特定犬種ってどんな犬?怖い?危険?本当に問題があるのは…?

2022.06.12

特定犬種ってどんな犬?怖い?危険?本当に問題があるのは…?

「特定犬種」と言われる犬種の存在をご存知ですか?一部の自治体で実施されている「特定犬制度」で指定されている犬種のことです。日本では愛玩目的で飼養することが禁止されている特定動物とは異なり、特定犬種の飼育を禁止・制限する法律はありませんが、海外では特定の犬種の飼育が法律で制限されていることも多いです。今回は、特定犬種について国内外の現状をお伝えし、規制の必要性や問題点を解説します。

特定犬制度とは

はじめに、「特定犬制度」について解説します。
日本には、特定犬種の飼育を禁止・制限する法律は存在しません。しかし、現在、4つの自治体で条例に基づく特定犬制度が実施され、飼育する場合に檻(おり)の中で飼養するなどの遵守事項が設けられています。
特定犬制度を実施している自治体は、札幌市、茨城県、水戸市、佐賀県の4つの自治体です。また、条例に基づく遵守事項を設けていない自治体でも、特定の犬種の飼い方について注意喚起を行っている場合もあります。

◆特定犬制度が定められた理由

では、特定犬制度は何故定められているのでしょうか?
日本では、犬による咬傷事故(人や他の動物が犬に噛まれる事故)が、年間4000件以上起きています(環境省「動物愛護管理行政事務概要」令和3年度版)。
このうち、野犬による事故は0.8%に過ぎず、咬傷事故を起こした犬はほぼ飼い犬であることが分かります。
咬傷事故を起こした犬の犬種については、明確ではありません。このため、特定犬種が実際に咬傷事故を起こしやすいかについては分かっていないのが現状です。

特定犬制度のある自治体では、人に危害を加えるおそれのある犬や、咬傷事故を含む事故を起こした際に重大な結果となる可能性の高い犬が、犬種や体の大きさによって定められています。
これは、犬種の気質や体格の大きさから、犬に悪気がなくても重大な事故につながりやすいと考えられているからです。昭和54年に、最初に特定犬制度を導入した茨城県では、放たれていた大型犬による咬傷死亡事故が起きたことが実施のきっかけだったそうです。
しかし、特定犬種に定められている犬全てが必ずしも危険であるということではなく、一般的な小型犬や中型犬を飼うよりも高い管理能力や危機意識が飼い主さんに求められるということです。


日本における特定犬はどんな犬なのか

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ここでは、日本における特定犬種を具体的にご紹介します。
特定犬制度を実施している自治体によって多少異なりますが、ほぼ同じ種類が規定されています。
今回は一例として、「茨城県動物の愛護及び管理に関する条例」に定められている特定犬をもとに解説していきます。

◆人に危害を加えるおそれがあるとして定める8犬種

気質的に人に危害を与える恐れがあると考えられている犬種としては、以下の8犬種が定められています。

大型犬の中でも特に体格が大きく、狩猟犬や闘犬、軍用犬などとして育成されてきた犬種が多いです。
これらの犬種は、概ね警戒心が強く、飼い主に忠実な分、それ以外の人や動物に対して敵対的になりやすい気質を持っているとされています。
また、特に体格が大きいため、例えばぶつかっただけでも、重大な結果をもたらす可能性が高いと考えられます。

◆一定以上の体高及び体長の大型犬

茨城県の条例では、雑種犬を含む体高(背中の一番高い部分から地面まで)60cmかつ体長(肩から尾の付け根)70cm以上の大型犬を、特定犬種として定めています。他の自治体でも、同程度のサイズの犬が特定犬として規定されています。

◆県知事が指定する犬

茨城県では、「危険性があるとあらかじめ判断される犬」が、県知事が指定する犬として定められています。
では、どのような基準・根拠により、あらかじめ危険性があると判断されるのでしょうか?
茨城県の条例には記載がありませんが、佐賀県の条例には「危険性(咬傷事故の再発等)のおそれがあり知事が指定する犬」と定められていることから、過去に実際に咬傷事故を起こしたことのある犬などが想定されていると考えてよいでしょう。


海外の特定犬種規制法について

ここでは、海外の特定犬種規制法について、いくつかの国を例としてご紹介します。

◆アメリカ

アメリカには、「Breed Specific Legislation」(BSL)という法律があります。直訳すると「品種固有の法律」となり、犬種に固有の規制が行われているということです。アメリカでは地域ごとの自治が重要であるため、州ごとに法律が異なり、BSLは各法律の総称です。
BSLでは、州や地域によって異なりますが、ピットブルタイプを中心に特定の犬種を「危険な犬」と指定しており、飼育に際してさまざまな制限が設けられています。さらに、飼うこと自体が違法となる地域も存在します。

◆イギリス

イギリスには、1991年制定の「Dangerous Dogs Act」という法律があります。直訳すると「危険な犬に関する法律」です。
ピットブルテリア、土佐犬、ドゴ・アルヘンティーノ、フィラ・ブラジレイロの4犬種が危険犬種として規制されています。また、外見や身体的特徴がピットブルのような犬も対象です。
これらの犬は、飼育、繁殖、販売、譲渡、遺棄などが禁止されています。また、口輪とリードを着けずに自宅敷地外(公共の場)に連れ出すことも違法です。

