1.犬が肉球を噛む理由
1-1.前足・後ろ足の両方を噛むとき
1-2.前足だけ噛むとき
1-3.後ろ足だけ噛むとき
犬が肉球を噛む理由
犬が足や肉球を舐める・噛むなどの行動をとることは、決して珍しくはありません。しかし、中には病気や怪我などが原因として隠れている場合もあるので、しつこく常同行動を続けるようであれば注意が必要なのです。
犬が肉球を噛む原因には、大きく分けて以下のような三つの理由があります。
- 暇つぶしや癖
- ストレス
- 病気や怪我
暇つぶしや癖であれば、そこまで深刻に考える必要はありませんが、あまりに長く続けるようであれば皮膚炎などを発症する可能性もあります。
ストレスが原因だと考えられるのであれば、そのストレスを取り除いてあげる必要があるでしょう。
目視で確認できる赤みや傷がある場合や、病気や怪我が疑われる場合には治療のため、動物病院を一度受診することがすすめられます。
まずは、愛犬が舐めたり噛んでいる部位の確認をしてみてください。特に症状が見られなければ、単なる癖だったり、ストレスが起因している可能性を考えましょう。
また、肉球を噛む・舐める行為は、前足や後ろ足などの場所によって原因が絞られる場合もあります。
部位ごとに考えられる原因をみていきましょう。
◆前足・後ろ足の両方を噛むとき
愛犬が前足と後ろ足の両肉球を噛んでいる場合、共通して以下のような原因が考えられます。
◎自分の気持ちを落ち着かせている
基本的に、犬が肉球や手足を舐めたり噛んだりするのは、その部位に違和感のある時です。人間も身体の一部をぶつけた場合、その箇所を手でさすったりしますよね。犬にとって舐める・噛むなどの行為が、この仕草と同様の意味を持っているケースがあるのです。何かがあった時に気持ちを落ち着かせるため、その箇所を舐めたり噛んだりするのでしょう。
ただし、手持ち無沙汰で暇を感じたり、飼い主さんの気を引きたい時などに、気持ちを落ち着かせるために手足を舐めたり噛んでしまう犬も実際にいます。
中々判断が難しいですが、舐める・噛むという行為=病気や怪我、という方程式が常に成り立つわけではない、ということは頭に入れておきましょう。
しかし前述したように、その部位を舐め続ける・噛み続けることで、口内細菌や唾液が手足に付着して皮膚炎に繋がることもあります。
愛犬とのスキンシップもかねて、定期的な手足のチェックは必ずしておきましょう。
◎痛みによるもの
気持ちを落ち着かせるだけでなく単純に痛みを感じたことでも、舐める・噛むなどの行為はみられます。どこかにぶつけたり、爪が割れたり、とげがささるなど、痛みによる違和感があった場合もこれらの行動がみてとれるでしょう。骨折や外傷、関節の炎症や腫瘍などの疾患によって痛みが伴い、違和感のある部位を舐めたり噛んだりするケースもあります。
異変を感じた場合は、すぐに動物病院を受診して獣医師に相談してください。
◎皮膚炎・アレルギーなどの痒みによるもの
犬は痒い場合にも、その部位を舐めたり噛んだりします。皮膚炎の発症やアレルギーなどによる痒みが原因で、痒くてその部位を噛んでしまうのです。これを放置すると、唾液で皮膚が汚れることで炎症が悪化する可能性があるでしょう。
また、高齢犬になると身体のいたるところにイボができるケースもあり、この場合も気になったり痒みを感じたり、引っ掻いて出血してしまうことで、舐める・噛むなどの行為がみられることもあるでしょう。
元々皮膚が弱い子にこれらの行為がみられた場合は、特に注意してみてあげてください。
◆前足だけ噛むとき
愛犬が前足のみを舐める・噛む場合は、主にストレスが原因として考えられます。ただし、ストレスによって後ろ足を舐める個体もいるので、愛犬がストレスを感じる環境におかれていないか一度思い返してみましょう。
また疾患でいうと、頸部脊髄の損傷によって、前足のみを気にする場合があります。首の脊髄障害でしびれを感じるために、前足を舐めたり肉球を噛んだりするのです。
ただし前足は犬の目線に入りやすい部位なので、痛み・痒み・害虫被害・ストレス・暇つぶしや空腹など、様々な要因が起因していたり、複合した理由からも気になりやすい箇所といえます。原因究明が難しい場合は、獣医師に相談してみましょう。
◆後ろ足だけ噛むとき
後ろ足は、犬にとって噛むのに苦労する部位といえます。そのため、後ろ足自体や後ろ足の肉球をわざわざ噛む場合には、何らかの違和感・不快感がそこに存在している可能性が高いとえるでしょう。
愛犬が噛んでいる後ろ足の部分をよく観察してみてください。他の足と比べて変化がないか、怪我などの症状がないかをしっかり確認してみましょう。
そして、後ろ足を舐める・噛む場合に考えられる疾患としては、胸腰部の脊髄の障害や椎間板ヘルニアの回復期などが挙げられます。後ろ足を甘噛みしている様であれば単に遊んでいるだけの場合が多いですが、椎間板ヘルニアの回復期であれば、神経伝達に問題が生じて、その違和感から後ろ足を舐める・噛むなどの行為にいたる個体もいるようです。
犬が肉球を噛むときの対処法
愛犬が手足の肉球を噛む原因が病気や怪我の場合は、動物病院を早めに受診することがすすめられます。しかし、特に手足の状態や皮膚組織に異常が見られない場合は、ストレスや他の理由が原因だと考えられますよね。
