【獣医師監修】猫の唇が腫れている?心配な症状の見分け方と対処について

2022.07.31

【獣医師監修】猫の唇が腫れている?心配な症状の見分け方と対処について

猫の唇が腫れているような気がするけど大丈夫かしら?唇の腫れを猫が気にして異常なほどグルーミングをしたり、どんどん腫れが大きくなってしまうような心配な状態になる前に、心配な症状のチェックの方法や予防や再発防止などについてご紹介します。

猫の唇はどの部分?

正面閉じた状態:サンプル
正面閉じた状態
正面開けた状態:サンプル
正面開けた状態

猫の口は閉じた状態では正面から見ると「へ」の字です。口角が上がっているように見えることで、笑っているように表情がみえることもありますね。
猫の唇は人間のように表面にでているのではなく、髭の根本にあるウィスカーパッドで隠れてしまっているのです。口のラインは見えますが、口を開けないとよく見えません。

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猫の唇は、口を開けたときに歯の根元をカバーするようによく見えます。ゴムパッキンのように見えたりしますが、感触もゴムのようです。肉球と同じで色は個体差があります。ピンクやブラウン、黒や斑模様が入っていることもありますよ。

口を閉じていると見えにくい猫の唇ですが、なにか不具合が起こると「口のあたりがいつもと違う」と察知できます。猫のお口のトラブル、腫れについてみていきましょう。


猫の唇が腫れているときの原因

発見しやすい唇の腫れのパターンは、口のあたりの左右が違う感じに見えるとこでしょうか。

唇の部分が腫れている原因は、「口唇炎」「好酸球性肉芽腫」「扁平上皮癌」などがあります。

それでは、個別に原因をみていきましょう。

◆口唇炎

口内環境で起こるトラブルとして口唇炎があげられます。口唇炎は、唇と被毛が生えている皮膚の境目で炎症がおこる病気です。

炎症の原因として多いのが、鋭く尖っている犬歯が唇に当たってしまい炎症を起こして腫れてしまうケースです。
また、唇にできた傷口からウィルスや細菌に感染してしまうこともあります。

その他の唇の炎症の原因には、稀なケースですがアレルギー反応のこともあります。食器の素材に対してアレルギーを持っている猫は、唇が腫れる症状が出てしまいます。

ウィルス・細菌で炎症がおこると、唇が腫れて痛みや痒みを伴います。飼い主さんが腫れていると気がつかない場合でも、猫が頻繁に唇を気にして掻いたり、「ごちそうさま」をしつこくしていたり、そのうち周辺の毛が抜けてしまったりすることがあります。

また、唇の腫れが影響して元気で食欲はあるのにご飯を食べにくそうにしていたり、徐々に食欲が落ちてしまうことが見られます。

猫の口唇炎は口内炎を併発することも多く、歯茎部分に炎症が起き出血やただれといった口腔内のトラブルがおこることがあります。

◆好酸球性肉芽腫

好酸球性肉芽腫の好酸球とは、体を様々な外敵から守る白血球の1種です。
外敵の中でも寄生虫から体を守る役割があります。また、外敵の寄生虫を退治するほかに、アレルギー反応を抑制する役割もあります。

そして肉芽腫は、肉芽組織が盛り上がって硬く腫れ物状態になってしまったものを指します。肉芽組織は、皮膚が炎症を起こして傷ついてしまうと欠損した部分を埋めて保護しようとします。

肉芽組織は、皮膚を再生するために細胞が集まって硬くなったものなのです。ところがその肉芽組織が何らかの刺激で、勝手に盛り上がり肉芽腫になることがあります。

好酸球性肉芽腫は、好酸球が局所で異常に増殖して体の皮膚や、唇、口腔内にしこりを作る病気です。その結果、皮膚がえぐれてしまったり、脱毛したりする症状も起こします。この好酸球性肉芽腫は症候群で分類されます。症状の発生する場所や状態によって「無痛性潰瘍」「好酸球性プラーク」「好酸球性肉芽腫」の3つに大別されています。

1.無痛性潰瘍
無痛性潰瘍は、主に上唇や下唇、口の中の粘膜にできるものをいいます。

2.好酸球性プラーク

好酸球性プラークは、主に首、わきの下、お腹、内股、尾の下、指の間にできるものをいいます。赤い斑点や傷ができたり毛が抜けたりします。好酸球性プラークは、2〜6歳の猫に起きやすいと言われています。

3.好酸球性肉芽腫(線状肉芽種)

好酸球性肉芽腫(線状肉芽種)は、主に前脚の外側、お腹の横、太ももの後ろにできるものをいいます。発症した箇所では毛が抜ける、フケがでる症状が出ます。好酸球性肉芽腫(線状肉芽種)の発症は生後半年〜1歳のころです。

好酸球性肉芽腫(線状肉芽種)の腫瘍の特徴は「直線状の潰瘍」です。この直線状の腫瘍は口の中や上あごにできることもあります。

◆扁平上皮癌

扁平上皮癌は、皮膚の一番表層の表皮角化細胞(扁平上皮細胞)とよばれる細胞が癌化したものです。表皮角化細胞(扁平上皮細胞)は、主に皮膚や粘膜に存在しているため、身体のさまざまな部位で発生してしまいます。

この扁平皮癌は、猫が発症する癌の主要なもので「色素のない、または色素の薄い皮膚」によく発症しています。癌化した細胞は、増殖してしまう悪性の腫瘍です。

唇の腫れがみられる扁平上皮癌のできやすい部位、癌になった場合の治療方法などがあるかなどをお伝えします。

1)口腔にできる扁平上皮癌
扁平上皮癌は、口腔(口の中)にもできるやっかいな癌です。実は、猫の口の中にできる腫瘍疾患のなかで60~70%が扁平上皮癌と言われています。

猫の場合口の粘膜、歯茎の部分にできてしまうケースがほとんどをしめ、顎の骨から発生するタプも稀にあります。扁平上皮癌の進行は極めて早く、2・3ヶ月、早いと1ヶ月で広範囲に転移してしまいます。

口の粘膜にできた場合、顎の骨まで転移してしまい骨を破壊することもあります。

2)舌にできる扁平上皮癌
口腔内に多く発病する扁平上皮癌ですが、舌にできるタイプもあります。舌にできた扁平上皮癌は、約10〜20%が舌の近くにある下顎リンパ節や肺などの離れた臓器に転移するケースもあります。

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猫の唇に腫れを見つけたらどうすればいい?

