1.ピットブルは危険な犬なの?
1-1.ピットブルによる事故の一例
1-2.飼育規制をされている国
2.ピットブルの歴史
2-1.闘犬という見世物の流行
2-2.国内では雑種扱いとなる
4.ピットブルの性格
4-1.ピットブルの性格①忠誠心がある
4-2.ピットブルの性格②我慢強い
4-3.ピットブルの性格③闘争心が強い
4-4.ピットブルの性格④飼い主へ愛情深い
5.ピットブルを飼うためには
5-1.徹底的な訓練を行える
5-2.向き合う時間を多く作れる
5-3.十分な飼育スペースがある
5-4.多頭飼い、小さな子供がいない家庭
6.ピットブルの気を付けたい病気
6-1.ピットブルの病気①尿石症
6-2.ピットブルの病気②網膜形成異常
6-3.ピットブルの病気③皮膚病
6-4.ピットブルの病気④股関節形成不全
ピットブルは危険な犬なの?
闘犬として作出されたピットブルは、生来の資質により人間に致命傷を与える危険のある犬種だといわれています。非常に残念なことですが、実際にピットブルによる傷害事件や事故が毎年起こっている状態でもあるのです。
しかし、しつけやトレーニングなど飼育方法の過程をしっかり行っていれば、穏やかな家庭犬として人気のペットともなりえる可能性も十分にあります。
沢山の運動量や高度な訓練を要することから、トイ・プードルなどのように飼育しやすい犬種とはいえませんし、初心者におすすめできるタイプの犬ではありませんが、全てのピットブルが狂暴で攻撃的だというわけでないのです。
まずはピットブルについての正しい知識を得ることが重要だといえるでしょう。
◆ピットブルによる事故の一例
ピットブルを飼育する上では、やはり秘められていてる危険性についてもしっかり認識しておく必要があります。
実際に起こった事件・事故をいくつか紹介しておきましょう。
70歳女性がピットブルに襲われて死亡(アメリカ 2022年)
仕事から帰宅した夫が、裏庭で妻の体を引きずり食べている愛犬の姿を発見。警察に通報し、駆けつけた警察官によって犬は射殺。
茨城県でアメリカンピットブルが逃走(日本 2022年)
民家で飼われていたピットブルが逃走し、県警より注意が呼びかけられたが、翌日には敷地内で確保されている。ちなみにピットブルは、県動物愛護条例によって「人に危害を与える恐れがある」特定犬として指定されており、檻の中で飼育するよう定められている。
少女の足を噛む野良のピットブル(アルゼンチン)
飲食店前で列に並ぶ母娘連れに背後から野良のピットブルが迫り、7歳の少女の足を食い千切る勢いで噛み続ける事件が起こった。監視カメラによって、90秒にも渡って噛み続ける様子が捉えられた。
2頭のピットブルに襲われ幼い姉弟死亡(アメリカ 2022年)
8年前から飼育されていた2頭のピットブルが、生まれた時からずっと一緒だった幼い姉弟を突然執拗に攻撃した。駆けつけた警察官らによって、子ども達の死亡が確認された。助けようとした母親も重症の怪我を負っており、2頭は翌日安楽死させられた。
◆飼育規制をされている国
犬同士を戦わせる闘犬として生まれた闘犬種は、生来的に攻撃性が強い個体が多く、訓練によっても容易に攻撃性を高めることができます。さらに身体の大きさから、一度襲われると大怪我を負う可能性も高いのです。
このことから、世界各国では闘犬の飼育が禁止されています。
襲撃による死傷者数が犬の中でも最も多いピットブルに関しては、アメリカの50以上の州や市・イギリス・ドイツ・スイスなどの多くの国で、所有(飼うこと)や輸入を禁止しているそうです。
尚、日本では闘犬が全面的な禁止とされておらず、いくつかの行政が独自規制を行っている状況です。国内では古くから土佐犬などを使った闘犬が行われていますよね。これにピットブルが用いられることもあります。
