1.警察犬訓練士とはどんな仕事
1-1.仕事内容
1-2.給料
1-3.倍率
2.警察犬について
2-1.仕事内容
2-2.種類
2-3.主な犬種
3.警察犬訓練士になる方法:警察官になる
3-1.①警察官になる
3-2.②鑑識課への配属
警察犬訓練士とはどんな仕事
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犬とかかわる仕事のひとつ、警察犬訓練士は、犯罪捜査などの警察活動を行う警察犬を飼育・訓練する仕事です。
テレビで活躍を目にする警察犬。いったいどのように訓練し、飼育しているのでしょうか。
ここでは、警察犬訓練士の仕事について、ご紹介します。
◆仕事内容
警察犬訓練士の仕事は、「警察犬」「災害救助犬」「麻薬探知犬」といった、犬の優れた嗅覚を活かすことで、犯人の検挙、遺留品の発見、人命の救助、犯罪の抑止を行う特別な犬を訓練することです。
それぞれの犬たちには、次のような役割があります。
- 警察犬:犯人の追跡
- 災害救助犬:見えないところにいる人の捜索
- 麻薬探知犬:麻薬の探知
これらの仕事をする犬たちは、目標が見つかると吠えたり、引っ掻いたりするなどしてサインを出して知らせます。
このように、警察犬候補の犬たちに、目標を見つける「臭気選別訓練」や指示に従う・適切な場面でサインを出す「服従訓練」などを行うのが警察犬訓練士の仕事です。
◆給料
警察官として仕事をする警察犬訓練士の平均年収は、公務員と同じ約200万円〜400万円くらいです。
さらに、嘱託の警察犬訓練士の場合の平均年収は、200万円くらいといわれています。
◆倍率
警察犬訓練士になるためには、必要な資格試験に合格する必要があります。
警察官として警察犬訓練士を目指す場合は、国家公務員試験または地方公務員試験(警察官採用試験)に合格する必要があります。
また、民間の訓練士資格を取得して、警察犬訓練士になる方法もあります。この場合は、日本警察犬協会による公認訓練士資格を取得する必要があります。
警察官採用試験
警察官採用試験は、警察官から警察犬訓練士を目指す場合に必要な試験で、警察官として働きたい都道府県で受験します。
なお、警察官採用試験の競争倍率は、その年や地域によって異なるものの5倍〜8倍くらいといわれています。
公認訓練士
公認訓練士は、日本警察犬協会の行う民間の訓練士資格です。
公認訓練士の試験を受けるためには、民間の警察犬訓練所に就職し、訓練を重ねながら受験をするのが一般的で、合格率は100%といわれています。
ただし、公認訓練士は、2年おきに資格の更新が必要です。
警察犬について
警察犬は、警察犬訓練士によって、警察活動(犯罪捜査など)に適するように飼育・訓練された犬の総称です。
警察犬には、それぞれ所属や得意分野があることをご存じですか?
ここでは、警察犬として活躍する犬たちについて、ご紹介します。
◆仕事内容
警察犬は、人間の3,000~10,000倍の嗅覚があるといわれており、さらに、特定のにおいについては、人間の100万倍以上の能力があるといわれています。
警察犬の仕事は、この高い嗅覚を使い、主に次の3つの仕事をしています。
- 足跡追及
- 臭気選別
- 警戒
足跡追及
特定の匂いから、犯人や行方不明になった人の足取りを追い、探し当てます。
この能力を生かし、遭難した人を探す救助犬としての仕事をすることもあります。
臭気選別
遺留品のにおいと容疑者が一致するかどうかを調べます。
この能力を生かし、爆発物や麻薬などを探す探知犬としての仕事をすることもあります。
警戒
パトロール、監視、護送等の仕事です。
大きな犬がいることで、犯罪の抑止につなげます。必要に応じ、指示を受けて攻撃を加えることもあります。
◆種類
警察犬は、所属により次の2種類に分類されます。
- 直轄警察犬:各都道府県警察で直接飼育、管理、運用されている警察犬。
- 嘱託警察犬:民間の訓練所などで飼育されている警察犬。警察からの要請を受けて出動する。
◆主な犬種
日本警察犬協会は、次の7犬種を日本の警察犬として認定しています。
- シェパード
- ドーベルマン
- ボクサー
- ゴールデンレトリバー
- ラブラドールレトリバー
- コリー
- エアデール・テリア
ただし、嘱託警察犬として活躍するトイプードルやチワワなどの小型犬もいます。
警察犬訓練士になる方法:警察官になる
警察犬訓練士になる方法の1つめは、警察官になることです。
警察官になり、鑑識課の「警察犬係」に配属されることで、直轄警察犬と仕事ができるようになります。その流れは次のとおりです。
◆①警察官になる
警察官になるためには、警察官採用試験を受験し、合格しなければなりません。
なお、警察官採用試験は、各都道府県で行われており、教養試験、論文試験、口述試験、体力試験などをクリアする必要があります。
なお、警察官採用試験の受験資格として、次のような内容が求められます。
受験資格
<Ⅰ類:大学卒業程度>
- 35歳未満で大学を卒業又は年度末までに卒業見込みの人
- 21歳以上35歳未満で大学卒業程度の学力を有する人
<Ⅲ類:高校卒業程度>
- 35歳未満で高校を卒業又は年度末までに卒業見込みの人
- 17歳以上35歳未満で高校卒業程度の学力を有する人
身体的特徴
<身長>
