【獣医師監修】犬のしっぽの骨が折れているかも!?その原因と見分け方

2022.08.18

【獣医師監修】犬のしっぽの骨が折れているかも!?その原因と見分け方

しっぽを痛そうにしている、しっぽがだらんと下がっているなどの異常を見つけた時、どう対処すればいいでしょうか?尻尾をケガしたとき、ひどい場合は骨折することもあります。 今回は尻尾の骨折と家庭でできるその見分け方について解説します。

【目次】
1.犬のしっぽとは
 1-1.役割
 1-2.種類

2.犬のしっぽも骨折をする
 2-1.骨折の種類

3.尻尾の骨折の見分け方
 3-1.しっぽの形が変形している
 3-2.歩き方がおかしい
 3-3.元気がない、運動を嫌がる
 3-4.トイレがうまくいかない
 3-5.しっぽに触れることを嫌がる
 3-6.しっぽが垂れ下がったまま生活している
 3-7.しっぽを舐めたり噛んだりを繰り返している

4.犬の尻尾の骨折の原因
 4-1.他の犬との喧嘩
 4-2.強い力がかかった
 4-3.なにかにぶつかった
 4-4.過度な運動

5.しっぽの骨折に注意が必要な犬

6.動物病院に連れて行く際にはしっぽを固定する

7.しっぽを怪我した際に必要な検査

8.しっぽの骨折ではどんな治療が必要?

9.犬の尻尾を骨折から守るためには?

10.まとめ

犬のしっぽとは

犬の尻尾

犬は様々なことに尻尾を使用します。尻尾は背骨の延長であり、尾骨というしっぽの骨は根元では大きく、先端に向かって小さくなります。犬種により尻尾の骨の数は違い5~23個と様々です。尻尾にも筋肉や神経があり、それによって尻尾の柔軟な動きを可能にしています。また、犬の尻尾の付け根にある神経は腸や膀胱の制御にも関与しているため、その部分をケガすると尿漏れや排便障害が起きる可能性があります。

◆役割

犬の尻尾は下記に示すような役割を持っています。

  1. 体全体のバランスをとる
  2. 急激な方向転換をするときに尻尾を遠心力に対してバランスをとるような方向に動かすことで体の動きを補助しています。

  3. コミュニケーションをとる
  4. 犬は尻尾の位置を通して、人や他の犬とコミュニケーションをとります。例えば、上にあげて振る場合はポジティブな感情や興奮を示します。一方、丸めて下げている場合は恐怖を表しています。

  5. 泳ぐときは舵の役割をする
  6. 救助犬として活躍する犬は水中で方向を決める舵の役割として尻尾を使用します。

◆種類

犬には様々な尻尾の種類があることをご存じでしょうか。犬種によってその長さや太さはそれぞれ違います。代表的な尻尾の種類と犬種を紹介します。

垂れ尾 自然に下に下がっている尻尾(シェパード・ハスキーなど)
立ち尾 お尻から垂直に立ち上がっている尻尾(ビーグル・スコティッシュテリアなど)
飾り尾 全体がふさふさで長い毛が垂れ下がっている尻尾(ゴールデンレトリーバ)
巻き尾 背中にくるんと巻いている尻尾(柴犬、秋田犬など)
鞭尾 背中と水平にまっすぐ伸びている尻尾(イングリッシュセッター、ダルメシアンなど)
リス尾 リスの尻尾のようにフサフサしており背中に背負っているように見える尻尾(パピヨンなど)
スクリューテイル らせん状にくるんと巻いた尻尾(パグ、ボストンテリアなど)
ボブテイル とても短い尻尾 またはごく短く断尾された尻尾(コーギーなど)
オッターテイル 根元が太くて丸く、先にいくにしたがって細くなる尻尾(ラブラドール・レトリーバーなど)

●あわせて読みたい
犬種ごとに違う尻尾のかたち!犬の尻尾の種類と役割って?

犬の尻尾は、感情表現を表すバロメーターや身体のバランス維持、体温の維持(保温)、虫を追い払うなど、様々な役割を持ちます。尻尾の形にも様々な種類があり、巻尾、垂れ尾、立ち尾、差し尾、スクリューテイル、ボブテイルなど、犬種や個体によって個性があり、魅力的です。 今回は、犬の尻尾について、形や役割、犬が尻尾を追いかける理由、尻尾から分かる病気など詳しくご紹介します。

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犬のしっぽも骨折をする

まず、尻尾のケガとはどんなものがあるでしょうか?
骨折、脱臼、神経損傷、裂傷、すり傷、捻挫、感染症など多くの病状があります。その中でも特に重症度が高い尻尾の骨折について解説します。

◆骨折の種類

骨折とは骨が折れたり亀裂が入ったりすることです。

  • 開放骨折:交通事故などが原因で起こることが多く、骨折部位が皮膚を突き破って外に出ている状態を指します。皮膚や筋肉、血管の損傷を伴うことが多く治るのに時間がかかります。
  • 閉鎖骨折:骨折部位の皮膚が破れていない状態を指します。

  • 尻尾の骨折の見分け方

    ◆しっぽの形が変形している

    尻尾が折れ曲がっていたり、腫れたりしている。
    見た目的にもわかりやすいため、違和感をおぼえたら動物病院を受診しましょう。

    ◆歩き方がおかしい

    尻尾を動かすのに痛みがあると、通常の位置に保持するのが難しくなり歩き方にも支障が出る場合があります。

    ◆元気がない、運動を嫌がる

    痛みがあるといつも通り、尻尾を振ることができなくなります。また、歩くと痛みが響くため普段より動かなくなる場合もあります。

    ◆トイレがうまくいかない

    尻尾をケガするとトイレの時に尻尾をあげることができずに周りに尿や便を飛ばしてしまったりすることがあります。普段と違い、尻尾が便などで汚れているときは何らかの異常がある可能性があります。

