【獣医師監修】ラブラドールレトリバーが突然足を引きずり出した!いったいなぜ?

2020.08.31

【獣医師監修】ラブラドールレトリバーが突然足を引きずり出した!いったいなぜ?

元気に歩くラブラドールレトリバーを見ていると、こちらまで嬉しくなりますよね。 そんな愛犬が突然足を引きずるととても心配…。 でも、大型犬では珍しくないことと言われています。 いったいなぜなのでしょうか?

【目次】
1.後ろ足に突然の異変…!足を引きずる原因って?
 1-1.ラブラドールレトリバーの運動量は多い
 1-2.変な歩き方は様子見で大丈夫?
 1-3.足の異変で考えられる原因とは?

2.股関節形成不全ってどんな病気?
 2-1.ラブラドールレトリバーに多い遺伝性の病気
 2-2.大型犬で発症しやすい傾向
 2-3.股関節形成不全になったらどんな症状が?
 2-4.いつ現われるの?
 2-5.股関節形成不全はどんな治療をするの?

3.股関節形成不全の予防や対策…自宅でできるケアについて
 3-1.フローリングではなく、カーペットやマットがおすすめ
 3-2.階段の昇り降りに注意する
 3-3.肉球の裏の毛にも要注意

4.股関節形成不全を予防する対策を知っておこう

5.まとめ

後ろ足に突然の異変…!足を引きずる原因って?

いつも元気なラブラドールレトリバーが足を引きずっていると、とても心配になりますよね。
運動量との関係も含めて、足を引きずる原因について見てみましょう。

◆ラブラドールレトリバーの運動量は多い

体重30キロ前後にもなる大型犬のラブラドールレトリバー。
祖先となる犬種は、漁師のもとで働いていた水中作業犬で、ラブラドールレトリバーもそれを受け継ぎ泳いで獲物を回収するなどの運動神経があります。

もちろん、陸上での動きもスムーズです。
運動神経の良さに加えて、スタミナや集中力、訓練性などにも長けていることから、盲導犬をはじめ、さまざまな使役犬としても大活躍しています。
ラブラドールレトリバーは、とても優秀なワンちゃんです。

そんなラブラドールレトリバーは、体が大きいこともあってか、運動量は多め。
1回1時間ほどの散歩を1日に2回は連れだしてあげるのがいいでしょう。

運動量が多いとは言っても、やんちゃに駆け回るようなアグレッシブな動きではありません。
ラブラドールレトリバーは攻撃性がなく温和なタイプなので、「飼い主さんの横を歩けるだけで満足」「気晴らしに外の世界に出向きたい」というように、ゆったり系の散歩がお好みでしょう。

もちろん、ドッグランで走り回るようなアクティブな遊びも喜びます。
ラブラドールレトリバーの健康面を保つためにも、運動することはとても大事なのです。

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◆変な歩き方は様子見で大丈夫?

「運動量が多い」ということは、「足を痛めるかもしれない」というリスクと切り離すことができません。
体重も重いため、「歩く・走る」という日常的な動作のほか、「飼い主さんに飛びつく」「階段を駆け上がる」「ベッドから飛び降りる」など、ちょっとした動作で足に負担がかかることも少なくありません。

しかし、ふだんはリズミカルに歩くラブラドールレトリバーでも、何らかの原因で足を引きずるようになれば、飼い主さんとしては気になってしまいますよね。

足の異常には、何かしらの原因が隠されています。
様子を見ていいものから、すぐにでも病院に行くべきものまで…。

「様子を見る」にしても、単に放置するのではなく、「いつから異変があるか」「足を引きずる時の様子」というように、日付や症状の重さ、頻度について詳しく書き留めておきましょう。

◆足の異変で考えられる原因とは?

