【獣医師監修】犬がコーヒーを飲んで(舐めて)しまった時の危険性と対処方法は?

2023.05.07

【獣医師監修】犬がコーヒーを飲んで(舐めて)しまった時の危険性と対処方法は?

私たち人間にとっては気分転換や眠気覚ましのため、または嗜好品の1つなどとして馴染み深いコーヒーですが犬に与えてはいけないことはご存知でしょうか?量にもよりますが最悪の場合、命の危機につながる可能性もあります。 よって今回はコーヒーがなぜ犬にとって危険なのか、また万が一、口に入れてしまった時の対処方法などを解説していきます。

犬にカフェインはNG

コーヒー

犬にコーヒーを与えてはいけない理由として、コーヒーに含まれているが犬に良くない影響を及ぼすためといわれています。よってコーヒー以外にも緑茶や紅茶、エナジードリンク、チョコレートなどの「カフェイン」を含むものは全て犬に与えてはいけません。
特にチョコレートは子供が気軽におやつ代わりに愛犬に与えてしまう、床に落としたままのチョコレートを愛犬が食べてしまうなどの危険性が非常に高いため、注意する必要があります。

◆犬にカフェインを与えてはいけない理由

では、なぜ「カフェイン」を犬に与えてはいけないのでしょうか?そもそも「カフェイン」はコーヒー豆や茶葉、カカオ豆などの植物に含まれる「アルカロイド」という天然成分の1つとなります。
コーヒーには「カフェイン」と「トリゴネリン」という2種類のアルカロイドが含まれています。

「カフェイン」には主に「覚醒作用」と「利尿作用」の2種類の働きがあり、「覚醒作用」として中枢神経を興奮させることによって眠気の解消や一時的な疲労感の軽減、興奮、動機などが起こります。
また「利尿作用」としては交感神経を刺激することによって腎臓の血管が拡張され、血液のろ過量が増加するために尿の量が増えてむくみ改善や血圧を下げるなどの効果が期待できます。

このように、私たち人間はコーヒーを飲むことによって多くのメリットを得ることができますが、犬の場合は体内で「カフェイン」を代謝する能力が低く、作用が強く出すぎてしまい「カフェイン中毒」となる可能性が非常に高いため、コーヒーなどの「カフェイン」を含むものを与えることは必ず避けるようにしましょう。

◆カフェインレスコーヒーは飲ませてもいいのか

コーヒーを犬に与えてはいけない原因が「カフェイン」ならば、コーヒー豆の元となる生豆からカフェインを除去して作られたコーヒーであるカフェインレスコーヒーは大丈夫と思ってしまう飼い主さんもいるかもしれません。しかし、「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」によるとカフェインレスコーヒーは「カフェインを90パーセント以上除去したコーヒー」と記載されており、全くカフェインが含まれていないと言い切ることはできません。

よって、たとえカフェインレスコーヒーであったとしても愛犬には与えないようにしましょう。

またカフェインレスコーヒーと似たような飲み物にデカフェコーヒーもありますが、デカフェとは英語の「decaffeinated」を略した言葉となり、コーヒーや紅茶などのカフェインを含んでいる飲み物からカフェインを取り除くということをいいます。
ただ、こちらもカフェインレスコーヒーと同じくカフェインがまったく含まれていないわけではなく、ごくわずかのカフェインが含まれているため、やはり愛犬に与えることは避けるようにしましょう。

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犬がコーヒーを飲んでしまった時の症状

犬がコーヒーを飲んでしまい「カフェイン中毒」となった場合、どのような症状が見られるのでしょうか?

個体差や飲んでしまった量にもよりますが、初期症状としてまずは2~4時間以内に嘔吐や下痢、頻脈、呼吸数の増加、おしっこをもらす(尿失禁)、お水を異常に飲む(多飲)、落ち着きがなくなるなどの様子が見られることが多いでしょう。
これらの初期の間に対処がされずに更に症状が進んでしまうと痙攣(けいれん)や昏睡、筋肉が硬直してつっぱった状態、失神などといったかなり重篤な状態となり命の危険が高くなると考えられます。


犬がコーヒーを飲んでしまった際の致死量

まずは、犬の体重1kgあたりのカフェイン摂取量と症状の程度について考えてみます。

個体差はありますが、10~20mg/kgで軽度の症状、40~50 mg /kgで重度の症状、120~140mg/kgで致死量ということができるでしょう。

次にカフェや自宅などで淹れたインスタントのコーヒーには100ml中に約60mgのカフェインが含まれていることからカップ一杯(120ml)には72mlのカフェインが含まれていると考えることができます。