残念ながら、管理不足の闘犬による重大な咬傷事故は後を絶たず、死亡事故も毎年のように報告されているのが現状です。
闘犬種を飼育する飼い主さん・ブリーダーにいたっては、安全に対する高い意識と責任感が強く求められるのです。
ピットブルの歴史
ピットブルとは、正式名称を「アメリカン・ピット・ブル・テリア」といい、ブルドッグの血を引く闘犬として誕生した犬種です。原産国はアメリカとなります。
外見のよく似たスタッフォードシャー・ブル・テリアやブルドッグを基礎に作られたそうですが、闘犬用の強い犬を作るための交配は、繁殖者にとっての門外不出の秘密であるため、交配相手の詳細については不明瞭である点も多いようです。
基礎となったスタッフォードシャー・ブルテリアも元々は闘犬であり、負けん気の強さをテリア、ガッチリした体格をブルドックから受け継ぐように作出された種類がピットブルだといえるでしょう。
◆闘犬という見世物の流行
18世紀までは、ブル・ベイティング(犬よりも大きな雄牛を襲わせる見世物)が闘犬よりも流行していました。しかしイギリスをはじめとしたヨーロッパ各国で動物愛護法が制定され、ブル・ベイティングが禁止となります。
犬同士を戦わせる闘犬がこれに変わって流行することになるのですが、闘犬も禁止されていたため不法に行われ続けたのです。
この時代、スタッフォードシャー・ブル・テリアはアメリカに輸出され、改良された犬種がアメリカン・ピット・ブル・テリアになります。
ピットブルは本来、狼・熊などから家畜を守るため、屠殺時には牛・豚を抑えるために、使役犬・作業犬として重宝されていた犬種でした。
勇敢で力持ちな気質を愛され、家庭では精神的な安定と安らぎを与えられて飼育されてきたピットブルですが、20世紀頃にはこの気質が悪用されることとなります。
不法に闘犬・犯罪を行う人間達が、護衛のために凶暴な面をもつ犬を好んで身の回りに置きたがったのです。わざわざ気の荒い個体を選んで所有するようになることで、凶悪で抑えが利かない犬種だというイメージが広く伝わることになってしまったそうです。
◆国内では雑種扱いとなる
ピットブルという呼び名は、実は一つの犬種だけを指す名前ではありません。
一般的には、アメリカン・ピット・ブル・テリア、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、スタッフォードシャー・ブルテリア、アメリカン・ブリー、の4犬種をまとめて「ピットブル」と呼ぶ場合もあるのです。
そして実は、日本の血統登録団体であるJKC(ジャパンケネルクラブ)での登録はされていないため、雑種扱いとなる犬種なのです。現在アメリカン・ピット・ブル・テリアという名前で認可されているのは、UKC(ユナイテッドケネルクラブ)と、ADBA(アメリカン・ドッグ・ブリーダーズ・アソシエイション)のみとなっています。
ピットブルの外見
短いビロードのような美しい被毛に覆われており、筋肉質でたくましい体つきをしているピットブル。両目が離れていて鼻が短い顔つきをしていて、大きな口にガッチリしたアゴがとても特徴的な犬種です。
<大型犬のイメージがあるかもしれませんが中型犬に分類/span>されており、平均的な体高は、オスが約46~56cm、メスが約40~48cmで、平均体重は、オスが約13~17kg、メスが約11~15kg程度です。ちなみに、体長は体高よりもやや長めですね。
中程度の吠え声をしていますが、理由なく吠えることはほとんどないでしょう。
ちなみに闘犬だったことから、子犬の頃に断耳されることが当たり前とされていた犬種の一種です。家庭犬として飼われる現代ではその必要性が低いですが、考え方はブリーダーや飼い主さんによって差があります。
◆被毛の特徴や種類は?
