【獣医師執筆】愛犬・愛猫の目の周りの被毛が赤茶色に…?涙やけの知られざる原因や治療法を学ぼう

2022.10.01

【獣医師執筆】愛犬・愛猫の目の周りの被毛が赤茶色に…?涙やけの知られざる原因や治療法を学ぼう

犬・猫の病気や健康についてコジマの獣医師が教えてくれる「教えて獣医さん!」今回は多くのワンちゃん・ネコちゃんの飼い主さんが悩まれている「涙やけの知られざる原因や対処法」についてです。意外と知られていない涙やけのメカニズムやケア方法を知っていきましょう。

【掲載:2022.10.1  更新:2022.10.1】

涙やけとは何?どんな症状?

診察の際に「うちのワンちゃん・ネコちゃんの涙やけが気になります」と相談を受けることがあります。涙やけは愛犬・愛猫の毛色によっては目立つため、心配される飼い主さんも多いと思います。今回は涙やけについてお話ししていきます。

アセット 1

「涙やけ」とは、目の周りにある被毛が涙によって赤茶色く変色してしまうことをいいます。涙やけそのものは病気ではありませんが、病気が原因になっていることもあります。
目の表面は涙で覆われ潤っています。涙で潤うことで酸素や栄養を目の細胞に供給し、外界の刺激から守るなどの役割があります。
涙は涙腺から分泌され、涙点から吸い込まれると、涙小管(るいしょうかん)→涙嚢(るいのう)(涙を一時的に溜める袋)→鼻涙管(びるいかん)→鼻腔(びこう)に流れていきます。

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涙やけが赤茶色に変色してしまう理由

涙があふれ目の周りの毛が濡れると、涙に含まれる成分によって被毛の色が赤茶色に変色していきます。この変色の原因は「ポルフィリン」といわれています。ポルフィリンはカラダが鉄分を分解する時に生成され、涙や唾液、オシッコなどに含まれて排泄されます。涙や唾液に含まれるポルフィリンが白や薄い色の被毛に長時間付着すると赤茶色に変色します。そのため、目の周りや口元の被毛が特に変色しやすいです。手足をなめるクセがある子の足先や指先が赤茶色になっているのも唾液に含まれるポルフィリンが原因です。

涙やけの原因は?

涙の量が多く分泌したり、涙の経路に異常が起きると、涙が目からあふれ出る症状が起こります。これを「流涙症(りゅうるいしょう)」といいます。涙やけの原因となる流涙症は、主に3つの原因に分類されます。

♦涙の排出経路の異常(閉塞性流涙症(へいそくせいりゅうるいしょう))

涙が目から鼻に流れる経路のどこかに異常がある場合、「鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく」」と「涙嚢炎(るいのうえん)」が起こります。鼻涙管閉塞は、構造の異常や涙嚢炎による粘液の閉塞などにより、鼻涙管が詰まってしまう状態のことをいいます。
涙嚢炎は、涙嚢や鼻涙管に炎症が起こる病気で、原因は異物や細菌感染などが考えられます。
その他の病気として、先天的に涙点が閉塞している「涙点閉鎖症」、涙点が狭くなっている「小涙点症」などがあります。

<治療法>
涙点から細い管を入れて洗浄する「鼻涙管洗浄」を行います。細菌感染がある場合には抗生剤の点眼や内服を併用します。鼻涙管が成長とともに太くなり1歳以降で涙やけが自然に改善される場合もあります。

♦涙の産生量の増加(分泌性流涙症)

目の表面にある角膜への刺激や目の痛みによって涙の量が多くなることが原因です。目への刺激となる原因はさまざまで、まぶたにある脂を分泌する腺(マイボーム腺)からまつ毛が生えて目に当たる「睫毛重生(しょうもうじゅうせい)」、まつ毛の向きが異常で目に当たる「睫毛乱生(しょうもうらんしょう)」、まぶたの裏にある結膜からまつ毛が生える「異所性睫毛(いしょせいしょうもう)」、目頭の下まぶたが内側に巻き込まれる「眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)」があります。
また、角膜に傷がつくことで起きる「角膜潰瘍(かくまくかいよう)」や、目の炎症などにより起こる「ブドウ膜炎」や「緑内障」などは痛みによって涙の量が多くなります。
この他にも花粉やハウスダスト、食べ物などによる「アレルギー」が目に痒みや炎症を起こすと、結膜炎や角膜潰瘍が起こり、流涙症につながることがあります。

<治療法>
まつ毛の異常:角膜に接するまつ毛を抜く、まつ毛の毛根を外科的に除去するなどの処置を行います。
眼瞼内反症:内眼角形成術などの手術によって、内反を矯正します。
アレルギー:食物アレルギーであれば、食事を変えることで改善することがあります。花粉やハウスダストなど環境的なものの場合、適切な治療をすることで改善することがあります。

♦目の表面にある涙の保持機能が低下

まぶたには、目の表面を涙で潤すために必要な脂を出す腺「マイボーム腺」があります。加齢やホルモンバランスの変化、細菌感染などによってマイボーム腺の機能が低下すると、涙が保持されずに目の表面から流れ落ちてしまいます。これを「マイボーム腺機能不全」といいます。

<治療法>
<治療法>
マイボーム腺にある脂は、まぶたを蒸しタオルで温めたり、マッサージをして適度な刺激を与えることで脂が溶けて出やすくなり、涙の保持機能が改善することがあります。また、炎症がある場合は、抗生剤の投与をするなどの治療を行います。

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おうちでできるケア

一度着色してしまった被毛は色が落ちることはありません。気になる場合にはトリミングサロンなどでカットする必要がありますが、涙をこまめに拭くことによって、被毛の変色を防ぐことはできます。被毛の色が白かったり薄い子は特に涙やけが目立ちやすいので、こまめに目の周りの涙を優しく拭き取ってあげましょう。

アセット 3

涙やけによる赤茶色の変色は白い被毛の犬猫種が目立ちやすいため、そのような犬猫種を飼われている飼い主さんから悩みを聞くことが多いです。しかし、他にも目が比較的大きく出っ張っている子や短頭種、アレルギー体質の子など、多くの犬猫種が涙やけを引き起こしている可能性があります。目頭の被毛が常に濡れている、目をこするしぐさをよくするといった場合には動物病院にご相談ください。



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コジマ動物病院 Dr.小椋

コジマ動物病院 Dr.小椋

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。 https://pets-kojima.com/hospital/


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