【獣医師監修】犬の角膜炎はどんな病気?原因や予防・治療法は?

2022.06.25

【獣医師監修】犬の角膜炎はどんな病気?原因や予防・治療法は?

犬が目の病気や疾患を発症することは、珍しいことではありません。飼い主さんとしては万が一に備えて、愛犬がかかり得る可能性のある病気への知識をもっておく必要がありますね。今回は犬の目の病気の一つである、角膜炎について解説していきましょう。何が原因で発症するのか、その症状はどんなものなのか、また治療法や予防法があるのかなど、詳しく紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。

犬の角膜炎ってどんな病気?

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眼球を正面から見ると、いわゆる「黒目」と呼ばれる部分がありますよね。この黒目の部分の一番外側にある無色透明な膜を角膜といいます。
何らかの理由から、この角膜が炎症を起こした状態を角膜炎というのです。
角膜表面(角膜上皮)で起きている非潰瘍性角膜炎と、角膜内部(角膜実質)の欠損が起きている潰瘍性角膜炎があるのですが、一般的には、非潰瘍性角膜炎を角膜炎、潰瘍性角膜炎を角膜潰瘍と呼ぶそうです。


角膜炎の症状

角膜炎は角膜に刺激を受けることによって起こるため、痛みを感じて愛犬が目をしばしばさせたり、涙・目やになどで目の周りが汚れるなどといった症状が見受けられます。
角膜炎には慢性的なものも多く、症状がある場合は目を眩しそうに閉じたりする羞明や、目を気にして前足で擦ったり、床に擦りつけるなどといった行動もみられるでしょう。
涙が増えるケースや、反対に乾性角結膜炎(ドライアイ)によって涙が減り、脂・膿のかたまりが目の周囲をベットリ汚してしまう場合もあります。
軽度の場合はほぼ無症状ですが、白目(結膜)が赤く充血したり、黒ずんでモヤがかかったような角膜の色素沈着がみられることもあるでしょう。

◆重度の場合の症状

軽度の場合はほぼ無症状ですが、重症だと透明な角膜が白く濁って、症状が長期に及ぶと正常な角膜には存在しない血管が生じる血管新生が起こったりします。
角膜表面の上皮だけでなく、角膜の傷が深くて角膜実質に傷が及んだ角膜潰瘍の場合は、完治までに長期の治療期間がかかる場合が多い上に、痛みも強くなるそうです。


角膜炎の原因

角膜炎の主な原因としては、ドライアイや細菌・ウイルスによる感染、物理的な刺激によるもの、免疫の異常などが挙げられ、外傷性と非外傷性に分けられます。

◆外傷性

外傷性の原因とは、逆さまつ毛や、まぶたの内反、皮膚のしわの接触、目を擦る、シャンプーなどの薬品が目に入るなど、異物などによる物理的な刺激によって角膜炎を起こすことを指します。病気というよりは、怪我に近い状態ともいえますね。
特にシーズーやパグなど短頭種の犬は、他の犬種に比べて少し眼が前に出ているような特徴をもっています。鼻が短く眼が出ているために、草むらなどで草・木の枝などが目に当たってしまう場合があるため、お出掛けの際には注意が必要です。

◆非外傷性

細菌・ウイルスによる感染、アレルギー、代謝障害・免疫異常などが、非外傷性の原因として挙げられます。
中でも免疫の異常が原因の場合は、犬種と目の症状が特徴的であり、その他の角膜炎の治療法とも違いが出てくるでしょう。特に下記犬種において、何度も角膜炎が疑われる症状を繰り返す場合には、動物病院を受診して獣医師にしっかりと診察してもらう必要があります。

●慢性表在性角膜炎(角膜に肉芽が形成される)
ジャーマンシェパードドッグ・グレーハウンド
●点状表層性角膜炎(点状に角膜が損傷する)
シェットランド・シープドッグ、ミニチュアダックスフンド

◆チェリーアイと併発する場合もある!

目の病気として知名度が高いものに、緑内障や白内障、網膜剥離などがありますよね。これらは人間が発症する病気としても有名ですが、犬にもみられる目の病気です。そして更に、チェリーアイと呼ばれる犬の目の病気があるのですがご存知でしょうか。
チェリーアイとは、目頭にある瞬膜(第三眼瞼)が飛び出してしまう病気で、正式には「第三眼瞼腺脱出」といいます。
第三眼瞼は本来まぶたの内側にあるもので、眼球の保護や涙を分泌する大切な役割をもっている部分なのですが、発症すると角膜炎のように、目を痛がる、涙がでる、目を気にして前足などで擦るなどの症状がみられるようになります。
ただしチェリーアイは、片側もしくは両側の目頭付近に赤い物が飛び出してきます。これがさくらんぼのように見えることからチェリーアイと呼ばれているのですが、ここが角膜炎との大きな違いです。
この腫れた第三眼瞼の刺激によって角膜や結膜に炎症を起こすこともあるため、角膜炎を併発するケースがあるというわけですね。
治療時には違和感から目を擦って眼球を傷付ける可能性があるので、エリザベスカラーを装着することとなります。
またチェリーアイの原因は、先天的に第三眼瞼の付着が弱いことが原因である場合が多く、ビーグル、アメリカン・コッカー・スパニエル、ペキニーズ、ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグ、チワワなどが、好発犬種だといわれているようです。
ちなみにチェリーアイと似た病気には、第三眼瞼の腫瘍(扁平上皮癌)、リンパ腫(線維肉腫)、第三眼瞼腺の腫瘍(腺腫・腺癌)などがあります。

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どんな犬種がかかりやすい?

