犬のでべそ「臍ヘルニア」とは?
臍ヘルニアがどのような病気かというと、臍の部分にある「臍帯輪」と呼ばれる部分が開いたままになってしまい、そこから中に存在している組織が出てきてしまっている状態の病気になります。
臍ヘルニアの「臍」とは音読みだと「さい」、訓読みだと「へそ」と読みます。この臍とは臍帯(さいたい)、つまりは「へその緒」の事を言っています。
漢字の読み方を見るだけでも、臍ヘルニアがへそのヘルニアの事を指しているという事が分かりますね。
臍ヘルニアは、実は全体の数パーセントの犬に症状が認められている程身近な病気です。見た目はただのでべそのように臍の部分が膨らんでいるだけなので、問題ないと勘違いされやすいですが、注意が必要になります。
◆臍ヘルニアになりやすい犬種
臍ヘルニアには、発症しやすいとされている好発種が存在します。以下の犬種の場合には、より注意が必要です。
・ペキニーズ
・シーズー
・エアデール・テリア
・キャバリア
・アメリカン・コッカー・スパニエル
・秋田犬
・ワイマラナー
こちらに挙げた犬種以外でも、臍ヘルニアを発症してしまうリスクはありますので、ご自分の愛犬のへそがでべそのような見た目だった時には一度動物病院にかかると良いでしょう。
◆臍ヘルニアのチェック方法
臍ヘルニアかどうかを自分でチェックする方法もあります。
・臍の中を指で押してみると、奥の方に穴の淵があるのが分かる。
・犬の体勢によって膨らみ加減が変わるのが分かる。
・お腹に腹圧がかかっていない時は凹んでいるのが分かる。
こちらのセルフチェックでは、普段の愛犬の様子を見逃してしまっていても今すぐチェックできるものもありますよね。
こちらの項目に当てはまる場合は臍ヘルニアになってしまっている可能性が高いので、、愛犬のへそがでべそのような見た目の場合や心配な方は今すぐチェックしてみると良いですね!
臍ヘルニアの原因は?
犬のでべそは「臍ヘルニア」という病気です。そもそも、犬はなぜ臍ヘルニアになるのかご存知ですか。
犬が臍ヘルニアになってしまうのには2つ理由があります。
◆先天的なもの
1つ目の臍ヘルニアの原因は、先天的なものです。人間にも臍ヘルニアの人はいますが、犬も同じで、先天的に臍ヘルニアになってしまう子がかなりいるようです。
先天的臍ヘルニアの場合、生まれた子犬のへその緒を切った後の脂肪や組織が残ってしまった場合や、元々へその緒が大きかった子などが臍ヘルニアになってしまうようです。
この臍ヘルニアの場合は先天的になってしまうものですから、特に予防方法などはありません。先天的な臍ヘルニアはそれほど重大な事ではありませんし、割と先天的な臍ヘルニアの子も多いので、しっかりとケアをしていれば心配しなくても大丈夫ですよ。
◆後天的なもの
2つ目の臍ヘルニアの原因ですが、分娩時に母犬の臍帯を過度に引っ張ったことにより発生することがあります。また、激しい運動をした際や外傷などが原因で、体内の隙間や裂け目が広がることもあるようです。
こちらは先天的なものに比べ、発生する頻度は低いと言われています。
犬の臍ヘルニアは治療すべき?
臍ヘルニアは、通常生後6か月頃までには自然的に治癒していくものなので、そのまま放置していても問題はありません。
しかし、中には生後6か月を過ぎても治らない子や、ますますでべそが大きく膨らんでくる場合があります。
そのような場合には手術が必要となるケースが多いようですが、手術するのか様子を見続けるのかは、獣医さんの判断を仰ぐ必要があります。
臍ヘルニアが重症になると、何度も出たり戻ったりを繰り返しているうちに、飛び出てしまった臓器が還納性を失ってしまい、そのままの状態になり、臓器が締め付けられてしまいます。この状態が「嵌頓(かんとん)」という状態です。
その後、締め付けられている組織の血行が悪くなり、硬化して変色してきます。そのため、痛みと熱感が出てきてしまい、臓器の機能が失われます。
臓器の機能が失われることにより食欲や元気がなくなってしまうため、犬の生命にもかかわってきてしまいます。そのような状態になると、緊急的な手術が必要となりますので、急いで病院にかかりましょう。
犬の臍ヘルニアの治療法は?
