1.犬が下痢をしている原因
1-1.軟便:ストレスや食べ過ぎ
1-2.水のような下痢:腸機能の低下
1-3.粘液が混ざる:腸炎
2.犬が嘔吐をしている原因
2-1.消化していない:食べ過ぎ
2-2.消化していない:ストレス
2-3.消化していない:乗り物酔い
2-4.消化物を吐く:ウイルス・寄生虫
2-5.消化物を吐く:消化器官の異常
2-6.消化物を吐く:腫瘍
3.犬が下痢と嘔吐を同時にする原因
3-1.犬パルボウイルス腸炎・犬ジステンパー腸炎
3-2.細菌性大腸炎
3-3.胃腸炎
3-4.膵炎
3-5.腸閉塞
3-6.中毒症状・食物アレルギー
4.犬が下痢と嘔吐をした際の対処法
4-1.ご飯の量を減らすor絶食をさせる
4-2.フードの粒の大きさを変えてみる
4-3.繰り返す場合、動物病院へ連れて行く
犬が下痢をしている原因
犬が下痢をしている原因を追求するためには、どのような下痢便かを確認することがとても重要となります。よって以下に便の状態による考えられる原因の一例について一つ一つご説明していきます。
◆軟便:ストレスや食べ過ぎ
正常な便と同じような人差し指程度の長さと太さはあるものの、指で押すと簡単に崩れてしまう、トイレットパなどでつかむことができない、コロコロとしていない、などの場合は「軟便」の可能性が高い状態です。
軟便の場合はストレスや食べ過ぎなどによって消化器官の一つである腸の働きが少し弱くなっており、腸を通る内容物から水分の吸収が十分に行われないため、正常時と比較して便の水分量が若干多いことが原因の一つと考えられることができるでしょう。
◆水のような下痢:腸機能の低下
便の形がなくて泥のようであったり、床やペットシートなどにもべったりくっついてしまっていて便だけを取り除くことができなかったりする水のような下痢の場合は「水様便」の可能性が高い状態です。
正常な排便時と比較して異様な悪臭がお部屋に広がっている、犬がお尻についた水様便を取るために床にお尻をこすりつけることによって、便が周囲の床にたれているなどの特徴が見られることもあります。
水様便の場合は軟便の原因となっていたストレスや食べ過ぎなどが改善されないために、よりいっそう腸の働きが弱くなってしまっていることや何かしらの疾患によって腸機能が低下していることが多いと考えられます。
◆粘液が混ざる:腸炎
便にゼリー状の透明な粘液のようなものが混ざっている場合は、「粘液便」の可能性が高く、多くは「水様便」と同時に見られます。
粘液じたいは腸の粘膜から分泌されるタンパク質の一種であり、便をスムーズに送り出す役割を担っているため正常な便にも付いていますが普段は眼で見えることはありません。
それが肉眼で見えるほど便についているということは何らかの原因によって腸の粘膜からの粘液の分泌が過剰になっていると考えられ、腸に炎症が起きている腸炎などが疑われます。
犬が嘔吐をしている原因
愛犬が吐くことは全て「嘔吐」と考えてしまい、動物病院を受診する際も吐いたものを持参したり写真に撮ったりせずに「嘔吐による通院」と話してしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか?
