1.犬の舌の色と状態について
1-1.ピンク色の舌
1-2.赤色の舌
1-3.紫色の舌
1-4.白い舌
1-5.黄色の舌
1-6.黒い舌
犬の舌の色と状態について
人間は体調が悪い時は自分で病院に行き、薬を飲む事ができますよね。
しかし、犬は自分の体調が悪くてもそれを飼い主に伝える事は出来ません。
愛犬の調子が“明らかにおかしい”と気づいた時には病気がかなり進行している可能性も…
病気は早期発見早期治療がカギとなりますので、飼い主さんはなるべく早い段階で愛犬の体調変化に気づく必要があります。
普段から日々の健康チェックを行えば、かなり早い段階で異変に気付けるはずです。
毎日の愛犬とのスキンシップの中で、いつもと違う異変に気付いてあげるだけで良いのです。
健康チェックの項目は様々ありますが、今回は「舌の色」に注目してお話していきたいと思います。
舌の色??と思われる方もいるかと思いますが、「舌の色は病気のシグナル」です。
舌の色と病気の関係性を知ることは、病気の早期発見に繋がります。
異常があればすぐに気づくことが出来るよう、観察眼を身につけましょう!!
◆ピンク色の舌
犬の舌の基本的な色で、健康な状態の色と言えます。
健康な状態の舌の色は濃いピンク色から少し赤みを帯びた色をしています。
個体差があるので、愛犬の普段の舌の色を覚えておきましょう!
◆赤い舌
赤みを帯びた色も基本的には健康な状態と言えます。
ただし、いつもより赤い舌は体温が上がっている可能性があります。
体を触ってみていつもより熱い時や口を開けて呼吸(パンティング)をしている時は要注意です。
空調を調節し、保冷剤で体を冷やしてあげましょう。それでも体調が戻ってこない場合はすぐに獣医師に相談しましょう。
近年猛暑が続く中、犬も熱中症になり緊急搬送される数は増えています。
◆紫色の舌
犬の舌が紫色になっている時は、注意が必要です。
チアノーゼという、何らかの原因で血液中の酸素が不足していることで、舌の色が紫色になります
主なチアノーゼの原因は気道の閉塞や肺疾患など呼吸器疾患のものが多いです。
犬座姿勢(お座りの状態)となり、首を伸ばした状態から動けなくなってしまい、重症の場合は横たわってしまいます。
呼吸の状態も異常です。
口を開けての呼吸(開口呼吸)や、体全体で呼吸する(努力性呼吸)、呼吸する時にヒューヒュー、ガーガーなどと変な音がする場合もあります。
この様な状態が確認されたら、すぐに獣医師に連絡し動物病院に連れて行きましょう!
◆白い舌
犬の舌が白っぽくなっている時は、貧血やショック、低血圧の状態です。
先程紹介した紫色の中でも、薄い色の状態を人によっては『白い舌』と捉えられる場合もあります。
このような状態の場合は、舌の他にも歯茎や瞼の内側(眼瞼結膜)、陰部などが白くなることがあります。(=可視粘膜蒼白といいます。)
可視粘膜蒼白が見られる時も低酸素状態です。しかしチアノーゼの時とは違い、その原因は循環器障害によるものが多いです。
可視粘膜蒼白が確認されたら、早急に獣医師に相談し、血液検査等で貧血の有無を確認しましょう!
◆黄色の舌
黄疸の時に見られる色です。
黄疸とは血液中にビリルビン(胆汁色素)がたくさん含まれている状態のことです。
ビリルビンは黄色の色素である為、なんらかの原因で高ビリルビン血症になると、もともとピンク色の可視粘膜が黄色く変色します。
舌だけでなく、歯茎や目の結膜、陰部や外耳、皮膚の色も黄色っぽくなるのでチェックしましょう。
黄疸の原因としては、肝疾患や胆道閉塞、溶血をおこすような疾患が考えられます。
舌の色が黄色いなと思ったら、早急に獣医師に相談しましょう!
