介助犬とは
介助犬とは、一言でいえば「体の不自由な方の日常生活をサポートする犬」のこと。そのための訓練がされた犬です。
以下さらに詳しく見ていきましょう。
◆介助犬の役割
介助犬は体の不自由な方の日常生活をサポートします。
主に日常にある「8つ」の動作を行います。
1. 落とした物を拾う
2. 指示した物を持ってくる
3. 緊急連絡手段の確保
4. ドアの開閉
5. 衣服の脱衣補助
6. 車いすの牽引
7. 起立・歩行介助
8. スイッチ操作
少し離れたところにある携帯電話を持ってくるように指示したり、冷蔵庫の中の物を持ってくるように指示したりすることもできます。
不測の事態が起きてしまったときに、「人を呼びに行く」「緊急ボタンを押す」などの緊急対応までします。介助犬は非常に心強い存在といえるでしょう。
◆介助犬の訓練
介助犬の訓練は、1歳から2歳までの1年間に行います。
ステップ① 基礎訓練 座れ・伏せ・待てなど英語による指示のトレーニング
「sit」「down」「stay」…
ステップ② 介助動作訓練:指示語を使ったトレーニング
指示語は、動詞は英語・名詞は日本語で構成されています。
(例)
go to〇〇→〇〇へ行って
take 〇〇→〇〇を取って
bring 〇〇→〇〇を持ってきて
give〇〇→〇〇を渡して
障害の程度は介助犬のユーザーによって多岐にわたります。そのため基本の介助動作訓練の他に、ユーザーの必要性に応じた訓練を行います。
ステップ③ ユーザーとの合同訓練
合同訓練は、訓練センターやユーザーの自宅で約40日間行います。ユーザーの生活環境に合わせたトレーニング。
合同訓練では、指示語の出し方のトレーニングだけでなく、介助犬の飼育管理やユーザーと介助犬との信頼関係づくりも行われます。さらに、公共の場所での訓練も行われます。
また、合同訓練はユーザー(希望者)とトレーナー、医療関係者がチームとなって進められます。
介助犬と正式に暮らすことになった後のアフターフォローもあるので、ユーザーには安心。
ステップ④認定審査会
合同訓練で定められたカリキュラムを終了したあとには、身体障害者補助犬認定審査会があります。この審査会に合格することで、「介助犬」として認められます。
介助犬になれる犬種
ラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリバー、ラブラゴールデンミックス、スタンダードプードルはどれも「大型犬」に分類される犬種です。
介助犬には大型犬が適しています。
●物をくわえ上げる必要がある(小型犬では無理)
●椅子を押したり引いたりすることも必要(小型犬では無理)
など、介助犬の作業には一定の体の大きさが必要となるからです。
また人間と作業するのが大好きで、訓練しやすいことも介助犬として採用されている理由です。
介助犬を迎える方法
介助犬を迎える条件:身体障害者手帳をお持ちの方で、基本的には18歳~65歳までの方。
その中で自立と社会参加、社会復帰を目的とされる方です。
介助犬を迎える費用:無償貸与されます。
(介助犬を貸与されて以降の犬の食費や獣医師にかかる医療費は、ユーザーの負担となります)
介助犬の他にも補助犬がいる?
介助犬の他にも、体の不自由な方の生活をサポートする犬はいます。
それが、「盲導犬」と「聴導犬」。
・盲導犬
盲導犬は、目の見えない人または見えにくい人が安全に歩けるようにお手伝いをする犬です。
盲導犬は障害物を避ける、段差や角を教えるなどして目にハンディキャップがある人をサポート。
盲導犬の歴史は古く1916年8月ドイツのオルデンブルクで世界初の盲導犬訓練学校が設立。
ときは第一次世界大戦のころ。戦争で失明した人を手引する役割として、軍用犬の育成を行っていた人物の呼びかけによりはじまりました。
日本では1939年、失明した軍人のためにドイツから盲導犬を迎え入れ訓練がはじまりました。
盲導犬は必ず「ハーネス」をしています。盲導犬がつけている白い胴輪がハーネスです。ハーネスを通して盲導犬の動きがユーザーに伝わる仕組み。ハーネスの傾きによりユーザーは自分がいる状況を把握でき、目が見えなくても安全に歩行できます。
盲導犬であることが誰でもわかるように表示の義務があります。またユーザーは「盲導犬使用者証」や「身体障害者補助犬管理手帳」を携帯しています。
・聴導犬
聴導犬は、耳が聞こえない人または耳が聞こえにくい人をお手伝いする犬です。
体を触るなどして音の情報をユーザーに伝えます。
例えば、自転車のベルの音・目覚まし時計の音・メールの着信音・ドアのチャイム・赤ちゃんの鳴き声・FAXの呼出音など。生活に必要な音を覚えることができます。やかんの笛やキッチンタイマーの音まで対応します。
聴導犬の歴史は1975年のアメリカから。ある女性のラジオ番組への投稿をきっかけとします。
そこから「ヒアリングドッグ」が誕生。
日本では1981年、聴導犬委員会が発足。その後は各訓練所にて独自の訓練や認定がなされてきましたが、2002年10月「身体障害者補助犬法」が施行。
聴導犬は試験に合格した証であるオレンジ色の「聴導犬」と書かれたケープを着用しています。
聴覚障害が見た目ではわかりにくいものですが、オレンジ色のケープが目印となりまわりに知らせる役割も果たしています。
「盲導犬」「聴導犬」の歴史と比べると「介助犬」の歴史は浅いです。
補助犬に出会ったら