    ◆しっぽに触れることを嫌がる

    痛みがあると触られるのを嫌がります。しっぽだけではなく腰のあたりを痛がることもあります。

    ◆しっぽが垂れ下がったまま生活している

    一般的に犬は排便の際や興奮したときに尻尾を振ったりあげたりしますが、尻尾にケガがあるとそれができなくなります。喜んでいるのに尻尾に力が入っておらず垂れ下がったままの時には異常が生じている可能性があります。

    ◆しっぽを舐めたり噛んだりを繰り返している

    尻尾をケガすると自分で舐めたり噛んだりして尻尾を気にすることがあります。過度に舐めることで傷口を広げ、感染を起こすことがあります。もし、気にしている様子であれば包帯で保護したり、エリザベスカラーをつけるなど対策をとりましょう。


    犬の尻尾の骨折の原因

    ◆他の犬との喧嘩

    他の犬と喧嘩し、尾を噛まれたときに骨折することがあります。外傷を伴うことがほとんどです。

    ◆強い力がかかった

    ベランダやベッドからの落下、ドアに挟むなどで骨折をする場合があります。尻尾の骨折の重症度はどの部分に衝撃が加えられたかに依存します。尻尾の根本、お尻に近い部分程、重症の可能性があります。

    ◆なにかにぶつかった

    交通事故などで尻尾を骨折する場合があります。事故の場合、見た目は尻尾だけのケガであっても、必ず動物病院を受診し他の部分に異常がないか検査を受けましょう。

    ◆過度な運動

    興奮や喜びの感情を伝えるため、犬は尻尾を振りますがあまりに頻繁である場合、尻尾を繰り返し傷つけることで骨折に繋がる場合があります。
    特に、狭いスペースで飼育されている場合は壁などに尻尾が当たり続けることで怪我をすることがあるため、犬の体に対して余裕のあるスペースを作りましょう。


    しっぽの骨折に注意が必要な犬

    犬のしっぽ

    高齢になり糖尿病や腎不全などを患った場合、骨が弱くなってしまうことがあるため注意が必要です。また、子犬は骨が未発達であると同時に判断力が未熟であり、高いところから飛び降りてしまったり、扉が閉まるのに気づかず挟まれてしまったりと事故が起きやすい傾向にあります。特に1歳までの小型犬は注意しましょう。
    また、筋肉が少なくスリムな体格の犬種は骨折しやすいと言われています。

    以下の犬種は特に注意しましょう

    • トイプードル
    • ポメラニアン
    • イタリアン・グレーハウンド
    • パピヨン

    動物病院に連れて行く際にはしっぽを固定する

    尻尾に傷や痛みがあると犬は自分で舐めたり噛んだりしてより傷を広げてしまう場合があります。そのため、尻尾に異常を感じたらタオルや包帯などを巻き保護しましょう。ただし、血流を制限しないように包帯をきつくまかないようにしましょう。エリザベスカラーをつけて物理的に届かないようにするのもおすすめです。


    しっぽを怪我した際に必要な検査

    尻尾のみのケガであった場合はレントゲン検査が有用となります。
    もし、車とぶつかったなど大きな事故が疑われる場合は尻尾だけでなく全身性の必要となるため血液検査や超音波検査、レントゲン検査などが行われます。

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    しっぽの骨折ではどんな治療が必要?

  • 骨折が尾の先端であった場合:骨折部位が膨らんだり、やや折れ曲がったりしているかもしれませんが通常は何の治療もなく治癒します。痛みがある場合は痛み止めの内服が処方されることもあります。
  • 尻尾の骨がつぶれている場合やむき出しになっている場合:そのままにしておくと感染を起こしたり壊死したりしてしまうことがあるため、尻尾の一部を切断する場合があります。その場合は麻酔をかけて手術となります。
  • 骨折が尾の付け根部分であった場合:しばしば神経損傷を伴い生活に支障が出る可能性があります。特に、排便と排尿を制御する脊髄に影響がある場合があるので、受傷後トイレに行ったか、きちんと排尿、排便できたかを確認してあげてください。

  • 犬の尻尾を骨折から守るためには?

    1. 尻尾が引っ掛かり怪我をする可能性があるので、高いところから飛び降りる行動はなるべく避けましょう。
    2. 体に合った余裕ある生活スペースを整えてあげましょう。狭い場所で飼育していると壁に尻尾をこすりつけてケガする可能性があります。
    3. 犬はストレスを感じた時に自分の尻尾を追いかけたり噛みついたりすることがあります。そういったことを避けるために十分な運動、刺激、人や他の犬との交流を持つようにしてあげましょう。
    4. ドアに挟む、飼い主が踏んでしまうなどの家庭内の事故が原因で骨折してしまうことがあります。特に子犬や小型犬を飼っている場合は常に足元に注意を払い、ドアを開け閉めするときは犬がそばにいないかどうか確認するようにしましょう。

    まとめ

    愛犬が尻尾を痛そうにしている、尻尾が折れ曲がっているなどの異常に気付くと慌ててしまいますよね。尻尾の骨折は家庭内の事故で起こることが多いです。特に子犬は足元にじゃれついてきたり、扉の開閉時に走ってきたりすることもあるため注意が必要です。愛犬が元気で健康に生活するために家族で話し合いできるだけ対策をとって気を付けましょう。
    それでも尻尾を怪我した場合は、なぜ怪我をしたのか原因を把握し、今後起きないように予防に努めましょう。

    ※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
    ●記事監修
    drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

    ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

    動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
    https://pets-kojima.com/hospital/

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