犬の角膜炎は全ての犬種に発症する可能性がある病気ですが、前述したように好発犬種といわれる種類の犬がいるのです。
愛犬が以下の犬種に該当する場合は、特に注意が必要です。

◎外傷性角膜炎を起こしやすい犬種
シー・ズー、パグ、ペキニーズ、フレンチ・ブルドッグなどの短頭種。

◎免疫介在性の角膜炎を起こしやすい犬種
ミニチュア・ダックスフンド、シェットランド・シープドッグ、ジャーマン・シェパード・ドッグ、イタリアン・グレーハウンドなど。

ちなみにペットとして人気の高いトイ・プードルは、涙やけを起こしやすい犬種としてよく挙げられるのですが、これが流涙症であれば、角膜炎や結膜炎などの目の病気を発症している可能性が考えられます。

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角膜炎の治療法・予防方法

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角膜炎は犬がかかりやすい病気ともいえますが、放置すると視力の低下や、時には失明を招く可能性のある恐ろしい病気でもあります。
早期発見ができるように、普段から愛犬の目を観察する習慣をつけておくとよいでしょう。
角膜炎が慢性化すると角膜が濁り、黒目部分がぼやけて見える、黒ずんで見えるといった状態になる場合が多いようです。正面から愛犬の目に光を当ててみて、目の奥の構造が綺麗に見えるかを確認することで、悪化する前に角膜の異常に気付ける可能性があります。
最低でも月1回などのペースで、定期的に愛犬の目を注意深く確認することをおすすめします。
異常を感じた場合は、早めに獣医師に相談し、検査してもらいましょう。必要であれば、しっかり通院することが重要です。
それでは、角膜炎を発症した場合の治療法と、予防法について紹介していきましょう。

◆角膜炎の治療法

基本的にはまず角膜炎を起こしている原因に対しての治療を行いますが、一般的には、眼を綺麗に洗眼してから、抗生剤・消炎剤などの目薬による治療が施されます。
感染に対する抗菌点眼薬や、ステロイドまたは非ステロイドの消炎剤点眼薬、眼の保護のための人口涙液点眼薬などが使用されるでしょう。免疫介在性の角膜炎であれば、ステロイド点眼薬に対しての反応が非常に良いそうです。
また原因によっては内服・注射等の治療も併用して行う場合があり、重症化している場合は自己血液中の液体成分(血清)を抽出し、血清点眼を作成して角膜の再生を促したり、犬用コンタクトレンズで目を保護する治療法が行われます。手術で結膜と角膜を一時的に覆って、角膜の保護・再生を促す方法もあるそうです。

ちなみに角膜炎の検査では、角膜炎の原因になるものがないか肉眼で観察する「視診」、細い光を目に当てて異常がないか調べる「細隙灯検査(スリットランプ)」、角膜の傷の有無・深さを確認する「フルオレセイン染色試験」、涙の量が正常かを測定する「シルマーティア試験」などが行われます。
また他の疾患が疑われる場合は、更なる眼科検査・血液検査なども行われるでしょう。神経異常が疑われる場合には、目周りの反射が正常か調べたり、CT検査・MRI検査を行うこともあります。

治療費については病院によって違いがありますので、事前に聞いてみるとよいでしょう。ペット保険に入っている方は、その点についても併せて確認してみてくださいね。

◆角膜炎の予防法

日常生活において、愛犬の目に刺激となる物を避けることが予防法の一つとなります。例えば、草・小枝があるような場所を散歩する際に気を付けたり、シャンプーをする際にはシャンプー剤が目に入らないように注意するなど、小さな配慮をすることが角膜炎を予防する大きな一歩となります。
また、目や鼻周りの被毛の長さに注意することも重要ですね。涙やけなどが多い場合は皮膚疾患にも繋がりますので、常に清潔にして衛生面にも気を付けましょう。
逆さまつ毛など、角膜炎の原因の元を治療することも、角膜炎の予防に繋がります。
角膜炎が起こる前に慢性刺激となる物を取り除くことでも、予防できるケースがあるそうですよ。
愛犬が好発犬種であれば特に、普段から目を観察するよう習慣づけましょう。定期的に確認することで、悪化が防げたり、病気の早期発見に繋がる可能性が高まります。

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まとめ

犬の病気辞典を開いたり、ネット上で犬の目の病気を検索すると、沢山の病名が出てくると思います。皮膚疾患もそうですが、犬は目の病気にもかかりやすいのです。
症状が似ていても、想像していたものとは別の病気である場合も多々あるでしょう。
少しでも異常を感じたら飼い主さんが自己診断するのではなく、早めに獣医師に相談するようにしてください。
そして角膜炎を甘くみるのではなく、日常的に予防法に努めて、愛犬の目の健康を守れるように尽力していきましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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