【獣医師監修】もしも愛犬が交通事故にあったら。適切な対応や予防法は?

2022.10.29

【獣医師監修】もしも愛犬が交通事故にあったら。適切な対応や予防法は?

交通事故は、人間にも愛犬にも突然起こりうる可能性のある恐ろしいものです。残念ながら国内でも、毎年ペットが犠牲となる事故が発生しています。万が一に備えて、交通事故に合った場合の対処法を覚えておく必要があるでしょう。今回はペットの交通事故について焦点を当て、対処法や予防法、更に法律的な面についても紹介していきます。愛犬を守るため、飼い主に必要な知識としてしっかり身に付けておきましょう。

【目次】
1.犬が交通事故にあった場合にすること
 1-1.①愛犬の容態の確認をする
 1-2.②事故の状況確認をする
 1-3.③動物病院に連絡をする・連れて行く

2.犬の交通事故は物損扱いになる
 2-1.法律上では「モノ」
 2-2.慰謝料の請求は事故のケースによる

3.大型犬と小型犬での交通事故の違い
 3-1.大型犬の場合
 3-2.小型犬の場合

4.愛犬を交通事故にあわせないために【予防策】
 4-1.リードを手放さない
 4-2.伸縮性のリードの使用に注意する
 4-3.首輪やハーネスを定期的に点検する
 4-4.夜のお散歩時にはライトや反射板を付ける
 4-5.テ・オスワリ・オイデなどの基本的なしつけをしておく

5.まとめ

犬が交通事故にあった場合にすること

道路の犬

散歩中や外出中に交通事故に遭ってしまう、こういった残念なハプニングは、人間はもちろんペットにも起こりうることです。
万が一、大切な愛犬が事故に遭ってしまった場合に、適切な対処ができるように以下の点をしっかりと覚えておきましょう。

◆①愛犬の容態の確認をする

事故に遭った場合、愛犬の容態を確認するために、以下のポイントをチェックしましょう。

  • 愛犬の意識を確認する。
  • 声を掛ければ反応するか、目線が合うかをチェック。

  • 普段と比べて呼吸に異常がないか確認する。
  • 呼吸が速いか、深いか、舌の色がおかしいかなど。

  • 身体の状態に問題がないかを確認する。
  • 自分で体を動かせるか、立ち上がれるか、足を引きずったりしてないかなど。

  • 外傷について確認する。
  • 怪我がどの部分にあるか、出血しているか、痛みはあるか、頭部の怪我があるかなど。

ただし、愛犬もパニック状態に陥っていたり、痛みから自分を守るために、飼い主さんを噛んでしまう可能性もあります。飼い主さん自身も慌てずに、対処することが大切です。

◆②事故の状況確認をする

愛犬が事故にあった状況を落ち着いて確認しましょう。

  • 自動車、バイク、自転車など、何とぶつかったのか
  • どの向きで接触したのか

適切に迅速な処置をするためにも、ケガの原因について正しい情報が大切です。
身体の左側からぶつかった、頭をぶつけた可能性があるなど、しっかりと事故状況を確認してください。

◆③動物病院に連絡をする・連れて行く

 
愛犬が自分で動けない場合は、無理に動かすと危険な状態になっている可能性があります。

  1. 物病院に電話して、獣医師の指示を受ける。
  2. 注意深く移動させる。

【愛犬が自分で動ける場合】
パニックになって暴れてしまうケースが多いです。
身体に触ったり、抱っこする時は十分に気を付けましょう。
噛まれないように、上着やタオルで優しく包み込んであげてください。

傷みがある時はその部分を動物病院のスタッフに連絡して、指示を受けましょう。


犬の交通事故は物損扱いになる

交通事故は、様々な場面で発生する可能性があります。愛犬が道路へ飛び出して起こるパターンもあれば、自動車が歩道に突っ込んできたことで事故が発生する場合もありますよね。飼い主さんと同時に愛犬までもがひかれてしまうケースも起こり得るのです。
事故によって愛犬に重篤な後遺症が残ったり、最悪の場合命を落としてしまうケースも多いでしょう。
飼い主さんにとって家族同然であるペットが、傷つけられたり、存在が失われたとなれば、精神的苦痛を加害者に償ってほしいと感じる被害者の方も沢山いると思います。

それでは法律的に、ペットの交通事故はどのような扱いとなるのでしょうか。損害賠償や慰謝料の請求ができるのか、という点も併せて解説していきましょう。

◆法律上では「モノ」

残念ながらペットは、法律上「モノ」という取り扱いとなります。

例えば、他人のペットを黙って連れ去った場合にも、誘拐罪ではなく窃盗罪が問われるのです。さらにいうと、悪意からペットを殺したケースであっても殺人罪にはなりません。(器物損壊罪・動物虐待罪が問われる可能性は有り)
そして交通事故の場合は運転手の過失による事故となるので、加害車両の運転手の罪を問うこともはきないのです。(飼い主も死傷させた場合は人身事故となる)
大切なペットの命をもし奪われてしまったら、加害者の相手に対して許せないという思いを感じる方は多いでしょう。しかし、法律ではどうしようもないというのが現実なのです。

したがって、交通事故で愛犬が死亡したとしても、飼い主に被害が無ければ、物・自動車などが壊れたケースと同様の物損事故として取り扱われてしまうというわけです。
尚、物損事故では加害者の自賠責保険を利用することもできません。相手車両が任意保険(対物賠償保険)に無加入だった場合、資力の面で不安が生じる場合もあるでしょう。

