1.犬の脳梗塞とは?
4.犬の脳梗塞の症状は?
4-1.大脳に脳梗塞が起こった場合
4-2.小脳に脳梗塞が起こった場合
7.犬の脳梗塞の治療法は?手術もある?
7-1.発症後3時間以内の場合
7-2.発症後3時間が経過している場合
7-3.犬の脳梗塞治療手術はある?
【掲載:2029.11.26 更新:2022.04.06】
犬の脳梗塞とは?
人間の生活習慣病として知られている脳梗塞は、犬にも起こります。犬の場合、脳血管梗塞や脳内の出血、くも膜下出血などの脳血管障害のうち、一番起こりやすい疾患が「脳梗塞」です。
脳梗塞とは、何らかの原因により脳の血管が詰まる、又は狭くなる(狭窄)ことで、脳に酸素や栄養を送ることができなくなり、脳に障害が起きる病気です。
医学的には、血管(動脈)の閉塞により壊死が起こることを「梗塞」と呼びます(限局性壊死)。
犬の脳梗塞は、血管が詰まるだけではなく破裂し、脳障害を起こしたり、死に至る事もあるため死亡率も高く、とても怖い病気として知られています。
犬の脳梗塞の原因は?
犬の脳梗塞の原因は、未だに特定されておらず、解明のための研究が続けられています。
しかし、人間と同じ原因ではないか、という推測が多いです。
室内飼いの犬が増え、より人間に近い生活や食生活をするようになった犬が増えていることがその推測の要因となっています。
犬の脳梗塞の原因と同じではないか、といわれている人間の場合の原因は多岐に渡ります。
・塩分過多の食事
・欧米化した食生活(肉食中心の高カロリー食)
・運動不足
・ストレス
・甲状腺機能低下症を持病として持つ
・副腎皮質機能亢進症を持病として持つ
◆暑さが原因の脳梗塞って?
犬の脳梗塞の中には、暑さが原因のものもあるといわれています。
犬は元々暑さに弱い動物で、その理由は足の裏や鼻先などの限られた場所にしか汗腺が無いため、体内に熱がこもりやすいからです。そのため舌を出して、ハァハァと息をして熱を放出します。
その際に汗や唾液で身体の水分が出てしまい、脱水症状を起こすことがあります。
脱水を起こすと、血液が粘度の高いどろっとした状態になってしまい、血管の詰まりを誘発しやすくなることから発症する確率が上がってしまいます。
あまり積極的に水を飲まない犬には、犬用イオン飲料を飲ませる、ミルクを一滴垂らして風味を出してあげるなどの方法をとり、夏場は水分を補給させるようにしましょう。
犬の脳梗塞になりやすい犬種は?
脳梗塞になりやすい犬は、小型犬種に多いです。プードルやチワワ、マルチーズ、ポメラニアン、ミニチュアダックスフンドなど人気の高い犬種によくみられます。
また、血管梗塞を引き起こす原因の一つと考えられている甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症を遺伝的疾患として持っているボストンテリアやヨークシャーテリア、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ビーグル、ボクサーなども脳梗塞になりやすい犬種です。
犬の脳梗塞の症状は?
血管の詰まりを起こした脳が大脳なのか、小脳なのかで脳梗塞の症状が異なります。詳しくご紹介します。
◆大脳に脳梗塞が起こった場合
犬の脳梗塞の多くが、大脳に起こした場合です。大脳に起こった場合の症状には様々なものがありますが、初期症状から脳梗塞を即座に判定する見極めがとても難しいと言われています。
・四肢の震え
・けいれん・麻痺
・その場でぐるぐる回る(旋回運動)
・嗅覚の麻痺
・失禁
◆小脳に脳梗塞が起こった場合
小脳に脳梗塞が起こった場合は、大脳で起こる場合とは違った症状がみられます。また、小脳に起こった場合の方が後遺症が残る可能性が高いです。
・立つことができない
・ふらつき
・まっすぐ歩けない
・意識障害(ぼーっとしている、問いかけに応じない、反応が無く無視が続くなど)
・首が傾く
・眼振(眼球の焦点が合わず、眼が揺れ動いたり、ぐるぐると回ること)
犬の脳梗塞が起こった時の対処法は?
基本的に、脳梗塞は発症後3時間以内に対処できれば悪化を避けることができると言われている病気です。
しかしながら、犬の場合は四肢の震えや眼振、首の傾きなど微細な変化に飼い主が早急に気付くことが難しいです。
犬は話すことが出来ないため、身体の不調を訴えることができません。何かいつもと違うな?と感じる事があったら、直ぐに動物病院へ連れていくようにしましょう。
犬の脳梗塞の診断はどうやって行う?