「介助犬」「盲導犬」「聴導犬」、これら体の不自由な方をサポートする犬の総称を「補助犬」といいます。
生活する中で、補助犬に出会うこともあると思います。そのようなときには、どうすることが適切なのか。ここでご紹介します。
◆補助犬マークが目印
「補助犬マーク(ほじょ犬マーク)」とは、身体障害者補助犬法の啓発のためのマークです。
体が不自由な方のために働く「身体障害者補助犬」への理解を深めてもらうために、補助犬マークが誕生しました。
補助犬はペットではありません。特別な訓練を受けています。衛生面も管理されています。そのために、公共施設や交通機関、飲食店などに同伴が可能。
ですが他のお客様への配慮を理由に、補助犬との同伴を断ることがまだ多く見られるのが現状です。
厚生労働省は、施設を利用するすべての方に補助犬の同伴受け入れについて理解してもらう目的で「補助犬マーク(ほじょ犬マーク)」を作成し配布しています。
↓が「ほじょ犬マーク」です。
◆触ってはいけない
介助犬などの「補助犬」を見かけても決して触ってはいけません。街で見かける「補助犬」はお仕事中です。
補助犬を触る行為は、補助犬の集中の妨げとなってしまいますので禁止です。
補助犬がお仕事に集中できるようにするために、集中力をそらしてしまう行為や気を引く行為はすべて禁止。
◎触らない、撫でない
◎声をかけたり、呼んだりしない
◎おやつをあげない
◎愛犬を近づけない
◎ハーネスを引っ張らない
愛らしい姿についついしたくなってしまう気持ちはわかりますが、「補助犬」はあくまでもお仕事中。
体が不自由な方のサポートをするために、懸命に働いている最中です。お仕事の邪魔につながってしまう行為は控えましょう。
飲食店などのお店に入れる?
「介助犬」「盲導犬」「聴導犬」などの「補助犬」は飲食店などのお店に入れます。
平成15年に身体障害者補助犬法が施行され、レストランや公共施設での補助犬同伴の受け入れが義務付けられています。
つまり、介助犬をはじめとする補助犬の入店を断ることは違法行為。
ですが、お店や施設側がこのことを知らないことが多く、利用者側も理解が不自由なことが多いのが現状です。前述の「補助犬マーク(ほじょ犬)」は、身体障害者補助犬法の周知と補助犬への理解を促進するために活用されています。
補助犬は救急車に同乗することもできます
実は介助犬をはじめとする補助犬は、救急車にも同乗することができます。
しかし、2019年には以下の問題も起きました。
『東京消防庁は26日、心肺停止状態のため救急車で搬送される90代女性に、視覚障害のある家族が付き添おうとした際、「盲導犬は同乗できない」と誤った説明をし、医療機関への搬送が約5分遅れたと発表した。
現場の救急隊員に指示した総合指令室員の認識不足が原因。搬送先の医師は遅れによる容体への影響はないとみているという。救急隊長や指令室幹部が家族に謝罪した。』
《日本経済新聞 2019月4月26日より引用》
医療の現場ですらこの状態ですので、一般人への周知と理解はまだまだこれからのようです。
介助犬を自分も持ちたいと思う方は
介助犬を自分も持ちたいという方がいらっしゃいましたら、相談されることをおすすめします。
●自分が介助犬を持ってもいいのだろうか?
●自分は介助犬の対象になるのだろうか?
●介助犬の世話はどうすればいいのか?
など、いろいろと悩んでしまって一歩踏み出せない人が多いらしいのが現状。
日本介助犬協会では、「お問い合せフォーム」「資料請求」「電話」「メール」など、様々な形式を用意していますので、諦める前に相談してみてください。
日本介助犬協会▶▶https://s-dog.jp/about-servicedogs/hope
介助犬の現状と問題点
盲導犬を必要とする人数は約7,800人。介助犬・聴導犬はそれぞれ10,000人といわれています。
ですが、2023年3月現在で全国の盲導犬の数は836頭とまかないきれていません。
さらに介助犬となるとその数は57頭。盲導犬の歴史とくらべると介助犬の歴史はまだ30年と浅いのが原因の一つです。
犬の訓練士が足りずに介助犬の育成が追いつかない。育成の費用は寄附に頼っているが、寄附が集まりにくい。など様々な問題点があります。
介助犬育成の支援にご協力お願いします。
寄附金は優遇税制措置の対象となります。
また寄附はamazon payをつかってかんたんに手間なくすることも可能。(その場合は、寄附金控除対象外です)
まとめ
今回は、「介助犬」について解説しました。
介助犬は、体が不自由な方の日常生活をサポートするように訓練された犬です。
盲導犬が目の不自由な方を助け、聴導犬の耳が不自由な方を助けるのと同じように、介助犬も生活を補助する「補助犬」の一種です。
介助犬が具体的にサポートするものは、「落ちた物を拾う」「指示した物を取ってくる」「ドアの開閉」など。体の不自由さのためにやりにくい作業を手助けします。
介助犬は、障害のある方の自立と社会参加、社会復帰を目的としていますので、対象者は問い合わせてみると良いでしょう。
街で介助犬を見かけたとき、介助犬はお仕事中。安易に近づくのはやめましょう。
またお店や公共施設への介助犬との同伴は法律により許可されています。
介助犬へのご理解とご協力をお願いします。
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