肉球を噛む・舐める行為があまりに続くようであれば、まずはそれを止めさせるように対処しなければいけません。だからといって叱りつけるのはNGですよ。
おすすめの対処法を紹介しますので、参考にしてみてください。
◆気をそらす
すぐにできる対処法は、愛犬の気をそらす方法です。愛犬が肉球を舐めたり噛み始めたら、愛犬の大好きなおもちゃを利用したり、飼い主さんが愛犬の予測できないことをするなどして、手足に対する興味や集中を自分に向けさせましょう。
肉球を噛む愛犬の目の前にボールを転がしてみたり、普段は出さないような高い声を出してみるなどして、愛犬の気を引くのです。
声を出すといっても、怒鳴りつけたり叱るような声を出してはいけませんよ。そうすると愛犬がストレスを感じ、飼い主さんから見えない所でこっそり肉球を噛むようになってしまう可能性があります。
愛犬の気を引いて一緒に遊ぶことで、スキンシップの時間をも増やすことができるでしょう。
飼い主さんとの触れ合いの時間が少ないことでストレスを感じている場合には、肉球を噛む行動自体がなくなるといった好転を招くこともできるでしょう。
手軽に試せる方法なので、是非試してみてください。
◆靴下をはかせる
靴や靴下を履かせることで、物理的に噛む・舐めるなどの行為に対処することもできます。肉球に傷・炎症などがある場合は、傷口に菌も入りやすくなります。それを防ぐためにも、有効な方法だといえるでしょう。
犬用靴下や靴も多種多様に販売されています。個体によってはそれらを履くのが苦手な子もいますし、慣れないうちは嫌がる子も多いですが、もしも愛犬が平気そうであれば是非履かせてみましょう。
靴下を選ぶ際には、フィット感に注意してください。滑り止め加工が施されているものがおすすめです。乾燥対策として肉球保護クリームを塗ってあげると保湿もできるので、足裏ケアとしても活用できます。
靴下ではどうしてもすぐに脱げてしまう…、といった場合には、包帯を使ってみてください。伸縮性の包帯で、きつくなりすぎないように巻きましょう。巻いて抑えるだけで止められる包帯も市販されているので、そのタイプを用意できると簡単に巻くことができます。
その上から靴下を履かせると脱げにくくなるので、困っている飼い主さんは試してみてください。
◆エリザベスカラーをする
病気や怪我でできた傷口を犬が舐めないようするアイテムといえば、エリザベスカラーですよね。市販されている商品もありますし、動物病院からも購入することができます。
患部を舐める・噛むなどの行為を防止するアイテムとしては、やはりその効果は優秀です。愛犬の気を引くのも難しく、靴下もはいてくれない、といった場合の最終手段として考えておきましょう。
ただしエリザベスカラーも、嫌がる子の多いペットアイテムの一つです。無理強いしたり、長時間装着することは愛犬へのストレスに繋がります。様子をみながら、使用を考えてくださいね。
肉球をきれいにケアしよう
犬を飼う上では、様々なケアが必要になってきます。外見の美しさや皮膚の健康を守るためには、被毛のケアが大切ですよね。食事や運動による体調のケアはもちろん、適切なスキンシップを図ることで心のケアも重要になってきます。
そして更に、肉球のケアも忘れてはいけません。犬の肉球の形状は、小さい物が挟まりやすかったり、外出時に怪我をしやすかったり、そして何より汚れやすいために定期的なチェックが必要な部位です。
清潔を保つことは健康維持にも繋がり、原因によっては肉球を噛む行為の有無にも関わってくる重要なお世話の一つだといえるのです。
◆散歩後は特に要注意!
靴を履いて外出や散歩をしない限り、帰宅時の愛犬の肉球は汚れています。
特に散歩後に手足の肉球を噛む行為が突然始まった場合には、異物の付着や、怪我をした可能性が考えられるでしょう。
肉球の間に小石などが挟まっている、ガムを踏んでいた、ガラスなどによって傷がついた、害虫がついた、など様々な理由が原因として考えられるでしょう。
基本的に散歩後の犬は、心身ともに満足した状態になっていることが多いです。それにもかかわらず肉球を噛む行為が見られた場合は、何らかの異常が疑われます。
散歩後は足を洗って衛生も保つことはもちろん、同時に肉球に変化がないか、異常がないかをしっかりチェックしてくださいね。
まとめ
愛犬が何かを噛む場合、そこには何らかの理由が存在しているケースが多いです。肉球に限らず、しっぽを噛んだり、身体の一部分を気にしたりする行為は、何らかの異常を知らせるサインとなるでしょう。
遊びの一環や癖の場合もあるこれらの行動は、一見原因を判断するのが難しくもあります。悩んだ際には獣医師やトレーナーなど、一度プロに相談してみると安心ですね。
愛犬の肉球を噛む行為に悩んでいる飼い主さんは少なくありません。体験談や足裏ケアの記事を探して、参考にしてみるのもおすすめですよ。
愛犬の毎日をしっかり観察して、小さな異常にもすぐに気付けるよう付き合っていきたいですね。
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