骨肉腫ってなに?
骨肉腫とは、骨のがん(悪性腫瘍)です。別名を「悪性骨形成性腫瘍」と言います。
人間の場合、20歳未満や小児に多いと言われていますが、犬の場合は7~8歳程度に多く見られる症例です。
痛みを伴うことが多く、転移の可能性もあるため、完治が難しい病気の一つです。
犬の骨肉腫は、7割以上が四肢に発生し、特に前肢が多いです。他には頭蓋、鼻、脊椎、骨盤、肋骨などが発生箇所として知られています。
犬の骨肉腫の原因は?
犬、人間ともに骨肉腫の原因は、まだはっきりと解明されてはいません。しかし、骨肉腫が出る傾向から原因ではないだろうか?と疑われているものがあります。
犬の骨肉腫の原因と考えられるものについてご紹介します。
◆犬のサイズ
犬の骨肉腫は、大型犬や超大型犬など比較的サイズの大きな犬に多く見られる症例です。そのため、犬のサイズや体格が原因なのではないか、と言われています。
痛みや腫れを伴うことが多く、歩行困難になる犬も多いため、体重の重い大型犬や超大型犬は寝たきりになってしまい、看病が難しいことが多いです。
◆年齢
犬の骨肉腫は、7歳~8歳の成犬に多い傾向にあります。ただ、幼犬が罹患しないという訳ではなく、生後1年半~2歳頃に発生する犬もいます。
◆性別
犬の骨肉腫は、オスの方に多く発生することが知られています。これは人間も同様です。
◆犬種
犬の骨肉腫は、四肢の長い犬種に多く発生することが多いです。例として、グレイハウンド、ジャーマンシェパードなどが挙げられます。
これらの犬種の中年期の痛みの訴えには、十分に注意が必要です。
犬の骨肉腫の症状は?
犬の骨肉腫の症状には、どんなものがあるのでしょうか。確認してみましょう。
◆痛みの持続
痛みが持続するという点が犬の骨肉腫の代表的な症状です。歩けないほどの痛みではなく、じわじわと痛みが長引くイメージが近いでしょう。
そのため、足をかばって歩く、足を触ると嫌がる、散歩を嫌がるなどの変化で不調に気付く飼い主の方が多いです。
◆患部の腫れ
患部が硬く腫れる症状がはじめに起こることが一般的です。炎症を起こしていることも多く、触るとじんわり熱を持った状態であることも特徴の一つです。
この症状は、骨の外に腫瘍が広がっている可能性があります。
◆骨折
骨内の組織を破壊する骨肉腫は、骨を脆く弱くさせてしまいます。そのため、骨折を起こすことがあります。
骨が脆いため、少しぶつけただけで骨折したなどの症状があったら、骨肉腫を疑うこともあります。
犬の骨肉腫の診断方法は?
なんだか脚を痛がっている、固いしこりがあるなど骨肉腫が疑われる場合には、どのような診断方法で診断するのでしょうか。確認してみましょう。
◆問診
犬の年齢や犬種、サイズ、どこを痛がっているかなどを診察の際に確認することで診断をする方法です。
犬は話すことが出来ないため、飼い主から聞きだすことは大切な判断材料となります。そのため、動物病院に行く際には普段の様子や気になる点を必ず話すことを心がけましょう。
歩行困難やふらつきなど、いつもと違うけれど説明が難しいという場合には、携帯電話で動画を撮影し、獣医師に見てもらうなどの方法もあります。
◆レントゲン検査、CT検査、MRI検査
骨肉腫に侵された骨は、えぐれた様に破壊されていたり、いびつな形をしているなど、レントゲンを撮ると顕著な特徴を示す場合が多いです。そのため、診断の際にはレントゲンが使われることが多いです。
レントゲン検査の際には、基本的には全身麻酔は必要ありません。レントゲン検査は、腹部や胸部にも行い、転移を確認することも多いです。
硬いしこりの様になっている場合には、がん腫瘍が骨の外側に出ている場合もあります。その場合にはレントゲンではなく、CT検査やMRI検査での診断を行います。
◆血液検査
骨肉腫の場合、アルカリフォスファターゼ(ALP)の数値が高くなるという傾向があります。そのため、病気が疑われる場合の診断には血液検査が有効です。
ただし、アルカリフォスファターゼ(ALP)は、胆道や肝臓の病気でも高い値になることが多いため、注意が必要です。
◆生体組織検査(バイオプシー)
生体組織検査(略称:生検)という、組織や細胞を外科手術で切り取ったり、針を刺して採取して検査する方法です。
骨という特殊な部位のため、他のがん細胞の生体組織検査とは違い、ジャムシディ骨髄検針などの専門器具を使い組織を採取して検査することが一般的です。
採取した細胞は、専門の検査センターに送り検査結果を待ちます。
しかしながら、がん細胞の増殖スピードは早いため、結果を待たずに化学療法や内服治療を行う方法を取ることが多いです。
犬の骨肉腫の治療法は?