ピットブルの被毛には、スムースコートとダブルコートの二種類が存在します。
スムースコートには毛質が太く硬いといった特徴があり、ダブルコートは皮膚を保護するオーバーコートと、体温調節の役割をもつアンダーコートから構成されています。
ダブルコートの場合はシングルコートの犬種と比較して抜け毛が多いので、この点はしっかり認識しておきましょう。
代表的な毛色としては、ホワイト・ブラック・ブリンドル・グレー・黄褐色・ブラウンなどが挙げられます。
しかし単色に限らず、ブラック&ホワイト・ブラック&グレー・ブラック&ブラウン、といった2カラーも多いです。中には3カラーの個体も見受けられるでしょう。
被毛のカラーや模様でも見た目の印象はかなり変わりますので、選ぶ楽しみも感じられますね。
ピットブルの性格
ピットブルの性格を想像すると、攻撃的で強いイメージが先行してしまうでしょう。しかし、その他の一面も持ち合わせているのです。
もちろん性格には個体差がありますので、ピットブルに関しても全ての個体に対して当てはまるわけではありません。あくまでも「参考」として覚えておいてください。
◆ピットブルの性格①忠誠心がある
獰猛な性格をしていると思われがちなピットブルですが、自分が認めた人間に対しては強い忠誠心をみせるでしょう。持ち前の強さ、忠誠心を発揮することで、番犬としても心強いパートナーとなってくれます。
頑固な一面があり自分の意思がしっかりしているので、良くも悪くも好き嫌いはハッキリしているかもしれません。
飼い主さんが愛犬に対して信頼できる存在となれれば、指示をしっかり聞いて実行することができるようになるはずです。
◆ピットブルの性格②我慢強い
攻撃的な面をもつイメージがあると意外だと感じるかもしれませんが、ピットブルは我慢強い犬種でもあります。
頭が良く、忍耐強いピットブルは、正しく訓練することで、本来持つ攻撃的な性格を十分抑えることができるともいわれているのです。
しっかり訓練することで、飼い主さんの言うことをきちんと聞いたり、番犬として優れた存在となる可能性があるでしょう。
◆ピットブルの性格③闘争心が強い
闘犬として誕生したピットブルには、やはり根本的に闘争心が強く攻撃的な性格をしている子が多いでしょう。
一度興奮すると、それを抑えるのが困難なため、歯止めが利かない場合があります。
もちろん性格には個体差がありますが、しつけがしっかりできていなければ、家族にすら攻撃的になってしまうケースが多いようなので十分注意が必要です。
◆ピットブルの性格④飼い主へ愛情深い
飼い主さんに対しての忠誠心や服従心が強いため、愛情深さを感じとれるでしょう。飼い主さんの気持ちを汲み取り、気遣ってくれるような優しい一面も持ち合わせていますよ。
しつけやトレーニング、信頼関係の構築がしっかりできていれば、人生の最高のパートナーとなってくれるでしょう。
ピットブルを飼うためには
闘犬の歴史をもつピットブルは、飼育の難易度が高めの犬種だといえます。
どのような方が飼い主さんとして向いているのか、また飼育するためにどんなことが重要となるのかを解説していきましょう。
ピットブルを家族に迎え入れたい!と考えている方は、まず飼育方法の難しさについて理解する必要があります。しっかりチェックしていきましょう。
◆徹底的な訓練を行える
力が強く、闘犬としての血が騒ぎだすと歯止めが利かなくなってしまうピットブルには、徹底的にトレーニングやしつけが必要となります。
このため、トレーニング・しつけを得意とする人や、専門家のサポートが受けられる方が、飼い主さんとして向いているといえるでしょう。
残念ながら、犬の飼育初心者さんには不向きな犬種であることが明らかです。
しっかりとトレーニングやしつけを施すことができなければ、問題行動に限らず、事故や傷害事件を起こす危険性も高まってしまいます。
それだけ訓練が重要となる犬種だということを、肝に銘じておきましょう。
◆向き合う時間を多く作れる
ピットブルはスタミナのある犬種のため、十分な散歩や運動の時間が必要不可欠となります。この時間を確保できて、それに付き合うことができる体力のある方に、向いている犬種だといえるでしょう。
散歩は朝晩1~2時間以上必要だと考えておいてください。
また、ピットブルの特性をよく理解している人が、飼い主さんでなくてはいけません。
ピットブルは、愛情深くて飼い主に忠誠心を持つ優しい性格をしていますが、興奮すると歯止めが利かなくなるという二面性をもっているのです。
こういった特性をしっかりと理解しておき、適切なしつけや対応が取れる方が、飼い主としてふさわしいと考えられます。
◆十分な飼育スペースがある