男性:おおむね160cm以上であること、女性おおむね154cm以上であること
<体重>
男性:おおむね48kg以上であること、女性おおむね45kg以上であること
<視力>
裸眼視力が両眼とも0.6以上であること。
これに満たない場合は、両眼とも裸眼視力がおおむね0.1以上で矯正視力が1.0以上であること
<色覚・聴覚>
警察官としての職務執行に支障がないこと
<疾患>
警察官としての職務執行上、支障のある疾患がないこと
<その他身体の運動機能>
警察官としての職務執行に支障がないこと
◆②鑑識課への配属
警察犬訓練士として仕事をするためには、警察官となり、「鑑識課」に配属される必要があります。
さらに、鑑識課の「警察犬係」に配属されることで、パートナーとなる犬の世話・訓練・出動という警察犬訓練士としての仕事ができるようになります。
警察犬訓練士になる方法:訓練所で働く
警察犬訓練士になる方法の2つめは、訓練所で働くことです。
訓練所で働きながら、日本警察犬協会の公認三等訓練士試験を受験し、合格する必要があります。その流れは次のとおりです。
◆①見習訓練士として働く
訓練所で働くためには、まずは見習訓練士として、日本警察犬協会の公認訓練士が経営する訓練所に入所し、住み込みで働きます。この訓練所で、受験のための実績(自分が訓練をした犬を、2頭以上5科目以上合格させる)を作ります。
◆②公認三等訓練士試験に合格する
公認三等訓練士試験を受けるためには、次の受験資格をクリアしている必要があります。
受験資格
- 協会の会員で満18歳以上の人
- 訓練の経験を有しこれに関係している人
- 所定の訓練試験合格実績がある人
- 犬が好き
- 健康である
- 忍耐力、根気がある
- 研究心が強い
- 面倒見がよく、奉仕(サービス)精神が強い
- 感情的にならない
訓練試験合格実績
訓練実績とは、日本警察犬協会の定める訓練試験科目に、自分が訓練をした犬を、2頭以上5科目以上合格させることです。
この訓練実績が規定に達していないと、試験を受けることができません。
なお、公認訓練士は、三等訓練士、二等訓練士、一等訓練士、一等訓練士正、最高位の一等訓練士長の5つの階級に分けられています。
警察犬訓練士に向いている人
警察犬訓練士として必要なのは、資格だけではありません。
実際に警察犬訓練士として仕事をするためには、資質として、次のような要素が必要だと考えられます。
警察犬は、指示に従い、的確に行動できるように訓練しなければなりません。そのためには、地道に、繰り返し、根気よく訓練し、しつけていくことになります。
犬が自分の指示に従わないからと感情的になることは、訓練において最もやってはいけないことです。
そのため、犬が好きであることはもちろんのこと、根気強く訓練できる忍耐力、犬の面倒を見ることに対する奉仕精神、どのようにしたら人・犬お互いに理解しあえるかを考える研究心、そして何より、運動量の多い犬と付き合えるだけの健康的な体と体力が必要であるといえます。
警察犬訓練士の1日
警察犬訓練士の1日は、犬中心の生活といっても過言ではありません。
ここでは、民間の訓練所で働く警察犬訓練士の1日のスケジュールについて、ご紹介します。
7:00 | 清掃作業 |
---|---|
8:00 | 朝食 |
8:30 | 犬のしつけ・運動・訓練 |
11:00 | 犬の朝食 |
12:00 | 昼食・休憩 |
13:00 | 犬の訓練 |
17:00 | 清掃作業 |
18:00 | 犬の夕食 |
19:00 | 夕食・ミーティングなど |
警察犬訓練士とドッグトレーナーの違いとは
警察犬訓練士とドッグトレーナーとの大きな違いは、訓練の内容です。
警察犬訓練士は、人間の指示を忠実に守り、的確に行動できるように犬を調教して、警察犬として必要な能力を身につけさせる仕事です。
犬に愛情を持ちながらも、厳しくする時は厳しく指導し、犬に自身の任務と上下関係をしっかりと覚えさせます。
それに対し、ドッグトレーナーは、預かったペットに対し、マナーなどをしつけ、問題行動を解決する仕事です。
良いこと・悪いことを認識させ、トイレ、散歩、無駄吠えなどの問題となる行動をさせないようにします。
このように、警察犬訓練士とドッグトレーナーは、対象となる犬種が異なるだけでなく、訓練の目的にも大きな違いがあります。
まとめ
今回は、犬に関わる仕事のひとつ「警察犬訓練士」について、ご紹介しました。
犬が好きな人は、一度は、このような犬に関わる仕事につきたいと思ったことがあるのではないでしょうか。
警察犬訓練士といっても、警察官の仕事の一環として仕事をする直轄の訓練士と犬を訓練することそのものを仕事とする嘱託の訓練士とがあります。
直轄の警察犬訓練士になるには、採用試験に合格し、さらに警察犬と仕事ができる部署に配属される必要があり、狭き門です。
また、嘱託の警察犬訓練士になるには、住み込みでの仕事を経験しながら、一人前になるまで、長い年月が必要です。
それくらい、警察の仕事を担う犬として訓練することは、難しいことだといえます。
警察犬訓練士になると夢を見、決心した皆さん。是非、その夢をかなえ、立派な警察犬を育成してください。
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