◆黒い舌
舌に黒っぽいシミの様な物が見られる場合があります。
これは舌斑(ぜっぱん)といい、ホクロや蒙古斑のようなものなので特に問題ありません。
これらは遺伝的な物が多く、日本犬(特に北海道犬や甲斐犬)に多く見られます。
チャウチャウやチャイニーズシャーペイという犬種は遺伝上もともと舌が青黒っぽい色をしています。異常ではありません。
黒い部分が盛り上がっていたり、しこりになっている場合は腫瘍の可能性がありますので要注意です!
犬の口腔内腫瘍はメラノーマという悪性腫瘍が多く、高確率で肺転移する怖い病気です。
発見した際はすぐに獣医師に相談しましょう!
舌の色と病気の関係性
上記では舌の色の特徴とその疑われる病気についてお話しました。
「舌の色は病気のシグナル」だと言うことが分かっていただけたでしょうか!?
それではもう少し詳しく舌の色とその病気の関係性についてお話します。
◆貧血の可能性
貧血とは血液中の赤血球数が減少することです。
そして、貧血になると舌やその他の可視粘膜(歯茎、瞼の内側(眼瞼結膜)、陰部など)が蒼白します。
「なぜ白く見えるのか?」と言うと、血液中の赤血球が関係しています。
赤血球に含まれるヘモグロビン(血色素たんぱく質)は鉄でできていて、赤色の色素を持っています。このヘモグロビンを含む赤血球が血管内を流れることによって、血液は赤く見えています。
要するに貧血になると、赤色の色素を持った赤血球が減ってしまうので、血管を流れる血液の色が白っぽく見えてしまします。これが舌やその他の粘膜が白く見える原因です。
赤血球のヘモグロビンは酸素と結合して体中に酸素を運びます。
酸素と結合している状態を「酸素化ヘモグロビン」といい鮮紅色をしています。
また、酸素を放出した状態を「還元ヘモグロビン」といい暗赤色をしています。
紫の舌の所でお話したチアノーゼは、何らかの原因で血液中の酸素が不足してしまい、還元ヘモグロビンの量が増えてしまうので、舌が紫色に見えます。
貧血とチアノーゼはどちらも体が酸欠状態なのですが、出てくる症状が全く違います。
症状としては、可視粘膜蒼白・元気消失・食欲低下・ふらつき・黄疸(溶血性貧血)・ビリルビン尿・血尿・血便・黒色タール便・目視できる出血などがあります。
主な原因を3つご紹介します。
①赤血球の産生量低下による貧血
鉄欠乏性貧血・腎性貧血(エリスロポエチンの低下)・リンパ腫や白血病による骨髄での赤血球産生の低下・不適切な手作り食や消化器疾患などによる栄養不足など
②赤血球の破壊による貧血
ネギ中毒や薬物中毒、感染症(レプトスピラ症、フィラリア症など)、免疫介在性溶血性貧血(アレルギーが関与)、輸血の副作用など
③出血による貧血
手術やケガによつ多量の出血、消化管内寄生虫や腫瘍・潰瘍による出血、ノミ・ダニの大量寄生など
貧血の症状は本当に様々でその原因となる病気も多いです。
原因を特定するには、様々な検査やその他の症状などを総合的に評価する必要があります。
愛犬の舌の色が白いなと思ったら、他にも今までと違う所はなかったかよく思い出し、獣医師に相談しましょう。
◆甲状腺異常の場合
甲状腺ホルモンの働きは、新陳代謝やエネルギー産生、心拍出量や心拍数上昇、呼吸数増加、生体の成長や発育促進作用、タンパク質合成など、その作用は多岐にわたり、ほとんどの組織細胞に働きかけます。
その為、「アクセル全開ホルモン」とも言われています。
つまり、甲状腺ホルモンが過剰に分泌さると、全身の代謝が促進され、食べているのに痩せてきたり、興奮しやすい状態になります。
その反面、甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、全身の代謝は悪くなり心も体も機能が落ちしていきます。重症化すると昏睡状態に陥ることも…