それなりに大きな体と、パワフルな一面を持つピットブル。十分な運動もできずに狭い所でずっと生活をしていると、ストレスが溜まって問題行動を起こす可能性があります。
ストレスが発散できるような、ある程度広めの飼育スペースを確保する必要があるでしょう。
こういった十分な広さを飼育スペースとして用意できる環境をもつ方に、向いている犬種だともいえます。
ドッグランなどへ連れていき、思い切り走らせたいと考える方もいるかもしれませんが、ピットブルはドッグランの利用にはあまり向いていません。他の犬とトラブルになる可能性がありますし、何よりピットブルのドッグラン利用を禁止している施設もあるのです。
利用したいと考える場合は、しっかりと注意を払うこと、事前に施設に確認しておくことが大切です。
◆多頭飼い、小さな子供がいない家庭
ピットブルは、他の犬との相性が合わないケースが多かったり難しい場合があるため、多頭飼育には向いていない犬種だといえるでしょう。トラブルなどを回避するためにも、できるだけ多頭飼育は避けた方が無難です。
また、小さな子どもや他のペットがいる家庭にも不向きだといわれています。
相性が合わない相手に対して、危害を加えてしまう可能性があるので、この点はしっかり覚えておきましょう。
小動物がいる場合は、別の部屋での飼育を徹底することがすすめられます。ピットブルに限ったことではありませんが、しつけやトレーニングができていなければ襲ってしまう危険性があるでしょう。
ピットブルの気を付けたい病気
ピットブルの平均寿命は、12~16歳程度といわれています。しかし、闘犬として戦い命を落としてしまった子もおり、データ数が少ないので正確な数字だとは言えないのが正直なところです。あくまでも目安として考えておきましょう。
寿命を全うするには、やはり健康体で幸せな毎日を過ごせることが大切ですよね。ピットブルがかかりやすいとされる病気の内、4つを紹介していきますので、万が一に備えて、覚えておきましょう。
◆ピットブルの病気①尿石症
尿道や膀胱に結石ができる病気で、主に尿路からの細菌感染、ミネラル豊富な食事等が原因となります。
愛犬が尿石症と診断された場合、再発を防ぐためにも食事・生活習慣を変えていく必要があるでしょう。主な原因は食事となりますが、体質も大きく影響するということを覚えておいてください。
◆ピットブルの病気②網膜形成異常
網膜血管の発育異常があった際に起こる疾患が、網膜形成異常です。軽度の場合は無症状ですが、重症化すると視力の衰えが見られたり、網膜剥離や失明の危険性が考えられます。
◆ピットブルの病気③皮膚病
アレルギーによって、皮膚に痒みや赤みなどの症状が起こる場合があります。
アレルギー性疾患は、腸内環境の乱れからくるものがほとんどなのですが、ペットブルにはお腹の弱い子が少なくないので、日頃から腸内環境を整えておくことを意識するとよいかもしれません。サプリメントなどを利用することで、予防につながる可能性があるでしょう。
愛犬に痒がっている仕草などがみられる場合には、早めに一度獣医師に相談してくださいね。
◆ピットブルの病気④股関節形成不全
生まれつきであったり、肥満による股関節への負担が原因で、股関節形成不全となります。この病気は、股関節の発達が上手くいかない場合に、関節に炎症を起きてしまう疾患です。
肥満が原因であれば、日常的な体調・体重管理で対策することが可能でしょう。
まとめ
闘犬として誕生したピットブルは、その攻撃性の強さや逞しい外見、また実際に起こってしまった事件の数々からも、危険性の高い犬種として認識されていることが多いでしょう。
しかし、正しい飼育方法や訓練を徹底することで、かけがえのない家族、人生のパートナーともなり得る犬種なのです。
ただしやはり、初心者が飼育するのは非常に難しいですし、既に飼育中だという飼い主さんも油断してはいけません。うちの子は普段から温厚だから大丈夫!と思う方もいるかもしれませんがそれは確実ではないのです。これまでに起きた事件にも、穏やかだった個体が突然狂暴になったというケースが何件もあります。
ピットブルを飼育するためには、事前にしっかりとその特性を理解しておくこと、ストレスを与えることなく育てることができる環境であるかを再確認することがとても重要です。プロの監修した飼育本などで勉強したり、実際に飼育している飼い主さんの体験談などを参考にするのもよいかもしれませんね。
生体価格には幅がありますが、平均で10~30万円ほどだといわれています。もちろん、親犬の付加価値や月齢、毛色などによっても差は出てきます。ブリーダーから購入する場合は、事前に問い合わせて確認するようにしてください。
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