ラブラドールレトリバーが後ろ足を引きずったとき、「いつから?どのように?」をきちんと観察することはもちろん大事ですが、その原因として疑わしい病気についても把握しておくようにしましょう。

関節がずれる「脱臼」

関節の位置が通常よりもズレた状態が「脱臼」と言われるものです。
犬の体には関節がたくさんあり、膝や股関節などさまざまな箇所で脱臼のリスクがあります。

先天的な要因や、転倒したときの外傷がきっかけで症状が突然出てくるでしょう。
足を地面につけなかったり、引きずったりなど、足の異変が見られたときに疑われます。

骨が折れる「骨折」

ラブラドールレトリバーが足を引きずっているときには、骨折のケースもあります。
脱臼よりも症状が大きいのが一般的です。
「足が腫れている」「かなり痛がっている」「地面に足がつけない」など様子が見られるでしょう。
ひどければ、足の形状がひどく曲がっていることもあります。

先天性で起こりやすい「股関節形成不全」

股関節形成不全という先天性の病気で、足を引きずる犬もいます。
ラブラドールレトリバーがよくかかる病気のひとつなので、足を引きずるようになったときのために、おさえておくようにしましょう。


股関節形成不全ってどんな病気?

それでは、ラブラドールレトリバーがかかりやすいと言われている股関節形成不全について、具体的に説明していきます。

◆ラブラドールレトリバーに多い遺伝性の病気

ラブラドールレトリバーが気をつけるべき疾患として、股関節形成不全があげられることは多いです。
正常な股関節と比べると、股関節の形が悪く、足に何らかの異変が見られる病気です。

股関節形成不全が発症するケースの多くは、遺伝性と言われています。
ただ、激しい運動や体重増加など後天的な要因で発症するケースもあります。

◆大型犬で発症しやすい傾向

股関節形成不全は、ラブラドールレトリバーのように大型犬で発症しがちな遺伝性疾患です。
体の大きな犬で発症しやすい背景には、「成長スピードが早い」ということがあります。

小型犬と比べると、生後数か月の間にグングンと大きく育ち、体重も増えます。
急な運動や体重の増加が、股関節の形成に影響すると考えられています。

ラブラドールレトリバー以外では、ゴールデンレトリバー、ジャーマン・シェパード、ニューファンドランドのような大きな犬で発症事案が見られるようです。

◆股関節形成不全になったらどんな症状が?

股関節形成不全は、ラブラドールレトリバーと暮らすなら覚えておきたい病気です。
この病気の特徴的な症状が「後ろ足を引きずる」ことです。
このほかにどんな様子が見られたら股関節形成不全を疑えばよいのでしょうか。

・お尻を左右に振る“モンローウォーク”という歩き方をする
・バニーポップと言われるウサギのような飛び跳ね、スキップするような動作をする
・座るとき、立ちあがるときにスムーズではない
・運動をあまりしたがらない、散歩に行きたがらない
・ジャンプをしない
・横座りをするようになる
など、後ろ足に何らかの症状が出てくると、股関節形成不全の可能性があります。
上記の症状のひとつでも当てはまっていたら、まずは詳しく検査してもらうといいでしょう。

◆いつ現われるの?

遺伝性の疾患とは言え、生まれてすぐに症状が出てくるわけではありません。
前述のようにラブラドールレトリバーは、子犬から成犬に向けて成長スピードが早いワンちゃんです。

急ピッチの成長が発症の要因になりやすいため、異常が出てきやすい時期は生後数か月後からでしょう。
生後4~5か月頃から、1歳ほどに現れやすい疾患です。

ただ、「子犬期に股関節形成不全が見られなかった」と安心するのは早いかもしれません。

股関節形成不全は、「持っている遺伝的要因」にプラスして、生活していく環境的要因が合わさって発症するものです。
生後2~3年過ぎても、激しい運動や肥満など後天的な要因でかかることもあります。

また、股関節形成不全の症状は、軽いものから重いものまで。
重症化すると外科手術で治療しなければならないので、予防的な対策を知っておくことをおすすめします。

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◆股関節形成不全はどんな治療をするの?

