用、Lサイズは15kgまでの中型犬用、2Lサイズは20kgまでの中型犬用、3Lサイズは30kgまでの大型犬用です。

持ち手と胴回りのベルトは調節可能、通気性の良いメッシュ素材、抗菌防臭、手洗いもOKという多機能製品となっています。

簡単に装着することもできますし、後ろ足用は装着したままでも、オス・メス共に排泄可能だというのもポイントが高いですね。

・アニフル わんコル

アニフル わんコル
購入


こちらは、歩行補助機能をもったソフトタイプの犬用コルセットです。

背骨を挟み込むプレートによって腰が曲がるのを防ぎ、後ろ足のベルトでお尻を持ち上げることで下肢のサポートもしてくれます。付属の持ち手を使うことで、三点をしっかり支える形で安定した歩行補助ができるのです。

もちろん、持ち手の長さも調節可能なので、飼い主さんの身長に合わせて利用できます。

コルセット本体は、柔らかい生地が採用されており、背中のプレートには弾力性もあるので、装着時に愛犬が感じる違和感を軽減できる仕様となっています。装着したままのトイレも可能ですよ。

サイズはSとMの2タイプです。Sサイズは、首回り24~33cm、胸周り31~53cm、首から尾の付け根28~35cm。Mサイズは、首回り32~44cm、胸周り50~65cm、首から尾の付け根35~45cm、となっています。

全体的に伸縮する商品のため、Sサイズがギリギリだと感じる場合は、Mサイズを選んで調節した方が、使用の幅が広がるとのことですよ。

愛犬のサイズをきちんと計測してから、購入を検討してくださいね。


犬の歩行補助を行う際の注意すべきポイントは?

注意する指

歩行補助具を活用して、愛犬の歩行補助を行う場合、以下の3点に注意しましょう。

◆愛犬に負担はかかってない?

歩行補助具を使用している際に、愛犬が苦しそうだったり、歩きづらそうにしていないかをチェックしましょう。特に、歩行補助具がお腹など身体の一部を圧迫していないか、注意する必要があります。

また、犬の感じ方や好みもそれぞれなので、補助具の種類によっては、愛犬が大きな負担や不快感を感じたり、上手く歩けない場合もあります。

その場合は、補助具の種類や歩行補助の方法を変えるなどして様子をみてくださいね。

◆補助具の状態を定期的にチェック

使う頻度が高ければ、その分アイテムにも傷みが出てきます。歩行補助具の傷みやほころびなどに気付かずに使い続けていると、散歩中に壊れて愛犬が怪我をする可能性も考えられます。

傷んでいる箇所を見つけたら、安全のためにも商品の買い替えをおすすめします。

毎回、装着時に補助具を全体的に見まわすなどの癖をつけておくと、いち早く傷みに気付くことができますよ。

◆病気の可能性も考えて病院を受診しよう

足腰の弱体化や自力で歩けない状態となる原因は、老化に限ったことではありません。病気や怪我が原因で、突然愛犬が歩けなくなるケースも実際にあるのです。

歩行困難をもたらす病気には、変性性脊椎症やてんかんによる発作、脳腫瘍など脳の病気など、様々なものが挙げられます。

突然歩けなくなった場合は、事故や怪我などが原因で関節異常や椎間板ヘルニアなどを発症している可能性も考えられるでしょう。

特に変性性脊椎症の場合は、ゆっくりと進行し、後ろ足から前足へ、そして呼吸器へと機能障害が起こります。痛みがあまりないために、老化のせいだと勘違いする可能性もある注意すべき病気です。特定の遺伝子変異が原因だと考えられています。

歩行障害をもたらす病気の中には、命の危険が潜んでいるものもあるので、愛犬に変わった様子や症状がみられた場合は、早めに動物病院を受診するようにしてください。


まとめ

愛犬が歩けない状態となる日が、もしかしたら訪れるかもしれません。その原因が老化であれば、介護や歩行補助など、飼い主さんにできることをしてあげましょう。

歩行補助具には愛犬にピッタリのもの選択し、誤った使い方をしないように注意してくださいね。日常的にマッサージをしたり、整体に通うのも一つの手です。

歩行困難に効果的な犬用の整体をしてくれる施設もあるので探してみてください。

シニア期に入ったペットとの過ごし方や老犬介護をテーマとしたコラム、ブログなどもとても参考になります。そろそろ愛犬もシニア世代だな…と感じたら一度チェックしておくとよいでしょう。

歩行困難や足腰の弱まりを初めて感じた時は、まず一度獣医さんに相談してみてください。もしも原因が病気であれば、早期発見につながり、治療することで愛犬の歩けない状態が回復するケースもあります。

愛犬は人生を共にする大切なパートナーです。飼い主さんができることを、最後までしてあげたいですね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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