1.犬は台風が近づくと体調が悪くなる?
1-1.そもそも台風とは?
1-2.台風の気圧の変化が人や犬の体に影響する
1-3.台風の時期の愛犬の様子をチェックしよう
2.気象病になるとどんな症状が表れる?
2-1.頭痛、めまい、関節痛
2-2.ふらつき、嘔吐、斜頸、眼振など
2-3.てんかん
2-4.水頭症
2-5.前庭疾患
2-6.食欲不振、元気がない、便秘、下痢
2-7.傷跡が痛む
3.飼い主がしてあげられる対策は?
3-1.無理をさせず落ち着ける環境を整える
3-2.愛犬の気圧による変化を把握する
3-3.自律神経のバランスを整える生活を心がける
【掲載:2018.08.06 更新:2020.07.15】
犬は台風が近づくと体調が悪くなる?
◆そもそも台風とは?
そもそも台風とは、熱帯の海上で発生する低気圧である「熱帯低気圧」のうち、北西太平洋または南シナ海に存在し、なおかつ低気圧の中の最大風速が17m/s以上のものを指します。
台風の発生、上陸は年間平均で約26個、そのうち約11個が日本に接近、約3個が上陸していて、7月から10月にかけて最も多くなります。
台風の寿命は平均で5.3日ですが、なかには長寿台風もあり、19.25日という記録もあります。
◆台風の気圧の変化が人や犬の体に影響する
台風などにより気圧が変化すると、人も犬も体調を崩しやすくなります。天候や気圧の変化と身体の不調には深い関係があることは昔から分かっていましたが、年々極端な異常気象が増えてきており、これによって体調不良を感じる人は増加しているようです。
体調に異変を感じる人が増えているということは、言葉を発しない犬でも同じように身体に異変を感じていると考えられます。
◆台風の時期の愛犬の様子をチェックしよう
人の場合、めまい、かたこり、イライラなどの不定愁訴や、片頭痛や関節痛といった持病が悪化するなどの症状がでやすいようです。
これらの身体の不調は、検査をしても特に異常が見つかることはなく、人では「気象病」と呼ばれ、犬にも当てはまります。症状は頭痛や関節痛、だるさなどが多いようですが、人それぞれ、犬でもそれぞれです。
気象病は、梅雨や台風が多く発生し、気圧が大きく変化する時期に起こりやすくなりますので、あらためて犬の様子をよく観察し、体調チェックをしてあげると良いかもしれません。
気象病になるとどんな症状が表れる?
◆頭痛、めまい、関節痛
気圧が変化すると、犬の体はある程度ストレスを感じるため、それに抵抗しようとして自律神経が活性化されます。
自律神経とは、意思とは関係なく働く神経で、血管や内臓の働きを支配しています。交感神経と副交感神経があり、互いに相反する働きをしています。
交感神経は、心拍数をあげたり血管を収縮させて血圧をあげる、消化器の働きを抑制するなどの働きをし、心身を緊張へ誘導します。一方の副交感神経は、心拍数を下げたり血管を広げて血圧を下げたり、消化器を活性化させるなどして、心身をリラックスさせます。
この二つはいつもバランスよく働くようになっているのですが、台風などにより気圧が大きく変化し、気象病になるとバランスを崩し、身体の不調や病気を誘発します。自律神経のバランスが乱れ、血管やリンパ管が膨張して血流が悪くなったり、拡張した血管が頭蓋骨や脳を圧迫したりして、犬でも人と同じように、頭痛やめまい、関節痛などを起こすことがあります。
◆ふらつき、嘔吐、斜頸、眼振など
犬は、耳の中の内耳で気圧の低下を察知しています。内耳には蝸牛、三半規管、前庭があり、人が三半規管で体のバランスをとっているのと同じように、犬も三半規管によって体の平衡感覚を保っています。
三半規管には前庭神経がつながっており、前庭神経は平衡感覚をつかさどる神経です。台風によって気圧が大きく変化し、気象病になると、この前庭にも影響を及ぼし、めまいやふらつき、嘔吐、首が傾く斜頸、眼球が揺れる眼振などの症状が現れることがあります。
◆てんかん
普段は薬でてんかんの発作を抑えているような犬でも、気象病や気圧の変化によるストレスや神経の乱れによって、発作を起こしやすくなります。
てんかんは、てんかん発作を起こす脳の疾患です。発作の程度は犬によってそれぞれで、飼い主さんが見逃してしまいそうな軽度なものから、倒れて泡を吹いたり、全身的なひきつけ、失禁などを起こすような重度なものまであります。
犬のてんかんの原因は、先天的なものであったり、脳腫瘍などの後天的なものであったりしますが、完治させることは難しい場合が多く、投薬によって発作をコントロールしながら暮らしている犬は多いです。日常的にほとんど発作を起こさないような犬でも、台風などによる気象病によって急に発作を起こすこともあります。
てんかんをもっている犬は、台風の接近予報がでたらいつも以上に注意して、内服や座薬の用意をしておくと安心かもしれません。