犬で多くみられるのは甲状腺機能低下症の方です。
中齢~高齢の犬で多くみられ、好発犬種はアイリッシュセッター、ゴールデンレトリバー、アラスカンマラミュートなどの大型犬種に多いとされています。
しかし、トイプードルや柴、ミニチュアシュナウザーなどの小型犬種にも発症例がありますので、小型の犬種も注意が必要です。
症状としては、元気・食欲の低下、低体温、心拍数低下、貧血、悲観的顔貌(粘膜水腫により上瞼や唇が厚くなり悲しげな表情になること)、左右対称の脱毛(痒みを伴わない)、尾の脱毛(ラットテール)、皮膚の苔癬化や脂漏などがあります。
甲状腺の異常は自己免疫疾患によるリンパ球性甲状腺炎や特発性(原因不明)の甲状腺委縮が原因で起こります。
稀に甲状腺自体は正常だが、脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモンの分泌が不足していることで発症する場合もあります。
甲状腺機能低下症では「貧血」の症状も見られます。
舌や口腔内などの可視粘膜が白くなっていたり、元気がない、あまり食べないのに太ってきたなどの症状が見られる場合は早めに獣医師に相談しましょう。甲状腺機能低下症の病気が隠れているかもしれません。
◆呼吸器疾患の場合
症状としては、咳、アヒルのような「ガーガー」という呼吸音、チアノーゼ、頻呼吸、呼吸困難、鼻水、くしゃみ、食欲低下、元気消失、発熱など…
原因は?
気管虚脱、肺水腫、犬アデノウイルス感染症(犬伝染性喉頭気管支炎)、肺炎、短頭種気道症候群など
呼吸器系は空気の通り道で、上気道(鼻腔、咽頭、喉頭)と下気道(気管、気管支、肺)に分類されます。
上気道に異常がある場合は鼻水、くしゃみ、いびきなどの症状が多いですが、下気道に症状が進むにつれ咳や呼吸困難など、症状が酷くなっていきます。
舌の色が紫になるチアノーゼが見られる場合はひどい酸欠状態です。至急獣医師に相談しましょう。
舌の観察と症状の確認方法
舌の色の特徴や病気との関係性をお話してきましたが、日々の健康チェックで舌の色を観察する重要性が分かっていただけたかと思います。
舌の観察をする際は、色・形・できものがないかを確認しましょう。
また、同時に歯茎の状態(色・形・できもの)や歯(形・歯石の有無・過剰歯)、臭いなど舌以外の口腔内の状態も一緒に観察できれば、病気の早期発見に繋がります。
では、「舌を観察しよう!!」と思っても普段は口の中にしまっているので、なかなか見えないですよね。
皆さんは愛犬の口の中を簡単に観察することはできますか??
そう、ここで大切になってくるのが、普段の“しつけ”です。
犬は口の周りや四肢末端などを触られるのを嫌がります。
しかし、健康チェックやスキンシップ、歯磨きなど飼い主は愛犬の嫌がる部分もすべてチェックできなければなりません。嫌がる部分を触れさせるトレーニングはとても大変です。
少しずつで良いのでご褒美等をうまく使って慣れさせてあげて下さい。
どうしてもうまくいかない場合はドッグトレーナーに相談するのもオススメです。
口をうまく開けてくれない子はあくびをした時や「ワンッ!」と鳴いた時でよいので、歯茎や舌の色をチェックしてみましょう。
まとめ
舌の色の変化は体調不調や病気の兆候です。
舌の色は犬によって違うので、飼い主さんは愛犬の健康時の色をしっかり覚えましょう!!
そして、舌の色と病気の関係性を知っていれば、舌の異常から病気を早期発見することが出来ます。
愛犬を守れるのは飼い主さんだけです。毎日の健康チェックを欠かさず行ってあげましょう!!
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