股関節形成不全と診断されても、軽度の症状なら投薬や、体重管理、運動管理で治療ができます。
「運動を控える・なるべく安静に」で、さらなる症状の悪化をおさえます。
この場合は、関節を正常に戻す治療ではなく、「痛みを和らげる」という意味があります。
そのため、一時的に緩和しても、次に何かのきっかけで再び発症するかもしれません。

また、運動制限や投薬治療でも、なかなか症状が回復しない場合、人工の股関節への置き換えや、股関節の矯正のための外科手術が行われるケースもあります。

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股関節形成不全の予防や対策…自宅でできるケアについて

激しい運動で発症のリスクが高まるとは言え、まったく運動させないのはラブラドールレトリバーにとって辛いことです。
ラブラドールレトリバーの股関節への負荷を減らせるように、家のなかの環境を見直してみましょう。

◆フローリングではなく、カーペットやマットがおすすめ

フローリングはとても滑りやすいです。
ラブラドールレトリバーがツルツル滑っていると、可愛らしくて微笑んでしまいますが、愛犬にとっては笑いごとではありません。

軽やかに動いているように見えても、滑らないように本能的に足をかばっているので、股関節にも負担がかかっているはずです。
カーペットやマットなど、滑りにくい素材へ変えてみましょう。

◆階段の昇り降りに注意する

ラブラドールレトリバーは体が大きいとは言っても、人間よりは小さな体です。
階段の幅や勾配によって一概に言えませんが、ラブラドールレトリバーにとっての階段の昇り降りは、股関節への負担が少なからずあります。

特に、滑りやすい階段素材の場合、段差」と「滑る」というダブルの負荷「がかかってしまいます。
「階段の昇り降りはさせない」というしつけも必要かもしれませんね。

ただ、ラブラドールレトリバーのように体が大きな犬は、移動の際に飼い主さんが抱っこするのも難しいかと思います。

もし、階段の移動をさせるのだとしたら、うっかり足を滑らせないように滑り止めのマットを敷いてあげるのも予防法のひとつです。

◆肉球の裏の毛にも要注意

ラブラドールレトリバーが室内のフローリングで滑りやすい原因として、「肉球裏の毛が伸びている」ことがあります。
ワンちゃんの肉球は適度に湿っていて、室内で動くときに滑り止めになります。

ただ、足裏の毛が伸びて肉球が隠れてしまうと、せっかくのブレーキ的な役割を果たせず、滑ってしまうことも。
爪切りをするときなどに、肉球の間に生えている毛もしっかりカットしておきましょう。


股関節形成不全を予防する対策を知っておこう

股関節形成不全は、子犬に発症しやすい病気のため、その時期の生活環境に注意することで予防にもなります。

まず、注意したいのが激しい運動です。

ラブラドールレトリバーは、子犬期には好奇心旺盛で元気いっぱいかと思います。
ただ、激しい運動は控えるべきです。
股関節形成に悪い影響を与えないように、あまり興奮させないようにしたいものです。
特に、生後2か月くらいの時期は、股関節に過度な負担がかからないように気をつけましょう。

また、肥満も発症のリスクを高めます。
食事は適量を与え、適度な運動で、太らせないように管理が必要です。

子犬期が無事に過ぎたからといって、股関節形成不全のリスクがゼロになったとは言えません。
高齢に向かった時期に股関節形成不全が発現するケースもあります。
年齢問わず、肥満にならないような体重管理は大切です。


まとめ

ラブラドールレトリバーと暮らすなら、股関節形成不全について知っておきましょう。
成長段階において、股関節がしっかり形成できずに発症します。

ラブラドールレトリバーは、遺伝的に発症しやすい病気です。
しかし、体重管理や環境整備など、飼い主さん側でできる対策もたくさんあります。

大事なのは、ラブラドールレトリバーの股関節に過度な負荷をかけないことです。
ラブラドールレトリバーとの時間は楽しいものですが、ふとした瞬間が引き金となって足に異変を引き起こすこともあります。

ラブラドールレトリバーに後ろ足を引きずる仕草が見られたら、なるべく早く動物病院で診察してもらいましょう。

また、子犬期に症状が出なかったからと油断するのは禁物です。
長い時間をかけて、さらに股関節の形成が悪化しているケースもあります。
全年齢を通して、愛犬の足への負担を和らげるような環境を見直してあげましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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笹本 雅

笹本 雅

犬が好きです。小型犬でも大型犬でもとにかく犬が大好きです。これから犬種についてや豆知識や健康についてなど、幅広いワンちゃんについての情報をご提供していきます。犬好きの方にぜひとも見ていただいてご意見いただければと思います!

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