原則として、「吐く」という行為は「吐き戻し」と「嘔吐」の2つに分けることができ、かつそれらのメカニズムや原因などは異なってくるため見分けることはとても大切です。
「吐き戻し」の場合は口から入った食べ物が食道を通過して胃に入る前に吐き出されてしまうため、多くの場合は消化されておらず元の形を保ったものが吐いたものとなります。
反対に「嘔吐」の場合は口から入った食べ物が食道を通過して胃に運ばれた後に胃から吐き出されるため、多くの場合は消化されている、または消化途中のドロドロした元の形を保っていないものが吐いたものとなります。
◆消化していない:食べ過ぎ
消化していないものが吐き出された「吐き戻し」の原因の一つとして、「食べすぎ」を挙げることができます。
犬は習性として一気食いをすることが多いため、空腹感が強いことなどによる早食いや一度に食べる量が多すぎると、食道から運ばれた食べ物が胃に入りきることができずに吐き戻してしまうことがあります。
◆消化していない:ストレス
見知らぬお客さんが家に来る、雷などの悪天候、大音量の音楽などの騒音、飼い主さんとのふれあい不足などによるストレスによって、消化管の働きが弱くなってしまい消化していないものを吐き戻してしまう場合があります。
◆消化していない:乗り物酔い
食後すぐに車や電車などの乗り物に乗ると、揺れや不規則な加速・減速の繰り返しなどの刺激や騒音、さまざまな臭いからの不快感や不安などのストレスによって食べたばかりのものを吐き戻してしまうという状態が引き起こされることもあります。
◆消化物を吐く:ウイルス・寄生虫
犬に嘔吐症状が見られる原因の一つとしてウイルスや寄生虫による感染を挙げることができます。ウイルスについては改めて以下の項目でご説明しますが、嘔吐を引き起こす代表的な寄生虫に「回虫(かいちゅう)」が存在します。
回虫は白くて細長いミミズのような形をしていて、便や吐いたもの物の中に出てくることがあり、肉眼でも確認することができます。回虫の卵を口に入れてしまうことや、母犬の胎盤や母乳から入り込むという感染経路が存在し、回虫が寄生すると腸内で作られた栄養が奪われてしまいます。その結果、犬の発育や成長に影響が及ぶだけでなく、下痢や嘔吐といった症状も起こります。
◆消化物を吐く:消化器官の異常
消化器官には食道、胃、小腸、大腸といった臓器が存在しますが、特に胃から下の臓器に何かしらの異常が存在する時に嘔吐が見られることがあります。嘔吐を引き起こしてしまう異常には多くのものを挙げることができるため、嘔吐といった症状だけでは原因を特定することは難しいでしょう。
◆消化物を吐く:腫瘍
胃や腸に腫瘍が発生していても、嘔吐が見られることがあります。人間と同様に消化器系の腫瘍は血液検査だけでは発見が難しく、主に絶食下によるレントゲンや内視鏡、超音波などの画像検査が必要となってくるため早期発見が難しいともいわれています。
犬が下痢と嘔吐を同時にする原因
では、愛犬が下痢と嘔吐を同時にしたときに原因と考えられる疾患にはどのようなものがあるでしょうか?ここからは代表的なものについて概要を解説していきます。
◆犬パルボウイルス腸炎・犬ジステンパー腸炎
どちらも非常に生命の危険が高くなる疾患であり、それぞれ犬パルボウイルス、犬ジステンパーウイルスに感染することによって引き起こされます。
・犬パルボウイルス腸炎:「腸炎型」と「心筋炎型」の2種類に分けられ、下痢と嘔吐の症状が見られるのは『腸炎型』が多く、元気消失、トマトジュースのような真っ赤な血便の下痢、発熱などの症状も起こります。
・犬ジステンパー腸炎:生後1年未満の子犬に多い病気で嘔吐や下痢などの消化器症状、咳やくしゃみなどの呼吸器症状、食欲不振、発熱が起こります。さらにはジステンパーウイルスが神経系に侵入すると脳脊髄炎を起こして麻痺や痙攣の症状も見られることがあります。
このように、どちらも重篤な症状を引き起こす疾患ですが混合ワクチン接種によって予防することが可能なため、かかりつけの獣医師に相談しつつ適切な予防手段を愛犬には実施してあげる必要があります。
◆細菌性大腸炎