犬の骨肉腫の治療法にはどんなものがあるのでしょうか。確認してみましょう。
◆外科手術
四肢に骨肉腫の症状が発生した場合には、四肢を断脚する外科手術が行われることがあります。転移をしていない場合には、がんに侵された四肢を切断することで、がん細胞の除去をすることが可能になります。
ただし、全身麻酔をかけ、大掛かりな手術になるため、犬自身にも体力が必要となるので、年齢、犬種などにより外科手術が難しい場合もあります。
また、外科手術後には、転移の可能性を見越した抗がん剤などの治療が必要になることが一般的です。
◆化学療法
化学的合成をされた薬剤を使い、がん細胞の死滅・活動抑制をする化学療法も、犬の骨肉腫に用いられる代表的な治療方法です。主に抗がん剤を使用した化学療法が多く使われます。
外科手術は骨肉腫を起こした脚自体の治療方法ですが、化学療法は薬剤により全身に広がった可能性のあるがん細胞に効果があります。
◆放射線治療
放射線により、がんに侵された細胞のDNAを破壊して、がん細胞の抑制治療をする方法が放射線治療です。放射線治療は専用の機器を使用するため、治療を行うことが出来る動物病院は限られています。
放射線の照射中は動いてはいけないため、犬の場合は全身麻酔をかける必要があります。そのため、麻酔をかけるリスクも考えて治療法を選ぶ必要があります。
また、放射線治療により被毛の脱毛や、色素の沈着が起こる可能性もあります。
◆内科治療
年齢や様々な要因から、外科手術やその他の治療法が難しい時には、痛みを取り除く内服治療が行われます。
消炎症剤や鎮痛剤などを用いられることが一般的です。
犬の骨肉腫の治療費は?
動物病院は自由診療のため、病院により治療費には大きな開きがあります。
犬の骨肉腫の治療は、大きく分けて検査、手術や放射線照射などの処置、内服です。
一般的には20万から40万ほどの治療費がかかることが多いですが、治療期間や犬の身体のサイズによっても料金は異なります。
中には100万円単位で治療費がかかった、という例もありますので、おおよその治療費を知るには主治医に確認することが一番確実です。
犬の骨肉腫の予防法は?
犬の骨肉腫は、原因がはっきりと解明されていません。そのため、原因から推測できる予防法が無い、というのが現状です。
ですから予防よりも「早期発見」が大切と言えるでしょう。
犬の骨肉腫を早期発見するにはどうすれば良い?
普段見えない場所である骨のがんである骨肉腫は、発見が難しく、気付いた時にはかなり悪化している、ということが多いです。発見まで時間がかかればかかるほど、他の部位への転移の疑いも起こるため、早期発見が一番大切な鍵を握っています。
では、犬の骨肉腫を早期発見するためにはどうすれば良いでしょうか。詳しくご紹介します。
◆毎日のスキンシップを必ずする
撫でる、ギュッと抱きしめる、ブラッシングするなどのスキンシップを毎日するようにしましょう。毎日行うことで、小さなイボや痛みのある箇所など「いつも」とは違うことに気付くことが出来ます。
飼い主と犬の絆も深まりますので、おすすめの早期発見方法です。
◆イボを見付けたら受診する
被毛をかきわけた皮膚の部分にイボやおできを見付けた場合には、動物病院を受診するようにしましょう。
見た目は人間のニキビの様なので、こんなことで受診?と思うかもしれません。また、それだけの状態では大した検査や治療も行われないことが一般的です。
しかし、受診することでカルテに状況が残り、経過観察してもらうことが可能です。
イボの大きさをチェックしたり、イボの個数の増減などもカルテに残すことが出来るため、おすすめです。
◆散歩の際に歩行チェックをする
散歩の際には、歩行チェックをするようにしましょう。脚をかばうように歩いていたり、偏りがある、歩きたがらない、などいつもと違う様子がある場合には、必ず動物病院を受診するようにしましょう。
骨肉腫以外にも、膝や腰の関節異常や、外傷など、何かの疾患が隠れていることも多いです。
骨のがんである骨肉腫は飼い主と二人三脚の治療で頑張りましょう
骨のがんである骨肉腫は、早期発見が難しく、見つかった時には全身に転移している、ということも少なくありません。しかし、外科手術や放射線治療などで緩和することや、痛みを除去し生活することは可能です。
犬は話すことができないため、気付きにくい病気のケアは飼い主にしかできません。毎日のスキンシップを増やし、新たな骨の異常などに気付ける様にし、悪化を避けられるよう犬と二人三脚で頑張るようにしましょう。
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