犬の脳梗塞を診断するには、MRIやCT、所見や触診など多岐に渡る検査から行います。
中でもMRI検査は脳内の変性がわかるため、診断には必要不可欠な検査です。
犬のMRI検査は全身麻酔で行い、全身麻酔込みで、およそ8万円が相場です(病院による)。
また、MRI機器の無い動物病院も多いため、注意が必要です。
犬の脳梗塞の治療法は?手術もある?
犬の脳梗塞の治療法は、発症後3時間が経過しているか否かによって異なります。それぞれを詳しくご紹介します。
◆発症後3時間以内の場合
脳梗塞を発症してから3時間以内の場合には、一般的に「血栓溶解療法」を用いて治療します。
血栓溶解療法とは、詰まった血管の詰まりを取り除くための処置です。
血管を詰まらせている血栓を溶かす作用のある組織プラスミノーゲン・アクチベーター活性化因子(t-PA)製剤やモンテプラーゼ製剤などの血栓溶解剤を使用することが多いです。
血栓溶解治療には重篤な副作用も報告されているため、慎重投与が推奨されています。
そのため、発症後3時間が経過しているか否かという確認は、必要不可欠になります。
◆発症後3時間が経過している場合
発症後3時間が経過している場合には、血栓溶解治療を行うことができません。
そのため対症療法を行うことが多いです。
・低酸素改善・予防-酸素吸入
・血液をサラサラにして悪化を予防-抗血小板薬の点滴
・脱水の回復、血液循環の改善-輸液(点滴)
・脳圧の軽減-利尿剤の投与
・脳へのダメージ予防-ステロイド製剤の投与
◆犬の脳梗塞治療手術はある?
人間の場合、頭蓋骨を外し、脳梗塞を起こした脳の一部を手術で取り除くという手術がされることがあります。
また、詰まった血管の狭窄を広げるためのカテーテル手術などの方法もあります。
しかしながら、犬の手術はあまり一般的ではありません。そのため、犬が脳梗塞になった場合に手術という治療法を選ぶ動物病院はあまり無いです。
脳梗塞の後遺症にはどんなものがある?
◆歩行困難や麻痺、寝たきりなどの症状
脳梗塞の後遺症には、様々なものがあります。多くが、歩行困難や麻痺、首の傾き、歩行困難による寝たきりなどの神経症状です。
自由に歩行したり、動きまわれないことで犬はストレスが溜まり、二次的な後遺症としてストレス過多になったり、気分の落ち込み、鬱などを引き起こします。
また、運動不足からの肥満にもなりやすいです。
◆後遺症のリハビリ方法は?
脳梗塞の発症から、四肢の神経症状などの後遺症が残ってしまった犬は、リハビリを行う事もあります。
毎日のマッサージで血行を良くしたり、脚をゆっくりと伸ばしたり、縮めたりの屈伸運動などが家庭で取り入れられるリハビリです。
専門のリハビリ施設などで、負荷の少ない水中プールでスイミングをさせることでリハビリする方法もあります。
また、犬専用温泉施設では温泉に入り、末梢神経を温めることで血管を拡張させ、血流改善をするリハビリの取り入れもされています。
犬の脳梗塞の予防法は?
犬の脳梗塞は、原因が判明していないことが多いため、予防法もはっきりとこれ、というものがありません。
そのため、犬の健康管理に気を付けて、微細な変化も逃さないことが一番の予防法です。
特に、血管梗塞を起こしやすい疾病を抱えている犬や、高齢犬など症状を起こしやすい犬種などはより注意が必要です。血液がドロドロで詰まりを起こしやすい肥満の犬や、食生活が偏った犬、運動不足の犬なども要注意です。
また、いざという時のために近隣のMRI設置動物病院などを調べておくことも大事な予防方法の一つといえます。
犬の脳梗塞は怖い病気!些細な変化も逃さず、早期発見を目指しましょう
犬の脳梗塞は、血管が詰まるだけではなく破裂し、脳障害を起こしたり、死に至る事もあるため死亡率も高く、とても怖い病気として知られています。
治療方法は、発症から3時間が経過しているか否かに左右され、3時間以内であれば経過が良好になることが多いです。逆に3時間以上が経過してしまっている場合は、後遺症が残る可能性もあります。
とても怖い病気だからこそ、日常から些細な変化も逃さない様にして、早期発見ができるようにしましょう。
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