クロストリジウム、カンピロバクター、サルモネラなどの細菌が感染することによって急性の嘔吐や下痢、発熱などの症状が見られます。サルモネラは主に生肉を食べることによって引き起こされることが多いですが、クロストリジウムやカンピロバクターは健康な犬の便からも普通に検出されるため、予防することは難しいともいわれています。
◆胃腸炎
胃や腸の粘膜に炎症が生じることによって下痢や嘔吐、腹痛などの消化器症状が見られます。 原因には様々なことが考えられるため特定できない場合もあり、特に体力がない子犬や老犬には注意が必要となります。
また、突然発症するものの食事量の調節や投薬などの治療によって多くが回復する急性胃腸炎と、治療してもなかなかすっきりと治らず、再発を繰り返して長期間継続する慢性胃腸炎の2種類が存在します。
◆膵炎
胃や腸の近くにある膵臓という臓器に炎症が生じることで嘔吐や食欲不振、腹痛などが起こり、重症時には腹膜炎や多臓器不全を起こして生命の危険につながる場合もあります。
唐揚げなどの高脂質な食物を急に食べすぎて膵臓に負担をかけた場合や、焼き鳥やお団子を食べた際に串も誤飲して内臓を刺した場合などに急性膵炎が起こることがあるため注意が必要となります。
◆腸閉塞
誤飲した異物や腸の機能低下などによって腸の内容物が正常に通過できない状態をいい、食欲不振、元気消失、嘔吐、腹痛、便秘、下痢、腹部が腫れる(腹部膨満)などの症状が見られます。
状況によっては開腹手術が必要となる場合もあるため、愛犬が口にいれてしまいそうなものは速やかに片付けることが予防の一つになります。
◆中毒症状・食物アレルギー
人間にとっては平気でも犬には中毒症をとして嘔吐や下痢などを引き起こしてしまうものは、たくさんあるため予め飼い主さんが知識を得ておく必要があります。また、特定の食べ物やフードを与えたときにのみ嘔吐や下痢が見られるならば、それは食物アレルギーの可能性もあるため初めて食べさせるものはごく少量ずつ与えて様子をこまめにチェックしてあげるようにしましょう。
犬が下痢と嘔吐をした際の対処法
基本的に犬が下痢と嘔吐をしたときには、動物病院の受診をおすすめします。ただ、飼い主さんの状況によってはすぐに通院することが難しい場合もあるでしょう。よって最後に愛犬が嘔吐や下痢をしたときに家庭で行うことのできる対処方法をご紹介します。
◆ご飯の量を減らすor絶食をさせる
もし、早食いや食べ過ぎなどが原因として考えられるならば、食事の回数を増やして一度に与えるフードの量を減らしてみましょう。また、与えているフードの量が適切かも今一度確認する必要があります。
また、ごく軽度の胃腸炎ならば絶食によって消化器官を休ませるという方法もありますが、獣医師の指示の下に行うことであり飼い主さんの判断のみでは体調を悪化させてしまうかもしれないため、あまりおすすめしはできません。
◆フードの粒の大きさを変えてみる
フードの粒の大きさが愛犬の年齢や犬種に合っていないため消化不良を起こしている可能性もあります。今一度、フードのパッケージを見直してみましょう。なお、通常よりも口が小さい場合はフードクラッシャーなどで砕いて与えてみても良いでしょう。
◆繰り返す場合、動物病院へ連れて行く
1日に何度も嘔吐と下痢を繰り返す、または数日続けて症状が見られるなどの場合は速やかに動物病院を受診することをおすすめします。嘔吐と下痢を繰り返すということは必要な栄養素を摂取できておらず、かつ脱水状態になっている可能性もあるため注意が必要となります。
まとめ
犬の下痢には「軟便」や「水様便」、「粘液便」があり、それぞれ考えられる原因が異なります。また、嘔吐も正確には「吐き戻し」と「嘔吐」があり、「吐き戻し」のときは消化されていないものが、「嘔吐」のときは消化されているものが見られるため、こちらもそれぞれ原因が異なります。
飼い主さんは、愛犬が嘔吐や下痢をしてしまっても可能な限り落ち着いて、よく状況を確認するようにしましょう。
– おすすめ記事 –
・【獣医師監修】犬にネギを与えてはいけない!ネギ中毒の症状や治療方法を徹底解説! |
・【獣医師監修】愛犬に必要なカロリーを計算しよう!BCS・栄養不足や過多の影響についても紹介 |
・【獣医師監修】犬の呼吸が早いのはどうして?考えられる病気や対処法を詳しく解説 |
・【獣医師監修】犬の緑内障ってどんな病気?原因や症状、治療方法を紹介します |