◆オーストラリア

ドゴ・アルヘンティーノ、ブラジリアン・ガード・ドッグ、アメリカン・ピットブルテリア、土佐犬、プレサ・カナリアの5犬種は、法律によって輸入が禁止されています。
また、これらの犬種には所有の際のルールが法律で定められています。州によって若干の差がありますが、多くの州で口輪の装着、避妊・去勢手術を受けさせることを義務づけています。


特定犬を飼育する方法

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ここでは、特定犬種を飼育する際に遵守事項とされていることを挙げておきます。

◆おりの中で飼育する

特定犬種は、「おり」の中で飼育することが義務づけられています。
茨城県の条例によると、おりは以下のように定められています。

・上下四方が囲まれていること
・十分な強度を持っていること
・人に危害を加えられない構造になっていること

理想的な犬舎として、清掃がしやすく、日よけや雨よけのついた休憩できるスペースがあることが挙げられています。底が土の場合は、設置場所を約20cm埋めるか、基礎を打つことも必要です。
また、盗難や逸走防止のために、南京錠やダイヤル式などの錠をつけなくてはなりません。錠は、複数取りつけることが推奨されています。
エサ入れは、外部から交換できるようになっているものが規定されています。

◆標識を掲示

特定犬であることを明示する標識(ラベル、シール)を掲示することも、義務づけられています。訪問者から見えやすい場所に貼ります。
佐賀県では、県内の保健福祉事務所でシールを配布していますが、他の自治体では、特定犬種の飼い主さんが自分で作成しなければなりません。この場合、標識の大きさや掲示する内容、文字の色などの様式が自治体ごとに定められているので、各自治体の公式ホームページで確認しましょう。

◆脱走した時にはすぐに通報

特定犬種が逸走した場合には、すぐに通報することが義務づけられています。
通報先は、自治体によって多少異なり、例えば水戸市では動物愛護センターに、佐賀県では保健福祉事務所と警察に通報しなければなりません。


飼い犬が事故を起こさないようにするために

前述の通り、犬による咬傷事故はほぼ飼い犬によるものです。
したがって、特定犬種であるか否かにかかわらず、飼い主さんは飼い犬が事故を起こさないように努めなければなりません。

◆犬種の素質や特性を理解する

犬は、長く人と生活する中で、使役犬や愛玩犬といった目的をもって品種改良が行われてきました。このため、犬種によって素質や特性に傾向があります。
例えば、特定犬種として挙げられるジャーマンシェパードは、護衛や使役など多目的に品種改良が行われて成立している犬種です。ジャパンケネルクラブの記述によると、安定した性格でバランスが取れているとされています。しかし、全体的に落ち着いていると記述されながら、「怒ったとき以外」と注釈もつけられています。
一方、愛玩犬であるチワワは可愛らしい見た目で大人しく見えますが、注意深く、大変勇敢であるとされています。
もちろん個体差はありますが、犬種ごとに傾向があるので、飼育する場合にはその素質や特性について十分に調べて理解しておく必要があります。

◆飼育環境を整える

犬を迎え入れる前に、犬種の特性や体格に見合った飼育環境を整えましょう。
例えば、犬種によって必要な運動量は異なります。それぞれに見合った飼育スペースが確保できるか、散歩の時間を取れるかも大切なポイントです。

◆責任をもって飼育をする

一度犬を飼い始めたら、理由の如何にかかわらず、最期の時まで責任をもって飼育しなければなりません。
ルール(法律、条例)やマナーを守り、他の人に迷惑をかけないように飼育・管理する必要があります。
また、犬種を問わず、犬の飼育には手間がかかり、金銭的な負担も想像するより高額です。大型犬であれば、平均年間支出は約48万円(2020年)です*。
近年、犬の平均寿命も長くなり、2019年には14.1歳となっています
その間、飼い主さんには、就職や進学、結婚・出産などライフステージの変化があり、一方、犬も病気やケガをしたり、高齢になれば介護が必要になったりします。
これらについての覚悟が持てなければ、飼わないという選択をしなければならないでしょう。

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犬を飼いたいけれど、本当に飼えるのか不安な方もいるでしょう。飼い主さんも様々なので、具体的にどんな人が犬を飼うのに向いてる人なのか、なかなか分かりませんよね。犬と暮らすことは命を預かることなので、安易に考えることはできません。責任と覚悟が必要です。今回は、犬を飼うのに向いてる人、飼うのが難しい人はどんな人かを具体的に解説しますので、参考にしてみてくださいね。

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まとめ

日本には、特定犬種の飼育を禁止・制限する法律は存在しませんが、海外では特定犬種について飼育や繁殖が制限・禁止されていることも少なくありません。
特定犬種は、体格が大きく事故になった場合に重大な結果になると考えられる犬や、犬種の特性として事故を起こしやすい傾向があるとされる犬です。日本では茨城県など4つの自治体が、条例で特定犬制度を実施しています。
一方、アメリカやイギリスでは、犬種による規制が事故の減少に効果はないとも言われ、法律の見直しの機運もあります。日本でも、特定犬制度を「犬種差別」として問題視する愛犬家も少なくありません。
本当に問題なのは特定の犬種ではなく、飼い主さんの犬に対する意識や知識ではないでしょうか?小型犬であっても、重大な事故を起こす可能性があります。「うちの子は大丈夫」という意識では、事故を防ぐことはできません。
特定犬種を飼う際はもちろん、どんな犬種であっても、飼い主さんはその犬の性格や特性をしっかりと見極め、適切な飼育・しつけを行うようにしましょう。



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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。


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