よってチワワやトイプードル、ポメラニアン、マルチーズ、ヨークシャーテリアなどの体重が1~3kgの超小型犬の場合だと、カフェインの量が10~30mgで軽度の症状、120mg~360mgで致死量ということになるため
インスタントコーヒーがカップ1杯に満たない量で「カフェイン中毒」、2杯弱で致死量になります。

また柴犬やパグ、シーズー、ペキニーズ、ボストンテリア、ミニチュアダックスフンドなどの体重が5~10kgの小型犬の場合だと、カフェインの量が50~200mgで軽度の症状、600mg~1400mgで致死量ということになるためインスタントコーヒーがカップ1杯弱で「カフェイン中毒」、5杯で致死量になります。

さらに日本スピッツやブルドッグ、フレンチブル、ボーダーコリー、バセットハウンド、ジャーマンピンシャーなどの体重が10~25kgの中型犬の場合だと、カフェインの量が100~500mgで軽度の症状、1200mg~3500mgで致死量ということになるためインスタントコーヒーがカップ2杯弱で「カフェイン中毒」、16杯で致死量になります。
ただ、これらの量はあくまで計算上となるため個体差やその時の犬の体調や年齢によることはもちろんのこと、消化器官などが未発達の子犬の場合は特に中毒反応を起こしやすいため、より一層の注意が必要となります。

また、コーヒーなどのカフェインを含む飲み物以外にも愛犬が誤って口にしてしまう可能性が高いものとしてドラッグストアなどで購入することができる「カフェイン剤」があります。「カフェイン剤」は主に眠気覚ましなどを目的として1錠につき約100~200mgのカフェインを含んでいるため、たった1錠で超小型犬の致死量に相当することになります。
このような製品を飼い主さんが使用するときには、必ず愛犬が取ることのできない場所に保管すること並びに床に落としたりしてしまっていないかなど気をつけてあげてくださいね。


犬がコーヒーを飲んでしまった場合の対処法

元気のない犬

では、万が一愛犬がコーヒーを飲んで(舐めて)しまった時は、どのように対応をすればよいでしょうか?

◆状況を把握する

まずは、飼い主さん自身がパニックにならずに落ち着く必要があります。一度深呼吸などを行って冷静になりましょう。そして、愛犬が飲んでしまってからどれくらいの時間が経過しているか、コーヒーの種類や量などをわかる範囲で確認します。

特にコーヒーの量や種類によって摂取したカフェインの量は大きく異なってくるため、可能ならば使用したコーヒー豆や粉のパッケージ、缶などは廃棄せずに保管しておくことをおすすめします。

◆症状が出る、または多量に摂取していれば、すぐに動物病院へ

もし、すでに愛犬に何かしらの異常が見られていれば状況を把握すると共に早急に動物病院を受診する必要があります。獣医師の指示がない限りは、無理に自宅で吐かせようとする、水を飲ませるなどの処置は行わないようにしましょう。かえって症状を悪化させてしまう危険性があります。

飲んでしまってから経過した時間や量などにもよりますが、動物病院では催吐剤などを使って吐かせることによって体に吸収されるカフェインの量を減らす処置や大量の点滴によって体の水分を増やして利尿作用を促進させることでカフェインの排泄を促す処置などが行われます。また、カフェインによって全身の臓器にどこまで異常が起きているかを確認するための血液検査なども並行して実施されるでしょう。
残念ながら現時点ではカフェインの中毒作用を根本的に中和する治療法がないため、主に体内のカフェイン量を減らす処置とカフェインによって引き起こされてしまう様々な症状に対する対症療法が中心となります。

愛犬に特に異常が見られておらず、飲んでしまった量もごく少量ならば今すぐに通院するのではなく、しばらくは様子を見てみても良いでしょう。ただ、持病や年齢などで心配ならば迷わずにかかりつけの動物病院に連絡し、指示を仰いでおくことやいつでも通院できるように準備をしておくことなどをおすすめします。


まとめ

私たち人間にとっては嗜好品として楽しむことのできるコーヒーですが、犬にとっては少量でも「カフェイン中毒」の原因となるため、与えてはいけません。また、コーヒー以外にも緑茶や紅茶、エナジードリンク、チョコレートなどの「カフェイン」を含むものは全て犬に与えてはいけないということもよく覚えておくようにしましょう。
また、「カフェインレス」や「デカフェ」といった表記があってもカフェインが全く含まれていないわけではないため、こちらも要注意です。
愛犬がもしコーヒーを飲んでしまい、「カフェイン中毒」になってしまった場合、自宅でできることは無いためすぐに動物病院を受診することをおすすめします。



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