◆水頭症
犬の水頭症はチワワに多くみられる疾患で、神経疾患のひとつです。
水頭症は、脳脊髄液が異常に増え、脳室内に溜まり、周りの脳を圧迫したり、脳自体が萎縮してしまう疾患です。犬の水頭症は、ほとんどが先天的なもので、完治させることは難しい病気です。
痙攣や斜視、ぼーっとする、急に興奮する、フラフラするなどの神経症状がでますが、障害を受けた脳の場所によって症状が変わります。軽度の場合には経過観察をとる場合もありますが、重度の場合では利尿剤やステロイドの内科的治療や、特殊なチューブを入れるVPシャントと呼ばれる外科手術を行う場合があります。
水頭症の犬も気圧の影響を受けやすいため、気象病に要注意です。
◆前庭疾患
人も犬も、内耳にある三半規管によって平衡感覚を正常に保っていますが、前庭疾患になるとこのセンサーがうまく働かず、上手くバランスが取れなくなります。目が回り、眼振やふらつき、斜頸などの症状がでます。
前庭疾患は原因のある場所によって、中枢神経系と末梢神経系に分けられ、中枢神経系では主に脳や脊髄、末梢神経系ではそれ以外と考えられます。末梢神経系では、耳のトラブルから発症することも多く、中耳炎や内耳炎、耳の腫瘍、加齢による三半規管の衰えなどが原因になり得ます。
どちらも気圧の変化による影響を受けやすいため、気象病のかかる可能性は高いです。普段は症状が軽い犬でも、台風の接近によって気圧が大きく変化すると悪化することがありますので、薬やサプリメントを上手に使ってコントロールしましょう。
◆食欲不振、元気がない、便秘、下痢
犬に明らかな異変や病変が見られなくても、気圧の変化によるストレスや身体の不調から食欲が低下したり、元気がなくなったりもします。
便秘や下痢を誘発することもありますので、食欲がないからといって、普段食べ慣れていない食べ物を与えたりするのは控えましょう。
◆傷跡が痛む
気圧の変化によって気象病になると、ケガなどで外科手術の経験がある犬は、傷跡が痛むこともあります。
変形性関節症や股関節形成不全、ヘルニア、膝蓋骨脱臼などを発症したことがある、または投薬中であったり経過観察中である犬は要注意です。
また、内臓に持病がある犬は症状が悪化したりすることもあります。特に高齢犬や車に酔いやすい犬は、台風などの気候の影響を受けやすく、体調を崩しやすくなりますので、少しでも異変があれば病院に相談すると良いかもしれません。
飼い主がしてあげられる対策は?
◆無理をさせず落ち着ける環境を整える
台風が接近している時に犬が体調を崩し、気象病かな、と感じたら、無理をさせずゆっくり休ませてあげてください。食事をとり、十分に休息をとれば、症状は治まってくることが多いです。
◆愛犬の気圧による変化を把握する
台風などによる犬の気象病対策として、普段から天候や気圧の変化と、愛犬の体調の変化の関連性を把握することが大切です。ある程度の期間記録をつけることで、雨や台風の当日、前日、あるいはもっと前から体調の不調や関節痛、発作などを予測することができます。
症状がひどくでる犬の場合には、事前に動物病院に相談し、薬を処方してもらいましょう。特にてんかんもっている犬は、大きな発作に注意し、いざという時のために内服薬や座薬を用意しておくと良いかもしれません。
◆自律神経のバランスを整える生活を心がける
普段からしてあげられる犬の気象病予防としては、自律神経のバランスを整えるような生活をさせてあげることが有効のようです。
日常的に夜遅い時間に散歩をする犬は、消化器系のトラブルなど、体調を崩しやすくなる場合があります。もしかしたら、自律神経の乱れが関係しているのかもしれません。
朝は早めに活動をさせ、適度に運動をさせてあげましょう。犬が活動的になるのは、朝と夕方ですので、それに合わせて運動させてあげるのが良いでしょう。
また、犬にとって暑さは大敵、エアコンは必須ですが、エアコンの効きすぎも自律神経の働きを弱め、台風などによる気象病によって自律神経のバランスが崩しやすくなります。
ハァハァと暑そうにパンティングをするようでは暑すぎますが、エアコンをかけすぎて冷やしすぎないようにしましょう。
犬の気象病に関するまとめ
犬は人に比べて体の不調や痛みを表に出しにくい動物です。そのため、飼い主さんが異変に気付くころには、だいぶツライ思いをしているのかもしれません。
飼い主さんが必要以上に心配しすぎても、犬がかえって不安になるので良くありませんが、少しでも気象病の兆候があれば、何か対策を取ってあげるべきかもしれません。台風が多く発生する時期はそう長くはありませんから、上手に対策をとって乗り切りましょう。
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