◆慰謝料の請求は事故のケースによる

法律における基本的な考え方では、物損事故の場合、原則として慰謝料は発生しません。
これは、物が壊れた場合はその物を修繕、また代替物を購入させたりすることで、損害を完全に回復することができると考えられているためです。
しかし例外的に、修繕・代替品の提供では、完全に回復できない物損被害もありますよね。例えば、この世に二つとして存在しない物を壊した場合がそれに当たります。

この場合、所有者に元に戻すことは出来ないという点から、一定の精神的苦痛が発生すると考えられるのです。また交通事故では、結果として物損で終わったとしても、命の危険を強く感じる恐怖があったというケースもあります。

実際にペットが事故に遭い、慰謝料が認められたというケースもあるので、事故が起きてしまった場合は弁護士など専門家に相談することをおすすめします。


大型犬と小型犬での交通事故の違い

交通事故

犬が自動車事故に遭った場合、大型犬と小型犬では大きく違いがあります。
大型犬の方が一見丈夫に見えるのですが、実は小型犬の方が生存率は高いのです。

◆大型犬の場合

大型犬は身体のサイズが大きいため、跳ね飛ばされた際に車のエネルギーをもろに受けてしまうことが多いのです。これが小型犬よりも生存率が下回る理由となります。
ちなみに中型犬以上のサイズがタイヤに踏まれるケースでは、背骨の骨折が生じて下半身が動かなくることが多いといわれています。

◆小型犬の場合

小型犬は車の下にもぐるケースが多いため、生存率が高くなります。
タイヤに踏まれることは多いのですが、身体の真上をタイヤに踏まれても命が助かるケースが多々あるそうですよ。ただし、肝臓や膀胱の破裂、亀裂などが生じる恐れがあります。また、骨盤の骨折も多いといわれています。


愛犬を交通事故にあわせないために【予防策】

交通事故はいつ発生するか分かりません。しかし、予防策をとりその発生確率を下げることはできます。飼い主さん側の過失とならないように、以下の点に注意し、愛犬の命を守るためにしっかりと対策をとりましょう。

◆リードを手放さない 

散歩や外出時には、愛犬に必ずリードをつけましょう。

ノーリードはマナー違反ですし、事故以外にも様々な危険が起こる可能性をもつNG行為です。
ダブルリードにしておくと、安全性が増すのでおすすめですよ。誤って一つのリードを離してしまっても、もう一つを手離していなければ、愛犬が逃げたり、遠くへ走っていくこともありません。道路への飛び出しなども防げるというわけです。

また、小さい子供に愛犬のリードを持たせることも飼い主さんの過失となりますので、万が一を考えるとしない方が良いでしょう。
慎重すぎるくらいに様々なリスクを想定し、安全に散歩を楽しめるよう配慮する必要があるのです。

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◆伸縮性のリードの使用に注意する

伸縮性のリードは、操作ミスや故障が起こりやすいアイテムです。道路沿いの歩道などでの使用は避けた方が無難でしょう。

ドッグランや公園などの広く人気のない場所に限定して、使用するのがおすすめです。
特に夕方から夜の時間帯に散歩をする場合は、リード部分が伸びないタイプを使って、愛犬との距離を常に把握できるようにしてください。

◆首輪やハーネスを定期的に点検する

愛犬に使用している首輪やハーネスは、必ず定期的に点検しましょう。留め金の部分が劣化していないか、外れやすくなっていないか、また布地の部分や紐がほつれていないかなど、細かい部分をよくチェックするようにしてください。
特に首輪は抜けやすいので、犬種によっては向いていない場合もあります。首輪が緩すぎると感じる場合は、ハーネスへの変更を検討するとよいでしょう。

◆夜のお散歩時にはライトや反射板を付ける

夜間は視界が悪くなり、特に車の運転手からは見えにくい状態となります。暗い時間帯に散歩をする場合は、必ず懐中電灯を持ったり、愛犬の首輪などに反射板や点灯ライトをつけるよう対策しましょう。

さらに、交通量の多い大通りなどの道を避けるなどの工夫をすることをおすすめします。

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◆マテ・オスワリ・オイデなどの基本的なしつけをしておく

日常生活でも必要となる、基本的なしつけを愛犬に施しておくことも効果的な対策法となります。
マテ・オスワリ・オイデ、などのコマンドを身に付けていれば、万が一リードを離してしまった場合にも、愛犬が走り去ることを防止することができるでしょう。

ちなみに愛犬がもし逃げてしまった場合には、慌てて追いかけると逆効果となる可能性があります。
追うと遊んでいると思って、更に逃げてしまう子も少なくありません。この時は名前を呼んだり、おやつで釣るなどして、愛犬の方から寄ってくるように仕向けるのがポイントとなります。


まとめ

愛犬が交通事故に遭ってしまったらと考えるだけでも、飼い主さんの心は痛むでしょう。
命を落とすケースはもちろん、重度の後遺症を残してしまったり、骨折などの怪我から病気に派生してしまう場合も考えられます。
絶対に起こってほしくない事象ですが、万が一の時には出来る限り落ち着いて対応することが重要です。
決して誤った散歩の仕方をせずに普段から予防策を行うこと、外出中は慎重にあらゆる危険性を想定して動くことを徹底してください。
愛犬の命を守る責任が飼い主さんにはあります。自分の行いに後悔しないように、毎日を楽しく過ごす為にも、安全面に十分な配慮をしていきましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!


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