口を開けている猫

通常の場合、潰瘍ができると痛みやかゆみを感じます。猫は気になえる場所をザラザラした舌でなめたり擦ったりしてしまうため、できた潰瘍を悪化させてしまいがちです。

唇や口に潰瘍ができてはれてしまうと、ごはんや水が摂取しにくくなり食欲不振や脱水症状の原因になることがあります。そこで、もし猫の唇に腫れを見つけたらどうすればいいのかをご紹介しますね。

◆症状の確認

まず、症状の確認が必要です。

猫の唇の腫れでよくみられる好酸球性肉芽腫は、症状が皮膚炎のように見られることが多い病気です。猫は掻痒感があるのかその部分を異常なくらいグルーミングしてしまいます。
その結果、唇の周囲の脱毛や潰瘍部分を悪化させてしまいどんどん赤くただれてしまうことがあります。

悪化させてしまうと潰瘍がかなり大きくなり、まるでやけどの痕のようにただれたような状態になってしまいます。

猫の扁平上皮癌は、初期段階では皮膚や粘膜にわずかな変化がおこり始めます。最初は皮膚炎や口内炎のように見えるため癌だと気がつくのが遅れやすい特徴があります。

初期では、赤みを帯びていることから始まります。ですので、口内炎や歯周病との区別が難しく、見逃しやすくなってしまいます。

腫瘍が大きくなると、よくヨダレを出していたり舌を出していることがあります。出血や口臭がする場合もあり、顎が腫れていたり、顔の形が変わったりします。

◆かかりつけの動物病院へ

猫の口腔内の扁平上皮癌は進行が早いため、初期の段階ですぐ動物病院で診てもらうようにしましょう。

診断は飼い主さんの情報と猫の血液検査などの検査をします。

口腔の扁平上皮癌は、表面上で確認できる腫瘍より深く広く浸潤していることが多く、外科切除が必要な場合は、食事や水の摂取が口からできなくなってしまうことが多く、胃チューブでに給餌が必要になることもあります。顎や舌を切除してしまうことで、顔の外貌が大きく変わってしまい飼い主が受け入れられないこともあります。

外科的な完全切除が難しい場合は、平均的な余命は数ヶ月になります。猫が少しでも苦痛なく穏やかに過ごせるように獣医師と相談しながら治療方針が決められます。


猫の唇の腫れはどうやって予防する?

猫の唇の腫れの原因で多い、好酸球性肉芽腫の正確な原因は不明です。現在では、アレルギーが関連しているという見方が主流になっています。

猫のアレルギーを起こす原因物質には、「食べ物」「ハウスダスト」「ノミ」「蚊」などがあります。
アレルギー以外では好酸球性肉芽腫の原因として、ウイルスや細菌の感染、自己免疫疾患や遺伝が考えられています。

◆こまめに猫の様子をチェック

早めに異常を発見することが、重症化を防ぐ最も大事な方法です。そのためには、飼い主さんがこまめに猫の様子を日頃から観察してください。

異常に気がついて動物病院へ連れて行くとなった場合、獣医師さんの診断には飼い主さんからの情報が必要です。正しい診断をしてもらうためにも、猫の様子はこまめにチェックしておくことが大切なのです。

◆室内飼いをする

猫のアレルギーを起こす原因物質の「ノミ」「マダニ」「蚊」「寄生虫」「ウイルス」「細菌」などの対策は、室内飼いをすることが最も効果的です。屋外には野生のノミやマダニが生息している場所が多く、またフィラリアを保有する犬から蚊が媒体となるなど他の病気の感染もしやすくなります。

こうした屋外での感染や接触でのリスクを低くするには「室内飼い」が理想なのです。

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◆生活環境を清潔に保つ

猫のアレルギーを起こす原因物質には、「食べ物」「ハウスダスト」もあります。完全室内飼いでも、ハウスダストや出した食べ物がそのまま散乱しているような環境ではアレルギーは防げません。
ハウスダストはイエダニの温床ともなり、アレルギー発生源として見逃せません。

飼育環境が清潔でないと室内飼いのメリットのひとつがなくなってしまいます。

好酸球性肉芽腫は人や他の動物には感染しませんが、発症のメカニズムはいまだに解明されていません。症状がなくなっても再発することもあります。原因となる物質から猫を遠ざけることが予防と再発防止に欠かせません。


まとめ

あくびをする猫

猫の唇の腫れを起こす原因で多い、口唇炎や好酸球性肉芽腫は特にかかりやすい猫種というのは特定されていません。

発症したときの治療対策には、原因となる物質の特定が不可欠です。猫の異変をなるべく早く察知して早めに獣医師さんに相談することをおすすめします。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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にゃんこ

にゃんこ

長年一緒に暮らした長女猫(17歳)と長男猫(11歳)を看取り、今は脱走癖のある次男猫とちょっとどんくさい次女猫と暮らしています。

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