手術が必要となる場合の臍ヘルニアの主な治療方法をご紹介します。
◆還納性臍ヘルニア(かんのうせいさいヘルニア)の場合
ヘルニアとなっている周囲の組織を剥離して、「ヘルニア嚢」と呼ばれるヘルニアの内容物が入っている袋状の膜を切開します。
その後、ヘルニアの内容物をお腹の中に戻した後に腹膜を縫合します。
それほど極端に大きなヘルニアでない限りは、比較的手術も簡単になります。再発することもないので、手術後は安心することが出来ますね。
◆嵌頓性臍ヘルニア(かんとんせいさいヘルニア)の場合
ヘルニアの内容物がお腹の中の臓器だった場合は、こちらの嵌頓性臍ヘルニアとなります。
この場合は、飛び出てしまっている臓器の血行が回復できるかできないかが重要となってきます。その様子によって手術の内容も大きく変わってきます。
嵌頓するほどの臍ヘルニアの場合は、開いてしまっている穴も大きいため、閉塞するための技術も必要となってきます。こちらの嵌頓性の臍ヘルニアはめったに発症しませんが、万が一発症してしまうと手術が難しいものとなります。
臍ヘルニアは手術後約7~10日程で抜糸となることが多いようです。手術の日も含め、その期間が治療期間となります。
◆避妊・去勢手術の際に治療する場合も
臍ヘルニアが小さく、自覚するような症状が出ていないものであれば、避妊・去勢手術の際に一緒に臍ヘルニア手術を行う事が多いようです。
家族に迎え入れた子犬がでべそだった際には、まずは獣医さんにただのでべそか臍ヘルニアかを診断してもらいましょう。その後、避妊・去勢手術までに臍ヘルニアが治らないようだったら獣医さんと相談し、避妊・去勢手術の際に一緒に治療できるものなのかを聞いてみると良いですね。
犬の臍ヘルニアの治療費は?
臍ヘルニアの手術費用は、いくらくらいかかるのか気になりますよね。
臍ヘルニアの治療費は、病院によって値段に大きな差が出てしまったり、症状の進行具合によっても値段に大きな差が出てしまうのが実状です。
痛みなどの症状が特になく、避妊・去勢手術と同時に臍ヘルニアの手術をする場合ですと、プラス料金としておおよそ2~5万円ほどの治療費がかかってくるようです。
臍ヘルニアの症状が出てしまっており、臓器などがヘルニア部分から出てしまっている場合には、更に値段が上がり、10万円以上はかかってしまうようです。
それだけでなく、通常ですと診察代や検査の料金もかかり、さらに入院費も別途でかかると思います。
臍ヘルニアの手術を単体で受けるより、避妊・去勢手術と同時に受けてしまった方が費用も抑えられるようですので、臍ヘルニアの手術を考えている方は参考にしてみて下さいね。
犬の臍ヘルニアの予防法は?
実は、臍ヘルニアにはこれと言って決まった予防方法はありません。
そもそもヘルニアというものが何かというと、お腹の中にある臓器が一部または全て体内の隙間や裂け目などから脱出してしまっている状態の事を指しています。ヘルニアとは、いわゆる「脱腸」の状態なのです。
脱出してしまうものは腸だけではありません。脂肪・膀胱・胃・肝臓・膵臓などの臓器が脱出してしまう事があるため、そのヘルニアごとの治療が必要となってくるのです。
先ほどお伝えした臍ヘルニアももちろんそうなのですが、先天的なヘルニアの場合は、生まれつき体内に隙間や裂け目があったために起こります。後天的なヘルニアの場合には、激しい運動をした際や外傷などが原因で体内の隙間や裂け目が広がることにより発症してしまいます。
臍ヘルニアの場合は先天性のヘルニアがほぼ占めていますので、決まった予防方法はないという事になるのです。
しかし、臍ヘルニアの場合、重症化してくると腸閉塞という合併症を引き起こしてしまう可能性があります。
生後6か月を過ぎても臍ヘルニアが自然に閉じない場合には、症状の軽い重いにかかわらず病院で相談し、手術をして治療する事をおススメします。
まとめ
犬のでべそ、「臍ヘルニア」について詳しく分かっていただけたでしょうか。この記事のまとめとしては、
・犬のでべそのような見た目のへそは「臍ヘルニア」という病気である。
・犬の臍ヘルニアは出産時の先天的な要因からなるものと、外傷などが原因の後天的なものがある。
・臍ヘルニアは腹部のヘルニアである。
・臍ヘルニアは生後6か月頃までには自然に閉じて治ってしまう子が多い。
・治療方法は手術を受けること。
・臍ヘルニアの予防方法は特になし。
という事になります。
ただのでべそだと思っていたら臍ヘルニアだった、なんてこともあり得ます。ご自分の愛犬にでべそが見られる場合には、ただのでべその可能性がある場合でも、臍ヘルニアの疑いがある場合でも、一度病院に行き診断してもらいましょうね。
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